TVゲームは目が悪くなるので、うちの息子たちは1日1時間しかやらせてもらえない。ただし特約があって、何でも英語の勉強をすればその時間だけゲームが続けられることになっている。で彼等が何をするかというと、妻が録画する「South
Park」を観る。'97年に全米で旋風を巻き起こし、ケーブルTV史上最高の視聴率を記録したこのR指定の画期的なアニメーションは、コロラドの小さな町を舞台に、ユニークの遥か彼方を行く小学生キャラクター達がカラフルなcurse
words、dirty wordsを駆使して大活躍する(この英語は早くてヒアリングは難儀だ)。息子たちはケラケラと笑いながら見ていて、終わるや否やTVゲームに直行する。
先週発表されたエミー賞のアニメ部門で、この「South Park」の1エピソード "Osama Bin Laden Has
Farty Pants"がノミネートされた。
これは我が家でもお気に入りの一本だ。
それでは今回のレヴューをどうぞ。

1. 「Mr. Deeds」 B-
(出演: アダム・サンドラー、ウィノナ・ライダー、ジョン・タトゥーロ、スティーヴ・ブセミ)
フランク・キャプラ監督の名作「Mr. Deeds Goes to Town」(邦題名「オペラハット」'36)をアダム・サンドラー主演でリメイクするという掟破りの作品。だがここまでウェットに流されてしまっては救うすべはない。オリジナルでゲーリー・クーパーが演じた、叔父の莫大な遺産を相続する田舎者の好青年ディーズがアダム・サンドラー。ジーン・アーサーが演じた、特ダネ欲しさにディーズに近づくNYのタフなTVレポーターがウィノナ・ライダー。素朴で優しいが暴力癖があるサンドラーのキャラクターは一貫性が無く、またライダーは実生活の万引き事件ですっかりイメージを落としてしまっていて、おかげでこの2人の繰り広げるラブストーリーは全く盛り上がらない(ライダーはポスターからも外されてしまった)。「Billy
Madison」、「Happy Gilmore」、「WaterBoy」などのサンドラーの初期作品のようにナンセンスに振るか、辛口のパロディにでもするならともかく、まずこの企画自体からして無理があった。ただ、全編を通じてやたらおかしいのがパッと現われてパッと消えるパットマンXのような(ちょっと古すぎたか)ディーズのスペイン人召使いに扮するジョン・タトゥーロ。これは一見の価値がある。
(オフィシャルサイト: http://MrDeeds.com)
2. 「Good Advice」 B+
(出演: チャーリー・シーン、アンジー・ハーモン、デニス・リチャーズ、ジョン・ロビッツ、ロザンナ・アークゥエット)
これは昨年Houstonでは公開されなかったロマンティック・コメディの佳作で、今回ようやくDVDで観た。ライアン(チャーリー・シーン)は破産した元ウォールストリートの株式ブローカー。ライアンは自分に愛想を尽かして外国へ去って行ったガールフレンドのシンディー(デニス・リチャーズ)の代わりに、彼女が地方紙に書いていた人生相談コラムを続ける。ライアンはシンディの上司ペイジ(アンジー・ハーモン)に思いを寄せるが、立場上シンディのボーイフレンド兼代理なので告白できない。そして彼が代筆したコラムがNY市民の圧倒的支持を得たために、ライアンとペイジの関係は増々ややこしくなる。「ウォール街」('87年)の後日談をロマンティック・コメディーにまとめたような味付けで、チャーリー・シーンは元ブローカーを達者に演じている。彼はマイケル・J・フォックスの降板後の「SpinCity」でも高い評価を得て、コメディの才能があることも証明した。一方ニュートロジーナのCMが美しいアンジー・ハーモンは才色兼備のペイジを快活に演じて魅力全開(この人は"Tonight
Show"で恋人からプロポーズされたことでも有名)。ロマコメの命とも言える脚本は細部まで良く行き届いている上に、脇役陣の配置も万全。週末にレンタルして観るには格好の1本なので覚えておこう。
(オフィシャルサイト: なし)
3. 「Men in Black II」 B-
