メジャーリーグが開幕し、NBAのプレイオフが始まった。今年こそアスト ロズのワールドシリーズ出場とL.A.レイカーズの敗北を見たいものだ
が、アストロズはここまで8勝10敗、レイカーズは依然として勝ち続け ている。
日本ではあまり知られていないだろうが、この季節になるとHoustonの気 温はぐんぐん上がり始め、9月まで40度近い猛暑が続く。だが今年の対
策は万全だ。5月まではTVアクションドラマの傑作「24」のエピソード が残っているし、トニー賞受賞ミュージカル「Contact」(6月)と
「Lion King」(8月)のチケットを買ったし、6月末のマリナーズvsア ストロズ切符も手配済み(イチローが3安打して試合はアストロズが勝
つ予定)。そして勿論山ほどのサマームービーがある。なんのことはな い、涼しいところで遊んでいるだけのことなのだが。この街に住んで何
より怖いのは、停電でエアコンが動かなくなることだ。
それではサマームービー直前、9本のレヴューをどうぞ。

1. 「E.T.:The Extra-Terrestrial」 A
(出演: ヘンリー・トーマス、ディー・ウォレス・ストーン、ドリュー ・バリモア、ロバート・マクノートン、ピーター・コヨーテ)
20周年を記念して再公開された今回のバージョンは、サウンドとSFXが補 強されて、数分間の1シーンが追加されている。さすがにE.T.の表情
や動き、それにSFXは最新技術を駆使する昨今のSi-fiとは比べるすべも ない。だが逆にそれが子供の視点に立ち考え抜かれたショットの1つ1
つ、顔を見せない政府のエージェントたちの無気味さ、ジョン・ウィリ アムスの忘れ難い音楽など、この作品の底力を際立たせている。観客は
知らず知らずのうちに地球で迷子になった醜いエイリアンを愛し、エリ オットとE.T.を乗せた自転車が夜空に舞い上がると歓声を上げる。こ
のスピルバーグの名作は、20年前と全く同じ驚きと感動を与えてくれる のだ。見終わった後、一緒に行った中学生の息子といつのまにか
「E.T.」のテーマ曲を口ずさんでいた。こういう映画はプライスレス だ。
(オフィシャルサイト: http://www.et20.com/)
2. 「Panic Room」 A-
(出演: ジョディ・フォスター、フォレスト・ウィテカー、クリス ティン・ステュワート、ドワイト・ヨーカム、ジャレッド・レト)
「セブン」、「ファイト・クラブ」とスタイリッシュ・スリラーの傑作 を連発したデヴィッド・フィンチャーが、怪我で降板したニコール・
キッドマンの代わりにジョディ・フォスターを得て、三たび放つスリリ ングな怪作。これはいいぞ。
NYの高級タウンハウスに越して来た母娘(ジョディ・フォスターとクリ スティン・ステュワート)は、その夜に3人組の強盗に襲われる。2人
は何とか緊急避難用に特別に作られた"Panic Room"に逃げ込む。だが強 盗の1人はその"Panic Room"の設計者で、彼等の獲物はその部屋の中に
あるらしい。しかも娘は糖尿病患者なので、時間内にインシュリンを射 たねばならない。全編スリリングで、前半は個性豊かな3人の強盗と
ジョディ・フォスターの頭脳戦が描かれ、後半は一転して流血戦に突入 する(本作はR指定だ)。才色兼備のジョディ・フォスターは魅力全開、
さらにおいしいのは、根は優しいが抜群に頭の切れる強盗の1人を演じ るフォレスト・ウィテカー(「ハスラー2」、「バード」)だ。
(オフィシャルサイト:http://www.sonypictures.com/movies/panicroom/)
3. 「Clockstoppers」 B
(出演: ジェシー・ブラッドフォード、ポーラ・ガルセス、フレンチ ・ステュワート、マイケル・ビーン)
父親が共同発明した"分子加速装置"付リストウォッチを手に入れた不肖 の息子(ジェシー・ブラッドフォード)とそのガールフレンド(ポーラ
・ガルセス)が、マイケル・ビーン率いる武器製造会社の陰謀に巻き込 まれるSi-fiコメディ。この分子加速装置が稼動すると、稼動させた本人
は"hyper time"と呼ばれる時間帯に入り、その結果自分以外の世界は停 止する(実際には極めてゆっくり動いている)。要するにこの間は主人
