最近ダニー・ガンズというアメリカの物まね名人のビデオを観た。これが桁外れに上手い。ロッド・スチュアート、ビリー・ジョエル、マイケル・ジャクソン、メル・トーメ、フランク・シナトラ、フリオ・イグレシアス、ナット・キング・コール&ナタリー・コール、サミー・デイビス・ジュニア、エルビス・プレスリー、トニー・ベネット、ルイ・アームストロングといった古今の歌手に加えて、「セント・オブ・ウーマン」のアル・パチーノ、「フォレスト・ガンプ」のトム・ハンクス、「黄昏」のヘンリー・フォンダとキャサリン・ヘップバーン、「刑事コロンボ」のピーター・フォーク等々質量ともちょっと他に類を見ない凄さだ。ダニー・ガンズのショーは現在ラスベガスのミラージュ・ホテルで観られるので、ラスベガスへ行く予定がある人に是非お薦めしたい。この30分のダイジェスト版ビデオはミラージュのギフトショップで$18.99だ。
さて、11月に入って各映画会社の気合いの入った作品が続々公開されている。しかも最近はネットで予約が出来る劇場が増えてきたので、金曜の夜でも気軽に観に行ける。ThanksgivingやX'masを間近に控えたこの季節は、人々の心も浮き立っている。
1. 「Billy Elliot」 A-
(出演: ジェイミー・ベル、ジュリー・ウォルターズ、ゲイリー・ルイス)
本国イギリスでは「フル・モンティ」以来の記録的ヒットとなった愛すべき小品で、ここヒューストンでも限定公開から拡大公開に変わった。北イングランドの貧しい炭坑夫の末っ子ビリー。彼はバレエの素晴らしさに魅入られ、厳格な父親に隠れて練習を続ける。この炭坑しかない保守的な小さな町で、息子がボクシングやサッカーでなくバレエをやるということは、父親(母親は死んでいる)は物笑いの種になる。この状況設定は効いている。ジェイミー・ベルはまるでこの役のために生まれて来たようで、スタント無しで生き生きとビリーを演じている。さらに絵に描いたような頑固親父を演ずるゲイリー・ルイスと、ビリーの天性の表現力を見抜く粗雑だが優しい教師のジュリー・ウォルターズがいい味だ。そしてビリーは夢に見るロイヤルバレエ団の入学試験へ挑戦するが…。ハリウッド大作の合間に、こういう作品を観ると心が洗われる思いだ。ただこの北イングランドの人たちの英語は難しい。
(オフィシャルサイト: http://www.billyelliot.com/)
2. 「Lucky Numbers」 C+
(出演: ジョン・トラボルタ、リサ・クドロゥ)
前作「Battlefield Earth」が酷い出来だったトラボルタだが、残念ながらこの作品で名誉挽回とは行かなかった。トラボルタはローカルTV局の人気ウェザーマンだが、私生活では破産寸前。そこで思いついたのが、宝くじ抽選番組のコンパニオンをしている愛人(リサ・クドロゥ)と組んで、当選番号を仕組むこと。ところが詐欺の計画はやがて殺人事件に発展して、2人の立場も益々悪くなっていく。ドナルド・E・ウェストレイク調のクライム・コメディなのだが、どうにもテンポが悪い。リサ・クドロゥはどう転んでも「フレンズ」のフィービーより面白くなりようがないし、最近はトラボルタの顔にも飽きてしまった。クエンティン・タランティーノ(「パルプ・フィクション」)のおかげで奇跡的なカムバックを遂げてから暫くたつが、次作「Swordfish」(ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリーと共演)辺りで1本当てとかないと後がないぞ、トラボルタ。
(オフィシャルサイト: http://www.luckynumbersmovie.com/)
3. 「Legend of Bagger Vance」
B+
(出演: ウィル・スミス、マット・デイモン、チャーリス・セロン)
ロバート・レッドフォード監督の最新作。監督をやる俳優というのは数多くいるが、この中で監督だけで食っていけるのは、ウォーレン・ベィティ、レッドフォード、クリント・イーストウッド、ウディ・アレンくらいか。今や名匠と言ってもいいのではないか。監督としてレッドフォードが凄いと思うのは、駄作がないこと。それと映像がきれいなこと。で、本作もその例に漏れずジョージア州サバナを舞台にした美しい佳作に仕上がった。かつては将来を嘱望されたゴルファーだったが、南北戦争後のトラウマで今は落ちぶれたギャンブラー、ジュナーがマット・デイモン。どこからともなく現われて人生を説きながらジュナーのキャディーをつとめるタイトルロール、バガー・ヴァンスにウィル・スミス。このキャスティングは良い。