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「Y's Land Bar IAN」:琥珀色の"生命の水"を味わわせてくれるバー
2012年04月20日

【written by 梶尾佳子】好きなものは映画とお酒と睡眠。ワインは1~2杯で眠くなるのに、なぜかウイスキーはストレートでもいける体質の持ち主。
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「世界は、女と男と酔っ払いで廻っている」こんなキャプションとともに、2002年に公開された日本映画「オー・ド・ヴィ」。オー・ド・ヴィとは蒸留酒のことで、フランス語で「生命の水」という意味だ。その名の通り、観た後に強いお酒を飲んだような気分にさせてくれる作品だ。

主人公の順三郎は函館のバー"フィニステール"のバーテンダー。毎晩常連客に酒を出しながら、彼も自身がこよなく愛するオー・ド・ヴィを飲むことで、日々の憂鬱を紛らわせていた。そんな中、浜辺で全裸の女性が幸せそうに微笑みながら死体で見つかるという事件が起きる。

この作品はとにかく登場人物が魅力的だ。順三郎を演じるのは岸谷吾郎。感情はあまり出さないが、逆に淡々とした表情でじっくり酒を飲んでいる姿は、観る方にもその味わいが伝わってくる。順三郎といつも一緒に酒を飲むのは、寺田農演じる酒店の店主。「死んだらその体を蒸留して酒にしてやろうか」と順三郎に言われるほどの酒好きで、店の裏でじゅんさいや、犬の尿がかかったタンポポなど、色々と変わった物を材料にして蒸留酒を造っている。他にも順三郎の共同生活者あやこは熟女としての妖艶な魅力を放ち、仏料理店の見習いで次第に順三郎と惹かれあうヒロミは、可憐ながらどこか危うくて目が離せない。個性の強い登場人物たちと不可思議なストーリーが、美しい函館の映像にうまく溶け込み、まるで作品自体が味わいのある一杯の蒸留酒のようだ。

DSC_0276.JPG三越前の駅から徒歩3分のところにある「Y's Land Bar IAN」は、蒸留酒の代表であるウイスキーを中心に扱うバーだ。シングルモルトの品揃えが豊富と聞いて行ってみると、地下2階にある黒い入口の扉の奥には、琥珀色のボトルがずらりと並ぶ棚があった。



DSC_0262.JPG
注文はメニューの中から好きなものを頼んでもよいが、知識が豊富なマスターに選んでもらうのもおすすめだ。今回はシングルモルトの聖地、イギリスのアイラ島のものにターゲットを絞って出してもらった。アイラモルトはピート(泥炭)をふんだんに使って香り付けしてあり、癖もあるがそのスモーキーな香りは慣れると病みつきになる。1杯目を飲んでいると、なんとマスターが実際のピートを目の前で燃やし、香りを嗅がせてくれた。目を閉じながらそれを嗅ぐと、遥か遠いアイラ島で作られたピートが、ウイスキーの一部になって今このバーに並ぶまでの長い過程が感じられるようだった。

DSC_0261.JPGのサムネール画像その後に出してもらったのはラフロイグ10年のカスクストレングス。ウイスキーは通常樽から出したあと水で薄めてボトルに詰められるが、カスクストレングスは薄めずにそのままボトル詰めした、いわば「原酒」だ。一口飲むと濃厚でスモーキーな味わいが口に広がる。きれいな琥珀色と先ほどのピートの香りのおかげで、何ともいえない一杯となった。



「Y's Land Bar IAN」でゆっくりウイスキーを楽しんでいると、ふと映画の中の順三郎の表情が頭に浮かんだ。映画のラストシーンで、彼がまるで体中に染み込ませるかのように味わって飲んでいた一杯は、きっとここで飲むウイスキーのような味だったのではないかと思った。歓送迎会やお花見などお酒を飲む機会が多い時期だが、久々にお酒を「味わって楽しむ」ことを思い出させてくれたお店だった。

★お店情報★
店名:Y's Land Bar IAN
ジャンル:バー
電話番号:03-3241-4580
住所:東京都中央区日本橋本町1-4-3 ヴィラアート日本橋B2F
交通手段:銀座線三越前駅 徒歩2分
半蔵門線三越前駅 徒歩3分
新日本橋駅 徒歩7分
営業時間:ランチタイム/月~金 11:30~14:00
カフェタイム/月~金 14:00~17:00
バータイム/月~土 17:00~00:00
定休日:日曜日