公は何でも好きなことが出来る。この設定と特撮が描かれる前半は面白 いが、後半は脚本がアイディア不足で文字どおり失速する。
監督は「新スタートレック」のライカー副長ことジョナサン・フレイク ス。この人はTVシリーズのエピソードを数本、さらに'98年の「Star
Trek:Insurrection」も監督をしておりちょっと期待していたが、まあ 可もなく不可もなくという出来でした。
(オフィシャルサイト: http://www.nick.com/all_nick/movies/clockstoppers/index.jhtml)
4. 「Death to Smoochy」 B-
(出演: ロビン・ウィリアムス、エドワード・ノートン、ダニー・デ ビート、キャスリーン・キーナー、ジョン・ステュワート)
2大スターの共演とは言え子供TV番組を舞台にしたR指定のブラックコ メディで、予告編からして全く面白くなさそうだった。しかしかろうじ
て作品を救ったのはエドワード・ノートンだ。収賄がバレて子供番組の スターの座から転がり落ちた"Rainbow Randolph"(ロビン・ウィリアム
ス)に取って代わったのが、サイの"Smoochy"(エドワード・ノート ン)。Smoochyはすぐに子供たちのアイドルとなり、それを妬むRandolph
はやがて精神に異常をきたしてSmoochyを殺そうとする。この基本ストー リーに、Smoochyの利権を巡って悪徳マネージャー(ダニー・デビー
ト)、プロデューサー(「Daily Show」のジョン・ステュワート)、ア イリッシュマフィア、えせ子供救済財団が錯綜する。ロビン・ウィリア
ムスは完全に空回りで全く面白くないが、対照的にサイの着ぐるみを着 て大まじめに子供と歌って踊るエドワード・ノートンが妙におかしい。
本作は内容的にノートンのファン以外はまず受け付けないだろう。 尚、「初心に帰って」スタンダップ・コミックのステージを2年勤めた
ロビン・ウィリアムス。復帰第1作の本作ではつまずいたが、続けて公 開される「Insomnia」、「One Hour Photo」はシリアスもので、いずれ
も精神異常者役に挑戦する(前者ではアル・パチーノとの共演だ)。
(オフィシャルサイト: http://deathtosmoochymovie.warnerbros.com/)
5. 「High Crimes」 B
(出演: アシュレイ・ジャド、モーガン・フリーマン、ジム・カ ヴィーゼル、アマンダ・ピート)
'97年の「コレクター」で共演したアシュレイ・ジャドとモーガン・フ リーマンが、再度コンビを組んだ。平凡な優しい夫トム(ジム・カ
ヴィーゼル)は、過去にエルサルバドルの軍事行動中に9人の市民を射 殺したとして突然軍事裁判にかけられることになる。弁護士で妻のクレ
イ(アシュレイ・ジャド)は、元軍事法廷専門の弁護士チャーリー (モーガン・フリーマン)を雇ってトムを弁護する。トムが濡れ衣を着
せられているのか、あるいは殺人マニアなのかという基本ストーリー に、腕は立つがアルコールが原因で失脚したチャーリーという不安要素
を絡ませる展開は大いに期待できた。だが後半になってろくに伏線も引 かず、ただ強引にツイストさせるストーリーは説明不足で説得力に乏し
い。一方現存する女性の中で一番美しいアシュレイ・ジャドはニコール ・キッドマンやミシェル・ファイファーと違って頭が良く見えるのが強
みで、本作の彼女も最高にチャーミングだ。また、モーガン・フリーマ ンは実は今回のように斜に構えた役をやらせると最高で、彼がブレイク
スルーした'87年の「ストリート・スマート」のポン引き役を思い出し た。
この2人の弁護士コンビはケミストリーがあるので、ぜひシリーズ化し てもらいたいものだ。
(オフィシャルサイト: http://www.highcrimesmovie.com/main.html)
6. 「The Sweetest Thing」 B
(出演: キャメロン・ディアス、クリスティーナ・アプルゲイト、セ ルマ・ブレア、トーマス・ジェイン)
これはパーティ・アニマルのキャメロン・ディアスがディスコで逢った ピーター(トーマス・ジェイン)を追ってサンフランシスコに行き、真
実の愛に目覚めるという、一応はロマンティック・コメディ。。
