長崎・JAZZフェスティバルでの感動の余韻に浸りつつ、九州を南下する列車の旅に出た。
現実逃避の旅だから、目的地は決めていない。仕事では日々頭を使ってる(つもり)だから、こんな時くらい行き当たりばったりでもいいよね。「途中下車の旅なんてちょっと素敵じゃない!?」、なんてウキウキしながら、「JR九州3日間フリーきっぷ」を購入した。これ、予想以上に便利なシステム!特急でもなんでも乗り放題だし、どこの駅でも乗り降り自由。佐賀でこの切符を差し出した駅員さんは、スタンプの数を見て「これいくら?えっ1万円?!やっしい(安い)なぁ」と一言。JRの職員も驚く、お得な切符なのだ。
鹿児島本線は右手に有明海を臨みつつ、熊本県から鹿児島県へと南下して行く。それにしても普段乗っている電車に比べて、ここを走る特急は清潔で居心地がいい。「かもめ」、「つばめ」というさわやかな名前に負けることなく、まるで六本木ヒルズのプレミアスクリーンを思わせるゆったりした座席も快適だ。しかし、何といっても感動的なのは車窓からの景色。これはため息ものである。熊本駅を通過してからも、電車は海沿いを延々と走り続ける。青い海と空、そこに透き通るような白を添えるかもめたち。緑豊かな雑木林の合間に、時折、民家が現れる。こんなパノラマは、なんだか贅沢すぎて、「この旅で神様が与えてくれた‘幸せのヒットポイント’を使い果たしてしまうんじゃないかな」と心配になってきた。そこで水俣市のちょっと南、薩摩の国・鹿児島県に入ったところの出水(いずみ)という小さな駅で一度下車することにした。この気まぐれな選択は、どう転ぶのか? 不安よりも期待に胸がふくらむ。
出水市はツルの越冬地としてよく知られている。シベリアから1万羽におよぶ冬の使者たちが飛来し、美しい舞が見られるそうだ。また、薩摩の玄関口であるこの町には、多くの武士が住んでいたという。明治初期に作られた武家屋敷をはじめ、当時の町並みを今も残している。なんとも浪漫にあふれる町だ。連なる古いお屋敷には、今も多くの人が暮らしているそうだ。武家屋敷の近くでランドセルを背負って駆け回る子供とすれ違った。どこかのお侍さんの子孫なのかもしれないなぁ。教科書でしか読んだことのない日本の歴史が、この町の人にとっては日常なんだ。
武家屋敷のいくつかは一般公開されている。そこには「語り部」と呼ばれるおじいさんが待機していて、訪れた観光客に町の歴史、屋敷の造りや調度品の由来、当時の教育制度などについて解説してくれるのだ。曰く、薩摩の藩主達は、「薩摩を守るのは城でなく人である」と考え、人材教育に力を注いだのだという。未来を担う武士の卵たちに、武士としての生活規範となる「掟」を諭し、その文言を座右の銘として、朝夕、朗読させたそうだ。
この「掟」がなかなか耳が痛い。こんな具合だ。
「士は節義を嗜み申すべく候。節義の嗜みと申すものは、口に偽りを言わず、身に私を構えず、心素直にして作法乱れず、(中略)下様の賎しき物語り悪口など話の端にも出さず、たとえ恥を知りて首刎ねらるヽとも、己が為すまじき事をせず、(略)又温和慈愛にして、物の哀れを知り人に情あるを以て節義の嗜みと申すもの也」。
私はこの文言のコピーを家の冷蔵庫に貼って、朝夕眺めることにした。
映画「ラスト
サムライ」が話題を呼んでいる。ハリウッドでは最近日本ブームみたいでうれしいよね。「ラスト・サムライ」の製作費は1億ドルとか。LAのロケ地には、障子、箪笥、扉などの骨董品が集められ日本の情景が再現されたそうだ。主演のトム・クルーズは、侍たちの武士道精神に触れて変わっていく心の変遷を演じる重要な役割を担っている。そう、きっとトム様も、自宅の冷蔵庫にコピーを貼っているに違いない。そして、アカデミー賞の呼び声も高い渡辺謙が演じる勝元は、ズバリご当地薩摩の西郷隆盛がモデルだ。
この映画、「語り部」のおじいさんにも観て欲しいなぁ。 (第3弾に続く)
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