やあ、くどいようですが今年のX'mas movieは本当に粒ぞろいで、Houstonに盆と正月が一緒に来たよう。そこで前回「今年最後」と書いたが、もう一回2001年X'mas movieの肝6本を載せて頂くことにした。だが人間現状に甘んじていては進歩がない。ひとたび映画館に足を運べば既に来春からサマーシーズンにかけての新作の予告編が目白押しだ。で、ちょっとこちらの予習もしておこう。たとえば春にはデンゼル・ワシントンが病院に立てこもり、幼い息子の心臓移植を要求する「John Q」、CIA役のアンソニー・ホプキンスが1人2役のクリス・ロックと共演する「Bad Company」、ウェズリー・スナイプスの「Blade II」、「ピーターパン」の続編「Return to Neverland」、デニス・クエイドの野球映画「The Rookie」、シュワちゃんの新作アクションは「Collateral Damage」、H.G.ウェルズ原作+ガイ・ピアース主演の「The Time Machine」、R.ラドラムの傑作小説の映画化+マット・デイモン主演の「The Bourne Identity」なんてのがある。夏になればトビー・マグワイアとカースティン・ダンスト(!)の「Spider‐Man」を皮切りに、「Episode II‐Attack of the Clones」(このタイトルは非常に評判が悪い)、「Men in Black 2」、「Austin Powers in Goldmember」といった続編たち、さらに「Signs」はM.ナイト・シヤマランがメル・ギブソンを起用した新作スリラーだ。要するにいくら観てもきりがないのだ。

1. 「Vanilla Sky」 B-
(出演: トム・クルーズ、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、カート・ラッセル、ジェイソン・リー)
好編「ザ・エージェント」のキャメロン・クロウ監督とトム・クルーズのコンビによる、NYを舞台にしたミステリータッチのラブ・ストー リー。だが「トップガン」以降のクルーズ主演作としては「Eyes Wide Shut」の次くらいにつまらない。父親の大手出版社を相続したプレイボーイがクルーズで、そのセックス・メイトがキャメロン・ディアス。クルーズが親友(ジェイソン・リー)のガールフレンド(ペネロペ・クルス)に一目ぼれしたことからキャメロン・ディアズが精神に異常をきたして…。スペイン作品「Open Your Eyes」のリメイクで、オリジナルでも主演したペネロペ・クルスは相変わらずつたない英語のために画面をしらけさせるし、トム・クルーズは出演シーンの半分以上は醜い姿で女性ファンはがっかりするだろう。緊迫感はそれなりに持続するがフラッシュバックが多用される演出は煩わしく、おまけに結末は意外性はあるがどうにも後味が悪い。ラブ・ストーリーとは言えなぜクリスマス公開したのか理解に苦しむ。唯一の見所はキャメロン・ディアスのウルトラセクシーな悪女ぶりで、彼女の出演場面は断然光っている。
トム・クルーズとペネロペ・クルスは実生活でも恋人同士になってしまったが(トム・クルーズよ、あんな女のどこがいい)、この2人と題 名に惹かれてデートムービーに選ぶと失敗する。
(オフィシャルサイト: http://www.vanillasky.com)
2. 「The Majestic」 A-
(出演: ジム・キャリー、マーティン・ランドー、ローリー・ホールデン)
既に2大傑作「ショーシャンクの空に」と「グリーンマイル」をものにしているフランク・ダラボント監督の最新作は、フランク・キャプラやビリー・ワイルダーの流れをくむヒューマンドラマの感動編に仕上がった。舞台は1940年代。ハリウッドの2流ライターのピーター(ジム・キャリー)は、学生時代に冷やかしで共産党大会に出席していたことから「赤狩り」の対象にされる。だが査問の直前に事故で記憶を失い、別 の町で復員兵のルークとしての人生を歩み始める。ルークは父親(マーティン・ランドー)やガールフレンド(ローリー・ホールデン)と共に遠い昔に閉鎖した映画館「The Majestic」を復活させ、しばしの幸福を手に入れる。