発見!今週のキラリ☆

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2010年4月 アーカイブ

vol.79 「飼う人の思惑、さまざま。」 by 藤田奈緒


4月のテーマ:どうぶつ

ミンティ.jpg

動物が好きか嫌いかと聞かれたら、たぶん好きだ。これまで特に強くそれを意識することはなかったのだけれど、仕事でアニマルプラネットの番組を多く担当するようになってみると、番組の中で語られる動物たちの素晴らしき生態に感動を覚えずにはいられない。というわけで、近頃の私は動物好きである。

とはいえ、もちろん無類の動物好きになったわけではない。昔から犬とか馬とか、ふさふさと毛の生えている動物が好きだ。海より陸、ぬめっとした生き物はどちらかというと苦手...。

少し前までアニマルプラネットで放送していた「オースティンの大冒険」という番組をご存知だろうか? 爬虫類学者、写真家、冒険家、と様々な顔を持つオースティン・スティーブンスというおじさんが、世界中のあらゆる場所を旅して野生動物と触れ合う番組なのだが、このオースティンは大のヘビ好き。旅の途中でヘビを目撃すると、本来の目的を忘れてヘビのもとへすっ飛んで行ってしまう。仕事なんてそっちのけ、鼻息を荒くしながらヘビとたわむれるその姿は、まさにヘビ界のムツゴロウだ。毛のある動物好きな私からしたら信じられないほどのはしゃぎっぷりだが、人の好みは千差万別、きっと彼には彼なりの理由があってヘビを愛しているのだろう。

ところでペットを飼う時、多くの人はそのペットに名前をつける。友人のペットの名前も、大抵はその命名背景が想像できるものが多い。例えば足先だけが白いのでソックスとか、鳴き声からミーちゃんなど。
私自身、夏祭りの夜店で毎年買っていた金魚こそ名前をつけなかったものの(どれも同じに見えて区別がつかなかったし、鯉に食べられたりと短命の傾向にあったため)、その後飼った鳥やハムスター、犬には名前をつけてきた。「小公女セーラ」からネズミの「ネル」、ミヒャエル・エンデの「時間どろぼう~」の主人公「モモ」といった調子で、その時、自分の中でブームのテレビや小説の影響を受けての命名が多かったと記憶している。

「時間どろぼう」のモモ(柴犬、メス)を連れて、近所の緑道を散歩していた時のこと。長く長く続くその緑道にはほかにひと気はなく、先を走るモモが枯葉を踏むシャクシャクという音しか聞こえてこない。ひたすらモモを追いかけ走っていたその時、後ろから誰かを呼ぶおばさんの声が。

「なおちゃん、どこへ行くの。ちょっと待ちなさい、なおちゃん!」

えっ、私ですか!? 知らないおばさんが私を追いかけている...。足を止めたら捕まってしまうかも!

迫り来る恐怖に怯えながら走り続けていると、足元でハアハアという息遣いがする。目をやるとそこには小さなダックフンド。そしてその後ろから声の主のおばさんが登場した。「なおちゃん」とはそのダックスフンドの名前だったのだ。なんて紛らわしい!! 10歳の私を震撼させた恐怖の思い出である。

教訓、ペットには明らかにペットらしい名前をつけるべし。

vol.80 「カメとプレステと私」 by 杉田洋子


4月のテーマ:どうぶつ
kame 003.jpg いわゆる動物好きの人に比べ、私と動物との接点は薄い。 前回の奈緒さんとは逆のタイプで、 特に毛の生えた動物となると、すっかり疎遠な人生である。

しかしそんな私にも、自身のアイコン*となるほど愛する動物がいる。
カメである。

カメとのファーストコンタクトは、確か中学2年の頃...。
我が家では数年来、子供たちが"犬や猫を買いたい!"と親に訴える日々が続いていた。
しかし、"大きな動物は死んだ時につらい"、という理由(今思えば小さな動物
に失礼な話だ)から、
その要求はもろくも却下され、姉弟は連敗の一途をたどったのである。
そんなある日、近所の祭りに出かけた父と弟が、ビニール袋をぶら下げて帰ってきた。
中にはビール瓶のふたほどの甲羅を背負った、小さなミドリガメが4匹。

むろん、私と妹の第一声は、"何でカメなのーーーー!!??"だった。
犬や猫が飼いたいのに、どうしてウロコのカメなのか。

"愛せない、、、きっと愛せない"

そんな思いが頭を巡った。

とはいえ、せっかく我が家に加わった、新たな仲間である。
これから同じ屋根の下で一緒に生活していかねばならない。

"好きにならねば...!"

