NYやカリフォルニアと違ってヒューストンには日本の本屋がないので、 先日一時帰国したおりに、本を25冊買って帰ってきた。大部分は翻訳小
説だ。英語が平易なジョン・グリシャム、ロバート・B・パーカー、そ れにジェームズ・パターソンなどはペーパーバックでも問題ないが、原
書で読むには少々辛い作家も多い。今回購入したのはネルソン・デミ ル、クライブ・カッスラー、スティーヴン・ハンター、そしてデニス・
レヘインなどの「少々辛い作家たち」の翻訳。
で、何が言いたいかというと、デニス・レヘインの私立探偵パトリック ・ケンジー&アンジー・ジェナーロのシリーズ。これが凄い。ミステ
リー/冒険小説はここ5〜6年あまりフォローしていないのでその道の人 にとっては「何を今さら」かもしれないが、歳を取って守りに入った身
にとっては久しぶりに止められない作品に出会えた。このシリーズ、R ・チャンドラーのワイズクラック+叙情と、A・ヴァクスのバディ+バイ
オレンス小説の要素が共存する奇跡のような作風で、さらに凄いのはお そらくミステリー/冒険小説史上最高の恋愛小説でもある点だ。そのくら
い主人公の1人アンジー・ジェナーロの魅力は突出していて、事件の解 決以上にパトリックとアンジーの関係が気になってしまう。加えて強烈
な個性の登場人物たちはものの見事に描き分けられている上に、ストー リーのテンポ、意外性、説得力ともに申し分ない。角川文庫より「ス
コッチに涙を託して」、「闇よ、我が手を取りたまえ」、「穢れしもの に祝福を」、「愛しき者はすべて去りゆく」の4冊が出ているので、未
読の方は是非一読をお薦めする。特に初めの2冊がいい。
映画の方は秋からThanksgivingを繋ぐ玉石混合の7本をどうぞ。

1. 「My Big Fat Greek Wedding」 B+
(出演: ニア・ヴァルダロス、ジョン・コーベット、マイケル・コン スタンチン、レイニー・カザン)
ギリシア系のリタ・ウィルソン(トム・ハンクス夫人)の支援で公開に こぎつけた本作は、21週間かかって興行収入1億ドル、全米ボックスオ
フィス2位まで登りつめたロマンティック・コメディ。あまりパッとし ないギリシア系アメリカ人の娘トウラ(ニア・ヴァルダロス)が、一族
で初めてWASPの大学教授(ジョン・コーベット)と結婚するまでの大騒 ぎが描かれる。ストーリーは平凡な"A boy meets
a girl"スタイルで、 近代ロマコメにおける必修科目の「粋な出会い」、「誤解」、「おせっ かいな友人」、「おしゃれなエンディング」などは完全に無視されてい
る。しかし全編カルチャー・ギャップのおかしさだけで観客をねじ伏せ てしまうパワーがある。特にトウラの頑固で情けない父親を演じるマイ
ケル・コンスタンチンが秀逸。たまにはこういう善人しか出てこない素 朴な映画もいい。
(オフィシャルサイト: http://movies.yahoo.com/greekwedding)
2. 「One Hour Photo」 B-
(出演: ロビン・ウィリアムス、コニー・ニールセン、ゲイリー・ コール、エリック・ラ・サル)
ロビン・ウィリアムスが精神異常の写真屋に扮する小ぶりのサイコ・ス リラー。サイ(ロビン・ウィリアムス)はスーパーの写真屋で、長年郊
外のある一家の生活ぶりを写真の現像を通じて見守ってきたが、次第に 自分もその家族の1人と考えるようになる。やがてその意識がサイの中
で膨れ上がり、異常な行動を取り始める。徹底的に抑えた演技で好々爺 のようなサイのキャラクターを体現するウィリアムスはいいのだが、作
品は最後までサスペンスが盛り上がらないまま終わってしまう。物語に ひねりが不足している上に、観客があまりにもウィリアムスのおかしさ
とパワーに慣れてしまっているので、これでは物足りないのだ(この役 はビリー・ボブ・ソーントンか志村喬に演らせたかった)。また刑事役
のエリック・ラ・サルも、「ER」のベントン医師のイメージが強すぎて 物語から浮いている。ミスキャストだよ、これは。
(オフィシャルサイト: http://www.foxsearchlighjt.com)
