映像翻訳|海外のテレビ番組や映画の映像翻訳を仕事にするための学校です。多くの修了生、受講生がドラマ、アニメーション、ドキュメンタリー番組など多方面で活躍しています。

Mr.DOBASHI no テキサス映画通信

”Houston, we have a problem!(28)

Dobashi Shuichiro 土橋 秀一郎


Backnumber



ヒューストンに赴任後しばらくしてから、週末に交差点で募金活動をしている制服姿の消防隊員たちをよく見かけた。ずっと消防署の予算が足りないのか、隊員の給料が低いためだと思っていた。一度近づいてきた隊員の差し出した長靴に10ドル札を入れると、彼は「Thank you」と言って丸いステッカーをくれた。「THANKS FOR HELPING FIRE FIGHTERS FIGHT MUSCULAR DYStrOPHY」ステッカーにはそう印刷されていた。彼らが集めていたのは、「筋萎縮症」で苦しむ人々のための寄付だった。9月11日に起きたNYのテロ事件で5千人以上の人々が犠牲になった。その中には、約350人の消防隊員が含まれている。

今回紹介する8本のうち、「Zoolander」、「Serendipity」、それに「Don't Say AWord」はNYを舞台にしている。「Serendipity」にはワールドトレードセンターのシーンはなかったようだが、「Zoolander」はベン・スティラーの判断によりデジタル処理でタワーを消して公開した。「Don't Say A Word」ではオリジナル通り夕暮れに浮かぶツインタワーの在りし日の姿が見られる。


1. 「Jeepers Creepers」 C
(出演: ジーナ・フィリップス、ジャスティン・ロング)

前半だけトビー・フーパーの怪作「悪魔のいけにえ」('74)の雰囲気が感じられるホラー。田舎町の地下道で、ティーンエイジャーの姉弟が山ほどの死体を発見する。だが後半になりシリアル・キラーの正体が分かった途端に興醒めする。丁寧に作ってはあるが、笑うべきなのか、怖がるべきなのか迷ってしまった。
(オフィシャルサイト: http://www.mgm.com/jeeperscreepers)

2. 「Rock Star」 B+
(出演: マーク・ウォルバーグ、ジェニファー・アニストン)

97年のポルノ業界を舞台にした青春映画の佳作「Boogie Nights」以降、出演する毎に良くなるマーク・ウォルバーグ。本作でも80年代ヘビーメタルバンドのボーカリストとして、その成功と挫折を無理なく表現している。作品的にもライブシーンは臨場感たっぷりだし、恋人役のジェニファー・アニストン(「フレンズ」)も飾り物に終わらない存在感があって、一級品のエンターテインメントに仕上がった。ウォルバーグが堅物の兄の気に入っているエア・サプライ(このグループの歌はやたら女々しかった)を馬鹿にするシーンなんかもあり、結構イケてる。ただテーマとキャストを考えると、この映画を喜んで見に行く客層が思い浮かばない。日本で公開されても興行的には苦戦するだろうな。
(オフィシャルサイト: http://rockstarmovie.warnerbros.com)

3. 「The Musketeer」 B
(出演: ジャスティン・チェンバース、ティム・ロス、カトリーヌ・ドヌーブ、ミーナ・スヴァリ)

最近ハリウッドで過熱気味の香港スタイルのチャンバラがやりたくて、むりやり「三銃士」の物語を持ち込んだような、いわばアメリカ版日活無国籍映画。そのせいか殺陣は魅せるが何となく動きが時代背景とアンマッチだ(スタントコーディネーターは香港のXin-Xin Xiong:こいつ一体なんて読むんだ?)。またティム・ロスは「Planet of theApes」に引き続き憎々しげに悪役を演じているが、威厳のない三銃士に加えていかんせんジャスティン・チェンバースのダルタニアンでは印象が薄すぎた。
(オフィシャルサイト: http://www.the-musketeer.com)

4. 「Hardball」 C
(出演: キアヌ・リーブス、ダイアン・レイン)

野球に限らず万年落ちこぼれチームの快進撃物は、映画の一つのジャンルと言ってもいいくらいだが、未だかつて「がんばれ!ベアーズ」('74)を超える作品にお目にかかったことがない。もっとも本作は野球を扱っていても「ベアーズ」と比べる以前の作品だ。ギャンブル狂の駄目コーチに扮するキアヌ・リーブスは相変わらず大根だし、シカゴスラム街の黒人少年チームの快進撃はリアリティも説得力もない。とどめはお涙頂戴のあっと驚くアンハッピーエンディングで、ちょっとこのバランス感覚の悪さにはついて行けない。
(オフィシャルサイト: http://www.hardballmovie.com)

5. 「Hearts in Atlantis」 B
(出演: アンソニー・ホプキンス、アントン・イェルチン、ミカ・ブーレム)