そう思い直した私は、時間があれば水槽をのぞいた。

小さなカメの子供たち...。
kame 002.jpg
よく見ていると、あくびをしたり、目をこすったり、
餌をねだってジタバタしたり、まだ子供なのに手を震わせて求愛のポーズをしてみたり...
何時間見てても飽きない。私のLOVEゲージは、急速に満たされていった。

"何て愛くるしいんだ~~~~!!!!!"

以来、高校の受験勉強もほっぽり出して、カメと戯れる毎日が続いた。
朝起きてカメに挨拶し、エサの箱をちらつかせてはフェイントしてからかい、
昼間には水槽から出して日向ぼっこさせ、夜には寝顔をしばらく眺めてから
床に就いた。
一緒に布団に入ったこともある。頬ずりしてて鼻をかまれたこともある。

そんな初代カメたちも成長し、随分と大きくなった。
小さなカメにも恋しさを覚えた我々は、新メンバーの投入に踏み切ることにした。
久々に目にする小さなカメ。そのあまりの可愛さに、私たちはシェルと名付け、
いじめられないよう小さな別荘をあてがって寵愛した。

ところがある日、強力なライバルが現れる。
プレイステーションである。
ゲーマーでもないのに、初めてのFFⅦにまんまとハマってしまった私は、
ますます受験勉強をほっぽりだしてゲームにふけった。
それに伴い、後ろの水槽を振り返る頻度は急速に降下する。
気づけば、30分に1回はのぞいていたのが、数時間に1回のペースに
落ち込んでいたのである。

そしてある冬の日の夕方、ついに悲劇が起きた。
その日も私は学校から戻ると、塾に行くまでの時間をFFⅦでつぶしていた。
没頭すること数時間。キリがついて後ろを振り返り、シェルの水槽に歩み寄ると...

!!!???

シェルが力なく目を閉じ、ふわふわと浮遊している。
しかも小さな鼻孔から、血のりのようなものが露出している...。

"まさか!まさか!!ウソだよね?"

慌てて水槽に手を突っ込む私。

"アツっ!!!"

...水槽の中はお湯だった。

カメは寒さに弱い。冬は冬眠させるか、ヒーターを入れて温度を保たねばならな
い。シェルの別荘にも、もちろんヒーターがついていた。
小さい水槽用にと買った、ちょっと安物のヒーター...。
そのサーモスタットが、ものの見事に故障したのである。
水温はぬるめの風呂ほどまであがり、シェルはのぼせて鼻血を出したのだ。

掌に載せ、ゆすっても突ついてみても、シェルはピクリともしない。
私がゲームなんかしてなければ...!!!
後悔の念が怒涛のように押し寄せる。
私はシェルの亡骸を抱えて泣き崩れた。

"ごめんね、ごめんね、、、、"

母に塾なんて行けないと訴え、いつも車で迎えに来てくれる塾友達の
お母さんにも、"今日は休むので結構です"、と力なくお断りした。

しかし、母は許さなかった。

"バカなこと言ってないで早く行きなさい!"

ぴしゃりと言われて、もうめそめそ泣いてもいられなくなった私は、
寒空の下、1人バスを待った。
追い打ちをかけるような吹雪に、
"さっき車に乗っとけばよかった"という煩悩が隠しきれない。
もう何もかも悲しくて仕方ない。
泣きはらした目で塾に到着し、上の空で授業を受ける。
途中何度も泣きそうになりながら、
家に戻ると小さな紙箱にシェルの亡骸をつめた。

それ以来、プレイステーション熱は次第に冷めてゆき、
大学受験の頃には留学を夢見て勉強に没頭するようになる。
そして上京し、初めての一人暮らしをすることになった私は、
相棒のカメを飼うことにした。
しかし、このカメとの間にさらなる試練が待ち受けいていようとは、
その時はまだ知る由もなく...。

キリがないので、その話はまたいつか別の機会に。
kame 001.jpg
*友達がくれる旅行土産の80%が、世界各地のカメグッズである。
陶器やガラスの置物、ぬいぐるみ、ボディウォッシュ、ピアス、などなど...