3. 「City By the Sea」 A-
(出演: ロバート・デニーロ、フランシス・マクドーマンド、ジェー ムズ・フランコ)
久しぶりに気合いの入ったデニーロが観られる、NYを舞台にした骨太な 人間ドラマ。ヴィンセント(ロバート・デニーロ)は辣腕刑事で、妻と
は離婚し、同じアパートの一階上にガールフレンド(「Almost Famous」 のフランシス・マクドーマンド)がいる。だがヴィンセントの父親は死
刑囚の上に一人息子はヤク中なので、自分の殻に閉じこもって日夜悪い やつらを追っかけている。その一人息子ジョーイが売人の殺人容疑をか
けられたことから、ヴィンセントは疎遠であった息子との関係を見直す ことになる。このジョーイを演じるジェームズ・フランコが何と言って
も抜群にいい。フランコはジェームズ・ディーンの伝記番組の主演で有 名だが、クールからはほど遠いヤク中の負け犬を絶妙に演じている(こ
いつ、将来大化けするかもしれない)。かつて家族が幸福に過ごしたロ ングビーチ("City by the Sea")の思い出に、その昔幼い息子に背を向
けた罪悪感から逃れられない父親と、父親を慕い憎みながら身を落とし ていく息子の葛藤をオーバーラップさせて行く演出が効いていて、つい
に互いの心情がほとばしるラストは観る者の心を打つ。「デニーロ健 在」を改めて印象づけられる一作。
(オフィシャルサイト: http://citybythesea.warnerbros.com)
4. 「The Banger Sisters」 B+
(出演: ゴールディ・ホーン、スーザン・サランドン、ジェフリー・ ラッシュ、エリカ・クリステンセン)
2人合わせて111歳のゴールディ・ホーンとスーザン・サランドンに、 オージーの名優ジェフリー・ラッシュを加えた3人が織り成す大人向け
コメディ。ホーン扮するスゼットとサランドン演じるラビニアは若い頃 "Banger Sisters"と呼ばれた有名なグルーピーであったが、スゼットが
いまだにパーティーアニマルなのに対してラビニアの方は過去を隠して 金持ちの弁護士と結婚し、上流社会の生活を楽しんでいる。ところがお
金を借りるためにスゼットが20年ぶりにラビニアを訪ねたことから、ス ゼットに感化されたラビニアが昔に戻り、彼女の家庭が崩壊し始める。
更にスゼットが来る途中で知り合った神経症を病むハリウッドのシナリ オライター(ジェフリー・ラッシュ)までもがスゼットに誘惑されて変
調する。歩くカオスと化したゴールディ・ホーンは、往年のキュートで 破天荒なキャラクターにタフな年増の嫌らしさが加わり絶妙の味を醸し
出している。'80年の「プライベート・ベンジャミン」以来のオスカー・ ノミネーションもあるかもしれないぞ。
(オフィシャルサイト: http://www.foxsearchlight.com)
5. 「Trapped」 B
(出演: ケビン・ベーコン、チャーリズ・セロン、ステュアート・タ ウンゼント、コートニー・ラブ)
「激流」、「Hollow Man」など、悪役に回った時のケビン・ベーコンは 恐い。本作でも子供を誘拐しておいて仲間に預け、自分は美しい母親
(チャーリズ・セロン)をいたぶって本領をいかんなく発揮している。 だがその子供がひどい喘息持ちだったことから完璧だったはずの計画が
破綻し始める。ケビン・ベーコンが力強い前半はまだ良いのだが、問題 は後半になると誘拐計画の破綻と共にストーリーも一緒に破綻してしま
い、誰にも収拾できなくなってしまう点だ。一応最後まで飽きさせはし ないが、月並みなカーレースを絡めた派手なエンディングには緊迫感も
意外性もカタルシスもなく、凡作以上にはなり得なかった。
(オフィシャルサイト: http://SonyPictures.com)
6. 「The Four Feathers」 C+
(出演: ヒース・レジャー、ケイト・ハドソン、ウェス・ベント リー)
19世紀後半、イギリスの植民地化が進むスーダンを舞台にして、愛と友 情を高らかに謳い上げるあまり感動しない一大スペクタクルロマン。
