本コラムでも折りに触れて書いてきた、キーファー・サザーランド主演のTVシリーズ、「24」のセカンド・シーズンが終了した。1エピソードを1時間、24エピソードで1日24時間を描くこのアクションスリラーは、ファースト・シーズンでアメリカ初の黒人大統領候補の暗殺計画を阻止せんとする、対テロリストチームの活躍が描かれた。このファースト・シーズンは、二重三重に仕組まれた暗殺計画と、最後まで伏せられる意外な犯人でぐいぐいと視聴者を引っ張り、最後まで飽きさせないスグレモノであった。
更にセカンド・シーズンは、ロサンゼルスのどこかで時を刻む核爆弾の恐怖と、その背後に潜む巧妙なテロリストの仕掛けを活写してファースト・シーズンを遥かにしのぎ、最終回はもう心臓が止まるかという1時間。それも大団円かと思いきや、最後の最後でまた大事件が起きてサード・シーズンへと興味が継がれた。どちらもタイムリミットは24時間。とにかく先を読ませないストーリー展開と、脇役の一人一人までが信じられないくらいフィットする奇跡のキャスティングは、ちょっと他に類を見ない。そして主演の対テロリストチームのエース、ジャック・バウアーを演じる我らがキーファー・サザーランド! カミソリのようなシャープな会話といい、鮮やかな銃器の扱いといい、こいつの格好良さは只事ではない。アメリカTVシリーズの歴史に残る、アクションスリラーの金字塔だ。
「24」 ファースト・シーズン A (DVD発売中)
「24」 セカンド・シーズン A+
−ちょっと古くて渋めの映画探偵団− 第3回
「Glengarry Glen Ross」(1992) B+
(出演: アル・パチーノ、ジャック・レモン、アレック・ボールドウィン、エド・ハリス、アラン・アーキン、ケビン・スペイシー、監督: ジェイムズ・フォリー)
デヴィッド・マメットの戯曲を本人が脚色した本作は、「摩天楼を夢見て」の邦題で日本でも公開された。そうそうたる顔ぶれのキャストだが、とにかくNYの不動産会社が舞台という地味過ぎる設定のために、全くヒットしなかった。だが、生き馬の目を抜く過酷な販売競争を繰り広げるセールスマンに扮するキャストの演技合戦は見ごたえ十分。花形セールスマンのアル・パチーノと、過去の栄光におぼれて不正に走るジャック・レモンに、エド・ハリスとアラン・アーキンが加わり、更に日和見の総務部長がケビン・スペイシー。そして圧巻なのが、社員を蔑みながら販売コンサルタントとして冷酷非情に腕を振るうアレック・ボールドウィン。役者の優れた演技だけでも映画は成立するという希有な例で、大味なハリウッド・エンターテインメントとはひと味もふた味も違う隠れた佳作だ。
尚、アル・パチーノはこの年本作でアカデミー賞助演男優賞に、「Scent of a Woman」では主演男優賞にダブルノミネートされ、後者で悲願のオスカーに輝いた。
それでは今回の新作レヴューをどうぞ。

1. 「Anger Management」 B+
(出演: アダム・サンドラー、ジャック・ニコルソン、マリサ・トメイ、ジョン・タトゥーロ、ルイス・グズマン)
4月オープニングウィークエンドの新記録(4千2百万ドル)を作った、超人気者2人によるスーパーコメディ。アダム・サンドラー扮するデイブは、NYでペット用の服をデザインしているうだつの上がらないサラリーマン。彼は機内でスチュワーデスに暴力を振るったかどで有罪となり、ジャック・ニコルソン演じるリデル博士の主催する、人格矯正セラピーへ送られる。ところがデイブよりよほど狂っているリデル博士は、デイブの家へ住み込み、デイブの恋人リンダ(マリサ・トメイ)にも近づき始める。サンドラーのキャラクターは抑え目でちょっと期待外れなのだが、ニコルソンは見ているだけで楽しいし、ジョン・タトゥーロとルイス・クズマンのセラピー仲間も笑える。特筆すべきはカメオの充実ぶりで、オカマ売春婦のウディ・ハレルソンを筆頭に、ジョン・C・ライリー、ルディ・ジュリアーニ、ジョン・マッケンロー、ヤンキーズのデレック・ジーターとジェイスン・ジアンビ(今や2人とも松井のチームメイトだ)という贅沢さだ。ストーリーは後半サンドラーとマリサ・トメイのロマンティック・コメディへと移行し、更に機能しているとは言い難いサプライズ・エンディングが用意されている。まあ、マリサ・トメイの輝くような笑顔に免じておとがめなしと言うことにしておこう。
(オフィシャルサイト: http://Showtimes.SonyPictures.com)
2. 「Bulletproof Monk」 B
