スーパーボールで流されるCMは秀逸なものが多く、これをTVで観れるのはアメリカに住む特権の1つだ。今回面白かったのはFedExによる「Cast Away」のパロディ。漂流生活から生還したトム・ハンクス似の男が持ち帰った小包を届けに行くと、荷物を受け取った主婦らしい女性がお礼を言って包みを開ける。すると中に入っていたのはGPSや携帯電話だったというオチ。こういうセンスっていいよね。
さて、2002年度のアメリカ映画を総括する第4回「Texas Movie Awards」をお届けする。今回は年末に飛び込んだ傑作ミュージカル「Chicago」のおかげで、ことベストワン選びに関しては何ら迷うことがなかった。そのくらいこの作品の出来は突出していて、「蜘蛛男」も「魔法の指輪」も暫し記憶の奥へ埋もれてしまった。アクターではデニス・クエイドとジュリアン・ムーアが正に旬で、当分目が離せない。また例年通り最激戦区は助演男優賞だったが、「TheLord of the Rings」の驚異のCGキャラクター・ゴーラムが人間以上に人間的だった。では各賞の発表です。
「第4回 輝け、Texas Movie Awards!」
・最優秀作品賞&ベストテン
最優秀作品賞 「Chicago」
第2位 「The Lord of the Rings:The Two Towers」
第3位 「Spider-Man」
第4位 「The Rookie」
第5位 「Star Wars:Episode II-Attack of the Clones」
第6位 「Far from Heaven」
第7位 「The Pianist」
第8位 「Windtalkers」
第9位 「Road to Perdition」
第10位 「The Emperor's Club」
・最優秀アニメーション/CG
「Spirit:Stallion of Cimaron」
(その他の候補)
「Ice Age」、「Spirited Away」(「千と千尋の神隠し」)、
「Treasure Planet」
・最優秀監督賞
ロブ・マーシャル(「Chicago」)
(その他の候補)
サム・ライミ(「Spider-Man」)、ピーター・ジャクソン(「The Lord of the Rings」)、マーティン・スコセージ(「Gangs of New York」)、サム・メンデス(「Road to Perdition」)、ジョン・ウー(「Windtalkers」)、トッド・ハインズ(「Far from Heaven」)
・最優秀主演男優賞
デニス・クエイド(「The Rookie」)
(その他の候補)
ダニエル・デイ−ルイス(「Gangs of New York」)、ケビン・クライン(「The Emperor's Club」)、ジャック・ニコルソン(「About
Schmidt」)、エイドリアン・ブラディー(「The Pianist」)、サム・ロックウェル(「Confessions of a Dangerous Mind」)
・最優秀主演女優賞
ジュリアン・ムーア(「Far from Heaven」)
(その他の候補)
レニー・ゼルウィガー(「Chicago」)、キャサリン・ゼータ・ジョーンズ(「Chicago」)、ニコール・キッドマン(「The Hours」)、リース・ウィザースプーン(「Sweet Home Alabama」、ゴールディー・ホーン(「The Banger Sisters」)、アリソン・ローマン(「White Oleander」)
・最優秀助演男優賞
ゴーラム(「The Lord of the Rings: The Two Towers」)
(その他の候補)
デニス・クエイド(「Far from Heaven」)、エド・ハリス(「The Hours」)、ヨーダ(「Star Wars:Episode II-Attack of the Clones」)、リチャード・ギア(「Chicago」)、クリス・クーパー(「Adaptataion」)、ポール・ニューマン(「Road to Perdition」)、デニス・ヘイスバート(「Far from Heaven」)、ジョン・C・ライリー(「Chicago」)、ショーン・アスティン(「The Lord of the Rings」)、レイフ・フィアンズ(「Red Dragon」)、アダム・ビーチ(「Windtalkers」)、ヴィング・レームス(「Undisputed」)、ジェームズ・フランコ(「City by the Sea」)、フィリップ・シーモア・ホフマン(「25th Hour」)、レイ・リオッタ(「Narc」)
・最優秀助演女優賞
ミシェル・ファイファー(「White Oleander」)
(その他の候補)