特に前半の落ちぶれたマット・デイモンは結構渋いし(後半はいつもの普通のお兄さんに戻るが)、ウィル・スミスはとぼけてはいるが今回はちゃんと俳優らしく見える(この人もともとはグラミー賞受賞のラッパーですからね)。チャーリス・セロンはジュナーの元恋人。で、ジュナーはボビー・ジョーンズとウォルター・ヘイガンという2人の伝説的なプロゴルファーを招いてのエキジビジョン・マッチで、地元代表としてカムバックを賭ける。「フィールド・オブ・ドリームズ」と「ナチュラル」(奇しくもレッドフォードが主演)を足して2で割ったような良く出来たファンタジーで、ゆったりとした気分で風呂に入っているような安心感がある。唯一気になるのはマット・デイモンのスイングがあまり上手く見えない点だ。
(オフィシャルサイト: http://www.cannery.com/thelegendofbaggervance)
4. 「Charlie's Angels」 A-
(出演: キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リュー、ビル・マーレイ)
世界中が熱狂したTVシリーズがアクション・コメディとして復活、全米3日間で4千万ドル以上を稼ぎ出すスマッシュヒットとなった。最近のアクション物ではピカ一の出来栄え。「メリーに首ったけ」でブレイクしたキャメロン・ディアス、「ウェディング・シンガー」でキュートなところを見せたドリュー・バリモア、最近「アリー・マクビール」に加わったルシー・リューの3人の「エンジェル」が、コンピューターソフトの社長の誘拐犯グループを相手に、銃を持たずに変装とマーシャルアーツを駆使して縦横無尽の活躍をする。ディアスは今時珍しい「健康的なお色気」(死語か)を振りまき振りまき元気いっぱい。しかも「マトリックス」の特撮監督を起用したため、例の「Gravity
defying kick」(と言うらしい)がやたら炸裂する。このエンジェル3人のキャスティングはちょっとどうかと思っていたが、チームワーク抜群な上にケミストリーが働いたようで、すっきりスクリーンに納まった。それから嬉しいのがエンジェルに敵対する変態的なヒットマンを演じるクリスピン・グローバーの復活。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でマイケル・J・フォックスの父親を演ったおかしな俳優といえば思い出す人も多いはず。モズレー役のビル・マーレイもいいぞ。懐かしいテーマソングとジョン・フォーサイスのチャーリーもオリジナル通りで、1秒も飽きさせないエンターテインメントの見本のような作品。続編が作られるのはまず間違いない。ちなみに私ならシンディー・クロフォード、キャメロン・ディアス、ハル・ベリーをキャスティングしたいが、いかが。
(オフィシャルサイト: http://www.spe.sony.com/movies/charliesangels)
5. 「Men of Honor」 A-
(出演: ロバート・デ・ニーロ、キューバ・グッディング・Jr、チャーリス・セロン)
これも凄い。掛け値なし、アカデミー賞ウィナー同士の演技合戦だ。50年代後半。キューバ・グッディング・Jrが演じるのは、実在のアメリカ海軍初の黒人マスターダイバー、カール・ブラッシアー。このいわば海軍のジャッキー・ロビンソンが、人種差別と事故による障害を克服していく半生が描かれる。キューバはアカデミー賞助演賞に輝いた「ザ・エージェント」以後、初めてまともな仕事をした。で、ブラッシアーの鬼のような上官で、かつての伝説的ダイバー、ビリー・サンディがロバート・デ・ニーロ。生涯最高の演技とは言わないが、有り余る才能を持ちながら屈折した自己破壊的な性格で昇格と降格をくりかえすこのサンディ役は、デ・ニーロにぴったりだ。大ヒットしている「Meet
the Parents」のおかしな父親役の直後に本作を観ると、改めてこの希代の名優に脱帽せざるを得ない。よく使われる「Terrific
Performance」とはこういうものを言うのだ。監督のジョージ・ティルマン・Jrの演出はシンプルで全く無駄がなく、物語はただ荒れ狂う海だけを見せるクレジットタイトルで始まり(まるで東宝のマークだ)、最高の盛り上がりを見せる海軍公聴会で幕を閉じる。見るべし。
(オフィシャルサイト: http://www.menofhonor.com/)
6. 「Red Planet」 C
(出演: バル・キルマー、キャリー・アン・モス、トム・サイズモア)