(出演: チョウ・ユンファ、ショーン・ウィリアム・スコット、ジェイミー・キング)
今年のアカデミー賞司会者スティーブ・マーティンと、「Chicago」で助演女優賞にノミネートされたクイーン・ラティファによるコメディ。
これはチョウ・ユンファの大ファンの2人のアメリカ人が脚本担当、ユンファの「男たちの挽歌」(!)を観て俳優を志したというショーン・ウィリアム・スコット(「American Pie」)共演の、相当馬鹿馬鹿しいアクション・コメディ。
ユンファは特殊能力を授けられたチベット僧で、世界をも支配するパワーを秘めた古代の巻物を守っている。彼は巻物を狙うナチの残党から逃れてNYへやって来て、ショーン・ウィリアム・スコット演じるスリのカーと知り合うが、カーの素質を見抜いて自分の後継者に選ぶ。他愛ないストーリー展開、SFXに頼り切ったアクション、一流とは言えないキャストと、とても誉められたものではないのだが、初めからB級映画と割り切って観るとそれなりには楽しめる。これもユンファの人徳か。尚、原作のコミックブックでは、主人公がダライ・ラマとブルース・リーを合わせて生まれ変わった伝説的人物という設定らしく、こちらの方が馬鹿馬鹿しさでは上のようだ。
(オフィシャルサイト: http://www.bulletproofmonk.com)
3. 「Confidence」 B
(出演: エドワード・バーンズ、ダスティン・ホフマン、レイチェル・ワイズ、アンディ・ガルシア)
期待の割りにはたいしたことがなかったエド・バーンズ(「Saving Private Ryan」)と、ダスティン・ホフマン共演のコンゲーム・ムービー。バーンズ演じるジェイクは詐欺チームのリーダーだが、街の顔役ザ・キング(ダスティン・ホフマン)の金を奪ったために、命を狙われる破目になる。ジェイクはザ・キングと取引をして、彼のために5百万ドルの大仕事を引き受けるが、獲物を狙ってジェイクの仲間、ザ・キングの部下、更に謎の麻薬捜査官(アンディ・ガルシア)が錯綜する。
バーンズは頭の切れるコン・マンを好演、ダスティン・ホフマンのホモっぽいギャングのボスも笑える。くわえてジェイクにスカウトされる美人スリのレイチェル・ワイズ(「The Mummy」)も魅力的だ。だが肝心のコンゲームのスキームにもうひと工夫もふた工夫も欲しいし、結末のツイストに驚く人はかなり幸せな人だろう。
(オフィシャルサイト: http://www.www.confidencethemovie.com)
4. 「Identity」 B+
(出演: ジョン・キューザック、レイ・リオッタ、アマンダ・ピート、レベッカ・デモーネイ)
こちらは新機軸で結構うならされるサイコ・スリラー。暴風雨で交通手段も通信手段も途絶えた、とある郊外のモーテル。そこでは閉じ込められたリムジン運転手(ジョン・キューザック)、落ち目の女優(レベッカ・デモーネイ)、売春婦(アマンダ・ピート)、刑事(レイ・リオッタ)など11名が、何者かに次々と虐殺されて行く。このストーリー展開はアガサ・クリスティーの迷作推理小説「そして誰もいなくなった」のようで、劇中登場人物によっても言及されるのがおかしい。一方全く別の場所では、あるシリアル・キラーの精神異常を巡って、検察側と弁護側の攻防が続いていた。各キャラクターの性格付けがわざとらしいせいか、ショッカーとしての怖さはない。しかし2部構成のストーリーとサプライズ・エンディングには、「この手があったか」と思わせるオリジナリティがある。レンタルビデオで週末にでも観ると、ちょっと得した気分になれるだろう。
(オフィシャルサイト: http://Showtimes.SonyPictures.com)
5. 「X2:X-Men United」 A
(出演: パトリック・スチュアート、ヒュー・ジャックマン、イアン・マッケラン、ブライアン・コックス、ハリー・ベリー、アラン・カミング、アンナ・パキン、ファムケ・ジャンセン、スコット・マースデン、レベッカ・ロミン‐ステイモス、ケリー・ヒュー、監督: ブライアン・シンガー)
2001年度"Texas Movie Asards"の第5位に輝いた、「X-Men」の待望の続編は、全てにおいて前作を凌ぐ出来栄えで文句のつけようがなく、公開3日間で8千5百万ドルを売り上げた。開演いきなり、アラン・カミング扮する新顔ミュータントのナイトクロウラーが、瞬間移動能力を駆使してホワイトハウスを急襲するSFXに度肝を抜かれると、後はそのまま波乱のクライマックスまで一直線の2時間13分だ。ミュータントを憎悪する政府の科学者兼将軍ストライカー(ブライアン・コックスが怪演)は、X-Menの指導者エグザビア(パトリック・スチュアート)を誘拐し、その特殊能力を利用して全世界のミュータントの同時抹殺を謀る。残されたウォルヴェリン(ヒュー・ジャックマン)らは悪玉ミュータントの首領マグネトー(イアン・マッケラン)と一時的に手を組み、エグザビアの救出とストライカー軍団の殲滅に向かう。
