第75回アカデミー賞は、「Bowling for Columbine」でドキュメンタリー賞を受賞したマイケル・ムーアの大馬鹿大賞的スピーチのおかげで極めて不愉快なものになった。こういう輩は銃が好きだろうが嫌いだろうが危険な存在で、檻の中に閉じ込めておかなくてはいけない。
対照的に男を上げたのがまたも監督賞を逃したマーティン・スコセッシで、"問題の"ロマン・ポランスキーの名前がアナウンスされた時に最初に立ち上がって拍手を送っていた。スコセッシ、あっぱれである。それにしても、今やキューバ・グッディング・Jr.、ベン・アフレックやEminemでさえが持っているオスカーをスコセッシが持っていないとは、世の中不公平である。
結局ジュリアン・ムーアはダブルノミネーションを両方落とし、「千と千尋の神隠し」より確実に良かった「Spirit」も受賞を逃し、ちょっとがっかりした3月24日であった。
以下新作9本のレヴューをどうぞ
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1. 「Tears of the Sun」 A-
(出演: ブルース・ウィリス、モニカ・ベルーチ、監督: アントワーヌ・ヒュークエイ)
「Training Day」のアントワーヌ・ヒュークエイ監督による鮮烈な戦争アクションドラマ。SEAL(海軍特殊部隊)のウォルター大尉(ブルース・ウィリス)は、内乱の進むアルジェリアへアメリカ人医師リーナ(モニカ・ベルーチ)の救出に向かう。ウォルターと彼のチームはリーナを見つけ出すが、リーナが面倒を見ている70人の難民を見殺しに出来ず、結局陸路でカメルーンを目指す。だが敏腕な情報将校に率いられた反乱軍の殺人部隊は確実にウォルターたちを追いつめて行く。
とにかくブルース・ウィリスが抜群にいい。体重を落とし、ストイックで得意の軽口も一切なく、「ダイ・ハード」のジョン・マクレーンのようなスーパーヒーローでもない。SEALの面々も等身大に良く描き分けられ、彼らの感情や痛みがストレートに観客に訴えかけてくる。ヒュークエイ監督の演出は無駄な描写がなく快調なテンポで、テンションを持続させるアクション性とドラマ性のさじ加減が見事。2003年度作品としてはこれまでのところ最高作といって良いが、隣に座っていたアメリカ人男性はおいおい泣くし、時期が時期だけにちょっと好戦的な気分にさせるヤバい映画ではある。
(オフィシャルサイト: http://showtimes.sonypictures.com)
2. 「Bringing Down the House」 B+
(出演: スティーブ・マーティン、クイーン・ラティファ、ユージン・レヴィ、ジーン・スマート)
今年のアカデミー賞司会者スティーブ・マーティンと、「Chicago」で助演女優賞にノミネートされたクイーン・ラティファによるコメディ。
ワーカホリックのため妻に去られた弁護士ピーター(スティーブ・マーティン)は、インターネットでブラインド・デートを試みる。だが期待に反して現われたのは前科者のグラマラスな黒人女性、シャーリーン(クイーン・ラティファ)。シャーリーンは白人の上流社会に乗り込みピーターを脅かし、彼を使って自分の無実の罪をはらそうとする。久しぶりに往年のスラップスティックに戻ったスティーブ・マーティンと、タフで優しいクイーン・ラティファのコンビは滅法可笑しく(マーティンの"ワイルド・ダンス"も楽しめる)、しかもこの2人に「American Pie」の爆笑親父ことユージン・レヴィがピーターの同僚役で加わるからたまらない(彼はシャーリーンに一目ぼれしてしまう)。人種差別ギャグが頻出するが、製作も兼ねるクイーン・ラティファがその器の大きさで観客の当惑を豪快に吹き飛ばし、屈託なく笑える。
(オフィシャルサイト: http://movies.yahoo.com/house)
3. 「The Hunted」 B-
(出演: トミー・リー・ジョーンズ、ベニシオ・デル・トロ、コニー・ニールセン、監督: ウィリアム・フリードキン)
