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Mr.DOBASHI no テキサス映画通信

”Houston, we have a problem!(11)

Dobashi Shuichiro 土橋 秀一郎


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「…こうして私がナチスから逃れてようやくアメリカにたどりついたときの事です。移民局の係員に入国所を見せると、
「書類が1つ足りない」
と言うのです。私は絶望的な気分になりました。戻る国はないのです。やがて係員は私の顔を見ると、こう尋ねて来ました。
「君はアメリカで何をするつもりなのかね?」
私は答えました。
「映画を作るつもりです。」
係員はしばらく私の顔を見ると、
「それではいい映画を作りなさい」
そう言って、私の入国を許可してくれました。それ以来は、感謝の気持ちを込めて、出来る限りそれを実行してきました」

ビリー・ワイルダー。これはこの名監督中の名監督が、10年ほど前にアカデミー特別賞を受賞した時のスピーチの最後の部分で、アカデミー賞の長い歴史の中でも最も感動的な瞬間と言われています。当時私も、「アパートの鍵貸します」、「7年目の浮気」、「麗しのサブリナ」、「翼よあれがパリの灯だ」、「お熱いのがお好き」等々、宝石のような彼の作品群を支えてきたものを初めて知って、思わず涙したものでした。毎年アカデミー賞の季節になると必ずこのスピーチを思い出し、感慨にふけるのであります。

今回のアカデミー賞で多くのノミネートを受けたのは、「American Beauty」(8部門)、「The Insider」(7部門)、「The Cider House Rules」(7部門)、「The Green Mile」(4部門)ですが、ぜひ注目して欲しいのは助演男優賞です。「The Cider House Rules」で孤児達を養う堕胎医を演じたマイケル・ケインが有力ですが、このカテゴリーには「The Talented Mr. Ripley」の陽気なプレイボーイ、ジュード・ロウ、「The Green Mile」の不思議な力を持つ死刑囚、マイケル・クラーク・ダンカン、「The Sixth Sense」の天才子役、ハーレイ・ジョエル・オスメント、そして「Magnolia」(見てません)で既にゴールデン・グローブ賞を獲ったトム・クルーズと、ちょっとした充実ぶりです。それから個人的には作品賞で、「The Green Mile」が「American Beauty」をひっくり返すところが観たいですね。オスカーナイト(3月26日)を楽しみに待つことにしましょう。

今回のMovie Previewはその「American Beauty」、「The Cider House Rules」を含めた6本。採点をABC方式に変えたぞ、B以上がお薦めだ。

1. 「Forces of Nature」 B-

(主演:サンドラ・ブロック、ベン・アフレック)
これはようやくビデオで観た。「恋は嵐のように」の邦題名で日本でも昨年公開済み。ロマンティック・コメディの女王サンドラ・ブロックと、今や飛ぶ鳥をも落とす勢いのベン・”アルマゲドン”・アフレックの共演。自分の結婚式へ向かうアフレックの乗る飛行機がトラブル。隣の席にいたサンドラ・ブロックを助けたことから、自由奔放の彼女の魅力に惹き込まれていく。アフレックのわざとらしい堅物演技がおかしく、サンドラ・ブロックも決して悪くはないのだが、残念ながらこの2人にケミストリーは働かなかった。ブロックは「あなたが寝てる間に」のあの輝きを失ってしまいましたね。サンドラ・ブロックかベン・アフレックのファンならどうぞ。
(オフィシャルサイト:http://www.asylum.com/movies/f/forces_of_nature

2. 「The Beach」 C+

(主演:レオナルド・ディカプリオ、ティルダ・スウィントン、ロバート・カーライル)
「タイタニック」のあと、次作にアンチヒーローを選んだディカプリオはかしこい。もともと演技力はあるし、アイドルはもう卒業させてやって欲しい。だが、「今回は慎重に脚本を選んだ」と本人が言う割にはこの脚本は出来が悪い。一人旅のディカプリオは、バンコックの怪しげな雰囲気の中で、狂言回しのロバート・カーライルから、現代のユートピア「The Beach」の場所を教えられ、その謎に引き込まれて行く。この導入部はワクワクさせる。しかし、その後は謎が解けるたびにサスペンスが緩む。次の展開への期待がわいてこない。これはマズい、脚本家の責任。と言う訳で、2000年期待作の1本目はスカでした。
ところでStar Warsの次作でジョージ・ルーカスからアナキン・スカイウォーカー役をオファーされているディカプリオ。「脚本を見てから決める」と言っているそうだが、ちょっと勘弁して欲しい。
(オフィシャルサイト:http://www.thebeachmovie.com/

3. 「The Cider House Rules」 A-

(主演:トビー・マグワイア、マイケル・ケイン、シャーリズ・セロン)
ジョン・アービングの原作を本人が脚色したこの作品は、アカデミー作品・監督と共に脚本賞にもノミネートされている。心臓の悪い孤児の主人公(トビー・マグワイア)が、長年育てられた居心地の良い住処を離れ、初めて外の世界を経験する。彼にとってのそれは、「The Cider House」(りんごを収穫する季節労働者の仮住まい)であった。彼はそこで何を見つけたのか?今回の作品賞候補の中では一番まっとうな作品、ほっとする。前述した通り、本作のマイケル・ケインは絶品で、これだけでも観る価値がある。さらに期待の新星トビー・マグワイアのすっとぼけ演技が新鮮。とにかくいい味があります、この人。当面注目したいね。後述の「Wonder Boys」でも大活躍するぞ。
(オフィシャルサイト:http://www.miramax1999.com/ciderhouse