「六花界」: ひとり焼肉で改めて知る、「食事」という時間
2012年04月06日

【written by イシハラアヤ】焼き肉、もんじゃ焼等だいたいの店に一人で入れる「ひとりメシスト」。酒のツマミで一番好きなのは荒塩とスルメという根っからのしょっぱ党でもあります。
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映画『トニー滝谷』は、孤独な主人公・トニー滝谷の半生を描いた作品だ。トニーは生まれて間もなく母親が死亡。ジャズ演奏者の父親は仕事で全国を飛び回るばかりで家庭を顧みることはなかったが、自分自身を孤独だと思うことなく過ごしてきた。しかし、愛する人との結婚によって自らの孤独を認めるようになり、それと同時に、父親の音楽にも違和感を覚えるようになっていく。しかし、私には長らくこの「違和感」の正体が分からなかった。

rokkakai2.jpg「六花界」は神田駅東口近くの四畳半程の店だ。スタンディング形式で、中央のテーブルに置かれた二台の七輪を囲み、他のお客さんと一緒に焼肉をするのが特徴だ。
六花界にはいろいろメニューがあるが、初めて訪れる人には1,000円の盛り合わせがオススメ。肉はどれも新鮮でホルモン以外の肉は少々炙る程度で食べられる。また、つけだれは程良い酸味とコクのあるポン酢ダレで、肉が無くなった後も良い酒のアテになるそうだ。飲み物は一律400円、日本酒の種類が豊富で、レアな銘柄に出会えるかもしれない。

rokkakai1.jpg「それでは皆さん、カンパーイ!」という風に、店では全員で乾杯する。新しいお客さんが入るたびに何度も乾杯しているせいだろうか、ひとりで訪れた私だったが、いつの間にか初対面の隣の人や向かい側の人と雑談し、帰る頃には「また今度!」と言って店を出た。

その数日後、私は別の店でひとりで食事をした。読書や考えごとをして充実した時間だったが、この日は少しだけ寂しいと感じた。孤独を認めたトニーが父親の奏でる音楽に今までと違う側面を見いだして違和感を抱いたように、私も六花界で人と食事をする新しい楽しみを知り、それによってひとりの食事に対する思いが変わったのかもしれない。

音楽も食事も、新しい感覚を通すと今までに無い感じ方ができるようになる。ひとりの食事が苦手な人も、私のようにひとりで食べること好きな人も、六花界に行くと、「食」の時間に新たな側面を発見できることだろう。

★お店情報★
店名:六花界
ジャンル:居酒屋
電話番号:03-3252-8644
住所:東京都千代田区鍛冶町2-13-24
交通手段:JR神田駅から徒歩1分
営業時間:17:30~24:00
定休日:日曜、祝日

「オッキアーリ パスタ フレスカ」:
                 素材にこだわるシェフの「フリッタータ」

2012年03月30日

【written by 山崎恵(やまざき・めぐみ)】クラシックバレエ、絵画鑑賞が昔から大好き。自らも少々たしなむ。午前にバレエのレッスンを受け、午後に絵を描くという、理想的な日を1年のうちに何日間は作りたいと思っている。
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昨年2月に上映された映画『恋とニュースの作り方』。テレビ局をクビになった主人公のベッキーは、晴れてニューヨークにあるテレビ局のプロデューサーに採用されるものの、任されたのは低視聴率の朝の番組。番組存続をかけ、仕事とそして恋に奮闘するが...というストーリーの作品だ。ベッキーを演じるのは、『きみに読む物語』のレイチェル・マクアダムス。一方、ベッキーがあこがれている伝説のニュースキャスター・マイクを演じるのは、ハリソン・フォードだ。そのマイクが、映画の中盤と終盤に「フリッタータ」という卵料理を作るシーンがある。卵に野菜を混ぜて、オーブンで焼くのだが、完成品が映らないので、どんなものか気になっていた。

