発見!今週のキラリ☆

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2009年12月 アーカイブ

vol.71 「あったかい雪の思い出」 by 藤田彩乃


12月のテーマ:「雪」

朝晩は冷え込むものの、昼間は快晴、ぽかぽか陽気で雪とは無縁のロサンゼルス。まったく年の暮れという気がしません。寒いのは好きではないですが、新雪を歩いたり太陽の光に反射して輝く雪を見たりするのは大好き。やはり雪を見ないと冬という感じがしないのは、雪国出身だからでしょうか。

私の出身の北陸富山は豪雪地帯。毎年冬は雪が降ります。幼少期は九州に住んでいたので、富山に引っ越した当初は雪の上を歩けず、すぐに転んでは笑われていたようですが、いつも間にやら立派に雪国っ子になりました。アノラックにスノトレで登校し、スタッドレスタイヤに履き替える大人たちを見て育ちました(雪国以外では聞きなれないカタカナ用語かもしれません)。

北陸は湿気が多いので北海道のようなさらさらした粉雪と違い、ずっしり重く雪かきは重労働になります。はらはらと雪が舞うなどというロマンチックな状況ではなく、傘なんて生易しいものでは太刀打ちできない吹雪に立ち向かうこともしばしばでした。

そんな故郷での雪の思い出をひとつ。中学の頃は部活動の朝練習で早朝6時半には家を出て、30分かけて歩いて登校していました。大通りは歩道が狭く危ないのと遠回りなので、民家の前の路地や小道などを通っていたのですが、大通りと違って除雪車が入ったり融雪装置がついていたりはしません。

でも毎朝、雪が積もった日には通学路の雪がどけてありました。特に車が出て行った跡もないので、家の前を通るであろう誰かのために凍える寒さの中、わざわざ外に出て雪かきをしてくださったのでしょう。一度もお礼を言う機会はありませんでしたが、子供ながらにありがたいなあと思ったのを今でも覚えています。

見知らぬ人のために行動するって、簡単なようで普段なかなかできないことです。すっとドアを開けてくれたり、落とした物を拾ってくれたり、そんな些細なことでも親切にされると嬉しくなるもの。忙しさにかまけて助け合いの精神も忘れがちですが、多くの人の心に光を灯せるよう、心にゆとりをもって暮らしたいなあと思います。

2009年も残りわずか。2000年からお馴染みになっている「00」部分をメガネにしたお祭り気分満載の西暦メガネを見ることもないんだなあと、相変わらずのんきなことを考えていますが、今年も健康に楽しく暮らせたことに感謝感謝です。

vol.72 「雪、雪、雪。思考止まらず」 by 浅川奈美


12月のテーマ:「雪」

200912230012000.jpg
あっという間にまた自分の番に回ってきた!さらに、本日、12月18日。
超特急で過ぎ去っていった、「2009年」というに日々に驚愕している。

さて。このコラム。
好きなことを書いていいといっても、テーマは決まっているわけで。さらに、このテーマが、実に直球過ぎて日頃スルー必須の定番アイテムだけに、それについてなにか書くとなると...(汗)。
案外、難儀。なのだが、その一方、おかげで思考もほどよく活性化されて、刺激的。日常、普通に起こる出来事や、当たり前と思いがちなことの前に立ち止まり、もう一度「う"、ぅぅ...」と考えなおしてみるこの機会。哲学的だ。いいみたいだ。

東京生まれ、東京育ちの私。寒さには、極度に弱い。でも、雪は好き。都会のご都合主義、代表選手である。
そんな私にとって「雪」のことを思うと絶対に頭に浮かんで離れない風景というのがある。
それはニセコの山林だ。

ハイクアップして、やっとたどり着いたポイント。そこから傾斜に沿ってそっと加重するあの瞬間。
あるのは、空と、森と、雪。
聞こえるのは自分の呼吸と雪上を滑る音だけ。
目の前の景色に溶けこんでいくような感覚。
パノラマに広がる幻想的過ぎる風景。
それらに全てを奪われても、「ゆるーす」と一瞬錯覚させてしまう......。(TдT)

道具一式、ニセコの友人宅にシーズン中置かせてもらい、毎冬スノーボードに明け暮れていたあの頃。ムチャもしたし、それなりの恐怖と危険も体験したこともあった。
あ"―。泣けてくるほどなつかしい。

「雪」から想起させるものとなるととめどなく出てきてしまう。
またはじまった...(´-`).
「森雪」。
またスクリーンにこの人の姿を観ることが出来るとはっ!
自滅したヤマトは、さながらフェニックスのように2009年冬、蘇った。
「慎太郎さん、ありがとう」と、敗戦コンプレックスからいまだ抜け切れない昭和のお父さん達の声が聞こえてくるようだ。今後の課題としては実写版「森雪=黒木メイサ」をどう受け入れていいものか、というところか。

もうひとつ。強烈に雪の風景を思い起こさせる言葉がある。
それは、「カムチャッカ」。

カムチャッカというと、浅川のことだから、「博光丸」の話でも熱くするのではないか。と思われるかもしれない。数年前からブームが再燃。新装丁で書店に並び、マンガや映画にもされたあのプロレタリア文学の代表作!「蟹工船」!!

ではなく。

「カムチャッカの若者」のこと。
「お、あれね」と思う人は少なくないだろう。教科書にも載っていた。
谷川俊太郎の名作。そう、あれだ。
教室で始めて出会ったときから、私はあの詩が大好きだ。

冒頭の一言、これにやられた。つづく「きりんの夢」。
想像する舞台は、完全に白銀の世界だ。
雪の中にひっそりと佇む家のベッドの上。若者は何て素敵な夢をみているのだろうか。

その後、メキシコだとかニューヨークだとか出てきても、開始直後カウンターに受けた衝撃は、強い余韻を残している。
そして最後。
目に浮かぶのは、新しい日の産声があがるその直前まで、全ての音をも吸い込んでしまう、雪の世界。その中、輝きながら昇っていく太陽。
今日に照らされる真っ白な雪。

ため息が出てしまうような素晴らしい世界観だ。

東京では、殆ど積もることはないけれど。
もしこの冬も、雪が降ったら、この詩を思い浮かべていたい。

知っているよ、という人も、是非。いま一度。↓↓

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「朝のリレー」    谷川俊太郎

カムチャッカの若者がきりんの夢をみているとき
メキシコの娘は朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女がほほえみながら寝返りをうつとき
ローマの少年は柱頭を染める朝陽にウインクする
この地球ではいつもどこかで朝がはじまっている

ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交替で地球を守る
眠る前のひととき耳を済ますと
どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴ってる

それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ
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