だが、やがてピーターとしての記憶が戻り始める頃、FBIの捜査の手も伸びてくる…。ピーターかルークか、彼は人生最大の決断を迫られる。初めて完全なシリアス・アクターとして目を見張る演技を見 せるジム・キャリー(シリアス系の「Truman Show」や「Man on the Moon」でも結構ギャグをかませていた)、不覚にも涙を誘われる名優マーティン・ランドーの優しい父親、戦争により若者がいなくなった町の人々の喪失感、全編を通して古き良き時代の映画を背景にした粋な演出(昔の映画のポスターが山ほど出てくる)、そして赤狩りの査問シーンを通じて訴えられるアメリカの健全な正義感と、見所は多い。そして何よりも今では死語となりつつある「人間賛歌」の精神が、この映画には脈々と息吹いているのだ。
(オフィシャルサイト:http://movies.warnerbros.com/themajestic)
3. 「Lord of the Rings:The Fellowship of the Ring」 A
(出演: イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、イアン・ホルム、クリストファー・リー、ビーゴ・モーテンセン、ケイト・ブランシェット、リブ・タイラー)
J.R.R.トールキンのファンタジー「指輪物語」(1954〜1956)の第1部「旅の仲間」の映画化は、質量ともにこのジャンル最高峰の出来栄えで、興行的にも3日間で45百万ドルを稼ぐ大ヒットとなった。悪魔の君主ソーロンの支配力を絶対的にする伝説の魔法の指輪。この指輪を偶然相続した小人のフロド(イライジャ・ウッド)は、魔法使いの親友ガンダルフ(イアン・マッケラン)、妖精たち(リブ・タイラー、ケイト・ブランシェット)、それに4人の戦士らの力を借りて、唯一指輪を破壊する力を持つ炎が燃え続けるソーロン帝国を目指す。運命に翻弄されるフロドを巡る波瀾万丈のストーリー、忠実に踏襲されたトールキンによる確固たる世界観、ダイナミズムあふれる特撮に負けない骨太の演出、「七人の侍」のように見事に描き分けられたキャラクター、これらが織り成す一大叙事詩だ。さらに明らかに原作に影響を受けている「スター・ウォーズ」や「ハリー・ポッター」にはない深みと明確なメッセージがある。そしてこの作品のハートは名優サー・イアン・マッケランで、この魅力たっぷりの魔法使いには「スターウォーズ」のアレック・ギネス(オビワン・ケノビ)以上の存在感と抱擁感があり、忘れ難い。 堂々3時間に及ぶこの大作は体調を整え、気を引き締めて映画館に足を運ぶこと。
尚、Miramaxが史上空前の3億ドルを投じた3部作は既にピーター・ジャクソンの手による同時撮影で完成しており、第2部「2つの塔」(「The
Two Towers」)は2002年クリスマスに、第3部「王の帰還」(「Return of the King」)は2003年に公開予定だ。
(オフィシャルサイト: http://www.lordoftherings.net)
4. 「Jimmy Neutron:Boy Genious」 B
(声の出演: デビー・デリベリー、カール・ウィーザー、ジェフ・ガルシア)
ケーブルTVのニッケルオデオンがユニバーサルと製作した低予算CGアニメで(何でも市販CGソフトが使われているとか)、一昨年の「Iron Giant」、昨年の「Chicken Run」的大穴を期待して観に行った。Jimmy Neutronは天才小学生で、ロケットやサテライトまで作ってしまうのだ が、いつも最後に失敗するのでクラス中の笑い者だ。そのJimmyが宇宙に発したメッセージが原因で、ある日エイリアンによって町中の大人達が誘拐されてしまう。初めは大喜びで遊び放題の子供たちだが、やがて両親が恋しくなると、Jimmyの頭脳を頼りに遊園地の乗り物を宇宙船やロケットに改造して救出に向かう。ここまでは細かいアイディアが豊富な上に、「お父さんお母さんありがとう」メッセージが巧みに盛り込まれて実に楽しい。だが、後半の救出行が大雑把で今一つ乗り切れず、尻すぼみに終わってしまった。惜しい。