(出演: トミー・リー・ジョーンズ、ウィル・スミス、ララ・フリン・ボイル、ロザリオ・ドーソン、リップ・トーン)
4'97年の大ヒット作の続編は見事に期待を裏切ってくれた。今回はVictoria's Secretの下着モデルに化けた凶悪エイリアン、セリーナ(ララ・フリン・ボイル)が、地球のどこかに隠された謎の力を持つ物体"Light"を求めてMIB本部を急襲。今ではトップエージェントに成長したJ(ウィル・スミス)は、唯一"Light"の隠し場所を知る元上司のK(トミー・リー・ジョーンズ)を現役に復帰させる。過去の華々しい活躍の記憶を消されて田舎の郵便局員を真面目に勤めるトミー・リー・ジョーンズの大ボケ演技は楽しい。だがおかしいのはここまで。前作の持っていた斬新でスタイリッシュな演出、細かいアイディアを活かした切れ味鋭い脚本は影を潜め、逆にSFXに振り回されているようなジョーンズとウィル・スミスの疲労感だけが残る。「The
Practice」のララ・フリン・ボイルのセクシーエイリアンぶりも魅力に乏しく、むしろ前作のラストでエージェントLに昇格したリンダ・フィオレンティーノが恋しくなった。
尚、本作で使われたMIB仕様のメルセデス・ベンツEクラスは実際に米国内ディーラーで販売中だ。
(オフィシャルサイト: http://MenInBlack.com)
4. 「Like Mike」 C+
(出演: バウ・ワウ、モリス・チェスナット、ロバート・フォス
ター、クリスピン・グローバー、ユージン・レヴィ)
子供がマイケル・ジョーダンの使ったらしい魔法のスニーカーを手に入れてNBAで大活躍するという話だと思ったら、内容はむしろ「アニー」そのもの。孤児のカルヴィンを演じるラップシンガーのバウ・ワウを始めとして、チームメイト役のモリス・チェスナット、コーチ役のロバート・フォスター、それに孤児院の悪徳院長を演じるクリスピン・グローバーと癖のあるキャストを揃えたのだが、安易なお涙頂戴のストーリーに終わってしまった。NBAエンターテインメントとの共同作品なので、アラン・アイバーソン、ジェイソン・キッド、スティーブ・ナッシュ、ヴィンス・カーター等々のNBAスターが登場するが、予告編より面白いゲームのシーンはなくこっちも期待外れであった(マイケル・ジョーダンも出てないし)。
(オフィシャルサイト: http://www.likemikemovie.com)
5. 「Road to Perdition」 A-
(出演: トム・ハンクス、ポール・ニューマン、ジュード・ロウ、タイラー・ホークリン、ダニエル・クレイグ、監督: サム・メンデス)
公開前から評論家諸氏の絶賛を受けていた一昨年のオスカー監督サム・メンデス(「American Beauty」)の最新作は、間違いなく現時点でオスカーに最も近い作品だ。原作はディック・トレイシーで有名なマックス・アラン・コリンズのグラフィック・ノベル。舞台は1931年のシカゴ近くの街。そこを牛耳るアイリッシュ・マフィアのルーニー(ポール・ニューマン)には不肖の息子コナー(ダニエル・クレイグ)がいるが、ルーニーが寵愛するのは彼の右腕のヒットマン、マイケル・サリバン(トム・ハンクス)だ。だがある晩マイケルの息子マイク(タイラー・ホークリン)がコナーと父親による殺人を目撃したことから、ストーリーは急旋回する。コナーがサリバン一家の暗殺を謀ったために、ルーニーは実の息子コナーかマイケルかの苦渋の選択を迫られる。一方望みのない逃亡者生活を通じてマイケルとマイクには初めて親子の絆が生まれる。サム・メンデスによるこの2組の父と子の描写は見事だ。
それにしてもトム・ハンクスは凄い。ヒットマンの場面と父親の場面とで、目が全く違うのだ(目付きじゃなくて、目だぞ)。今、デンゼル・ワシントンとどっちが上だろう。また、威厳を保ちながらも息子には弱みを見せるルーニーを演じた77歳のポール・ニューマンの存在感も驚異だ。この2人のオスカーノミネーションもまず堅いところ。全編を通して暗く重い作品だが、余韻の残る美しいラストシーンには救済がある。それから薄い髪のクリーピーな殺し屋で登場するジュード・ロウはチャーミングだ。