エミリー・ワトソン(「Red Dragon」)、ジュリアン・ムーア(「The Hours」)、メリル・ストリープ(「The Hours」)、キャメロン・ディアズ(「Gangs of New York」)、レイチェル・グリフィス(「The Rookie」)、スーザン・サランドン(「Moonlight Mile」)、サマンサ・モートン(「Minority Report」)、クイーン・ラティファ(「Chicago」)、ドリュー・バリモア(「Confessions of a Dangerous Mind」)、キャシー・ベイツ(「About Schmidt」)
・最優秀脚本/脚色賞
トッド・ハインズ(「Far from Heaven」)
(その他の候補)
ベイン&ジム・テイラー(「About Schmidt」)、ビル・コンドン(「Chicago」)、ジェフ・ネイサンソン(「Catch Me If You Can」)、ロナルド・ハーウッド(「The Pianist」)、チャーリー・カフマン(「Confessions of a Dangerous Mind」)
・最優秀主題歌賞
ブライアン・アダムス "Here I Am" (「Spirit:Stallion of Cimaron」)
(その他の候補)
エアロスミス "Theme from Spider-Man" (「Spider-Man」)、U2"The Hands That Built America" (「Gangs of New York」)
・ワースト作品賞
「The Rules of Attraction」
(その他の候補)
「Death to Smoochy」、「Rollerball」、「The Truth about Charlie」
−以下は2002年度の残り9本のレヴュー。

1.「Chicago」 A+
(出演:レニー・ゼルウィガー、キャサリン・ゼータ・ジョーンズ、リチャード・ギア、ジョン・C・ライリー、クイーン・ラティファ、タイ・ディッグス、監督:ロブ・マーシャル)
'72年の「キャバレー」以来の傑作ミュージカル。禁酒法時代のシカゴを舞台に、殺人で起訴されている花形ダンサーのヴェルマ(キャサリン・ゼータ・ジョーンズ)とスターを夢見るロキシー(レニー・ゼルウィガー)、それにスリックな辣腕弁護士ビリー・フリン(リチャード・ギア)を絡めたこの欲望の物語は、映画本来の持ち味を存分に生かしておりブロードウェイ版を凌ぐ。2つの殺人を交錯させながらキャサリン・ゼータ・ジョーンズのナンバーで始まるハイテンションな冒頭は、そのまま終盤の法廷シーン、そして絢爛たるエンディングまで一気に突っ走る。しかもミュージカルナンバーをすべて本物の舞台と幻想シーンの中で使った結果、ストーリー性が全く損なわれていない。
キャスティングも絶妙で、もともとミュージカル出身のゼータ・ジョーンズ(「アニーよ銃を取れ」)とリチャード・ギア(「グリース」)に、ミュージカル初挑戦ながら野心のかたまりのようなロキシーを仰天演技で演じるのがレニー・ゼルウィガーだ。さらにロキシーの心優しい夫役で泣かせるジョン・C・ライリー(「ブギー・ナイツ」、「Gangs of New York」)、タフな女看守長のクイーン・ラティファ、粋なキャバレーの司会者タイ・ディッグスと、脇役達も心憎いチョイス。
現実の会話と幻想シーンを巧みにダブらせるビル・コンドンの脚本と舞台ミュージカル出身のロブ・マーシャルの演出は洗練の極致。
とにかく全編スタイリッシュ、ゴージャス、スピーディー、セクシー、パワフル、スリリングで、今年のオスカーレースを席巻することはまず間違いない。A+のレイティングも本コラムでは初めてだ。
(オフィシャルサイト: http://www.miramax.com/chicago)
2.「Antwone Fisher」 B+
(出演:デレック・ルーク、デンゼル・ワシントン、ジョイ・ブライアント、監督:デンゼル・ワシントン)
デンゼル・ワシントンの監督デビュー作は、タイトルロールを演じる新人デレック・ルークの力強い演技と、脇役としての自らの助演効果で堂々たる感動作に仕上がった。アントワーヌ・フィッシャーは刑務所で生まれた黒人の海軍上等兵。常に内部に怒りを秘めているフィッシャーは暴力事件が絶えず、海軍の精神科医ジェローム(デンゼル・ワシントン)の元へ送られる。ジェロームは度重なる失敗の末についにフィッシャーの信用を得て、彼の恋人シェリル(ジョイ・ブライアント)と共にフィッシャーを再生の旅へと先導する。デンゼル・ワシントンの演出、デレック・ルークの演技ともに正攻法で屈託がなく好感が持てる上に、現在トップノッチにいるワシントンほど頼りになる脇役はいない。
