今年のサマームービーは空前の続編ラッシュ。ここまでの勝ち組は、「X-2:X-Men
United」と「Terminator 3:Rise of the Machines」の2本。負け組が「The Matrix
:Reloaded」、「2 Fast 2 Furious」、「Charlie's Angels:Full Throttle」、
「Legally Blonde 2:Red, White & Blonde」、「When Harry Met Lloyd:Dumb
and Dumberer」(前回ジム・キャリー主演の前編と書いたが、キャリーは出演していませ
ん。平謝り)。公開直後の興行成績は、作品自体の出来よりも期待度と配給会社のプ
ロモーションに影響を受けるのであまり当てにならず、作品の出来栄えとファンの好
感度は、2週目の落ち込み度合いで判断できる。今後公開予定の続編作品は、「Bad
Boys II」、「American Wedding」、「Spy Kids 3-D:Game Over」、「Lara Croft
Tomb Raider:The Cradle of Life」の4本だ。 一方単発作品としては、勝ち組が今回レヴューするPixar印CG「Finding
Nemo」と、 ジム・キャリーの「Bruce Almighty」。負け組が「The Hulk」。だがズバリ今後期待
の1本は、トビー・マグワイア、ジェフ・ブリッジス、クリス・クーパーによる障害
レースドラマ「Seabiscuit」だ。予告編だけで泣けちゃうぞ。 以下はサマームービーの中心となる11本のレヴューだ。

1. 「The Italian Job」 B+
(出演: マーク・ウォルバーグ、チャーリス・セロン、エドワード・ノートン、ジェイソン・ステーサム、セス・グリーン、モス・デフ、ドナルド・サザーランド)
マイケル・ケイン主演の同名映画(1969)のリメイクは、アイディア満載の気のきい
たケイパーに仕上がった。金庫破りのプロ、ジョン(ドナルド・サザーランド)率い
るグループは、ベニスで3千5百万ドルの金塊を鮮やかに盗み出す。しかし弟子の1
人スティーブ(エドワード・ノートン)の裏切りにより金塊は奪われ、ジョンは殺さ
れる。1年後、生き残ったチャーリー(マーク・ウォルバーグ)とその仲間は、親譲
りの金庫破りであるジョンの娘(チャーリス・セロン)と共に復讐計画を企てる。
チャーリーとスティーブによる盗む側と守る側の息詰まる駆け引き、LAを舞台にした
ミニ・クーパー3台を使った秀逸のカーチェイスに加えて、コンピューターの天才
(セス・グリーン)、プレイボーイのドライバー(「The Transporter」のジェイソ
ン・ステーサム)、エレクトロニクスのエキスパート(ラッパーのモス・デフ)と脇
役のキャラクター設定も上手い。エンディングのツイストがあまり利いてないのが残
念だが、作り物の面白さが十分味わえる娯楽作だ。
(オフィシャルサイト:http://ItalianJobMovie.com)
2. 「Finding Nemo」 A
声の出演: アルバート・ブルックス、エレン・デジェネレス、ウィレム・デフォー、アレグザンダー・グールド)
Pixar(ディズニーのCG部門)がまたまた放ったグランド・スラムは、前作
「Monsters, Inc.」の記録を自ら破る、アニメのオープニング・ウィークエンド新記
録の7千百万ドルを売り上げた。ネモ(声: アレグザンダー・グールド)は、グ
レート・バリア・リーフに住むクマノミの小学生で、過保護の父親マーリン(声:
アルバート・ブルックス)と2人暮らし。ある日ネモはダイバーに捕らえられてシド
ニーまで運ばれ、そこで歯医者のペットとして水槽の中で暮らす破目になる。マーリ
ンは、友人となったナンヨウハギのドリー(声: エレン・デジェネレス)と共に、
ネモを捜し出す果てしない冒険の旅に出る。一方ネモは、水槽の仲間とともに脱出作
戦を試みる。今回は海底を舞台にしただけあって、その色彩とキャラクターの動きは
驚異のひと言。クマノミ親子の大冒険を支える脇役たちも、メモリーロスを患い爆笑
を誘うコミックリリーフのドリーを筆頭に(「Memento」のガイ・ピアースです
ね)、ユニークな海亀の一族、水槽からの脱出作戦を指揮するつわものツノダシのギ
ル(声: ウィレム・デフォー)、と多彩で申し分ない。「Shrek」、「Monsters,