「Charlie's Angeles」、「Vanilla Sky」のディアスは今やシリアスも スラップスティックもこなせるキュートなコメディエンヌに成長しつつ
あり、これはちょっと貴重な存在だ。しかしあの「South Park」の脚本 家による作品ゆえ、ディアス、クリスティーナ・アプルゲイト、セルマ
・ブレア(「Cruel Intention」)の仲良し3人組が繰り広げる爆笑セッ クス・ジョークと下ネタの連続ワザは、「ここまでやるか」というくら
いのお下劣さだ。要するにこれは大っぴらに人に勧めちゃったりすると 人格を疑われるタイプの極めて下品な映画なのだが、このコラムでは割
りと面白いよと宣言しておく。タイトルに騙されて初めてのデートで選 ばないように。
(オフィシャルサイト: http://www.spe.sony.com/movies/thesweetestthing/)
7. 「Changing Lanes」 C+
(出演: ベン・アフレック、サミュエル・L・ジャクソン、シドニー ・ポラック、トニー・コレット、ウィリアム・ハート)
ウォールストリートの弁護士(ベン・アフレック)とアルコールが原因 で家族を失いかけている男(サミュエル・L・ジャクソン)がフリー
ウェイで事故を起こした結果、弁護士は証拠書類を失くして事務所の信 用を失い、アル中の男は出廷に遅れて子供の保護監察権を失う。2人は
憎みあい、やがて嫌がらせがエスカレートして互いの人生を崩壊させて 行く。内容が浅いだけでなく観客を飽きさせないだけの娯楽性もない、
何とも後味が悪い一風変わったスリラー。唯一サミュエル・L・ジャク ソンの好演だけが光る。
(オフィシャルサイト: http://www.changinglanes.com/)
8. 「Murder by Numbers」 B
(出演: サンドラ・ブロック、ベン・チャップリン、ライアン・ゴス リング、マイケル・ピット)
主演のサンドラ・ブロックが製作総指揮も兼ねるスリラーだが、後半プ ロットが空中分解する。金持ちの息子(ライアン・ゴスリング)と天才
オタク(マイケル・ピット)の高校生2人が挑んだ完全犯罪を調査する 刑事がサンドラ・ブロックと「Birthday Girl」のベン・チャップリン。
前半は犯人2人の狂気と、刑事2人の微妙な関係がサスペンスフルに描 き分けられているのだが、後半になり捜査が進むと高校生コンビは弱気
になり、作品を支えるパワーががた落ちする。加えてサンドラ・ブロッ クはキャラクターに厚みを出そうと懸命に過去のある事件によるトラウ
マを強調するのだが、観る側にとっては煩わしいだけで全く効果が上 がっていない。メグ・ライアンとサンドラ・ブロックが自作の製作に係
わるとロクなことがない。何もしないで出来の良い脚本が来るのを待っ ていればいいのに。 (オフィシャルサイト: http://murderbynumbersmovie.warnerbros.com/)
9. 「The Scorpion King」 B+
(出演: ザ・ロック、マイケル・クラーク・ダンカン、スティーヴン ・ブランド、ケリー・フー)
「The Mummy Returns」からのスピンオフで、物語としてはその前編に当 たる本作は、WWFの人気者ザ・ロックがスクリーンを縦横無尽に暴れ回る
活きのいいアクション・エンターテインメントに仕上がった。物語は砂 漠の民に雇われたマサイアス(ザ・ロック)が独裁者メムノンに使える
預言者の暗殺を謀るが、逆に待ち伏せに遭い仲間を殺され、メムノンと の宿命の対決が始まる。SFXを控え目にして剣、ナイフ、弓矢、それに勿
論レスリングを武器に戦うザ・ロックはまるで「砂漠のランボー」で、 実に小気味いい。またスティーヴン・ブランド扮する暴君メムノンの圧
倒的強さ、セクシーな預言者ケリー・フー、マサイアスの右腕となるマ イケル・クラーク・ダンカンと脇役陣も強力で、単純だがテンポの良い
ストーリーにも最後まで破綻がない。ストレス解消、頭を空っぽにして 楽しむには恰好の一本となった。
(オフィシャルサイト: http://www.the-scorpion-king.com/)
次回は5月末、「Spider-Man」、「Episode II-Attack of the Clones」、それに「Insomnia」など、垂涎もののレヴューをいち早くお
届けする予定。