発見!今週のキラリ☆

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2008年10月 アーカイブ

Vol.42 「お告げ」 by 潮地愛子


10月のテーマ:不思議

久々に書くことになった「キラリ☆」。テーマは「不思議」。さて何を書けばいいやらと頭を悩ませていると、同僚がデスク上のパソコンに貼っている明治神宮のおみくじ、大御心が目に入った。それで、不思議な体験を思い出した。だから今回は、そのことについて書こうと思う。
大御心には吉とか凶とかは記されておらず、書かれているのは明治天皇や皇后が詠んだ和歌だ。私には、思い出深い大御心のメッセージがある。

ならびゆく人には よしやおくるとも 正しき道を ふみなたがえそ

他の人と並んで歩く世の中で遅れをとったとしても、自分の進むべき道を誤ってはいけないよ、という意味である。
このみくじをひいたとき、私は大学4年生で、卒業して念願の留学を果たすか、周りと同じように新卒で就職をするかを迷っていた。私が通う学部は公務員を目指す学生がやたらと多く、みんな早い時期から公務員試験に向けて問題集を解いたり、学校に通ったりと対策を始めていた。私はといえば、将来自分が何をやりたいのかも分からないし、先のことなど何も見えず、モラトリアムのまっただ中にいた。分かっているのは、自分が公務員には向かないだろうということぐらいだった。留学して勉強を続けたいという思いはあったものの、その先のビジョンはまったくなかった。だったら、地に足をつけて、新卒で就職するほうが懸命じゃないか。だって、みんなそうするんだから・・・。はっきりした答えをだせないまま、もんもんと過ごしていたある夏の日、考えるのもめんどうくさくなって、私は家のソファでうたた寝をしていた。うつらうつらしていると、1匹のハエが飛んできた。なんだか、まわりが光につつまれているような気がしたが、ハエはハエである。あ、ハエだ、と思っていると、ヤツは私の目の前でとまって、ひとこと言い放った。「焦るな!」
その時、私は妙だと思うこともなく、ただその言葉に反感を覚えた。焦るななんて、人ごとだから言えるんだろ!と。だが、その数日後、たまたま東京を訪れた時に明治神宮でひいたのが、例の大御心だった。ハエが言ったのと同じことを言われた気がして、私は留学することを決めた。今でも、あれはハエのお告げだったと信じている。ただ、なぜ小鳥とかではなくハエなのかは今でも解せないが、それについては深く考えないようにしている。

不思議な声を聞いたことが、もう1度だけある。
それは、翻訳の勉強をするために仕事をやめて上京するかどうか迷っていた時のことだ。
とりあえず1年、東京で翻訳の勉強をがんばってみようかと考えていたのだが、老舗の翻訳学校に電話で相談した時に言われたことが、私を不安にしていた。「あなた、甘いわよ。みんな10年かけてデビューしてるんだから。」じゅ、じゅうねん・・・。クラクラしたのを今も覚えている。
仕事には満足していなかった。だからといって、やめて翻訳の勉強をしたところで、その先の保証はない。もしかして、私は現実逃避しているだけなのかもしれない。やっぱり、甘いんじゃないか。そんなことを書類整理しながら考え続けていた。その時、耳元でパツンと弾けるような声がした。「がんばって!」
ガバッと顔をあげ、声のした方を振り返ったが誰もいない。少し離れたところにいた同僚たちも、ただ黙ってもくもくと仕事をしていた。たずねても、誰も何も言っていないと言う。
人生2度目のお告げだ。でも、この時も私はやっぱり反感を覚えた。がんばるって何を?私、がんばってるじゃん!と。だけど、心のどこかで、先が不安だろうとも進むしかないよな、とも思っていた。結果、仕事をやめて上京した。

そして、現在に至る。(もちろんその間にはいろんなことがあったけど)
人生の岐路に立ったあの時、お告げに背中を押されなかったら、私の人生は今とは大きく違ったものになっていたかもしれない。

以上、私の不思議体験2連発である・・・と、ここまで書いてきて、思い出したことがある。映像翻訳に興味も何もなかった二十歳の頃、字幕翻訳者を目指すために銀行をやめるという年上の女性に旅先で出会った。でもその時、私は彼女の夢を応援する気になれなかった。無理だよ、戸田さんみたいな人しか出来ない仕事なんだから。夢みたいなこと言っちゃって、と思った。何も知らなかったから。そんな私が、その数年後には映像翻訳者になった。そして映像翻訳者を目指す人たちの背中を押す仕事もしているのだから、人生とは不思議なものだ。

Vol.43 「バスケットの中身」 by 柳原須美子


10月のテーマ:不思議

皆さん、新学期が始まりました。MTCは今後、その月に発生したお仕事やイベントをお伝えするべく、マンスリー・レポートを発行していきます。記念すべき第1号は、今週の授業で配布させていただきました!皆さんはもうご覧になられましたでしょうか。

今月のマンスリー・レポートには、我らがMTCスタッフからのコメントが載っています。"受講生の皆さんへのメッセージと自分が好きなものを簡潔に書くこと"とマンスリー・レポート担当スタッフから告げられ、パソコンに向かうこと小一時間。受講生の皆さんへのメッセージを書き終え、自分が好きなものを書こうとした途端、キーボードをたたく指がピタリと止まりました。"私が好きなものって、何だっけ?私が好きなもの、私が好きなもの..."と頭の中がグルグルグルグル。"あ、好きなものは分かる。でも、何で好きなんだろう..."と困り果てた私はハッと気づきました。"今まで何かを好きになっても、その理由を考えたことがなかったな"と。

それ以来、何かを好きになったらその理由を具体的に言葉にしていこうと考え始めたのですが、これがなかなか難しい。自分のことなのに言葉にできないなんて、とっても不思議!

例えば、好きになったものを入れるバスケットがあるとします。手に持っている時はちゃんと実体があるのだけれど、それらをバスケットに入れた途端、輪郭はボヤけ、モヤがかかってしまうような、そんな感じ。すべてがボンヤリとしてしまうのです。

これはきっと、好きになったものを、"好きだ"と認識しても(=バスケットに入れても)、その後すぐに別の対象を追ってしまう(そしてバスケットに入れたものたちは輪郭を無くし、ボヤける)のが原因だと思われます。そういえば私は自称"マイブーム浮気性"でした。

いろんなものを好きになるのはいいこと。でも、これからは好きになったものをバスケットにポイポイと放り込むのではなく、きれいに並べて入れられるような、そんな生き方がしたいと思います。バスケットをのぞけば、好きになったものたちをちゃんと見ることができるように。そして、それらをいつでも取り出せるように。

とりあえず、今までバスケットに入れたものたちをすべて外に出して、向き合ってみるところから始めようかと思います。