Inc.」と肩を並べるトップランクの作品だ。エンドマークが出ると会場内の子供たち
から一斉に拍手の嵐が沸き起こった。エンドクレジットも最後まで楽しめるので、
せっかちに席を立たないように。
(オフィシャルサイト: http://findingnemo.com)
3. 「2 Fast 2 Furious」 B-
(出演: ポール・ウォーカー、タイリース、エヴァ・メンデス)
一昨年サマームービーのスーパースリーパー、「The Fast and the Furious」の続
編。前作で一気にスターダムにのし上がったヴィン・ディーゼルが抜けて、今回は
R&Bシンガーのタイリースが加わったが、良くも悪くも出来栄えは変わらない。刑事
を首になったブライアン(ポール・ウォーカー)は、マイアミに引っ越してストリー
トレースの賞金で食っているが、ポン友のローマン(タイリース)と共にFBIに協力
して麻薬代金の運び屋になりすます、というのが基本ストーリー。だが実体は主役も
悪役も脇役もエキストラもすべて車で、まるで巨大スクリーン上で、息子が「グラン
ツーリスモ」をやっているような感覚だ。興行成績は上々で、25歳以下のファンの支
持を一身に受けて、2週目の「Finding Nemo」を抜き去って堂々第1位に躍り出た。
(オフィシャルサイト: http://www.thefastandthefurious.com)
4. 「Hollywood Homicide」 B-
(出演: ハリソン・フォード、ジョッシュ・ハートネット、レナ・オリン、ブルース・グリーンウッド、マーティン・ランドー、監督: ロン・シェルトン)
この夏ほとんど黙殺された、笑えないポリス・アクションコメディ。ハリソン・
フォードとジョッシュ・ハートネットはハリウッド署の殺人課刑事なのだが、フォー
ドは不動産屋、ハートネットはヨガのインストラクター(&俳優志望)という副業を
持っている。これは低収入で残業手当がカットされる刑事の実態に基づいた設定で、
本作品の売りでもある。で、2人はラップシンガーの銃撃事件を調査しながら、
フォードは不動産取引をまとめようと、ハートネットはアクターへの転職を目指す
が、これがちっとも可笑しくないから苦しい。後半はカーチェイスと犯人追跡が延々
と続くが、これもまったくテンションがあがらない。監督・脚本の腕も問題だが、ハ
リソン・フォードにはもはやカリスマも魅力も感じられない。元々上手い俳優ではな
いので、2005年公開予定のインディ・ジョーンズの4作目が当たらなければ、このま
ま忘れられてしまうのではないか。一方ジョッシュ・ハートネットは結構演技力があ
るなあという印象をもったので、近い将来化けるかもしれない。
(オフィシャルサイト: http://Showtimes.SonyPictures.com)
5. 「The Hulk」 C+
(出演: エリック・バナ、ジェニファー・コネリー、ニック・ノルティ、サム・エリオット、監督: アン・リー)
またまたマーベルコミック物、と言うより'70年代TVシリーズ「超人ハルク」の映画
化だが、筋肉のつきすぎでお世辞にも面白いとは言えない。科学者のブルース(エ
リック・バナ)は、同僚のベティ(ジェニファー・コネリー)との実験中に被爆、そ
の結果マッド・サイエンティストの父親(ニック・ノルティ)から受け継いだ特別な
DNAが刺激され、怒りによって巨大な緑色の怪物に変身するようになる。CGによる怪
物を画面で大暴れさせて、しかもドラマとして観客を感動させ得るか?これが本作の
一大テーマだったが、「Terminator 3」を蹴ってこの作品を監督したアン・リー
(「Crouching Tiger, Hidden Dragon」)の演出は、ちょっとセンスがずれている上
に、この手のハリウッド大作を手懸けるには力不足だった。主役エリック・バナのア
クターとしての魅力不足もあるが、コミックブックのコマ割り効果を狙ったような
カットとクローズアップの多用はうざったく、ニック・ノルティの狂言回し的演技は
画面から浮いてしまい失笑もの。そしてひとたびHulkが暴れ出すとそこは完全なコ
ミックワールドで、俳優の演じる現実世界との巨大なギャップが出現する。怪物と
なってしまったブルースの苦悩、ベティとの絆の描き方も中途半端で、残念ながら感
動はない。2時間18分は長く退屈で、結局楽しかったのは美しく可憐なジェニファー
・コネリーのクローズアップを観ている時だけだった。
