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Mr.DOBASHI no テキサス映画通信

”Houston, we have a problem!(44)

Dobashi Shuichiro 土橋 秀一郎


Backnumber

アメリカでは「It's a Wonderful Life」と「National Lanpoon's ChristmasVacation」のTV放映が終わると、それはまた1年が過ぎようとしているということだ。今年最後のテキサス映画通信は、前回予告したように新企画「ちょっと古くて渋めの映画探偵団」の第1回から。 ここテキサスを舞台にした1983年の名作「Tender Mercies」だ

―ちょっと古くて渋めの映画探偵団 第1回―



「Tender Mercies」(1983) A-
(出演:ロバート・デュバル、テス・ハーパー、アラン・ハバード、ベティ・バックリー、エレン・バーキン、監督:ブルース・ベレスフォード)


確か渋すぎて日本未公開だったはずの隠れた名作。20年前にすでにいぶし銀俳優であったロバート・デュバル演じるマーク・スレッジは、アル中で人生を転落した元有名カントリー・シンガー。そんな彼が、流れ着いたテキサスの田舎町で若い未亡人(当時テキサスの無名女優だったテス・ハーパー)とその息子に出会い、カムバックするまでの紆余曲折が力強く描かれる。劇中歌のほとんどを自ら歌い、曲も提供したデュバルの演技と圧倒的な存在感が、全編を包み込む作品の優しさと相まって観る者の胸を打つ。おそらく当時この作品を観てもこの作品の良さは分からなかっただろう(DVDに感謝)。前年(1982)公開のクリント・イーストウッド監督・主演作品「Honkytonk Man」(邦題「センチメンタル・アドベンチャー」)は良く似た作品だが、とても本作とは比較にならない。アカデミー主演男優賞(デュバル)、脚本賞(ホートン・フート)受賞。

そして11本のX'mas movieをどうぞ。


1. 「Solaris」 B
(出演:ジョージ・クルーニー、ナターシャ・マクエルホーン、ジェレミー・デービス、監督:スティーヴン・ソダーバーグ)


学生時代にスタニスワフ・レムの原作「ソラリスの陽のもとに」を読み、'72年のソ連製オリジナル「惑星ソラリス」も観たが、ともにあくびが出るほど退屈だった。これをジェームズ・キャメロン(製作)と「Ocean's Eleven」のスティーヴン・ソダーバーグ(監督、脚本、撮影、編集)がリメーク。惑星ソラリスの観察ステーションで続発する異常現象の調査に行った心理学者ケルビン(ジョージ・クルーニー)の前に、自殺したはずの妻(「Ronin」のナターシャ・マクエルホーン)が現われるというのが基本ストーリーなのだが、キャメロンとソダーバーグはこれを小ぶりのラブ・ストーリーに仕立てた。原作は映画化しても面白くなりようがないハードSFなのでこのアプローチは悪くないし、相変わらずソダーバーグのカメラワークは抜群に上手い。しかしマクエルホーンに今ひとつ魅力がないことに加えて、狭い空間でクルーニーのバート・ランカスター似の濃い顔が全編に溢れているので思わず引いてしまう。アメリカ人は結構映画の勘が良いので、この映画は全く当たらなかった。エンターテインメントとしてはあまり期待しない方がいい。
(オフィシャルサイト: http://www.solaristhemovie.com/


2. 「Extreme Ops」 C+
(出演:ジョー・アブソロム、ジャナ・パラスキ、ブリジット・ウィルソン‐サンプラス)


何となく見覚えはあるが名前を知らないアクターたちによるB級アクション(ブリジット・ウィルソン‐サンプラスは確かテニスプレイヤーのサンプラス夫人のはずだがどうでもいいか)。超過激なCM撮影のためにオーストリアの雪山に集まったスキーとスノボーの達人たちが、そこで指名手配中のボスニアの戦犯一味と鉢合わせし命を狙われる。この手の荒唐無稽なストーリーは大好きなのだが、スキーヤーたちがどうやってプロの殺し屋群団を撹乱し、逆襲に転じるかという最重要課題が全く克服されていない。せっかく前半で主人公たちの華麗なスキー/スノボーテクニックがかなりの時間を費やして活写されているのに、後半でそれが余り活かされていないのだ。この消化不良の脚本ではもともと低予算のB級アクションがそれ以上になりようがなかった。
(オフィシャルサイト: http://www.extremeopsmovie.com/)