「Mission to Mars」に続く「火星もの」だが、この程度の出来ではブームにはなり得ない。人口増加と環境破壊で地球の滅亡が迫る中(これ意外に理由はないのか?)、第2の地球を火星に求めて、バル・キルマー(「ヒート」、「トゥームストーン」)、キャリー・アン・モス(「マトリックス」)、トム・サイズモア(「プライベート・ライアン」)等の一行が調査に向かう。が、不思議な事に火星の生態系は全く違うものになっていた。物語の焦点はこの謎解きがメインなのだが、真相に辿り着くプロセスは退屈、肝心のなぞ解きはお粗末の一言。昔のB級SF映画のようだ。主役3人はそれぞれ上昇株だが、この脚本ではいいとことろを見せようがなかった。巨額の製作費をかけたハードSFの失敗作というのは昔から枚挙にいとまがないが(「デューン砂の惑星」、「メテオ」、「ウォーター・ワールド」等々)、本作はその典型。4ドル50セントでも損したと思わせる作品だ。
(オフィシャルサイト: http://www.redplanetmovie.com/)
7. 「The Sixth Day」 B
(出演: アーノルド・シュワルツェネッガー、ロバート・デュバル)
ジェームズ・キャメロン監督と最後に組んだ「トゥルー・ライズ」以後、ヒット作に恵まれず苦脳が続くシュワルツェネッガーだが、これはそう悪くない。舞台は近未来。ある日ヘリコプター・パイロットのアダム・ギブソン(シュワルツェネッガー)が帰宅すると、何とそこには自分そっくりのクローンがいて、家族団欒をしているではないか。で、シュワちゃんは「I
Want My Life Back!」などとオーストリアなまりの分かり易い英語で怒りながら、非合法にクローン人間を製造する巨悪と対決する。この話、具体的には言えないが実は劇場で観ながら「いっそのこと大胆にこういう展開にしたら受けるだろうな」と考えていたら、何とその通りになってしまって面白かった。ただ難点が2つ。1つはタイトルが悪いこと。聖書の「神は第6の日に人間を創造した」から来ているのだが、いかにもパンチがない。しかも昨年の超ヒット作「The
Sixth Sense」に似過ぎている。もう1点は舞台設定。クローン人間を扱うので近未来という設定は避けられないのだろうが、これが実は一番難しい。自動運転のミニバン、プロペラ収納式のジェットヘリコプター、レーザー銃、バーチャル・ガールフレンドなどが出てくるのだが、それ以外の服装とか髪型とか建物とかは現在のまま。だからこれらの小道具が浮いてしまい、チープな印象がどうしても残ってしまうのだ。まあ下世話なユーモアもけっこう笑わせるしロバート・デュバルも見られるので、「ターミネーター」を期待しなければエンターテインメントとしては及第点か。
(オフィシャルサイト: http://www.spe.sony.com/movies/the6thday)
8. 「Dr. Seuss' How the Grinch
Stole Christmas」 C+
(出演: ジム・キャリー、モリー・シャノン、クリスティーン・バランスキー、ナレーター:アンソニー・ホプキンス)
ジム・キャリー主演ロン・ハワード監督(「コクーン」、「身代金」、「アポロ13」)の子供向けクリスマス・ストーリーの映画化だが、残念ながら大人も楽しめる作品とはならなかった。Grinch(ジム・キャリー)とは雪山で犬と一緒に孤独に暮らす緑色の雪男のような生き物で、村のクリスマスを壊しにやってくる嫌われ者。物語はGrinchがなぜクリスマスを憎むようになったか、そして1人の少女によって優しい心を持つようになるまでが語られる。おもちゃの国のような村の設定、一風変わった村の人々のメーキャップ、それにSFXはどれも完璧に見える。凝った着ぐるみ姿でダイナミックな動きを見せるジム・キャリーは見事だが、顔の見えない彼を98分間観続けるのはちょっときつい。子供が見る分には楽しくて心が暖まり申し分ないが、後述する「Rugrats
in Paris」や昨年の「Iron Giant」のように、大人の心をくすぐる部分がないからだ。でもこれこそがロン・ハワードの意図だったような気もするな。ハッピーエンディングも絵に描いたようだし。いずれにしろ公開3日間で5千万ドル以上を稼ぎ、彼のクレジットはまだ当面安泰だ。
(オフィシャルサイト: http://www.meanone.com/)
9. 「Rugrats in Paris : the
Movie」 B+
(出演: チャッキー、トミー、ウィル、リル、アンジェリカ)
これは思わぬ収穫だった。アメリカのケーブルチャンネルの一つNickelodeonの「Rugrats」は、赤ん坊と3歳児の視点から現実を描いた人気アニメで10年近く続いている。98年の映画化第1作「The
