海岸沿いの短いトンネルをいくつか抜けると、電車は速度を落とし始めた。映画「グラン・ブルー」の舞台、タオルミーナに到着だ。シチリア島の北東部に位置するこの町へは、世界各国から観光客が訪れる。生い茂る木々の緑、青く透き通った海、そして新鮮な魚介をふんだんに使ったイタリア料理。ありとあらゆるものが旅人の五感を刺激する。
この町を訪れたら、ぜひ忘れずに食べたいのが、海の幸だ。ウニのパスタ、生牡蠣…。魚介類は苦手という人ですら、その固定観念を180度変えられてしまうほど美味しい。新鮮な素材には、嫌な臭みがないからだ。素材の素晴らしさに、イタリア人シェフの腕前が加われば、まさに鬼に金棒。海の見えるレストランで、最近流行りのスローフードと決め込みたい。
タオルミーナで海を楽しむなら、「カーポ・タオルミーナ」に泊まろう。このホテルには、「海」という階がある。「グラン・ブルー」の撮影で使われたのもこのフロアだ。エレベーターで「海」の階に到着すると、あたりは薄暗い。着いたところは、なんと洞窟の中。少し離れたところに出口の光が見えている。洞窟を抜けると、強い日差しのせいで一瞬何も見えない。やがて、白く見えた景色が、少しずつ青味を帯びていく。目の前に広がるのは、青く澄んだイオニア海だ。この階には、プライベート・ビーチの他に、プールやシャワーが用意されている。バールやレストランもある。晴れた日には、シチリア最高峰のエトナ山も顔を見せる。忙しく観光に出かけるのもいいが、一日中、こんな場所でのんびり過ごすのも最高の贅沢だ。
さて、太陽の国という言葉がよく似合うイタリアだが、実は今回の旅では、雨や曇りの日が多かった。天気が悪いと旅の楽しみも半減する。だが、連日の雨に悩まされたからこそ、晴れの日の素晴らしさを実感できたとも言えるだろう。日本の梅雨も、夏を楽しむための準備期間だと考えようか…。 |