ヒース・レジャー(「Knights' Tale」)扮する英国士官のハリーは、 スーダン行きが決まると出発の前日に軍隊を辞める。しかし友人たちか
ら臆病者の烙印を押され、婚約者エスニー(ケイト・ハドソン)にも去 られたハリーは、一転単身スーダンに乗り込む。このハリーの突然の心
変わりからして首をひねってしまう。そしてこの基本的に無理なストー リーに加えて、砂漠では生き延びることも出来ないハリーを助けるラン
ボーのような謎の戦士が出現する御都合主義、餓死寸前なのにそう見え ないヒース・レジャー、終始添え物でしかないケイト・ハドソン(母親
のゴールディー・ホーンより老けて見える)、不自然なエンディング と、全編底の浅さを露呈し続ける。とどめは長い上映時間(2時間10
分)だ。オーセンティックに見えるのはハリーの親友ジャックを演じる ウェス・ベントリーだけで、製作者とアクターの気合いが空回りしてし
まった失敗作と言わざるを得ない。主演を降りたジュード・ロウ(代わ りに「A.I.」に出演)は今ごろ胸をなで下ろしているだろう。
なお、。タイトルの"The Four Feathers"は、弱虫の印として3人の友人 からハリーへ届いた3枚の白い羽と、エスニーがハリーに言った
"coward"という止めの一言を表わしている。
(オフィシャルサイト: http://FourFeathersMovie.com)
7. 「Sweet Home Alabama」 B+
(出演: リース・ウィザースプーン、ジョッシュ・ルーカス、パト リック・デンプシー、キャンディス・バーゲン、フレッド・ウォード)
公開3日間で3千8百万ドルを稼ぎ、9月公開作品の新記録を作った リース・ウィザースプーンのロマコメ。もはやこのカテゴリーにはジュ
リア・ロバーツも、メグ・ライアンも、サンドラ・ブロックも不要で、 われらがリース・ウィザースプーンがいればいい。そのウィザースプー
ン演じるメラニーはNYの新進デザイナーで、市長(キャンディス・バー ゲン)の息子アンドリュー(パトリック・デンプシー)からプロポーズ
されて幸福の絶頂にいる。しかしメラニーは7年前にアラバマに捨てて きたダメ男の夫ジェイク(ジョッシュ・ルーカス)と法的に別れていな
いために、慌てて帰郷する。メラニーはジェイクに離婚届にサインをさ せて10分後にアラバマを去るはずだったが…。
ストーリーはラブコメとしては笑いが今ひとつ、ラブストーリーとして は浅すぎてどっちつかずだが、アンドリューとジェイク双方がフェアに
描かれている点は好感が持てる。とにかくウィザースプーンの魅力で 持っている作品。彼女は美人でもセクシーでもないが、キュートで何よ
り歯切れの良い話し方と声がいい。すっかりひいきになってしまった。 「Legally
Blonde」の続編、「Red, White, & Blonde」の製作も決まり (ギャラ千5百万ドル!)、まあラブコメは当分彼女の一人勝ちでしょ
う。
(オフィシャルサイト: http://www.sweet-home-alabama.com)
サマームービーが終わり、TVのシーズン・プレミアが一斉に始まった。 皆さんがアメリカに来てホテルで観る時のお薦めは、コメディなら
「Friends」、「Will & Grace」、「Frasier」、それに「South Park」、アクションなら「24」と「Alias」、ドラマなら「Law
& Order」、「The West Wing」、「CSI:Crime Scene Investigation」、 「The
Sopranos」、Sci-fiなら「Enterprise」といったところか。 新番組で注目しているのが、家族向けドラマの「American
Dreams」、デ ヴィッド・カルーソとキム・デラーニーの「NYPD Blue」コンビが主演の
「CSI:Miami」、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に似た設定のラブ コメ「That
Was Then」、それにトム・サイズモア主演のLAを舞台にした 刑事ドラマ「Robbery
Homicide Division」などだ。