第53回エミー賞のノミネートが発表されたので、ドラマシリーズ部門とコメディシリーズ部門だけは押さえておこう(エミー賞には実に83のカテゴリーがあるので、とても細かくは紹介できない)。
ドラマシリーズ部門はマフィア一家の生活を描いてスマッシュヒットとなったHBOの「The Sopranos」が22部門で最多ノミネート。「The
Mexican」でいい味を出していたジェイムズ・ガンドルフィーニも当然主演男優賞候補だ。昨年の覇者で、マーティン・シーン扮する合衆国大統領とホワイトハウスを活写する「The
West Wing」は、18部門のノミネート。ドラマ部門10年連続ノミネートの新記録を作った法廷ドラマの最高峰「Law &
Order」も当然。更にこのカテゴリーの常連で、未だに驚異の視聴率とハイレベルを維持する「ER」、「The Practice」が続く。
コメディシリーズ部門は、チャーミングなデボラ・メッシングと2人のゲイ(エリック・マコーマック、ショーン・ハインズ)のアンサンブルが絶妙な「Will
and Grace」が12部門ノミネートでトップ。これにやはりHBO製作でサラ・ジェシカ・パーカーをスターダムにのし上げた「Sex
and the City」、主演のケルシー・グラマーが最近1エピソード(シーズンではない)160万ドルで契約した「Frasier」、「Everybody
LovesRaymond」、「Malcolm in the Middle」が競う。常連だった「Ally McBeal」が落ちたが、主演のキャリスタ・フロックハート、助演のロバート・ダウニー・Jr.、ピーター・マクニコルはそれぞれノミネートされている。
授賞式の模様は9月16日に放送される。質の高いアメリカのテレビドラマ/コメディの全貌が掴めるので、映像翻訳に興味がある人は何とかCSかケーブルでチェックしておき
たいところ。
それではサマームービー第2弾の7本をどうぞ。

1. 「A.I. Artificial Intelligence」 B
(出演: ヘイリー・ジョエル・オスメント、ジュード・ロウ、フランシス・オコーナー)
故スタンリー・キューブリックとスティーヴン・スピルバーグとの共同企画であった本作だが、脚本・監督ともスピルバーグが1人で仕上げた。だがこの監督に、このストーリーライン、このキャストの割には不満が残る。もっと良くなったはずだと思わせる出来なのだ。
昏睡状態の息子の代わりにやってきたアンドロイド(「The Sixth Sense」のヘイリー・ジョエル・オスメント)が、母親(フランシス・オコーナー)の真の愛情を求めて繰り広げるSFファンタジーなのだが、「E.T.」のような素朴な感動が無い。逆に「スピルバーグ臭さ」とオスメントの「小生意気さ」が鼻につき、うっとうしい(13才のオスメントはテレビのインタビューを聞いていても35才みたいな話し方をする)。一方ジゴロ・アンドロイド役のジュード・ロウ(「Talented
Mr. Reply」、「Enemy at theGate」)のスタイリッシュな演技は大いに魅せる。恐らく観客の半分は、キューブリックのオリジナルで見たかったと思っていることだろう。
(オフィシャルサイト: http://aimovie.warnerbros.com)
2. 「Atlantis: The Lost Empire」 B
(声の出演: マイケル・J・フォックス)
ディズニー製作の最新アニメーション。ジュール・ヴェルヌの「海底2万マイル」とディズニー自身の同名映画('54年製作、R・フライシャー監督、ジェームズ・メイスン、カーク・ダグラス主演)をベースにしていて、謎の大陸アトランティスに魅せられた若い学者マイロ(声:マイケル・J・フォックス)とその一行のアドベンチャーを描く。素晴らしい動きと色彩、テンポの良さは相変わらずなのだが、脚本にひねりと工夫が無い上にいつもの魅力あるサブキャラクター達が欠けているのが痛い。登場人物の描き分けが全くなされていないのだ。また"You'll
be in My Heart"(フィル・コリンズ)や"My Funny Friend and Me"(スティング)のような心に残る主題歌も無い。今回はちょっと手抜きが目立ち凡作と言わざるを得ず、この夏最大のライバル「Shrek」とは大きく水をあけられてしまった。
(オフィシャルサイト: http://disney.go.com/disneypictures/atlantis)
3. 「The Fast and the Furious」 B
(出演: ポール・ウォーカー、ヴィン・ディーゼル)
評論家諸氏からは徹底的に叩かれているが、ヤングの圧倒的な支持を得て既にボックスオフィスは3週間で1億ドルを突破した2001年サマームービーのスーパー・スリーパー。チューンアップされたスープラ、シビック、GT-Rなどが圧倒的迫力でストリートレースを繰り広げ、これに謎の日本車による強奪事件のおとり捜査が絡む。ストーリーが91年の「Point
Break」(主演:パトリック・スウェイジ、キアヌ・リーヴス)に酷似しているのが気になるが、一級品のカースタントに乗せて一気に観せるエンターテインメントには仕上がっている。奇跡的に最後まで物語の破綻も無く、25才以下のレースファンにはお勧めだ。
(オフィシャルサイト: http://www.thefastandthefurious.com)
4. 「Lara Croft:Tomb Raider」 C
(出演: アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・ボイト)