4. 「American Beauty」 B

(主演:ケビン・スペイシー、アネット・ベニング)
オスカーを荒稼ぎしそうな勢いのこの作品、とにかく評判が良い。主演の2人も揃って今回のノミネートを受けた。ただ、われわれ日本人にはちょっとこの作品の本当の面白さは分からないんだと思う。監督のサム・メンデスが、中流アメリカ人家庭の日常の奥底に潜む恥部をつまみ出し、増幅し、これでもかとばかりスクリーンに大写しにしたのだが、恐るべきはケビン・スペイシー。彼がこの作品をものの見事にワンランク上のダーク・コメディに仕上げてしまった。アメリカ人にとっては、この作品は多分恐いくらい面白いんでしょうね。そういう意味では、傑作なのかもしれませんが。
(オフィシャルサイト:www.amazon.com/americanbeauty

5. 「Reindeer Games」 B-

(主演:ベン・アフレック、ゲイリー・シニーズ、シャーリズ・セロン)
「Ronin」でちょっと元気が戻って来たジョン・フランケンハイマー監督の新作は、かなりひねりの効いたプロットを持つクライム・ストーリー。題名に引っかけてある通り、もともとクリスマス公開を狙った作品なので、ちょっと季節外れの雰囲気が漂う。出所した詐欺師のベン・アフレックは、獄中で死んだ友人を装って彼の美しいペンパル(シャーリズ・セロン)と行動を共にする。しかし彼女には恐ろしい犯罪者の兄(ゲイリー・シニーズ)がいて…。ゲイリー・シニーズを筆頭に、このキャストはちょっと魅力的。ベン・アフレックの適度なユーモアとしたたかさが作品にフィットしているし、シャーリズ・セロンも「The Cider House Rules」の添え物的な役柄とは違う。だがしかし、このプロットはちょっと無理だろう!それとも(何のことか分からないでしょうが)いっそコメディにしてもう一回ひっくり返してしまうという手はあるな。
(オフィシャルサイト:http://www.reindeergames-themovie.com/

6. 「Wonder Boys」 B+

(主演:マイケル・ダグラス、トビー・マグワイア、ロバート・ダウニーJr)
これは万人向きではないが、不思議な魅力のある作品。マイケル・ダグラスは過去の作品群と全く違ったオフビートな役柄で、文学の教師兼元ベストセラー作家。マリファナ中毒で2000ページ以上の次作を書き続けているが、話を終えられない。そのホモっぽいマネージャーがロバート・ダウニーJr。さらにマイケル・ダグラスを師と仰ぐ、少しあぶない文学青年がトビー・マグワイア。特に芯となるストーリーがある訳ではない。だが主人公3人の異常な日常をテンポ良く描く本作は、ちょっと得がたい味がある。何と言うか、自由業がうらやましくなる感じ。マイケル・ダグラスの毛糸の帽子+老眼鏡+バスローブ姿は妙におかしく、トビー・マグワイアは再びすっとぼけ演技を披露。ロバート・ダウニーJrは相変わらず才能の固まりぶりを発揮(この人はクスリの悪癖さえなければ、とっくにオスカー・ウィナーのはず)。でも、これを観に行くのは映画好きだけでしょうね、やっぱり。
(オフィシャルサイト:http://www.wonderboysmovie.com/

うーむ、今回誉めたのは「The Cider House Rules」と「Wonder Boys」か。ちょっと暗いぞ。私は基本的にはスマートなストーリーのアクション物が好きなのだが……。
さて次回は上半期期待のSF大作「Mission to Mars」(ゲイリー・シニーズ、ティム・ロビンス)、ジュリア・ロバーツの魅力爆発「Erin Brockvich」、トミー・リー・ジョーンズ&サミュエル・ジャクソンのミリタリー・スリラー「Rules of Engagement」などなどを紹介する予定だ。

最後におまけで今回登場した俳優たちのアカデミー賞経験を書いておく。記憶に頼っているので(資料は日本に置いてきてしまった)間違っていたらゴメンね。

・ビリー・ワイルダー: 「アパートの鍵貸します」他で監督賞・脚本賞受賞。
・トム・クルーズ: 「7月4日に生まれて」、「ザ・エージェント」で主演賞ノミネート。今回「Magnolia」で助演賞ノミネート。
・ベン・アフレック: マット・デイモンと共作した「グッドウィル・ハンティング」の脚本で脚本賞受賞。
・レオナルド・ディカプリオ: 「ギルバート・グレイプ」で助演賞ノミネート。・マイケル・ケイン: 「ハンナとその姉妹」で助演賞受賞。「探偵スルース」他でノミネート多数。
・ケビン・スペイシー: 「ユージュアル・サスペクツ」で助演賞受賞。今回「American Beauty」で主演賞ノミネート。
・アネット・ベニング: 今回「American Beauty」で主演賞ノミネート。
・ゲイリー・シニーズ: 「フォレスト・ガンプ」で助演賞ノミネート。
・マイケル・ダグラス: 「ウォール街」で主演賞、「カッコーの巣の上で」で作品賞(製作者)受賞。
・ロバート・ダウニーJr: 「チャップリン」で主演賞ノミネート。
・ジュリア・ロバーツ: 「プリティ・ウーマン」で主演賞ノミネート。
・トミー・リー・ジョーンズ: 「逃亡者」で助演賞受賞。
・サミュエル・L・ジャクソン: 「パルプ・フィクション」で助演賞ノミネート。