(オフィシャルサイト: http://www.thehulk.com)
6. 「Alex & Emma」 B-
(出演: ケイト・ハドソン、ルーク・ウィルソン、ソフィー・マルソー、デヴィッド・ペイマー、ロブ・ライナー、監督: ロブ・ライナー)
「恋人たちの予感」の監督ロブ・ライナーと、今やリース・ウィザースプーンに続く
ロマコメの女王ケイト・ハドソン(「How to Lose A Guy in 10 Days」)による凝っ
た構成のロマンティック・コメディ。ボストンの若手作家アレックス(「Charlie's
Angels」と「Legally Blonde」シリーズのルーク・ウィルソン)は、ギャンブルの借
金を返済するために、30日以内に新作を仕上げなければならない境遇。コンピュー
ターを失ったアレックスは、プロ速記者のエマ(ケイト・ハドソン)を雇い、彼の新
作歴史ラブストーリーの口述筆記を依頼する。小説がウィルソンとハドソン、それに
セクシーなソフィー・マルソーらにより劇中劇の形式で進行していくのがミソで、や
がて小説の内容と現実がオーバーラップして来る。今が旬のケイト・ハドソンは文句
なく魅力的で目が離せないが、アレックスのキャラクターはエマの気を引くには説得
力に欠ける。またロブ・ライナーのロマコメとしては笑えないのも不満で、特に小説
部分の描写はかったるい。
(オフィシャルサイト: http://www.alexandemmamovie.com)
7. 「Charlie's Angels:Full Throttle」 C
出演: キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リュー、バーニー・マック、デミー・ムーア、クリスピン・グローバー、ルーク・ウィルソン、ジョン・クリース、監督: McG)
2000年のスマッシュヒットとなった前作は、TVシリーズのオリジナリティを活かした
粋でセクシーな傑作アクション・コメディだったが、本作は「ちびまる子ちゃん」の
丸尾君ふうに言えば、ズバリ「スカ」でしょう。まず、FBIの証人保護プログラム情
報の入った指輪の争奪戦という基本ストーリーからして興覚めだ。無意味に頻出する
スーパーアクションは派手なだけで迫力も工夫もなく、バーニー・マック(モズレー
役をビル・マレーから引き継いだ)のしゃべり以外は笑いが取れない。加えて目尻の
シワの目立つキャメロン・ディアスと、首回りのたるんだドリュー・バリモアより
も、元エンジェル役で出演している40歳のデミー・ムーアの方がセクシーなのは何と
も皮肉だ(元々ルーシー・リューは嫌いだし)。要するに3人のエンジェルたちの魅
力とケミストリーがなくなった上に、巨大なアイ・キャンディーとしての面白ささえ
も持ち得なかった本作は、ただ虚しいのみ。MTV出身の監督McGもここまでか。唯一の
収穫は、いまだに充分美しい元祖エンジェルの1人、ジャクリーン・スミスのカメオ
だった。
(オフィシャルサイト: http://Showtimes.SonyPictures.com)
8. 「Legally Blonde 2:Red, White & Blonde」 C+
(出演: リース・ウィザースプーン、サリー・フィールド、ルーク・ウィルソン)
傑作コメディ「Legally Blonde」の待望の続編はほとんど見るべきものがなく、目一
杯失望させてくれた。前作でふられた元恋人を追って見事ハーバード大学へ入ったエ
ル(リース・ウィザースプーン)は、大手法律事務所で活躍しながら、大学教授の婚
約者(ルーク・ウィルソン)と結婚式の打ち合わせをする幸せな日々。しかしペット
用化粧品会社の動物虐待を法規制すべく、再び一念発起して単身ワシントンDCへ乗り
込んで行く。だが今回は、前作のような八方破れのアイデアと頭の回転の速さを武器
とするエルが影を潜め、ペット犬のギャグと偶然にばかり頼る安易なストーリー展
開。しかもなじみのない法制化のプロセスが背景になっていることもあってか、分か
りにくい上にテンポも悪い。後半のジェームズ・スチュアートの「スミス都へ行
く」っぽい説教臭さも気になる。結果としてリース・ウィザースプーンの魅力がすっ
かりスポイルされているのだ。せっかく敵役に起用した下院議員役のサリー・フィー
ルドも使いこなせてなく、大いなる失敗作となってしまった。
(オフィシャルサイト: http://www.legallyblonde2.com)