(オフィシャルサイト: http://www.roadtoperdition.com)
6. 「Reign of Fire」 B+
(出演: マシュー・マコノヒー、クリスチャン・ベイル、イザベラ・スコルプコ)
これはこの夏のちょっとした掘り出し物で、何と近未来の地球はファイヤー・ドラゴンに制圧されてしまったという設定(「ターミネーター」で描かれた未来で、コンピューターとロボットを火を吐く無数のドラゴンに置き換えればいい)。ロンドン近郊の古城で残された子供たちと小さなコミュニティーを営むのがクリスチャン・ベイル(「アメリカン・サイコ」)。一方戦車部隊とヘリコプターを率いて、兵士をリクルートしながらドラゴンスレイヤーを演じるタフなアメリカ人がマシュー・マコノヒー。彼らが度重なるファイヤードラゴンとの死闘でほとんどの兵士を失い、更にベイルのコミュニティーもが襲撃された時、生き残った者たちが人類の存亡を賭けた最後の戦いに挑む。スクリーン狭しと飛び回るファイヤードラゴン観るのは楽しいし、「Wedding
Planner」の二枚目役から突然スキンヘッドの筋肉男に変身したマコノヒーはなかなかお茶目じゃないか。B級SF映画として無視してしまうにはちょっと惜しい迫力と面白さを持った作品だ。
(オフィシャルサイト: http://www.reignoffire.com)
7. 「Eight Legged Freaks」 B-
(出演: デヴィッド・アークエット、カリ・ウーラー、スコット・テラ)
ファイヤー・ドラゴンの次は大グモ。「インディペンデンス・デイ」、「ゴジラ」のローランド・エメリッヒが、SFXを駆使して仕掛けた'55年の「タランチュラの襲撃」の現代版で、アリゾナの小さな町が環境汚染のために突然変異(この言葉、良く「ウルトラQ」で使われたな)を起こして巨大化した数百匹のクモに襲われる。ホラー・コメディを狙っているのだが、ぴょんぴょんと数百メートルもジャンプしながら動くものを襲い破壊の限りを尽くす大グモは全然恐くないし、銃弾で粉々になる様もTVゲームのようだ。「スクリーム」のデヴィッド・アークエットを始めとする町の住民たちの右往左往ぶりもあまり笑えない。むしろ大いに魅力的だった美人保安官役のカリ・ウーラーを主役にして、R指定のセクシー・ホラー・コメディに仕上げたら良かったのにと思うのは、あまりにも軽薄だろうか。
(オフィシャルサイト: http://www.eightleggedfreaks.com)
8. 「K-19:Widowmaker」 B+
(出演: ハリソン・フォード、リーアム・ニーソン)
冷戦下の'61年に、旧ソ連の原子力潜水艦K-19に起きた実話をベースにしたスリラー。ストーリーの前半は野心に燃える冷酷非情な新艦長(ハリソン・フォード)と、部下から信頼の厚い降格された元艦長(リーアム・ニーソン)の確執が描かれる(この勝負リーアム・ニーソンの勝ち)。しかしソビエト上層部が強引に出航させたK-19の核反応炉は不完全で、冷却装置が故障し核爆発の危機に見舞われる。K-19に核爆発が起きれば米国側はソ連の先制攻撃だと思い込み、核戦争が勃発する可能性があるわけだ。ここからの主役はフォードでもニーソンでもない無名の役者たちで、7名のボランティア(と言ってもほとんど強制、ソ連だから)が冷却装置の漏れを止めるために放射能が蔓延するハッチに入って行き交替で作業をする。潜水艦の閉塞感に加えて描かれるこの被爆の恐怖は強烈で、そういう意味では本作は優れたスリラーだ。しかし愛国心や勇気に感動すると言うより、単に気持ちが悪くなるこの反応炉の描写のために、見終わっても爽快感はない。正直言って良く出来ていてもベストテンに入れたくなるような作品ではないのだ。
それからこのタイトルのセンスは最低で、ほとんどの映画ファンは'89年のジム・ベルーシと警察犬のつまらない映画「K-9」を思い出して笑ってしまうだろう。
(オフィシャルサイト: http://www.k19movie.com)
これまで約300本を紹介してきたこのコラムも4年目に突入する。次回は
2002年サマームービーの最終回だ。