DSCF3048.JPGそこで、「フリッタータ」がメニューにある「オッキアーリ パスタ フレスカ」に行ってみた。目の前に出されたフリッタータは、野菜がたっぷり入った厚みのあるオムレツ風のものが出てきた。その厚みは、まるでキッシュのよう。食感は極めて柔らかく、上下にほんのり付いた焦げ目が香ばしい。また、具の味がしっかりと卵にしみていて、素材の味が楽しめる。しかし、残念ながら、フリッタータは毎日食べられるわけではないと言う。素材にこだわるこの店では、新鮮な地鶏の卵が入手できた時だけ、これをメニューに載せているのだ。店のメニューに関する情報は、毎日、ホームページで確認できるので、出かける前に確認すると良いだろう。

DSCF3061.JPGまた、「オッキアーリ パスタ フレスカ」では、「生パスタ」も自慢の一品だ。注文時に、スパゲティ、リングイネ、タリアッテレ、ショートパスタから自分の好きなものを選べるが、今回は「越後かんずりのアラビアータ」を平たい麺のタリアッテレで頼んでみた。かんずりは、唐辛子をじっくりと発酵・熟成させた和の香辛料。まろやかな辛みのソースが、もっちりとしたパスタにからまり、おいしかった。他にも、サバを使ったパスタ、サラダでもカブやウニを使ったものなど、和の食材をたくさん使っている。

女性オーナーシェフが切り盛りするお店はカウンター席のみだが、落ち着いた雰囲気なので、男女問わず1人で気軽にワイン片手に料理が楽しみたいときには、もってこいの場所だ。

★お店情報★
店名:オッキアーリ パスタ フレスカ
ジャンル:イタリアン
電話番号:03-5207-3535
住所:千代田区鍛冶町1-6-17 日東合同ビル1F
交通手段:JR神田駅南口 徒歩2分
営業時間:ランチ 11:30~14:00/ディナー 17:30~21:00
定休日:土・日曜日 (但し、土曜日は予約営業)

「ラデュレ・サロン・ド・テ」:
              味も雰囲気もオスカー級の「フレンチトースト」

2012年03月23日

【written by 本多綾子(ほんだ・あやこ)】ミーハーのDNAを持ったサッカーファン。2010年には28試合を観戦した。心のチームは鹿島アントラーズ。最近はスタジアム・グルメにもはまっている。
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Laduree3.jpgのサムネール画像

「名前を呼ばれたとき、『なぜまた彼女なの』と聞こえたような気がした。でも、いいの。そんなことは」とは、第84回アカデミー賞で2度目の主演女優賞を獲得したメリル・ストリープの言葉。誰もが認める大女優になった彼女が最初のアカデミー賞を受賞したのは1979年公開の『クレイマー、クレイマー』だった。ダスティン・ホフマン相手に見事な演技を見せて、助演女優賞を獲得した。

映画の舞台となった1970年代は、1960年代と同様に価値観が劇的に変わった時代だった。映画はメリル・ストリープが演じるジョアンナが、夫テディと5歳の息子ビリーを置いて家を出ていくシーンから始まる。仕事で夜遅く帰ってきたテディにジョアンナは告げる。「私、出ていくわ」と。ジョアンナは「理想の妻であり母親」を演じる自分に不安を感じて死にたいと思うほど追いつめられていたのだ。残されて茫然とするテディだが、子供の面倒を見なければならない。最初に作った食事が「フレンチトースト」。普段、キッチンに立ったことのないテディはパニックだ。牛乳は入れ忘れる。食パンを二つ折りにする。挙句にフライパンをひっくり返して火傷を負う。こうして、テディとビリーのほろ苦い父子生活が始まっていく。

それにしても、食事のシーンが多い映画だ。冒頭のフレンチトーストに始まり、TVディナー、シリアル、グラスに入ったワイン...。しかも、そのどれもが美味しそうには見えない。登場人物の気持ちを代弁するかのように、投げやりで乾ききった感じがする。しかし、テディがビリーと食べる最後の朝食だけは違う。「フレンチトースト」を二人で仲良く作っていく。スクリーンから美味しそうなバターの香りが漂ってくるようだ。この映画を初めて見た1980年、私は、無性にフレンチトーストを食べたくなったことを覚えている。