またストーリーがすべて実話であることも強みで、説得力のある脚本はフィッシャー本人がゼロから勉強して書き上げた。中でも性的虐待を受けて来たフィッシャーの、シェリルとの初体験シーンは感動的だ。デンゼル・ワシントンには当面演技に注力して欲しいものだが、本作に関しては何の文句もない。
(オフィシャルサイト: http://www.foxsearchlight.com)
3.「About Schmidt」 A-
(出演:ジャック・ニコルソン、ホープ・デイビス、ダーモット・マローニイ、キャシー・ベイツ、監督:アレクサンダー・ペイン)
円熟のジャック・ニコルソンが引退した元保険会社の管理職ウォーレン・シュミットを演じる良く出来たサタイア。ウォーレンは引退直後に突然妻に先立たれて途方に暮れていたが、以前からウォーターベッドのセールスマンをする一人娘ジニーの婚約者が気に入らなかったため、デンバーまで娘の結婚を阻止しに行く。巨大なキャンピングカー(ウォーレンの妻が2人の第2の人生のために買ったもの)を駆って旅に出る
ウォーレンは、期せずして自分のこれまでの人生を見つめ直し、そこに何の価値も見出せないことに気づく。ニコルソンによるナレーションが秀逸で、ウォーレンの心情が彼がフォスターファミリーになったタンザニアの6才の孤児に宛てた手紙を通して語られる。基本的にはかったるいストーリーだが、全編枯れたユーモアが散りばめられていて、エンディングは感動的だ。いつもの強烈なキャラクターを抑えて引退した普通の老人を演じるニコルソンは見事な演技で、4つ目のオスカーも射程距離か。またジニー役のホープ・デイビス、婚約者のダーモット・マローニイ、その奔放な母親役のキャシー・ベイツ(目が点になるフルヌードまで披露だ)とのアンサンブルも楽しい。尚、ニコルソンは次作「Anger Management」ではアダム・サンドラーと共演、こちらは対照的に切れまくるコメディだ。
(オフィシャルサイト: http://www.aboutschmidtmovie.com)
4.「25th Hour」 B
(出演:エドワード・ノートン、フィリップ・シーモア・ホフマン、バリー・ペッパー、ロザリオ・ドーソン、アンナ・パキン 監督:スパイク・リー)
監督スパイク・リー+主演エドワード・ノートンという魅力的な取り合わせが不幸にも機能しなかった凡作。エド・ノートン扮するモンティは根っからの悪党ではないが道を誤った麻薬のディーラーで、何者かのたれ込みで警察に逮捕される。保釈金を払って解放されたものの、彼に残された道は大人しく刑期を務めるか、逃亡者となるか、自殺すること。
物語はマンハッタンを舞台にして後悔、恐怖に苦悩するモンティと、恋人(ロザリオ・ドーソン)、父親(ブライアン・コックス)、それに2人の親友(フィリップ・シーモア・ホフマン、バリー・ペッパー)との最後の交流がじっくりと描かれる。各キャラクターの描写は際立っていて、それぞれの演技も素晴らしい(特に冴えない高校教師のホフマンがいい)。
だが映画として強烈にアピールしてくるものがない。題材があまりに私的すぎて観客が感情移入できないのと、陳腐なエンディングのせいだ。
(オフィシャルサイト: http://25thhour.movies.com)
5.「Narc」 B+
(出演:ジェイソン・リー、レイ・リオッタ)
「Hannibal」のFBI捜査官、「John Q」の警察署長と間抜け演技が続いたレイ・リオッタが、「Vanilla Sky」のジェイソン・リーと組んで見事復活した迫真の刑事ドラマ。元おとり捜査官のテリス(ジェイソン・リー)は、パートナーを殺された刑事オーク(レイ・リオッタ)の復讐のため捜査に協力する。オークのパートナーもおとり捜査官であったが、やがてテリスは事件全体が見かけ通りでないことに気づく。
テリスが真相に近づくプロセスは極めてスリリングでリアリティがあり、体重を増やしてひげ面になったリオッタの迫力もこれまでになかったものだ。惜しむらくは二転三転するストーリーの伏線の張り方が甘いことで、このため臨場感ある演出が終盤になると作り物めいて来る。
(オフィシャルサイト: http://NarcMovie.com)
6.「The Pianist」 A-
(出演:エイドリアン・ブロディ、監督:ロマン・ポランスキー)
3年前に逝ったポーランドの天才ピアニスト、ツピルマンの波乱の生涯を描いた戦争ドラマ。
ナチスドイツのポーランド進攻のさなか、ラジオ番組のピアニストだったツピルマンが、家族と離別し、地下組織に匿われ、音楽好きのドイツ人将校に助けられながら奇跡的にホロコーストを生き延びた数奇の運命を、ポーランド人監督のロマン・ポランスキーが冷徹に描き切った。タイトルロールのピアニストを演じるエイドリアン・ブロディ(「シン・レッド・ライン」)の演技が際立っていて、2時間半緊張感が持続する。飄々としたブロディの風貌のせいか、暗く重い物語の割には観終わっても意外と清々しい。
