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Mr.DOBASHI no テキサス映画通信

”Houston, we have a problem!(23)

Dobashi Shuichiro 土橋 秀一郎


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3月25日のオスカーナイトは「意外な結末」はなかったものの、スティーブ・マーティンの名司会のおかげで大いに楽しめた。ビリー・クリスタルより洗練されていて、しかも毒がある。やはりこの人ハリウッドきっての才人だ。この夜一番の肴にされたラッセル・クロウの不機嫌さも、主演男優賞の受賞ですっかり解消されていた。

オスカーナイトが終わると2001年もほとんど4分の1が過ぎているのだが、凡作オンパレードの中で、4月に入って凄い作品が登場した。クリストファー・ノーラン監督・脚本の「Memento」だ。今回はこの「Memento」を含む9本の紹介だ。



1. 「The Mexican」 B+
(出演: ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、ジェイムズ・ガンドルフィーニ)

ブラッド・ピットとジュリア・ロバーツに、HBOの超人気TVシリーズTheSopranos」のジェイムズ・ガンドルフィーニを加えた最高のキャストで送るアクション・コメディの佳作。「The Mexican」とはメキシコに伝わる歴史的な拳銃の名前で、マフィアの使いっ走りのジェリー(ブラッド・ピット)がこの拳銃を無くしたことから、恋人サム(ジュリア・ロバーツ)がヒットマンたちから狙われる羽目になる。ブラッド・ピットは思いのほかユーモアのセンスがあり、不幸のかたまりのようなジェリーを達者に演じていて、ジュリア・ロバーツのパートナーとしては適役。ガンドルフィーニも出世役のトニー・ソプラノと同じマフィアの役柄ながら、今回はゲイのヒットマンとしてとぼけた味を出していて実に楽しい。ジーン・ハックマンもカメオ出演している。
(オフィシャルサイト: http://themexican.dreamworks.com

2. 「15 Minutes」 B
(出演: ロバート・デ・ニーロ、エドワード・バーンズ、ケルシー・グラマー)

自分たちの暴力犯罪をビデオに記録する切れまくったロシア人とチェコ人のコンビを巡って、そのビデオを高額で買い取り放映するTVプロデューサー(NBCの人気コメディー「Frasier」のケルシー・グラマー)、NYの花形刑事(ロバート・デ・ニーロ)、良心的な消防局捜査官(「プライベート・ライアン」のエドワード・バーンズ)が錯綜する、NYを舞台にしたバイオレンスアクション。R指定の王道を行くような増幅された暴力描写と、メディアに対する痛烈なサタイアは本作の持ち味なのだが、どっちつかずの印象だ。むしろその見返りに失った臨場感のツケが大きく、アクション映画としての面白さは半減してしまった。好き勝手を言えば、デ・ニーロを傲慢TVプロデューサーに据えて、「Wag the Dog」張りにアメリカメディアのエゴを徹底的に風刺した方が面白かったと思うのだが。
(オフィシャルサイト: http://www.15minutesmovie.com

3. 「Enemy at the Gates」 A-
(出演: ジュード・ロウ、エド・ハリス、ジョゼフ・フィエンズ、レイチェル・ワイズ)

なぜか今年立て続けに公開される「第2次世界大戦もの」の第1作は、実話をベースにロシアとナチスドイツのスナイパー2人を描く快作だ。スターリングラードの攻防戦下、ロシアの広報担当将校(「恋に落ちたシェイクスピア」のジョゼフ・フィエンズ)が、一撃必殺の腕を持つ新兵(「Talented Mr. Reply」のジュード・ロウ)の活躍を目の当たりにしたことから、彼はロシアの救世主として英雄に祭り上げられる。これに対してヒットラーは、その英雄抹殺のためにナチス最高の狙撃手(エド・ハリス)をスターリングラードへ送り込む。毎日黙々と狙撃を続ける天才スナイパー、ジュード・ロウと、着々と罠を仕掛けて獲物を待つ老獪なエド・ハリスの対決は実にスリリング。平行して描かれるジュード・ロウ、ジョゼフ・フィエンズ、レイチェル・ワイズ(「ハムナプトラ」)を巡る三角関係は煩わしく、サスペンスを分断してしまう点が残念だが、2001年度初のAランク作品だ。
(オフィシャルサイト: http://www.enemyatthegatesmovie.com