時は流れて2012年。パリの高級ティーサロン「ラデュレ・サロン・ド・テ」でフレンチトーストが食べられるというので行ってみた。

「ラデュレ」1号店は銀座三越の2階にあるが、私は今回、三越日本橋本店内のカフェを訪れた。内装が凝っていると聞いていたが、確かにデパートの中とは思えない贅沢な雰囲気だ。二つのサロンに分かれており、まず目に飛び込んでくるのが、オールドローズと淡いグリーンのインテリアを使ったルイ・フィリップ様式の「サロン・デ・キャトル・セゾン」。その奥にプロシアブルーのインテリアで統一したナポレオン三世様式の「サロン・ブルー」がある。

Laduree2.jpgビリーをこんなステキな店に連れてきたら、「パパ、クールだよ。ママも連れてくるべきだよ」と言うかもしれない。そんなおしゃれなカフェで食べたフレンチトーストは、思わず「わぁ~」と声を出してしまうほど美味しかった。外側がカリっと焼けているのに中はしっとり。ありふれた素材のパン、卵、牛乳、バターでこんなに美味しい食べものが出来上がるとはまるで魔法だ。一緒に頂いた紅茶も、フレーバーが紅茶本来の味をまったく損なっておらず、今までフレーバーティーを避け続けていた私の好みをあっさりと変えてしまうほどだった。「ラデュレ」というとマカランやケーキといったスイーツのイメージが強いが、フランチトースト以外にもクラブ・サンドイッチやオムレツもある。私は欲張ってサーモンのサンドイッチを食べてみた。サーモン、ゆで卵、きゅうり、レタスを薄いトーストで挟んでいる。マヨネーズのさじ加減が絶妙。アメリカ風のクラブ・サンドとはひと味もふた味も違っていた。

laduree1.jpgのサムネール画像夜8時まで営業をしているので、会社帰りに「ラデュレ」に寄ってみるのもいい。フレンチトーストやサンドイッチ、オムレツの後には、もちろん美味しいスイーツが控えている。味も雰囲気も主演女優賞クラスと言えるだろう。


★お店情報★
店名:ラデュレ・サロン・ド・テ
ジャンル:カフェ
電話番号:03-3274-0355
住所:103-8001 東京都中央区日本橋室町1-4-1 日本橋三越本店
交通手段:銀座線・半蔵門線「三越前」駅より徒歩1分 JR「新日本橋」駅より徒歩7分
営業時間:10:00-20:00
定休日: 日本橋三越の定休日に準じる

「CARIBBEAN PIRATES」(カリビアン・パイレーツ):
         豊富なメニューが楽しめる、スペイン・地中海料理店

2012年03月15日

【written by 塩田明日香(しおた・あすか)】大の白米好き。子供の頃、「お母さんが作る料理で何が一番好き?」と聞かれ、「白いご飯!」と元気良く答えた親不孝者。でもそれくらい白米が大好き。白米さえあれば、どこでも生きていけます。
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スペイン映画「BIUTIFULビューティフル」は、余命わずかと宣告された男の物語だ。バルセロナで暮らすウスバル(ハビエル・バルデム)は、2人の子供とドラッグ中毒の妻を養うため、さまざまな仕事に手を染めてきた。ある日、ウスバルは末期がんを宣告される。残された時間を、愛する人達の未来を守るために奔走する彼。自らの死が迫る中、幼い子供たちだけは何とか生けていけるようにと懸命に生きるウスバルの姿に、強い父性愛を感じて胸が熱くなった。人が生きる意味とは何かを、深く考えさせられる作品だ。

映画を観て涙を流した後は、美味しいスペイン料理で一息ついてはいかがだろうか。神田近辺なら、地中海・スペイン料理のお店、「CARIBBEAN PIRATES」がお勧めだ。ドアを開けると、ガイコツの人形が出迎えてくれる。店内は赤と白を基調とした明るい雰囲気で、フラメンコを踊る女性の絵がたくさん飾ってあるのが印象的だ。

Caribbean pirates.JPGランチタイムのメニューは、パエリアセットの他に、ラザニア、パスタ、カレーなど、スペイン料理だけではなく、様々な国の料理から選ぶことができる。私は本日のランチスペシャル、「チキンフライとポテトとピーマンのセット」を注文した。ドリンクとサラダ、デザートもついて1,000円というお得な値段の上に、注文から5分程で料理が出てくるのも嬉しい。ライスの横にある緑色のカレーは、ライスと一緒に食べるとほどよい辛さで美味しい。またポテトとカリカリチキンの相性は抜群で、これもまたカレーと一緒