前作同様監督兼共同脚本のブライアン・シンガー(「Usual Suspects」)は、この興奮度満点のストーリーに、ウォルヴェリンの出生の秘密や、ウォルヴェリン−ジーン・グレイ(ファムケ・ジャンセン)−サイクロプス(スコット・マースデン)を巡る恋愛関係までを巧みに織り込むという高度なテクニックを披露し、その才能を見せつける。そして確固たる世界観、深いテーマ性、最高水準のSFXに支えられる高い娯楽性、12人のミュータントのキャラクターを自在に描き分ける描出の妙、破綻なく感動的なエンディングまで突き進むストーリーの疾走感、――ここには映画の面白さ全てが詰まっている。
唯一の不満は、第3作までまた2年以上待たされることだ。
(オフィシャルサイト: http://www.x2-movie.com/)
6. 「A Mighty Wind」 B+
(出演: ユージン・レヴィ、キャサリーン・オハラ、クリストファー・ゲスト、監督: クリストファー・ゲスト、脚本: クリストファー・ゲスト&ユージン・レヴィ)
1960年代のフォークソング・グループの再会を、ドキュメンタリータッチで描く心地よいコメディ。大物マネージャーの死をきっかけに、かつての人気フォークソング・グループがNYへ集結し、合同コンサートが開催されることになる。物語は"The Folksmen"、"Mitch & Mickey"、"New Main Street Singers"の3グループの再会と練習風景が、インタビュー形式で綴られ、後半はコンサートの映像となる。と書くといかにも退屈そうだが、これがなかなか笑える。まず、「フォークソング」というダサい題材からして、充分可笑しい。そして曲目、コスチューム、LPジャケットなどのディテールがいかにもそれらしく作られていて、演奏もしっかりしている。また神経症的なMitchを演じるユージン・レヴィ(「American Pie」の爆笑親父)を初めとして、一見善良で普通に見えるが微妙に一般人と常識がずれているショービジネスを生業とする人々の変人さが、全編を通して枯れた笑いを誘うのだ(アメリカのフォークソングに馴染みがあって、もう少しリスニングができれば、もっと笑えただろう)。さらにミュージシャンと観客が一体となる終盤のコンサートは結構感動的で、最後に出演者全員で歌われる曲のタイトルが、"A Mighty Wind"。「X-Men」と「Matrix」の合間に、こういう心温まる良質のコメディ−を観るのもいいものだ。
(オフィシャルサイト: http://www.amightywindonline.com)
7. 「The Matrix Reloaded」 B
(出演: キアヌ・リーヴス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー・アン・モス、ジェイダ・パンケット−スミス、監督&脚本: アンディ&ラリー・ワコウスキー)
オリジナル「Matrix」から4年、ワコウスキー兄弟による満を持しての続編は、3日間で「X-Men2」を凌ぐ9千2百万ドルを稼ぎ出したが、内容的にはオリジナリティーを失い底の浅さを露呈した。
前作でネオ(キアヌ・リーヴス)を「選ばれし者」と信じてチームに迎え入れたモーフェイス(ローレンス・フィッシュバーン)は、実は人類の希望の地ジオンに集結する反乱軍の司令官で、本作では彼等がMatrixへ仕掛けるゲリラ戦が描かれる。見所はある。パワーアップしたネオとエージェント・スミス(「Lord of the Rings」のヒューゴ・ウェーヴィング)のクローン軍団のファイト、15分はあろうかというスリリングなカーチェイス、貫禄演技で存在感をアピールするローレンス・フィッシュバーンなど。だが前作で確立しつつあった恐怖と不安に満ちたMatrixの世界観や、巨大悪に追われる者たちの喪失感はすっかり影を潜めてしまった。「スターウォーズ」そっくりの反乱軍の描写は興醒めで、頻出する禅問答のような会話は退屈この上なく、ネオとトリニティー(キャリー・アン・モス)のラブシーンは煩わしく、これらはストーリーのテンポをすっかり狂わせている。ネオを無敵のスーパーマン(というより「ドラゴンボール」のスーパーサイア人)にしてしまったのは最大の敗因で、もともと大根のキアヌ・リーヴスは本作ではクールからはほど遠い。11月公開の完結編「The Matrix Revolution」での巻き返しに期待したいが…。