3. 「Analize That」 B
(出演:ロバート・デニーロ、ビリー・クリスタル、リサ・クドロー、監督:ハロルド・ライミス)


''99年の大ヒットコメディ「Analize This」(邦題名「アナライズ・ミー」)の続編。シンシン刑務所で商売敵に雇われたヒットマンから命を狙われるマフィアのドン、ポール(デニーロ)は、精神異常を演じてまんまと出所に成功し、友人の精神科医ベン(ビリー・クリスタル)の監督下に入る。クリスタルはデニーロを更正させようとし、デニーロはマイペースでマフィア稼業を再開する。狂っているところを見せるために「ウエストサイド物語」を歌って踊るデニーロは楽しく、再びマフィアとの悪夢の生活が甦る気の毒なビリー・クリスタルは相変わらず達者で、おかしい。しかし全体を通して笑いが単発で、前作のようなシチュエーションから次々と湧き出る面白さや、デニーロとクリスタルの相乗効果による笑いの加速度感が影を潜めてしまった。それに「フレンズ」のリサ・クドローは全く存在感がなく、不要なキャラになっている。今やマフィア物と言えば、ドラマと言う意味でもコメディと言う意味でもHBOのスマッシュ・ヒット「The Sopranos」の独壇場であり、デニーロと言えどもジェームズ・ガンドルフィーニ演じるトニー・ソプラノの前では影が薄い。危うく失敗作になるところを、芸達者なビリー・クリスタルが救ったと言うところか。
(オフィシャルサイト: http://www.analyzethatmovie.com)


4. 「Treasure Planet」 B+
(声の出演:ジョゼフ・ゴードン・レビット、デヴィッド・ハイド・ピアース、エマ・トンプソン、マーティン・ショート、ブライアン・マレイ)


1883年のスティーヴンソンによる原作「Treasure Island」をSFに置き換えて、「スター・ウォーズ」と「レイダース」を合わせたようなエンターテインメントに仕上げたディズニーの新作アニメ。「スラムダンク」の宮城リョータ似の主人公ジム・ホーキンスが、宇宙海賊の残した莫大な財宝を求めて冒険の旅に出る。サイボーグと化したジョン・シルバー、C3POのようなロボットBEN(声:マーティン・ショート)を始めとして各キャラクターは生き生きと描き分けられ、後半のスペクタクルシーンはスリリングで実に楽しい。ジムとシルバーの敵同士ながら父子のような関係も多少ウエットに流され過ぎるが感動的で、2人の10年後の物語を観てみたいという気にさせる。欠点らしい欠点といえば、"Treasure Planet"を割りとあっさり見つけてしまうことで、この点は昨年の「Atlantis」の教訓が生かされていない。
(オフィシャルサイト: http://treasureplanet.com


5. 「tar Trek:Nemesis」 B+
(出演:パトリック・スチュアート、ブレント・スパイナー、ジョナサン・フレークス、トム・ハーディ、マリナ・サーティーズ)


TVシリーズ「Star Trek:The Next Generation」(邦題「新スター・トレック」)のオリジナルキャストによる最後の映画は、初めて外部から招へいしたジョン・ローガンのパワフルな脚本を得て見事に有終の美を飾った。惑星連邦とロミュラン星の和平交渉が進む中で、ロミュラン内でクーデターが勃発。調査に向かったピッカード艦長(パトリック・スチュアート)率いるエンタープライズ号の前に、謎の地球人シンザン(トム・ハーディ)が現われる。数奇な運命によりピッカードと同じ頭脳を持つシンザンは、巨大なロミュランバード(戦闘用宇宙船)でコーキング・ディバイス(物質透明化装置)を操りエンタープライズ号を圧倒、ピッカードとそのクルーは完膚無きまでに痛めつけられる。「Gladiator」を書き自らもトレッキーを自負するローガンの脚本は大味で、ピッカード対シンザンの頭脳合戦の描き方も甘く、またオリジナルに見られるクルーたちのアンサンブルという意味でも不満が残る。だが全編を通して極めてスリリングで最後まで目が離せない。しかも今回ピッカードが被る主要クルーの戦死はファンにとっても余りにも重い。