これも公開3週間でボックスオフィス1億ドルを突破してしまった同名のアクション・ビデオゲームの映画化。いわば「インディー・ジョーンズ」の女性版だが、予想通りゼロに等しいストーリーと薄っぺらなキャラクター設定であまり観るべきものもない。唯一オスカー女優のアンジェリーナ・ジョリーが大真面目にタイトル・ロールのLaraCroftを演じているのが楽しい。この人の下品な顔立ちは個人的には大嫌いなのだが、本作ではあまり気にならなかった。また、ジョリーの実の父親でこれもオスカー俳優のジョン・ボイトがLaraの父親役で特別出演しているが、所詮ビデオゲームの映画化にインパクトを与えるほどのものでもない。
うちの子供たちも興味を示さず(「Final Fantasy」の方は観ると言っている)、アンジェリーナ・ジョリーのファン以外には薦められない。
(オフィシャルサイト: http://www.tombraidermovie.com)
5. 「Kiss of the Dragon」 B
(出演: ジェット・リー、ブリジッド・フォンダ)
昨年の「Romeo Must Die」に続くジェット・リーの最新主演作。「The Fifth Element」のリュック・ベッソンが脚本に参加しているせいかパリを舞台にした作品で、中国政府のトップエージェントのリーが、殺人の濡れ衣を着せられる。ワイヤーも特撮も使わない本物のカンフー・アクションはジェット・リー最大の魅力で、本作も見所は多い。だがこの人ももう38才、ハリウッド進出が遅すぎた感じでこれからメジャーになるにはちょっときつかろう。「Once
upon a Time in China」の頃に比べるとアクションに切れがないのは明らかだ。それに「マトリックス」と「グリーン・ディスティニー」の主演を続けて蹴ってしまったのは、潔いが運がなかった(最近「Matrix2」の話も断っている)。リーに協力するシングルマザーの娼婦役でブリジッド・フォンダが共演しているが、雑な撮影のためかいつもの魅力が失われている。でもジェット・リーの主演作は次も初日に観に行くぞ。
(オフィシャルサイト: http://www.kissofthedragon.com)
6. 「The Score」 B+
(出演: ロバート・デニーロ、エドワード・ノートン、マーロン・ブランド、アンジェラ・バセット)
ロバート・デニーロとエドワード・ノートン、ちょっとこれ以上は考えられない夢のような組み合わせだ。モントリオール税関の地下金庫に眠る密輸された古代フランスの笏(しゃく)。3千万ドルの価値を持つこの秘宝を狙い、精神薄弱を装って掃除夫としてこの税関に入り込むジャックがエドワード・ノートン。ニック(デニーロ)は天才的金庫破りで、引退前の大仕事として不承不承計画に加担する。この2人に故買屋でニックのパートナー、マックス役のマーロン・ブランド(出番は少ないがいいぞ)とニックの恋人役のアンジェラ・バセットが加わる。ノートンの2重人格的演技は期待通りで、最近では若い頃のダスティン・ホフマンとの比較もちらほらと聞こえてくるほどだ。そしてこれを受けるデニーロの懐がまたでかいこと。
監督のフランク・オズが全編を通して緻密に描く金庫破りの計画とプロセスは多少かったるいが、新旧2人の名優による演技がこれを補って余りある。やっぱりエドワード・ノートンは凄い。尚、タイトルの"The
Score"は映画や小説では「獲物、成功」の意味でよく使われるが、映画のBGMも"score"。また金庫破りは"safecracker"で、故買屋は"fence"と言う。この3つの単語はこの手の"caper
movie"(強奪映画)では頻出するので、セットで覚えておくと便利だ。
(オフィシャルサイト: http://www.thescoremovie.com)
7. 「Leagally Blonde」 B+
(出演: リース・ウィザースプーン、ルーク・ウィルソン、セルマ・ブレアー、マシュー・デービス)
「The Score」を抜いて公開第1週にボックスオフィス1位に入ってしまった超大穴コメディで、これがやたらおかしい。カリフォルニアのカレッジでデザインを専攻しているエル(「Election」、「Cruel
Intention」のリース・ウィザースプーン)は、政治家志望の金持ちの恋人(マシュー・デイビス)に捨てられて傷心の日々。だが一念発起して猛勉強したエルは、彼を追ってなんとハーバード・ロースクールへ入学する(課題のビデオエッセイはビキニ姿でクリアだ)。ピンクのドレスと毛皮のコートに身を固め、ポルシェで通学するエルは、当然根の暗いハーバードのキャンパスでは目立ちまくる。まずここまではいわゆる"dumb
blonde"として笑いをしっかり取るのだが、ここからがまたいい。法律家としての思わぬ才能に目覚めたエルは、運と八方破れの発想と頭の回転の速さを武器に、今度は実際の法廷でも大活躍する。ギャグ良し、テンポ良し、ストーリー良し、脇役良し(セルマ・ブレアーの意地悪女はいいぞ)で、元気が出る実に能天気なコメディだ。リース・ウィザースプーンはこのまま美形系コメディエンヌとしての王道を迷わず歩いてもらいたいものだ。
(オフィシャルサイト: http://www.mgm.com/legallyblonde)
今年の全米サマームービーはここまでは「Shrek」が大差でリード、これに続くのが「Moulin Rouge」。全体的に昨年のラインアップに比べるとちょっと見劣りするが、大作・話題作が幾つも残っている。まだまだテキサスの暑い夏は続くぞ。