(オフィシャルサイト: http://www.jimmyneutron.com)
5. 「Ali」 A-
(出演: ウィル・スミス、ジェイミー・フォックス、マリオ・ヴァン・ピープルズ、ジョン・ボイト)
「ヒート」、「ラスト・オブ・モヒカン」、「インサイダー」など、硬派の映画を撮らせたら右に出るものがいないマイケル・マンが、ものの見事にモハメド・アリをスクリーンに再現した。この偉大なるタイトルロールを演じるウィル・スミスは、一年間筋力トレーニングをしながらボクシングとアリのスタイルを徹底的に学び、一切スタントを使わず、全てのファイトシーンは実際に殴り、殴られたと言う。メディアには得意の軽口をわめき散らし、ひとたびリングに上がればあの華麗なフットワークで「蝶のように舞い、蜂のように刺す」("Floated like a butterfly and stung like a bee")アリ=スミスは圧巻の一言で、観る者を魅了しねじ伏せる。
物語はソニーリストンからのタイトル奪取、カシアス・クレイからの改名、徴兵拒否とタイトル剥奪、3度の結婚、ジョー・フレイジャー戦の敗北、そして'74年のザイールでのジョージ・フォアマンとの死闘までが描かれ、全編パワフルかつサスペンスフルだ。また脇役陣も素晴らしく、ジェイミー・フォックス(アリのトレーナー)、ジョン・ボイト(スポーツキャスターのハワード・コセル)、マリオ・ヴァン・ピープルズ(マルコムX)がいずれも仰天演技を見せてくれる。マイケル・マンの執念とウィル・スミスの才能が実現させたこの壮大なプロジェクトの 前には、既存の作り物ボクシング映画が色褪せて見える。それにしてもウィル・スミスは本作で確実に俳優として大きくなったが、まだまだその才能には底知れないものがある。今や彼がグラミー賞受賞者The Fresh Prince(さらに同名のTVコメディでファンを広げた)であることなど誰も思い出さないのではないか。初のオスカーノミネーションもあり得る。
(オフィシャルサイト: http://www.spe.sony.com/movies/ali)
6. 「A Beautiful Mind」 A-
(出演: ラッセル・クロウ、エド・ハリス、ジェニファー・コネリー)
昨年のオスカー俳優ラッセル・クロウと、現在ハリウッドで最も信用度の高い監督ロン・ハワード(「バックドラフト」、「アポロ13」、「身 代金」、「グリンチ」)による本作は、実在の天才数学者ジョン・フォーブス・ナッシュの数奇な半生を描いた心温まるラブ・ストーリーだ。1940年代。ジョン・ナッシュ(ラッセル・クロウ)はプリンストン大学時代から数学者として頭角を現わし順調にキャリアを築き、教授へのトップ昇格、美しい教え子アリシア(ジェニファー・コネリー)との結婚と幸福の絶頂を迎える。だがおりしもロシアとの冷戦下、政府の特別エージェント(エド・ハリス)から頼まれた暗号解読に携わるうちに精神分裂をひきおこす。
ロン・ハワードの手堅い演出はサスペンスとユーモアが絶妙のバランスでブレンドされていて最後まで見る者を魅了し続ける。そして何を演らせても絵になるエド・ハリスとキャリア最高の演技を見せるジェニファー・コネリーも良いが、やはりこれはラッセル・クロウの映画だ。 「L.A.Confidential」や「Gradiator」の豪快で怖いもの知らずの印象が強いが、この人は「The Insider」や本作でも分かる通り、神経症的な細かい演技も達者にこなす。「A Beautiful Mind」は、人生のすべてを失いかけた男の崖っぷちからの再生と、それを支える妻との感動的なラブ・ストーリーで、間違いなくロン・ハワードの最高傑作。ゴールデングローブ賞にノミネーションの結果から見ても、作品・監督・主演男優部門でのオスカーノミネーションは固いのではないか。
(オフィシャルサイト: http://www.abeautifulmind.com)
という訳で次回はHouston では12月末から1月初旬公開のX'mas movieのレヴューと、「第3回、輝けTexas Movie Awards!」の発表です。