4. 「Exit Wounds」 B-
(出演: スティーブン・セガール、DMX、イザイア・ワシントン)

'97年の「Fire Down Below」以来のS.セガールの新作。本作ではポニーテールを切って、多少太り気味での登場だったが、懸念していた通りアクションにいつもの切れが無い。はみ出し刑事から交通巡査へ降格されたセガールが、黒人ギャングの親玉(人気ミュージシャンのDMX)と組んで腐敗警官を一掃するという話自体は悪くない。だが「痛み感」を伴う切れのあるアクションと、無敵の強さが身上のセガールが、意識的にかなりダメージを受けたり、コミックリリーフ的な場面を組んで新規さを狙った本作は機能していない。セガールやチャック・ノリスの作品は基本的に「水戸黄門」でなければならず、あまり余計なことはして欲しくなかった。要は「この印篭が目に入らぬか」とばかりに、いつも通り強い悪玉を華麗に危なげなく倒してくれれば良かったのだが。興行収入の方はDMX人気も手伝ってか公開1週目にボックスオフィス1位に入った。また出演は少ないがセガールの上司役のイザイア・ワシントンが大変美しい。
(オフィシャルサイト: http://www.exitwounds.net

5. 「Pollock」 B
(出演: エド・ハリス、マルシア・ゲイ・ハーデン)

主演2人が揃ってアカデミー賞にノミネートされた(マルシア・ゲイ・ハーデンは見事に助演女優賞を獲得)本作は、実在の天才画家ジャクソン・ポロックの波乱の生涯を描く。監督も務めるエド・ハリスが10年かかって製作までこぎつけただけあって、実際に大きなキャンバスを相手に筆を振るい、時に精神障害を引き起こすハリスの熱演はまさに圧巻の一言。オスカーを獲ったラッセル・クロウには悪いが、事実上のウィナーはエド・ハリスといってもいい。ただし内容が内容だけに作品は暗く、テンポは遅く、正直言って映画としては退屈と言わざるを得ない。エンターテインメント重視の人は敬遠した方がいい。
(オフィシャルサイト: http://sonyclassics.com/pollock

6. 「Heartbreakers」 B
(出演: シガーニー・ウィーバー、ジェニファー・ラヴ・ヒューイット、ジェイスン・リー、ジーン・ハックマン、レイ・リオッタ)

シガーニー・ウィーバーと「ラスト・サマー」のジェニファー・ラヴ・ヒューイットが母娘の詐欺チームに扮して、色仕掛けで次々と男たちから金を巻き上げていくコメディー。騙されるレイ・リオッタやジーン・ハックマンも含めて役者は揃い、前半はそれなりに楽しませる。特にチェーンスモーカーの大金持ちを演じるジーン・ハックマンの間抜けぶりは最高におかしいし、ツッパリ気味のジェニファー・ラヴ・ヒューイットはチャーミングだ。しかし結婚詐欺のスキームがワンパターンで工夫が無いことと、後半に入ると物語がヒューイットとジェイスン・リーのラブ・ストーリーに終始してしまい、肩透かしを食らう。入り口と出口が違っているようで、映画としてのまとまりを欠いてしまった。
(オフィシャルサイト: http://www.mgm.com/heartbreakers

7. 「Someone Like You」 B
(出演: アシュレイ・ジャド、ヒュー・ジャックマン、グレッグ・キニア、エレン
・バーキン、マリサ・トメイ)