監督が「シャイン」のスコット・ヒックス、原作が「グリーンマイル」のスティーヴン・キング、主演がアンソニー・ホプキンスと聞いて期待しない訳にはいかなかったが、4番バッターを揃えてもペナントを取れるとは限らない。60年代のニュー・イングランド。何者かから逃れて暮らす人の心を読む不思議な力を持った老人(アンソニー・ホプキンス)と片親の少年ボビー(アントン・イェルチン)の友情、ボビーとガールフレンドのキャロル(ミカ・ブーレム)の淡いロマンスが中心に描かれる。ホプキンスは渋いし子役2人も達者な演技で決して悪い作品ではないが、「スタンド・バイ・ミー」ほどみずみずしくはなく、「グリーンマイル」のようにパワフルでもない。スティーブン・キングが「TODAY」のインタビューで、「悲惨なテロ事件の直後なのに、より多くのアメリカ人が気持ちが高揚するこの作品より暴力的な「Don'tSay A Word」(マイケル・ダグラス主演、後述)を観たことに驚いた」とコメントしていたが、この作品には観る者の胸に迫るものがない。
(オフィシャルサイト: http://www2.warnerbros.com/heartsinatlantis)

6. 「Zoolander」 B
(出演: ベン・スティラー、オーウェン・ウィルソン、クリスティーン・テイラー、ウィル・ファレル)

「メリーに首ったけ」、「Keeping the Faith」、「Meet the Parents」と目下絶好調のベン・スティラーが、今回はタイトルロールのトップモデル、デレック・ズーランダーに扮する(スティラーは共同脚本と監督も兼ねている)。ズーランダーはマレーシアの大統領暗殺を図るNYのファッション業界の陰謀に巻き込まれる(何故かと言うとマレーシアの大統領が子供の違法労働を非難するので、彼等はコストアップを怖れている)。ズーランダーというこのネーミングからして意味なく面白く、スティラーの気取りまくりのトップモデルぶり、さらにズーランダーの父親でニュージャージーの炭坑夫役のジョン・ボイト、異形な密告者のデヴィッド・ドゥカブニーなど、爆笑シーンは多い。だが、一方で白けるギャグも多く、ストーリー性が今ひとつ希薄で作品としてはまとまりきれなかった。
(オフィシャルサイト: http://www.zoolander.com)

7. 「Serendipity」 B+
(出演: ジョン・キューザック、ケイト・ベッキンセイル、モリー・シャノン)

「America's Sweethearts」のジョン・キューザックと、「Pearl Harbor」のケイト・ベッキンセイル共演のNYを舞台としたロマンティック・コメディ。「Grosse PointBlank」や「High Fedelity」など最近ちょっとオフビートなロマコメが多いキューザックは、今回もいい味を出している。ベッキンセイルはやたらと運命を信じるちょっと風変わりなヒロインだが、「Pearl Harbor」の時と違ってよく話しよく笑い大変キュートだ。物語はマンハッタンで偶然出会い一度だけデートした2人が、数年後それぞれの結婚を目前にして再会するためにすれ違いを続ける。底は浅いが小道具(手袋、クレジットカードのコピー、古本、5ドル札など)を多用した作り物の面白さを楽しめる娯楽作となっている。また「American Pie」の爆笑親父ことユージン・レヴィが、ブルーミングデールの大ボケ店員役で笑いを独り占めにしていてちょっと見逃せない。
(オフィシャルサイト: http://www.serendipity-themovie.com)

8. 「Don't Say A Word」 B
(出演: マイケル・ダグラス、ショーン・ビーン、ブリタニィ・マーフィ)

マイケル・ダグラスのスリラーは総じて出来がいいが、今回は後半失速してしまう。10年前の宝石強盗事件の犯人の娘(ブリタニィ・マーフィが好演)が宝石の隠し場所に関する暗号を知っているのだが、彼女はダグラス扮するNYの精神科医の患者で、仲間割れした犯人一味がダグラスの娘を誘拐する。ダグラスは娘を取り返すため、期限までにその患者から暗号を聞き出さねばならない。前半の誘拐シーンから患者への尋問シーンはサスペンスが効いていてかなり良く、ダグラスの演技はパワフルだ。だがその後のやみくもな行動はタフで理性的な精神科医からは程遠い。ラストはちょっと引っ張り過ぎてサスペンスが途切れがちの上に、結果オーライのエンディングでは爽快感に乏しいのも致し方ないか。
(オフィシャルサイト: http://www.dontsayaword.com)

待望の「スタートレック」第5シリーズ、「Enterprise」の放映が始まった。設定はオリジナルの「スタートレック」から100年前の2151年。「Quantum Leap」(邦題「タイムマシーンにお願い」)のスコット・バクラが考えるより先に行動するジョナサン・アーチャー艦長に扮して、初代エンタープライズ号とそのクルーの冒険が描かれる。シーズンプレミアの"Broken Bow"の出来もまずまずで、これから7人のクルーそれぞれのキャラクターがエピソード毎に肉付けされて行くはずだ。シリーズ初の主題歌に使われるのは、ロッド・スチュワートの「Faith of the Heart」。水曜の夜が楽しみになったぞ。