Rugrats Movie」は全米で1億ドルを越える大ヒットとなり、本作はその第2弾。前作以上に評判が良いので無理矢理子供を連れて観に行ったが、実に面白い。物語は「ゴッドファーザー」のパロディで始まり、子供特有のギャグ(ゲロとかそういったもの)が頻出するが、ストーリーは意外にしっかりしている。今回は旅行先のパリでアミューズメント・パークのプリンセスを新しい母親に夢見るチャッキーのけなげな姿と(彼は片親なのだ)、ある事情があってチャッキーの父親との政略結婚を謀るそのアミューズメント・パークの恐ろしい女社長ココの策略が錯綜する。また、ココの声をスーザン・サランドンが、その右腕のジャン・クロードをジョン・リスゴーが担当しているのも贅沢だ。ビデオが出たら騙されたと思って借りて見よう。
(オフィシャルサイト: http://www.nick.com/all_nick/movies/rugrats_paris)
10. 「Bounce」 B-
(出演: ベン・アフレック、グウィネス・パルトロウ)
撮影中に主演の2人が恋人同士になったことでも話題になったかなり真面目なラブストーリーだが、作品自体は凡作以下だ。プレイボーイの広告宣伝マン、バディ(ベン・アフレック)は、空港の近くのホテルで女の子と一晩過ごすために、自分の航空券をバーで知り合った見ず知らずの男にあげてしまう。そしてバディの乗るはずだった飛行機が墜落。罪の意識が拭い切れないバディが、チケットをやった男の未亡人アビィ(グウィネス・パルトロウ)を経済的に援助しているうちに2人は恋に落ちて…。佳作「Return
to Me」に似たようなシチュエーションなのだが、この映画は主演2人に魅力が感じられないことが致命的なのだ。パルトロウはともかくアフレックは精彩がない。また、この手の映画に欠かせない達者な脇役も不在だ。
(オフィシャルサイト: http://www.miramax.com/bounce)
11. 「Unbreakable」 B+
(出演: ブルース・ウィリス、サミュエル・L・ジャクソン、ロビン・ライト・ペン)
多少過大評価された「The Sixth Sense」が全世界で実に6億ドルの興行収益をあげたM・ナイト・シヤマラン監督。満を持しての本作は前作同様脚本・監督を担当し、主演にもブルース・ウィリスを起用。ウィリスが扮するのは悲惨な列車脱線事故での唯一の生存者、デヴィッド。彼に付きまとう怪しげなコミックブック・コレクター、イライジャがサミュエル・L・ジャクソン。イライジャはデヴィッドと逆に、生まれながらの障害者だ。ストーリーは言わないが、結論としてこの作品は前作よりずっといい。何故か?「The
Sixth Sense」の最大の欠点は、例のあっと驚くラストに到る過程が退屈なことだった。極論すれば、ラストのどんでん返し以外は何もなかった。だが本作は、冒頭からラストまで謎と緊迫感が持続するのだ。そしてこの作品にもSurprise
Endingが用意されているが、手がかりはほとんど示されないのでちょっと予想できない。もし本作が前作の焼き直しだという評論家がいたらそれは読み違いだ。「推理小説」としては「The
Sixth Sense」の方が良く出来ているし手がかりの出し方もフェアだが、映画としては本作のエンディングの方が効いているし、何より話自体が面白い。前作のようなブームにはならないだろうが、この監督は確固たるスタイルを持っているので次作も楽しみになってきた。
(オフィシャルサイト: http://www.areyouunbreakable.com/)
まだまだこれからグレン・クローズの「102 Dalmatians」、トム・ハンクスの「CastAway」、メル・ギブソンの「What
Women Want」、マイケル・ダグラス、キャサリン・ゼタ・ジョーンズの「Traffic」、ラッセル・クロウ、メグ・ライアンの「Proof
of Life」、ニコラス・ケイジの「The Family Man」、ショーン・コネリーの「Finding Forrester」、ジャック・ニコルソンの「The
Pledge」、クリス・オドネル、スコット・グレンの「Vertical Limit」、チョウ・ユンファ、ミシェル・ヨーの「Crouching
Tiger, Hidden Dragon」、サンドラ・ブロックの「Miss Congeniality」、ケビン・コスナーの「Thirteen
Days」、ディズニーの「The Emperor's New Groove」、マット・デイモンの「All the Pretty
Horses」などの公開が控えている。うかつに風邪もひけないぞ。