このコラムでも'87〜'94にかけて全米で放映された「The Next Generation」の素晴らしさは折りに触れて書いて来たが、全178話から成るこのシリーズは、その確固たる世界観、魅力的なキャラクター達、卓越したアイディアとSFX、差別問題や人生観にまで踏み込む骨太のドラマ性と、現在でも他のSFシリーズの追随を許さず、常にどこかのケーブル局で再放送されている。日本でもCS放送やDVDで観られるので、観たことのない人は是非トライして欲しい。造語はあるがスラングはほとんどないので英語の学習にも最適だ。
(オフィシャルサイト: http://StarTrek.com


6. 「Maid in Manhattan」 B+
(出演:ジェニファー・ロペス、ラルフ・フィアンズ、ナターシャ・チャードソン、ボブ・ホスキンス)


これは底は浅いが意外に楽しめたロマンティック・コメディ。ジェニファー・ロペス演じるマリサはシングルマザーでホテルのメイド。仲間にそそのかされてスイートルームの高価な服を着ているところをプレイボーイの上院議員候補クリストファー(ラルフ・フィアンズ)に見染められてデートをする。この後は自分の正体を隠すマリサと彼女を絶望的に捜し続けるクリストファーという、定石通りの「すれ違い」が続く。凡庸なストーリーの割に飽きさせないのは、言っちゃ悪いがワーカークラスの方がジェニファー・ロペスに合っているのと、ラルフ・フィアンズの演技がけれん味なく大変チャーミングだからだ。フィアンズは前作「Red Dragon」のシリアルキラー役から大転換だが、全くその影響を感じさせない。地味だが幅のあるいいアクターだ。そしてエンディングも嫌味なく現実的にまとまっているので、デートムービーには最高でしょう。
(オフィシャルサイト: http://MaidinManhattan.com


7. 「Far from Heaven」 A-
(出演:ジュリアン・ムーア、デニス・クエイド、デニス・ヘイスバート、パトリシア・クラークソン、監督:トッド・ヘインズ)


ジュリアン・ムーアの好演が話題の、'50年代を舞台にしたメロドラマの傑作。キャシイ(ジュリアン・ムーア)は大手家電会社を経営するフランク・ウィテカー(デニス・クエイド)の妻で、2児の母親。アメリカの良妻賢母の理想としてメディアからも慕われている。ところがフランクからゲイであることを告白されてから幸せそのものだったはずの人生に亀裂が入り始める。キャシイはフランクと家庭を守るため絶望的な努力を続けるが、一方で黒人の庭師レイモンドに魅かれていく。こう書くとまるで陳腐なソープオペラのようだが、次第に絶望感に蝕まれて行く恐ろしさを見事に表現するジュリアン・ムーア、この時代にゲイであることの苦脳を体現するデニス・クエイド(最近出る度に良くなる)、そして広い度量と知性ある黒人庭師レイモンドを完璧に演じてみせるデニス・ヘイスバート(TVシリーズ「24」のタフな大統領役もいいぞ)の3人のアンサンブルは絶妙だ。更に家庭崩壊のプロセスと許されるはずもない悲愛の行方を平行して描くトッド・ヘインズのストーリーテリングは、下手なサスペンス映画よりずっとスリリングだ。エルマー・バーンスタインのどこか懐かしいスコアも文句のつけようがなく、極めて完成度の高い作品だ。
(オフィシャルサイト: http://www.farfromheavenmovie.com


8. 「The Lord of the Rings: The Two Towers」 A
(出演:イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、ヴィーゴ・モーテンセン、ショーン・アスティン、クリストファー・リー、オーランド・ブルーム、ジョン・ライズ‐ダビエス、バーナード・ヒル、監督:ピーター・ジャクスン)


昨年の「The Fellowship of the Ring」に続く本作は、よりパワフル、より明確になった人物設定、更に魅力的な新しいキャラクターを得て期待通りの堂々たる出来栄えで見応え充分。前作の最後で悪魔の君主サルマン(クリストファー・リー)の支配力を決定的にする魔法の指輪を破壊するため、親友サムと2人だけでソーロン帝国を目指す決意をしたフロド(イライジャ・ウッド)。その2人の前に、かつての指輪の持ち主で、今では指輪の悪影響で醜く変身したゴーラムが現われる。一方フロドとサムを追う途中でセオドン王(バーナード・ヒル)と共にソーロン兵士との凄絶な戦いを余儀なくされる3人の正義の騎士達(ヴィーゴ・モーテンセン、オーランド・ブルーム、ジョン・ライズ‐ダビエス)。そして死の淵から甦る善の魔法使いガンダルフ。疾走感あふれる壮大な合戦シーン、驚異的なCGによるゴーラムの超ユニークなキャラクター、更にガンダルフ役のイアン・マッケランと戦士アラゴーンを演ずるヴィーゴ・モーテンセンのオーラを放つ極上の演技と、実に見所は多い(もはや誘拐された2人のホビットとリヴ・タイラーは不要だ)。おそらく後に映画史上最高の3部作と言われるであろうこの一大叙事詩を、リアルタイムで観られるわれわれは幸せだ。完結編の「Return of the King」が公開されるのは来年末。それまでもフロド達の冒険の日々は続く。
(オフィシャルサイト: http://www.lordoftherings.net