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に食べると更に美味しくなった。この日のデザートはクリームムースで、甘すぎずすっきりとした食感は、男女問わず好まれそうだ。

ディナータイムは3種類のコースから選べる。夜は職場の仲間や友人たちと一緒に、ワイワイと食事を楽しむにはもってこいのお店だ。

★お店情報★
店名:CARIBBEAN PIRATES 日本橋
ジャンル:各国料理(ヨーロッパ)
電話番号:050-5798-2273
住所:東京都中央区日本橋1-2-10 東洋ビルB1
交通手段:地下鉄半蔵門線三越前駅 B5番出口徒歩4分
営業時間:ランチ月~金:11:30~14:00 ディナー月~土・祝:17:00~23:30(L.O.22:30)
定休日:日曜日

「ブールミッシュ 日本橋三越店」:シブーストの密かなほろ苦さ
2012年02月17日

【written by 好中由起恵(よしなか・ゆきえ)】スイーツがだいすきで、食後にあま~いものは欠かせない。時間がなくて食べられないときでも、持ち歩けるチョコやグミなどを口にほうり込む。スイーツにあわせてブラックコーヒーを飲むのが至福のとき。
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江國香織の長編小説『薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木』には9人の女たちが登場する。その9人の女たちは話の中で微妙に相関していくが、「江國マジック」ともいえるたくさんの換喩の効果により、それぞれの個性が垣間見えてくる。たとえば、感傷に浸る女はポール・マッカートニーの楽曲、独身生活を謳歌している現実主義的な女はコンビニのプラスチックに入ったショートケーキ、結婚しているが友人も多く仕事もデキる女はソニアのマニキュア ヴェルニ・ラック55番といったものだ。

主人公は専業主婦の陶子。愛犬と優しい夫が贈る花に囲まれ、何不自由ない結婚生活を送っているように見えるが、実は密かに満たされない孤独感を抱いていた。そんな彼女の好きなものとして「シブースト」が出てくる。

cake1.jpg小説に登場するシブーストは「アンジェリーナ」のものだが、残念ながら、現在は取り扱いがない。しかし、今もこのケーキを看板商品にしている店がある。それが『ブールミッシュ』だ。もともとパリの菓子職人・シブースト氏が考案したもので、「クレーム・シブースト」と呼ばれていたが、当時のレシピを現在の『ブールミッシュ』の店主がパリで修行中に再現。クリームやソテーしたりんご、パイ生地などを層にした「タルト・シブースト」として店に並べることになり、現在もそのときのレシピを生かしながら、おいしさを追求し続けている。

cake2.jpgケーキといえばショートケーキやチョコレートケーキなど甘いだけのものが多いが、『ブールミッシュ』のシブーストは違う。層の一番上を包んでいるのはほろ苦いキャラメリゼ。それが一見完ぺきなしあわせにあふれている陶子に秘められた孤独感に似ている。そして、シブーストのほろ苦さが甘さを引き立てているように、孤独感がしあわせを際立たせているのだ。このシブーストも陶子のイメージにぴったりのケーキだ。

『ブールミッシュ』にはシブースト以外にもたくさんのケーキがショーウインドウに並んでいるが、一度は甘さのなかにほろ苦さの潜むシブーストをぜひ味わってもらいたい。

★お店情報★
店名:ブールミッシュ 日本橋三越店
ジャンル:スイーツ
電話番号:03-3245-1227
住所:〒103-8001東京都中央区日本橋室町1-4-1 日本橋三越B1
交通手段: 地下鉄「三越前駅」から徒歩1分 JR「新日本橋駅」から徒歩7分
営業時間:10:00~20:00
定休日:不定休(日本橋三越に準ずる)

「VINOSITY(ヴィノシティ)」:ワイン好きが集まる、気取らないフレンチ
2012年02月03日

【written by 伊藤志穂(いとう・しほ)】お気に入りのリフレッシュ方法は、ジャズダンスでひと汗かくことと、お菓子作り。出来あがりはさておき、オーブンからただよう甘い香りを楽しむのが至福の時である。
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時代や国境を越えて愛される画家のなかには、日本でも高い人気を保ち続ける人物がいる。19世紀末のパリで活躍した、トゥールーズ=ロートレックもその1人である。毎年のように展覧会が催され、期を合わせてカフェの特別メニューやオペラ公演が企画されることもある。フレンチ・カンカンで有名な「ムーラン・ルージュ」のポスターは、彼の作品の中でも特になじみ深い。映画『葡萄酒色の人生 ロートレック』では、南仏の貴族出身であった彼が、身体的な逆境に負けず画家・版画家として活躍し、36才で世を去るまでが描かれている。さらに彼は、芸術の世界と同様に、料理やワインをこよなく愛した美食家でもあった。