実に魅力的なキャストを揃えたものの、興醒めなストーリーのために凡作に終わったロマンティック・コメディ。ローカルテレビ局に勤めるジェーン(アシュレイ・ジャド)は、同僚(グレッグ・キニア)との不倫関係が終わった後に、「男の心変わりに関する理論("The New Cow Theory")」を考える。これが雑誌社に勤める親友(マリサ・トメイ)の目に留まり、記事になったことからジェーンの人生が変わって行くのだが…。ジェーンを励ます女たらしの同僚がヒュー・ジャックマン(「X-Men」のウォルベリン)。問題は2つ。1つは再三言及される"The New Cow Theory"(男は次々に新しい相手を求めて、最後は初めの女性に戻って来る云々…)がこの上なく退屈なこと。もう1つは誰がどう見たって、グレッグ・キニアよりヒュー・ジャックマンの方が数段格好良く、アシュレイ・ジャドがグレッグ・キニアと恋に落ちるのが不自然な点。でもアシュレイ・ジャドは大変魅力的なので、おまけのBとした。
(オフィシャルサイト: http://www.someonelikeyoumovie.com

8. 「Along Came a Spider」 B
(出演: モーガン・フリーマン、モニカ・ポッター、マイケル・ウィンコット)

「Kiss the Girls」(邦題名「コレクター」)に続くジェームズ・パタースン原作のアレックス・クロス物の2作目(原作では「Kiss the Girls」が第2作に当たる)。主人公の犯罪心理学者アレックス・クロスには前作同様モーガン・フリーマンが扮し、今回はFBI捜査官ジェジー(モニカ・ポッター)がパートナー。メインストーリーは上院議員の娘の誘拐なのだが、後半に入ると話が二転三転して飽きさせないし、モーガン・フリーマンもいつも通りの存在感を示している。だが基本的に無理なストーリー設定なので、真犯人の説得力に乏しい。意外な展開が脚本上周到に計算されていないので、思いつきのように感じる。観客に「騙された!」ではなく、「何で?おかしいじゃないか」と感じさせるようではミステリー映画としては失敗なのだ。しかも身代金の受取方法は「ダーティー・ハリー」と黒沢監督の「天国と地獄」のパクリとしか思えず、この2作を観ている人には興醒めだろう。今後も続けて欲しいシリーズだが、本作は感心しない。
(オフィシャルサイト: http://www.alongcameaspidermovie.com

9. 「Memento」 A
(出演: ガイ・ピアース、キャリー・アン・モス、ジョー・パントリアノ)

「L.A. コンフィデンシャル」のガイ・ピアースが迫真の演技を見せる、凝りに凝った心理サスペンスの傑作。ここヒューストンでは2館限定上映なのだが、車を飛ばして観に行った甲斐があった。保険調査員のレナード(ガイ・ピアース)は、妻のレイプ殺人犯との格闘で脳に損傷を負い、その夜以降の記憶が数分で消えてしまうようになる。彼の最後の記憶は目前で妻が息を引き取る瞬間で、その後は誰かに会っても、どこに行っても自分の記憶に長く留めておくことができない。この状況設定は秀逸で、レナードは後で何が起こったか推測できるように重要なことはすべて写真を撮り、裏にメモをつけている。更に、特に重要な事柄は忘れないうちに自分の体に刺青にしておく。そして復讐のため、独自に事件の調査を続けるのだ(彼は自分の記憶が消えるという記憶は残っている)。これだけでも一級のミステリーになりそうなものだが、その上構成が凄い。ストーリーはレナードの記憶の不特定な期間を行ったり来たりしながら進行し(ビル・マーレーの傑作コメディ「Groundhog Day」に似ている)、更に構成はレナードが犯人に復讐する場面から始まるいわゆる倒叙形式を取っている。しかもその犯人が真犯人かどうかはまた別の問題で、最後に全てが明らかにされる。とにかく複雑な設定で、118分間一瞬たりとも眼が離せずやたらつかれる映画だが、ストーリーと結末は見事に筋が通っており、感服した。共演は「マトリックス」のキャリー・アン・モスと「逃亡者」のジョー・パントリアノ。「探偵スルース」や「秘密殺人計画書」のように凝ったミステリー映画が好きな人には必見の1本だ。
(オフィシャルサイト: http://www.otnemem.com


さて、映画の方は5月25日公開の「Pearl Harbor」までこれといった作品が無さそうだが、MLBは始まったし、NBAもプレイオフ目前だ。「イチローがコビー・ブライアントと一緒にTonight Showにゲスト出演」なんてこともあり得ない事ではないぞ。