(オフィシャルサイト: http://www.thepianistmovie.com)
7.「Adaptataion」 C+
(出演:ニコラス・ケイジ、メリル・ストリープ、クリス・クーパー、ブライアン・コックス、監督:スパイク・ジョーンズ)
「Being John Malkovich」の監督・脚本コンビによる凝った設定の、ただし余り面白くないコメディ。冒頭いきなり実際の「Being JohnMalkovich」の撮影風景から始まり、その中に脚本家のチャーリー・カフマン(ニコラス・ケイジ)がいるという設定。しかもカフマンの双子の兄弟ドナルド(ケイジが2役)がチャーリーと同居していて、内容のないアクション映画の脚本を書き始めてチャーリーを閉口させる。だが面白いのはここまでで、本筋は蘭に関する退屈な小説を脚色しようとのたうち回るチャーリーの私生活に、その小説の作者(メリル・ストリープ)と実在する登場人物の世捨人的蘭泥棒(「American Beauty」のクリス・クーパー)のラブストーリーが錯綜するという不可解なもの。更にエンディングはちょっと理解し難い不条理さで、終わってみるとクリス・クーパーの怪演だけが記憶に残る。
(オフィシャルサイト: http://sony.com/Adaptation)
8.「Confessions of a Dangerous Mind」 B+
(出演:サム・ロックウェル、ドリュー・バリモア、ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ、ルトガー・ハウアー、監督:ジョージ・クルーニー)
初めてアメリカへ行った'77年に「The Gong Show」をTVで観て、「この国には何と馬鹿な連中がいるのだろう」と妙に感心した覚えがある(その後日本でもこの番組の物真似が登場した)。このショーのアイディアを出し司会もしたのがチャック・バリスで、彼は実はCIAのヒットマンだったと自伝で告白した(真偽のほどは不明)。で、この自伝を「Adaptation」のチャーリー・カフマンが脚色し、スティーブン・ソダーバーグが製作に加わり、それをジョージ・クルーニーが監督デヴュー作として選んだ。アクション映画ではなくブラック・コメディに近いが、チャーリー・カフマンの脚本は極めてスタイリッシュにバリスの二重生活を描く。クルーニーの演出ぶりも光を上手く使いクラフトワーク的で、ソダーバーグが撮ったのではないかと疑いたくなるほど。バリスを演じるサム・ロックウェル(「Charlie's Angeles」、「The Green Mile」)とその恋人ペニーに扮するドリュー・バリモアは大変魅力的なペアで、全体的に良くまとまった佳作に仕上がっている。
(オフィシャルサイト: http://www.ifilm.com/confessions/)
9.「The Hours」 B-
(出演:メリル・ストリープ、ジュリアン・ムーア、ニコール・キッドマン、エド・ハリス、アリソン・ジェニイ、ジョン・C・ライリー)
主演女優3人と名脇役達の驚異的な演技が堪能できるが全く面白くない不思議な作品。「ダロウェイ夫人」(1925年)を執筆中の精神に異常をきたした英国の作家ヴァージニア・ウルフを熱演するのがニコール・キッドマン。50年代にその「ダロウェイ夫人」を読みながら人生に悩む人妻カーラがジュリアン・ムーア。そして現代NYでエイズを患う元恋人(エド・ハリス)を世話するクラリッサがメリル・ストリープ。この世代の違う3人の人生が、奇妙なつながりをもって交互に語られて行く。各カットは緊張感があり切れ味鋭く、豪華3大女優は文字通り競演。さらに忘れ難い圧巻の演技を見せつけるのがエド・ハリス。だが全編暗くて退屈なストーリーが延々と2時間続くし、ゴム製の鼻をつけてヴァージニア・ウルフに変身したニコール・キッドマンを観ても楽しくはない。昨年の「In the Bedroom」同様に評論家には馬鹿受けするがファンが寄りつかない映画の典型なので、観るにはそれなりの忍耐力が必要だ。途中10分くらい眠ってしまったぞ。
(オフィシャルサイト: http://TheHoursMovie.com)
映画に関しては2002年は良い年だった。今年もアル・パチーノとコリン・ファレル(今年はこの男の年でしょう)競演の「The Recruit」が良い出来でまずは好調な滑り出し(レビューは次回ね)。5月には「Matrix」の続編「Matrix:Reloaded」が、さらに11月には続々編「Matrix:Revolution」が公開されるし、今年も期待できそうだ。