VINO_picture1.jpg神田駅から歩いて数分のところに「ワイン好き」、という意味のラテン語を店名にしているお店がある。『VINOSITY(ヴィノシティ)』というそのワイン居酒屋は、スタッフが皆ワイン好きで、ソムリエやシェフは高級フレンチ店で経験を積んできたという本格派だ。そうはいっても堅苦しさはなく、店内は明るくカジュアルな雰囲気に包まれ、食事を楽しむ人々で賑わう。満足度の高い料理に対して、意外にも価格がリーズナブルなところが嬉しい。

VINO_picture2.JPGまず注文したいのは、その名もユニークな「こぼれスパークリングワイン」だ。グラスの縁ぎりぎりまで注がれるワインには、思わず「おおっ」と声をあげてしまう。一口含むと、甘い香りと微かな苦味が、口の中に広がっていく。また、食事のほうで言えば、まるで花瓶に生けられたような「バーニャカウダ」は、野菜の鮮やかな色や、大胆なカッティングを楽しみながら食べられる。メインに最適なのは「ぶ厚く切ったノルウェーサーモンの瞬間スモ-ク」。名前のとおり、肉厚で食べごたえがある。サワークリームと甘酸っぱいソースが添えられており、スモークサーモンそのものの塩味と合っている。

VINO_picture3.JPGなお、訪れる際には、ぜひ予約をお勧めする。そしてもし満席だったとしても、すぐにあきらめないでいただきたい。徒歩数分のところに、昨年の秋にオープンした系列店『VINOSITY magis』がある。開店から1年も経たずに2店舗目ができるところからも、人気の度合いが伺える。美味しい料理と楽しい時間を堪能できる、何度も通いたくなるお店だ。

★お店情報★
店名:VINOSITY(ヴィノシティ)
ジャンル:フレンチ、ワインバー
電話番号:03-6206-9922
住所:東京都千代田区鍛治町2-4-1 佐伯ビル1階、地下1階
交通手段:JR/東京メトロ銀座線 神田駅 徒歩3分、JR新日本橋駅 徒歩4分、東京メトロ 銀座線 三越前 徒歩5分
営業時間:月~金 ドリンク 15:00~翌4:00(L.O.03:30)、フード 17:00~翌3:00(L.O.)
土 ドリンク 15:00~23:00(L.O.22:30)、フード 17:00~22:00(L.O.) 定休日:日・祝日

「ハロッズティーサロン」:ミルクたっぷりの紅茶は英国仕立てで
2012年01月27日

【written by 本多綾子(ほんだ・あやこ)】ミーハーのDNAを持ったサッカーファン。2010年には28試合を観戦した。心のチームは鹿島アントラーズ。最近はスタジアム・グルメにもはまっている。
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スポーツ生観戦の醍醐味は緊張感や高揚した気分を肌身で感じられることだ。さらに、その場ならではの食べ物や飲み物があると生観戦がより思い出深いものになる。大相撲好きなら、升席で相撲を見ながら焼き鳥を食べてみたいと思っているだろう。メジャーリーグのファンならば、2日間は後味を楽しめるホットドックを食べたいはずだ。そして、私を含む鹿島アントラーズのサポーターなら、カシマサッカースタジアムの名物「ハム焼き」か「もつ煮」だ。

harrods.jpgのサムネール画像映画『シーズンチケット』では、冒頭で主人公のジェリーが友人のスーエルに夢を語る場面が出てくる。「いつか競技場で試合を見よう。雰囲気を味わうために早々に行ってさ。まず紅茶を飲む。砂糖は2つ、ミルクたっぷりでね。選手が登場したら立ち上がってクレイジーな声援を送るんだ。試合が始まったらリラックスしてさ。席に座って、ゆっくり紅茶を飲みながら観戦する。なんて最高なんだ」