9. 「Sinbad:Legend of the Seven Seas」 B+
(声の出演: ブラッド・ピット、キャサリン・ゼタ-ジョーンズ、ミシェル・ファイファー、ジョセフ・フィアンズ、デニス・ヘイスバート)
豪華声優陣に乗せて贈る、ドリームワークスの手書きアニメーションの佳作。海賊を
率いるシンバッド(声: ブラッド・ピット)は、妖女のような女神エリス(声: ミ
シェル・ファイファー)の策略により、人類の平和の源である"Book of Peace"を盗
んだかどで死刑宣告を受ける。シンバッドの無実を信じる親友プロテウス(声:
ジョセフ・フィアンズ)はその罪を代わりに受け、シンバッドは"Book of Peace"を
捜す旅に出る。ところがプロテウスの恋人マリーナ(声: キャサリン・ゼタ-ジョー
ンズ)がシンバッドの海賊船に密かに乗り込んでいたことから、船上では大混乱が起
こり、さらに女神エリスの妨害により船旅は大冒険の連続となる。他愛のないストー
リーで「Finding Nemo」と比べると見劣りしてしまうが、シンバッドを始めとして各
キャラクターには結構魅力があり、何より愛と勇気と友情を謳い上げるアニメとして
の素朴な良さがある。
(オフィシャルサイト: http://www.dreamworks.com/sinbad)
10. 「Terminator 3:Rise of the Machines」 B+
出演: アーノルド・シュワルツェネッガー、ニック・スタール、クレア・デインズ、クリスタナ・ローケン、監督: ジョナサン・モストウ)
前作「Terminator 2:Judgement Day」から12年も経っているとはにわかに信じ難い
が、とにかくシュワルツェネッガーは、ジム・キャメロン(ミスター"King of the
World")なしでも充分やれることを証明した。今や天涯孤独となった未来の反乱軍指
導者ジョン・コナー(エドワード・ファーロングに代わり、今回はニック・スター
ル)は、身を隠して生き残るだけの生活。彼は、やはり人類の未来に影響を与える元
クラスメイト、ケイト(クレア・デインズ)と共に、再度最新型殺人マシンTX(モデ
ル出身のクリスタナ・ローケン)に命を狙われるが、2人の命を守るため、旧型サイ
ボーグ(アーノルド・シュワルツェネッガー)もまた未来から送られて来る。ストー
リーは前作に酷似しているとは言え、過去2作の内容からかなり制限されることを考
慮すれば、エンディングを含めて良い脚本と言えるだろう。「U-571」で息詰まる潜
水艦スリラーを描いた監督のジョナサン・モストウも、前半のダイナミックなカー
チェイスと、後半のたたみかける新旧ターミネーターの死闘で大いに魅せてくれる。
心臓バイパス手術をしたシュワちゃんも心配された年齢的衰えをほとんど感じさせず
(次のプロジェクトはカリフォルニア州知事か)、予想を裏切ってスリックでエキサ
イティングな作品に仕上がった。
(オフィシャルサイト: http://www.terminator3.com)
11. 「28 Days Later」 A-
(出演: シリアン・マーフィー、ナオミ・ハリス、ブレンダン・グリーソン、ミーガン・バーンズ、監督: ダニー・ボイル)
これはこの夏のスーパースリーパーの英国版低予算ホラー・アクション・ドラマ。政
府の極秘実験室に動物保護団体の過激派グループが侵入するシーンがイントロ。そし
てその28日後にロンドンの病院で配達屋のジム(シリアン・マーフィー)が目を覚ま
すと、市内はもはや無数のゾンビたちの巣窟と化している。ジムはロンドンのアン
ダーグラウンドで知り合った薬剤師のセリーナ(ナオミ・ハリス)とタクシー運転手
の親子(ブレンダン・グリーソンとミーガン・バーンズ)と共に郊外へ脱出し、保護
を受けるためにラジオ放送で知った軍隊の駐屯基地へ向かうが…。ストーリーを細か
く書けないのが残念だが、本作は単なるゾンビ物とは完全に一線を画する重厚さと
メッセージ性を持っている上に、各キャラクターの描写も鋭い。「Trainspotting」
の監督ダニー・ボイルによるデジタルカメラを駆使した映像はスタイリッシュで、そ
の演出は壮絶な暴力シーンと人間ドラマの部分とのバランスが絶妙だ。鮮やかで印象
に残るエンディングも見事。とにかく怖くて面白いので、ゾンビ映画の嫌いな人も偏
見を捨てて見るべし。
(オフィシャルサイト: http://www.28dayslater.com)
次回は50回記念特集号だ。