今回は米国における超人気作の正しい鑑賞方法をお届けする。名づけて−「Episode
II-Attack of the Clones」初日鑑賞計画全記録!
1) 5月16日の全米公開2週間前、Houston Chronicle紙の映画欄に「Episode II Tickets Now
on Sale」の文字を発見。さっそく妻が劇場まで行き、初日夜7時の回を購入(家族4人で21ドル、日本に比べるとタダ同然)。客層からして違うので、この手の映画は並んでも是非初日に行きたい。インターネットでの予約も可能だが、いずれにしろ劇場まで出向いて予めチケットを持っていることが肝要。同日の午前0時01分の回というのもあったが、子供を連れて行くので断念。
2) 当日までの2週間は健康に留意し働き過ぎないように注意する。前日は早めに寝てあまり興奮しないこと。
3) 当日(木曜)はフレックスタイムを使って3時に会社を早退し一旦帰宅。アメリカの映画館は異常にエアコンが効いているので上着を必ず持参。少し頭痛がするのでAdvilを飲む。家族4人2時間前の5時に自宅近くのAMC劇場に到着。ここは30のスクリーンがあり、内6つで「Episode
II」を上映中。ほぼ30分ごとに上映されている。係員の指示で並んだところ、前から14人目なので楽勝。しかも番号15番の劇場は一番大きい。よしよし。念のため前の人に7時の回に並んでいることを確認。先頭に並んでいるのは息子のアメリカ人の友人一家だ。
4) 5時10分。子供たちは座り込んでゲームボーイアドバンスを始め、親は読書。6月公開のマット・デイモン主演「Bourne Identity」のペーパーバックを読み始める。我ながら予習に余念がない。このロバート・ラドラムの傑作は翻訳で昔読んだがもう細部を覚えていないのだ。前の方の人たちは「スターウォーズ人生ゲーム」をやっている。妻が「一体どんな職業を選ぶのかしら?」と鋭い質問を投げる。「ヒーロー」は職業になるかな。
5) 6時。ホットドッグとコーラの夕食。デザートはポップコーン。この頃になると、後方にざっと400人くらいが並んでいる。やっぱり映画は観るまでが面白い。
6) 6時半に入場。中央ど真ん中の席を余裕で確保。約20分で満席。ライトセーバーを振り回している者数名、ジェダイやダーク皇帝のコスチュームの者数名。子供とトイレに行く(これもかなり重要だ)。
7) 7時。予告編始まる。11月公開の「007/Die Another Day」に観客が喝采(ハル・ベリーが出演している)。他には「Bad
Company」、「The Sum of All Fears」、「MIB2」、「Minority Report」、「Lilo &
Stitch」など。
8) 7時10分。ついに本編が始まる。おなじみ20世紀フォックスのファンファーレの後、「STAR WARS」の白抜き文字がスクリーンに浮かび上がる。観客から拍手と歓声が一斉に上がる。このノリの良さがアメリカで映画を観る楽しさだ。
――続きはレヴューをどうぞ。

1. 「Star Wars:Episode II−Attack of
the Clones」 A-
(出演: ユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマン、ヘイデン・クリステンセン、サミュエル・L・ジャクソン、クリストファー・リー、ジミー・スミッツ)
――ヨーダ凄い。本作はこの一言に尽きる。もともとハン・ソロとダース・ベイダーというシリーズの2大スター無しで描かれる Episode
I〜 Episode IIIは、イチローとブレット・ブーン抜きのマリナーズのようなもので、相当しんどい戦いなのだ。そのせいか前作「The
Phantom Menace」は今ひとつ盛り上がりに欠けたきらいがあったが、本作ではヨーダが一気にスーパーヒーローにのし上がった。
前作から10年後。ダーク皇帝による銀河系の共和制壊滅の陰謀が着実に進行する中で、今は上院議員となっているパドメ・アミダラ(ナタリー・ポートマン)の暗殺が謀られる。ジェダイになる為修行中のアナキン(「Life