『シーズンチケット』は、いまもイギリス映画を愛する人たちやサッカーファンの間で語り継がれている名作だ。舞台はイギリス北部の町、ニューカッスル。落ちこぼれの少年、ジェリーとスーエルがイングランド・プレミアリーグのチーム、ニューカッスル・ユナイテッドのシーズンチケットを手に入れようと悪戦苦闘をする姿が描かれている。「シーズンチケット」とは、1シーズンを通してサッカー観戦ができる高額なチケットのことである。

2人の家庭は生活保護を受けるほど貧しい。スタジアムでのサッカー観戦など夢物語だ。そんな彼らがあこがれるのは、スタジアムで飲む「紅茶」。紅茶などいつでも飲めるものだが、ジェリーの「紅茶」には特別な思いが込められていたのだった。それは...と書きたいが映画を見てのお楽しみということにしたい。

この映画を見終わると、きっと紅茶が飲みたくなる。イギリスの紅茶といえば、日本橋三越本店の「ハロッズティーサロン」だ。イギリスの高級デパート、ハロッズはジェリーとスーエルには無縁の場所で、サッカースタジアムとは正反対の上品で落ち着いた雰囲気だったが、ここはあえて彼らと同じやり方で紅茶を飲んでみた。

harrods2.jpg

紅茶は銀のポットで運ばれてくる。ミルクティーに向いているというアッサムに、砂糖2つとミルクをたっぷり入れて飲んでみた。ストレートティーの美しい色合いを楽しみながら飲むのもいいが、ミルク色に染まった紅茶は見た目も味も優しく、温かな気持ちになれる。一緒に注文したスコーンにはクロテッドクリームといちごのジャムが添えられており、程よい固さで紅茶との相性もぴったりだった。

『シーズンチケット』のふたりが思い描く紅茶とは少し違ったが、冬の午後、落ち着いたティーサロンで飲む紅茶もいいものだ。次回は友人を誘って、大好きなサッカーについて語り合いながら、ミルクたっぷりの紅茶を頂こう。もちろん、砂糖は2つだ。

★お店情報★
店名:ハロッズティーサロン
ジャンル:カフェ
電話番号:03-3273-1840
住所:103-8001 東京都中央区日本橋室町1-4-1
交通手段:銀座線・半蔵門線「三越前」駅より徒歩1分 東西線「日本橋」駅より徒歩5分 浅草線「日本橋」駅より徒歩5分 JR「新日本橋」駅より徒歩7分
営業時間:10:00-19:00
定休日: 日本橋三越の定休日に準じる

「炭火割烹 神田 木花(このはな)」:
     ワインの香りと炭火割烹の組み合わせは絶妙

2011年12月15日

【written by 樋口孝一(ひぐち・こういち)】最後の晩餐に食べたいモノが、年を取るごとに変わっていきます。昔はグリーンカレー、最近はエノキ炒め。次は何になることやら。
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高級ワインの産地であるカリフォルニア州「ナパ・バレー」には、大小400以上ものワイナリーがある。そのひとつである「ニュートン・ワイナリー」の登場するロードムービーが、2009年に日本人キャストでリメイクした『サイドウェイズ』だ。

ワイン IMGP0257.JPG主人公はシナリオスクールの講師を務める斉藤道雄。かつては連ドラの脚本を書いたこともあるが、今はぱっとしない。そんな彼のもとへ、結婚式の招待状が届く。20年前に留学した時の友人、上原大介からだった。大介はアメリカで念願の俳優となり、ヒット作『キャプテン・ニンジャ』で一時は名をはせたものの、現在はレストランの雇われ店長として働いていた。そんな大介の独身生活を満喫したいという誘いに乗り、道雄は一路カリフォルニアへと向かう。この2人に、道雄が留学時代に家庭教師をしていたときの教え子で、当時ひそかに思いを寄せていた麻有子と、彼女の友人ミナが加わり、男女4人のおかしくも切ない1週間が始まる。


映画では、麻有子と道雄がニュートン・ワイナリーを訪れる。実はこのワイナリーには、麻有子が自らの結婚5周年を記念するはずだったヴィンテージワインがあった。2人はワインを飲みながら語り合い、お互いの考えに惹かれ始める。アメリカでソムリエとして認められたい麻有子の思いを知った道雄は、カリフォルニアを去る直前、彼女にメッセージを送る。「君が思うところにいればいい。そしてどこにいたとしても君は間違っていない」。いつもは頼りない彼の、麻有子を思うまっすぐな気持ちが、ワインの香りのように心に広がっていく言葉だった。