10. 「Two Weeks Notice」 B
(出演:サンドラ・ブロック、ヒュー・グラント)

Miss Congeniality」に続く、サンドラ・ブロックがプロデュースもつとめるロマンティック・コメディ。ブロックはNYの弁護士で、スーパーリッチなヒュー・グラントが所有する建設会社がコニー・アイランドの歴史的なコミュニティーセンターを取り壊すことに反対している。たまたま優秀な弁護士を捜していたグラントはコミュニティーセンターを保存することを条件にブロックを雇い入れるが、ブロックは気まぐれで女たらしの遊び人グラント(グラントはこれ以外の役で存在理由が思い浮かばないが)にとって絶好のアドバイザー兼秘書兼世話役と、なくてはならない存在になる。物語は一応2人が次第に魅かれ合うように展開するが、説得力がなく、取り立てて新規さもなく、むしろヒュー・グラントの魅力に負うところが大きい。今やこのジャンルでは女優はリース・ウィザースプーンのぶっちぎりで、これを追うのがJ・Loとケイト・ハドソン、さらに遅れてサンドラ・ブロック。男優はヒュー・グラント、ジョン・キューザック、それにマシュー・マコノヒーが三つ巴の様相だ。尚、"two weeks notice"とは、アメリカで会社を辞める際に必ず2週間前までにその旨申し入れなければならないという一般的なルールのこと。ここではブロックの退職が決まり、2人が急速に魅かれ合う時期を指している。
(オフィシャルサイト: http://www.twoweeksnoticemovie.com


11. 「Catch Me If You Can」 A-
(出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス、クリストファー・ウォーケン、マーティン・シーン、エイミー・アダムス、監督:スティーヴン・スピルバーグ)


これは10代で詐欺師となったフランク・エバグネイルがFBI捜査官カール・ハンラティに捕まるまでを、S・スピルバーグがライトコメディに仕上げた実話で、スピルバーグとしては初めて成功したコメディだろう(「1941」や「フック」はひどい出来だった)。レオナルド・ディカプリオ扮するフランクは両親の離婚をきっかけに偽小切手による詐欺を始めるが、上手く行かない。だが次第にパイロット、ERの医師、法律家などに化けることによって人々が簡単に騙されることを知るとその才能が開花する。やがてフランクが詐欺で百万ドル単位の収入を得るようになるとFBI捜査官のカール(トム・ハンクス)に目をつけられ、2人の追いかけっこが始まる。プレイボーイで犯罪者というディカプリオの役柄は、彼のファンには「タイタニック」以来のクリスマス・プレゼントになるだろうし、もともとコメディ出身のハンクスは控え目ながらやっぱり上手いなあと思わせる。楽しいアニメーションによるクレジットに重なるジョン・ウィリアムスのコミカルなスコアから始まる物語は、あっと驚くような仕掛けはないものの快調なテンポと会話で途中全く飽きさせない。また今回は脚本に絡んでいないせいかスピルバーグ臭さも気にならず、エンディングも出色の出来栄え。全編犯罪だらけだが罪の無いホラ話のような実話だ。本物のフランク・エバグネイルがTVインタヴューを受けていたが、現在は詐欺防止のコンサルタントをしているという。それ以前の彼の波瀾万丈の人生は映画を観てのお楽しみ。
(オフィシャルサイト: http://www.dreamworks.com/catchthem




次回はゴールデングローブ賞最多ノミネートの話題のミュージカル「Chicago」、ニコラス・ケイジとメリル・ストリープ共演の「Adaptataion」、デンゼル・ワシントンの監督デビュー作「Antwone Fisher」など、02年度作品の残りと、第4回「Texas Movie Awards」の発表だ。それでは皆さん、映像翻訳の勉強頑張って下さい。良いお年を。