Traffic」でオスカーを獲ったベニシオ・デル・トロの3年ぶりの新作は、全く緊迫感に欠ける凡作で失望させてくれた。デル・トロ演じる暗殺専門の特殊部隊員ヘラムは、戦争後遺症で殺人マシンと化す。彼を追うトミー・リー・ジョーンズはヘラムに殺人テクニックを仕込んだ元教官L.T.。この2人のオスカー俳優の共演に加えて、ストーリーは全編マンハント、ヘラムとL.T.とのナイフによる肉弾戦というサービス満点のアクションムービーなのだが、どうにも乗りが悪い。デル・トロ独特の存在間は逆に画面からぽっかりと浮いてしまい、ヘラムの特殊部隊員としての凄さが感じられない(この点「ランボー」の第1作は見事だった)。ヒゲ面のトミー・リー・ジョーンズはなんだか間伸びした印象で、殺人テクの教官らしく見えない。更にマーシャル・アーツ映画で目が肥えている観客には、この2人の戦闘シーンは臨場感が感じられない。名匠W・フリードキンの演出もメリハリがなく、わずかに冒頭のコソボ内乱におけるヘラムの暗殺シーンで往年の切れ味を見せたに止まった。
(オフィシャルサイト: http://HuntedMovie.com)
4. 「Dreamcatcher」 B+
(出演: モーガン・フリーマン、トーマス・ジェイン、ジェイソン・リー、ダミアン・ルイス、ティモシー・オリファント、トム・サイズモア、監督: ローレンス・カスダン)
スティーブン・キングの分厚い原作を、「再会の時」、「シルバラード」のローレンス・カスダンが2時間20分に手堅くまとめたアクション・ホラー。少年時代に不思議な経験をして特殊能力を身につけた4人組が、20年後にある雪山で遭遇する想像を絶する恐怖が描かれる。この作品はストーリーを知らない方が楽しめるのでこれ以上は書かないが、フラッシュバックで語られる4人の少年の物語は「スタンド・バイ・ミー」を彷彿させ、善と悪とが対決する後半のホラーの楽しさと併せてS・キングの魅力が充分堪能できる。原作は未読だがキング作品の映画化としてはかなり良い出来で、むしろ原作を知らない方が楽しめるだろう。ただしちょっと品がないので(セックスとかでなく)、初めてのデートには選ばない方がいい。
(オフィシャルサイト: http://www.dreamcatchermovie.com)
5. 「Basic」 B-
(出演: ジョン・トラボルタ、コニー・ニールセン、サミュエル・L・ジャクソン、ハリー・コニック・Jr、タイ・ディッグス、監督: ジョン・マクティアナン)
黒澤明の「羅生門」('50)形式で描かれる軍事スリラー。パナマで訓練中の特殊部隊数名が行方不明になり、やがて2名が生還する。彼らの話から鬼教官ウエスト(サミュエル・L・ジャクソン)と残りの隊員が殺害されたことは判明するが、2人の証言が交錯して犯人が特定できない。そこに颯爽と登場するのが退役した訊問の名手ハーディ(ジョン・トラボルタ)で、ハーディはオズボーン大尉(コニー・ニールセン)と2人で真相究明にあたる。トラボルタは得意のスリックでスタイリッシュなキャラクターを演じるが、やっていることはあまり利口ではなく訊問の専門家には見えず、むしろコニー・ニールセンの方がそれらしく映る。次々と語られる異なったストーリーはどれも同じようなもので、後半展開するツイストの連続技も説得力がない。観客に「ほう、なるほど」と思わせるディテールに乏しいので、アガサ・クリスティの出来の悪い作品を読み終わった時と同じように感じるのだ。
(オフィシャルサイト: http://showtimes.sonypictures.com)
6. 「The Core」 B+
(出演: アーロン・エクハート、ヒラリー・スワンク、スタンリー・タッキ、レルロイ・リンドー、ブルース・グリーンウッド、DJ・キュアルス)
「アルマゲドン」の更に上を行く荒唐無稽さで楽しめるパニックドラマ。アーロン・エクハート扮する大学教授は、世界各地で発生する異常現象から、地球の核(コア)が活動を停止していて、このため地表の電磁バランスが崩れ、地球は数ヵ月以内に黒焦げになることを発見する。NASAは、地球の中心まで掘り進み、核爆弾を使って停止したコアを活動させるという途方もない計画を認可。即座に著名な物理学者、核反応の専門家、特殊なレーザー光線を開発したマッドサイエンティスト、スペース・シャトルの飛行士(「Thirteen Days」のブルース・グリーンウッドと「Insomnia」のヒラリー・スワンク)、最高のハッカー(DJ・キュアルス)が集結する(トータル7人、この手の話は7人でなければならない)。各キャラクターの性格付けはそれなりに描かれているし、多少ヒロイック過ぎるストーリー展開だが、テンポが良く飽きさせない。批評家の評価は散々だが、B級映画の楽しさを満喫できる。この手の映画は「Basic」とは逆に、細かいことは言わずに単純に楽しめばいいのだ。