外観 IMGP0274.JPGニュートン・ワイナリーの赤ワイン「ニュートン・クラレット」をいただける店が神田にある。「炭火割烹 神田 木花(このはな)」だ。炭火焼きのメニューが充実しており、「厚切りチャーシューの炙り焼き」や「炙り明太子」など肉、魚、野菜の炭火焼料理がズラリと並ぶ。また人気メニューのひとつに「メンチカツ」がある。衣がサクサクで、

メンチカツ IMGP0247.JPG

肉のうまみがしっかりとしていながら、後味はさっぱり。ここでニュートンを口に含むと、ほどよい酸味と華やかでフルーティな香りがメンチカツのあとに広がる。炭火料理やおばんざいを「気軽においしく食する」ことを大切にしている同店ならではの楽しみ方だ。炭火割烹とワインの組み合わせは絶妙。映画同様、さわやかで味わい深かった。


★お店情報★
店  名:炭火割烹 神田 木花
ジャンル:和食
電話番号:03-3254-4533
住所:内神田3-5-3第2矢萩ビル1F
交通手段:JR山手線神田駅より徒歩3分・東京メトロ銀座線神田駅より徒歩4分
営業時間:昼の部11:00~14:00(L.O.13:30)、夜の部17:00~23:00(料理L.O.22:00、ドリンクL.O.22:30)
定休日:土曜、日曜、祝日※忘・新年会シーズンは土曜日も営業、その他の曜日もご相談

「花時計」:心がまあるくなるホットケーキ
2011年12月02日

【written by 好中由起恵(よしなか・ゆきえ)】スイーツがだいすきで、食後にあま~いものは欠かせない。時間がなくて食べられないときでも、持ち歩けるチョコやグミなどを口にほうり込む。スイーツにあわせてブラックコーヒーを飲むのが至福のとき。
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映画「幸せのレシピ」は、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ演じる主人公のシェフ、ケイトが作る、たくさんの凝った料理を見ることができる。しかし、一番印象的なのはシンプルなパンケーキだ。ケイトと陽気なニックの距離が縮まるシーン、そしてラストシーンにも登場するパンケーキは、まさに幸せの象徴。そして、何より私が魅せられたのは、パンケーキで笑顔になる登場人物たちの表情だった。

花時計 1.JPG「花時計」はコレド日本橋から歩いてすぐのところにある、ホットケーキ専門店。「ホットケーキ」「パンケーキ」と呼び方こそ違えど、花時計のホットケーキも人を笑顔にしてくれる。

優しいホットケーキの香りにつつまれた店内は、どことなく懐かしい雰囲気。インテリアや綺麗に並べられた白とお花柄のソーサーが、幼い頃に連れて行ってもらった喫茶店のようなレトロな空気を生み出している。ふたりのスタッフが阿吽の呼吸で客を席に案内し、オーダーをとり、ホットケーキを焼きはじめる。運ばれてきたホットケーキは、中はふんわりと仕上がっており、表面はサクサク。添えられたメイプルシロップは甘すぎず上品なので、女性だけでなく、男性にもオススメできる味だ。

花時計 3.JPGさらに、男性向けのメニューとしてオススメしたいのが、「ホットケーキランチのベーコンセット」。ホットケーキ2枚にベーコンとスクランブルエッグ、サラダがついている。サラダにはフルーツが添えられて彩り豊かで、ベーコンの程よい塩気はホットケーキの甘さとの塩梅がいい。


「花時計」のホットケーキを食べ終える頃には、「幸せのレシピ」を見終えたときに感じるような穏やかな気持ちになれるはず。舌だけでなく、心も満たされるだろう。

★お店情報★
店名:花時計
ジャンル:ホットケーキ専門店、喫茶店
電話番号:03-3273-8221
住所:〒103-8265  東京都中央区日本橋1-7-12 北ビルB1F
交通手段:「日本橋駅」B12または「三越前駅」B6出口から徒歩2分
営業時間:11:00~19:00(ラストオーダーは18:20)
定休日:土・日・祝