as a House」のヘイデン・クリステンセン)がパドメの保護に当たり、一方オビワン(ユアン・マクレガー)は暗殺計画の首謀者の追跡にかかる。やがてオビワンが暴く黒幕の登場により、物語は終盤からフォースのダークサイドとジェダイナイトの対決色を急速に強めて行く。この作品、欠点は多い。アナキンとパドメの「サウンド・オブ・ミュージック」の舞台を使ったようなくさいロマンスシーンには閉口させられるし(ハン・ソロとレイアのようにもっとさらりと描けなかったのか)、C3POの煩わしいコミックリリーフぶりは前作のジャー・ジャー・ビンクスを思い出させる。他にも全く機能していないシーンが幾つかあるし、ジョン・ウィリアムスのスコアも今回は精彩がない。しかし一方で、このシリーズが元来持つ世界観はより確固たるものになり、それを支えるSFXは現在最高のものだ。またアナキンがやがてダース・ベイダーとならざるを得なかったプロセスは極めて説得力を持って描かれているし、冷めた悪役ジャンゴ・フェット(「帝国の逆襲」のボバ・フェットの父親)も大活躍だ。そして何より後半に向けて盛り上がるストーリーは、若き日のヨーダとジェダイナイトたちの総登場により最高潮に達する(サミュエル・L・ジャクソン扮するジェダイ・ウィンドゥも頑張るぞ)。やはりこのシリーズには「品格」がある。観た翌日に目を覚ましてまた行きたくなるような作品は、そうあるものではない。幸運にもこれで5作品はすべてHoustonで観たことになる。「Episode
III」の公開までまた3年待たねばならないが、10年間パドメに恋い焦がれていたアナキンを思えば致し方ないか。
(オフィシャルサイト: http://www.starwars.com/episode-ii/)
2. 「Frailty」 B+
(出演: ビル・パクストン、マシュー・マコノヒー、マシュー・オリアリー、パワーズ・ブース)
元々監督志望だったビル・パクストン(「アポロ13」、「ツイスター」)の初監督作は、テキサスを舞台にしたヒッチコックスタイルの正統派スリラーに仕上がった。物語はFBI捜査官(パワーズ・ブース)に自分の弟がシリアルキラーだと訴える男(マシュー・マコノヒー)の告白で始まる。しかも弟を殺人犯にしたのは気の狂った父親(ビル・パクストン)で、父親自身も6人を殺しているという。2人の息子たちに次第に伝染して行く父親の狂気と、後半の意外な結末(ミステリーファンなら難なく読めてしまうが)に向けて盛り上げて行くパクストンの演出はなかなかの手腕で、血がドバドバのスプラッターとは一線を画する。ヒッチコック作品が面白いのは本当に怖いからではなく、彼の観客を怖がらせようとする熱意とテクニックを楽しめるからだ。本作もパクストンの意図を正しくくみ取らないと、肩透かしを食わされたような気になる。
(オフィシャルサイト: http://www.frailtythefilm.com/)
3. 「Hollywood Ending」 B-
(出演: ウッディ・アレン、ティア・レオーニ、デボラ・メシング、トリート・ウィリアムス)
前作「The Curse of Jade Scorpion」でヘレン・ハントを起用したウッディ・アレンが、この最新作でティア・レオーニ(「ディープ・インパクト」、「The
Family Man」)を使ったのでいそいそと観に行った。と書くとまるでティア・レオーニ以外興味がないように思われるかも知れないが、実はそうなのだ。アレンはそれほど好きではない。レオーニの役柄は、映画監督に扮するアレンの元妻で、今はハリウッドの大物プロデューサー(トリート・ウィリアムス)と同棲中。夫としては見限ったが監督としてはアレンを認めているレオーニは、このプロデューサーの新作の監督にアレンを強引に据える。ところがそのアレンがプレッシャーで神経性の盲目になってしまい、側近たちはそれを隠して撮影を続ける破目になる。いくらでも面白くなり得た題材だが、ジョークは古臭くてほんの気持ち程度の笑いしか取れず、しかもまったく説得力のない最悪のエンディングが控えている。唯一レオーニは期待通り美しくて、気高くて、面白くて、取りあえず当初の目的だけは達したぞ。
(オフィシャルサイト: http://www.dreamworks.com/hollywoodending/)
4. 「Spider-Man」 A-
出演: トビー・マグワイア、キルステン・ダンスト、ウィレム・デフォー、ジェイムズ・フランコ)
公開3日間で1億1400万ドル、10日目で2億ドル突破と、「Episode II」でも破れなかった2つの歴代興業記録を打ち立てたこのマーベル・コミックの映画化は、'78年の「スーパーマン」以降最も面白いスーパーヒーロー物だ。クモの巣をモチーフにした出色の出来のクレジットで始まる本編は、NYのさえない高校生ピーターの成長物語でもあり、演ずるトビー・マグワイア(「Cider
House Rules」)はまさに適役。レオナルド・ディカプリオやクリス・クラインの話も合ったが、マグワイアで良かった。彼はスーパーヒーローと隣の男の子のギャップを楽しく表現した。勿論アクション・ヒーロー物としての面白さは当然で、ピーターが遺伝子操作をされたクモに刺されてから自分の特殊能力を発見して行く前半、Spider-Manと宿敵Green