(オフィシャルサイト: http://www.thematrix.com)
8. 「Bruce Almighty」 B+
(出演: ジム・キャリー、モーガン・フリーマン、ジェニファー・アニストン)
ジム・キャリーが久しぶりに芸達者なところを見せる、爆笑フィジカル・コメディ。キャリー扮するブルースは、半端仕事ばかり回されているバファロー(ナイアガラの滝がある地方都市)のTVレポーターで、ガールフレンドのグレース(「フレンズ」のジェニファー・アニストン)ともあまり上手く行っていない。ストレスでついに切れてしまったブルースの前に現われるのがモーガン・フリーマン演じる神様で、ブルースは神様がバケーションを取る間、その能力を譲り受ける。ここからは自分勝手に神を演じるジム・キャリーの真骨頂で、大いに笑える。中盤に入ると神様の仕事の難しさや責任感といった陰気なテリトリーに入っていくので嫌な予感がしたのだが、それを救っているのがチャーミングなモーガン・フリーマン(ヤンキースの強いのは神様がファンだからだ)と、演技力の確かなジェニファー・アニストンだ。さらに終盤の美しいブルースとグレースのラブストーリーは感動的でさえあり、エンディングも爽やかだ。ジム・キャリーは役者としても一流だが、改めてコメディアンとしては超一流だなと思わせる。そんな彼の120%ナンセンス・コメディ「When Harry Met Lloyd:Dumb and Dumberer」は6月に公開予定。
尚、本作中ジム・キャリーがクリント・イーストウッドになりきるギャグがあるが、これはキャリーの役者デヴューが、イーストウッドが監督・主演の「ダーティー・ハリー5」であるからで、キャリーからイーストウッドへのオマージュだ。
(オフィシャルサイト: http://www.brucealmighty.com)
Memorial Dayも終わり、「X-Men」と「The Matrix」の続編で幕を開けた2003年サマームービーは、これから3ヶ月の長丁場に入る。サマームービーの良いところは、オスカーを意識したクリスマスムービーと違って、説教臭くないところだ。
で、今年も「Monsters Inc.」チームによるCG「Finding Nemo」、TVシ リーズ「超人ハルク」が懐かしい「The Hulk」、3人娘がノリノリの「Charlie's Angeles:Full Throttle」、早く会いたいリース・ウィザースプーンの「Legally Bronde 2:Red, White & Blonde」、最強女ターミネーター対老骨ターミネーター「Terminator 3:Rise of the Machines」、「American Pie」シリーズ第3弾「American Wedding」、これも「Fast and Furious」の続編「2 Fast 2 Furious」、ラッセル・クロウ最新作「Master and Commander:The Far Side of the World」、ハリソン・フォード+ジョッシュ・ハートネットのポリス・アクション「Hollywood Homicide」、ケイト・ハドソンとオーウェン・ウィルソンのロマコメ「Alex and Emma」、ブラッド・ピットが声の出演 のアニメ「Sinbad:Legend of the Seven Seas」、ジョニー・デップの アクションコメディ「Pirates of the Caribbean:The Curse of the Black Pearl」、ショーン・コネリーが透明人間やドラキュラと共演する「The League of Extraordinary Gentlemen」、ウィル・スミス+マーティン・ローレンスのアクションコメディ「Bad Boys II」、トビー・マグワイアが実在の騎手を演じる「Seabiscuit」、ベン・アフレックとJ.Loのロマコメ「Gigli」、コリン・ファレルとサミュエル・L・ジャクソン共演の、これもTVシリーズが懐かしい「SWAT」、ニコラス・ケイジが詐欺師に扮する「Matchstick Men」、さらに「エルム街の悪夢」のフレディと、「13日の金曜日」のジェイソンが共演する「Freddy vs. Jason」なんて怪作まで控えている。頭を空っぽにして全部観に行くぞ!