(オフィシャルサイト: http://TheCoreMovie.com)
7. 「Phone Booth」 A-
(出演: コリン・ファレル、フォレスト・ウィテカー、キーファー・サザーランド、ラダ・ミッチェル、ケイティ・ホルムズ、監督: ジョエル・シュマッハー)
ワシントンで起きたライフル狙撃事件のために6ヶ月近く遅れてようやく公開された迫真のスリラー。口八丁手八丁の芸能エージェント、ステュー(コリン・ファレル)は、マンハッタンの公衆電話で謎の男から電話を受ける。謎の男はステューの私生活を調べ尽くしている上に、電話を切ったらどこかから狙っている高性能ライフルでステューを狙撃すると言う。やがて1人の市民が射殺されたために、ステューは殺人の容疑者として警官、スワットに包囲される。物語の大部分が舞台劇のように公衆電話とその周辺だけで展開するので、当然役者の力量がもろに問われるところだ。だが、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのコリン・ファレルは、自信過剰のスリックなステューが次第に恐怖に崩れて行く様子を見事に演じて、一級の役者であることを証明した。更にステューを説得しようとする刑事役のフォレスト・ウィテカー(一見さえないが実は頭脳明晰という十八番の役柄だ)、ステューの妻を演じるラダ・ミッチェル、ほとんど狙撃手の声だけで出演のキーファー・サザーランド(TVシリーズ「24」で目下絶好調)、すべてが適役だ。ジョエル・シュマッハーのツボを押えた演出は後半のファレルの感動的でさえある熱演を引き出し、そのエンディングもスマートで申し分ない。
(オフィシャルサイト: http://www.phoneboothmovie.com)
8. 「A Man Apart」 C
(出演: ヴィン・ディーゼル、ラレンツ・テート)
前半は類型的な復讐型ポリス・アクション、後半は不可解なストーリーで観客を煙に巻く見事な駄作。ロサンゼルスDEA(麻薬取締局)の豪腕刑事ショーン(ヴィン・ディーゼル)は、メキシコ−カリフォルニア麻薬カルテルの殲滅作戦中に妻を殺される。復讐の鬼と化したショーンは、手段を選ばずカルテルを陰で操る謎の男"ディアブロ"を追うが…。この映画、まず捜査の過程や物語の展開が大甘で臨場感がない上に、ヴィン・ディーゼルのアクションも今ひとつ迫力不足(ディーゼルは前作「XXX」も外していて、ちょっと黄信号だ)。止めはどう考えても筋が通らないエンディングで、"ディアブロ"の正体が割れると思わず目が点になる。この脚本家は整合性という言葉を知らないようだ。
(オフィシャルサイト: http://www.amanapartmovie.com)
9. 「Bend It Like Beckham」 A-
(出演: パーミンダール・K・ナグラ、キラ・ナイトレイ、ジョナサン・リスメイヤース、監督: ガリンダー・チャダ)
これは「がんばれ、ベアーズ!」をサッカー版にし、「My Big FatGreek Wedding」をインド版にして足したような、イギリス製スポ根・ロマンテイック・コメディ。ジェス(パーミンダール・K・ナグラ)はロンドン郊外に住むインド系イギリス人高校生で、両親はインドの伝統に従って熱心にジェスを教育し、彼女が将来インド人青年と結婚することを望んでいる。ところがベッカムを崇拝するジェスの天才的サッカーセンスに気付いたジュールス(キーラ・ナイトレイ)が、ジェスを女子サッカー部へ勧誘したことから話がおかしくなる。チームは快進撃を続け、ジェスはコーチのジョー(長嶋一茂似のジョナサン・リスメイヤース)を好きになってしまい、当然ジェスの両親は怒りまくる。カルチャーギャップの持つ面白さ、スポーツムービーとしての迫力(タイトルのBendはジェスの蹴るバナナシュートの意)、更にジェス、ジュールス、ジョーを巡る三角関係までもが破綻なくバランスを取って描き出される本作は、昨年2億ドルを超えるスーパースリーパーとなった「My Big Fat Greek Wedding」より間違いなく面白い。広く誰にでも薦められる痛快作だ。
(オフィシャルサイト: http://foxsearchlight.com/bendit)
5月2日公開の「X-Men2」までは少し観る映画の本数を減らすつもり。 「Law&Order」、「NYPD Blue」それに「Mad About You」のファースト シーズンがいずれもDVDになり、じっくりと観ておく時間が欲しいから。ではまた次回。