Goblin(ウィレム・デフォー)との死闘が描かれる後半は、群を抜く出来栄えのスタントとSFXによりとびきりエキサイティングに仕上がっている。キルステン・ダンスト演じるメアリー・ジェーン・ワトソンとピーターとの恋愛もみずみずしく描かれ、監督のサム・ライミは2時間の枠の中にこれらを実に上手く納めた。不満はGreen
Goblinの原作と違うメカゴジラのようなコスチュームで、ファイティングシーンももうひと工夫欲しかったところだ。とはいえ本作はこの夏必見の一本で、早く続編が観たい(トビー・マグワイアはコロンビアと3本の出演契約を結んでいる)。また、エアロスミスの歌う主題歌も気に入ったぞ。尚、マーベル・コミックの次の企画は、かつて日本でも人気を博したTV
シリーズ「超人ハルク」の映画化「Hulk」で、「グリーン・ディスティニー」のアン・リーが監督、来夏公開予定だ。
(オフィシャルサイト: http://spiderman.sonypictures.com/)
5. 「Unfaithful」 B
(出演: リチャード・ギア、ダイアン・レイン、オリヴィエ・マルティネス)
エイドリアン・ラインは昔からエッチなスリラーを撮らせるといい味を出す監督で、「ナインハーフ」でキム・ベイシンガーを、「危険な情事」でグレン・クローズを、「幸福の条件」ではデミ・ムーアを使っていずれも成功した。本作のダイアン・レインはNY郊外の裕福な家庭の主婦で、夫(リチャード・ギア)に少し物足りなさを感じている。彼女はマンハッタンで知り合った若いブックディーラー(フランス人のオリヴィエ・マルティネス)と関係を持ち、みるみる深みにはまって行く。レインは複数のかなり強烈なセックスシーンをこなし、同時に罪悪感に悩む主婦を見事に演じた。これがシリアスドラマならOKなのだが、後半の展開(ここでは書かないが)から明らかなように、本作もあくまでセクシースリラーだ。それにはダイアン・レインは生活臭が強すぎて(「The
Perfect Storm」のレインを思い出して欲しい)、ヒロインとしての「華」がない。セックスアピールが決定的に不足している(女性にとっては逆にリアリティがあって受けるかもしれないが)。それとリチャード・ギアが妻を寝取られるという設定は痛快だが、それを目的に観に行く酔狂な人はいないだろう。リチャード・ギアとダイアン・レインは'84年の「コットン・クラブ」でも共演していたが、まあどうでもいいですね。
(オフィシャルサイト: http://www.unfaithfulmovie.com/)
6. 「About a Boy」 B+
(出演: ヒュー・グラント、 ニコラス・ホールト、トニー・コレット、レイチェル・ワイズ)
これはちょっと嬉しいロンドンを舞台にしたコメディの佳作で、ヒュー・グラントの最高作ではないか。ウィル(ヒュー・グラント)は死んだ父親の印税で暮らすプレイボーイ。自分の人生に決して誰も入れず、女性を追っかけている時以外は1人でビデオかケーブルTVを観て過ごす。ウィルは子供がいると偽ってシングルマザーのサポートグループに入会して次の女性の品定めをするが、狙った女性の友人(トニー・コレット)が自殺を図ったことから、渋々その息子マーカスの面倒を見る破目になる。マーカスは自分の母親とウィルをくっつけようとして、ウィルを閉口させる。エキセントリックなマーカスを演じるニコラス・ホールトが絶品で、次第に打ち解けて行くグラントとのやり取りはコメディの枠を超えて観る者にドラマとしての感動を与えてくれる。勿論シチュエーション・コメディとしても十分おかしい。監督は「American
Pie」のウェイツ兄弟だが、「Pie」とは全く違った趣き。ヒュー・グラントがいい俳優だと思ったのはこれが初めてだ。
(オフィシャルサイト: http://www.about-a-boy.com/)
「Episode II-Attack of the Clones」初日鑑賞計画全記録−続き
9) 10時帰宅。下の息子が早速トランペットでスター・ウォーズのテーマを吹き始める。いいぞ。たこ焼きを食べながら、細部の分からなかった部分の分析にかかる。やはり近々もう一度観ておく必要がある。
10) 5月18日(土)。自宅で「Episode I−The Phantom Menace」の DVDを観る。アナキン役のジェイク・ロイドは何回観ても大根だ。ダース・モールは殺して欲しくなかったな。「Episode
II」を観てから改めてこの前作を観ると双方が一層よくわかる。
11) 5月19日(日)。午後に妻と2度目を観に行く。初日の客に比べて今ひとつノリが悪い。でもヨーダ凄い。来年公開の「Matrix/Reloaded」、「Matrix/Revolution」の予告を観た。
次回は遂にファーストシーズンが終了したFOXの傑作TVシリーズ「24」の特集でもやろうかな。それと勿論サマームービー特集の第2弾だ。