念願のCooperstownへ行って来た。マンハッタンから車で4時間、人口わずか2千人のこの小さな町は、"National Baseball Hall of Fame"(「野球の殿堂」)と、Doubleday Fieldのあることで名高い。初日は約7時間かけて「野球の殿堂」でメジャーリーグの歴史を学び、圧倒的な量のディスプレイを見て回った。全米からの観光客は皆それぞれひいきチームのベースボールキャップを被っていて、"Colt.45's"(ヒューストン・アストロズの前身)のキャップを被っていたら、アストロズファンの高校生にあいさつをされた。こういう雰囲気っていいよね。2日目は「野球発祥の地」Doubleday Fieldで地元の草野球観戦と、ギフトショップ巡り。カリフォルニアのカーメルのように小さくてこぎれいなこの町は、とにかく野球一色。楽しくて、野球ファンには忘れ難い魅力を持つ町だ。
そして3日目はヤンキースタジアムで、マリナーズ対ヤンキース戦を観戦。先発はモイヤーとクレメンスのエース対決。ソリアーノ、ジーター、ウィリアムス、ジアンビ、松井(以上ヤンキース)、イチロー、ブーン、マルチネス、長谷川(以上マリナーズ)と、役者には事欠かないこの好カードは、8−4でマリナーズが快勝。夜はブルックリンの友人宅で、ロバート・レッドフォード主演の「The
Natural」(ヤンキースタジアムでヤンキースの選手がホームランを打つと、このテーマソングがかかる)と、トム・ハンクス主演の「The League of Their Own」(ラストに「野球の殿堂」とDoubleday Fieldのシーンがある)という野球映画の傑作をDVDで観戦し、夢のようなベースボール・ウィークエンドは終わったのでした。
「ちょっと古くて渋めの映画探偵団」 −第4回−
「Apostle」(1997) B+
(出演: ロバート・デュバル、ファラ・フォーセット、ビリー・ボブ・ソーント
ン、ミランダ・リチャードソン)
ロバート・デュバルが製作・監督・脚本・主演の4役をこなしたシリアスドラマの佳作。デュバル扮するソニーはテキサスで成功している説教師だが、妻(ファラ・フォーセット)を寝取られた腹いせに相手の男を殺害し、逃亡犯となる。ソニーは幾つかの小さな町を渡り歩いた後にルイジアナの寂れた町に辿り着き、そこで貧しい人々と共に小さな教会を立ち上げる。自らの救いを求めながら、人々を説教して回るカリスマの塊のようなデュバルの演技は、パワフルかつダイナミックで観る者を圧倒するが、そこには悲愴感はなく、むしろ自信に満ち満ちた才能溢れる男の小気味よさがある。実際この手の説教師(というよりプロモーターという感じだ)は、ケーブルテレビの宗教チャンネルで必ず登場する。日本人には分かりにくい、アメリカ社会における宗教の位置付けをちょっと知るにも興味深い作品だ。
以下はサマームービーの残りと、これからThanksgivingまでを継ぐ6本のレビュー。

1. 「S.W.A.T.」 B
(出演: コリン・ファレル、サミュエル・L・ジャクソン、LL・クール・J、ミッシェル・ロドリゲス、オリバー・マルチネス)
テーマソングも懐かしい、70年代同名TVシリーズの映画化。コリン・ファレルがロバート・ユーリックの演じたジム・ストリートを、サミュエル・L・ジャクソンがスティーブ・フォレストの演じたキャプテン・ホンドーに扮する。この作品、前半は抜群にいい。SWATが、人質を取って銀行に立て籠った武装強盗を殲滅する導入部と、ホンドーがLAPDの若手からリクルートした新チーム(コリン・ファレル、LL・クール・J、ミッシェル・ロドリゲス)を鍛え上げ、仮想ハイジャック犯の武装解除を行うシーンはエキサイティングだ。だが問題は後半のストーリー展開。オリバー・マルチネス(「Unfaithful」)扮するテロリストの脱走を巡って、ストーリーの骨格が崩れて次第に私怨に走るポリス・アクションが取って代わる。いやしくも「S.W.A.T.」を謳う以上、クライマックスは工夫を凝らしたタフな立て籠りシークエンスを持って来て欲しかった。
(オフィシャルサイト: http://Showtimes.SonyPictures.com)
2. 「Open Range」 A-
(出演: ケビン・コスナー、マイケル・ガンボン、ロバート・デュバル、アネット・ベニング)
ケビン・コスナーが、クリント・イーストウッドへのオマージュとも言うべき上出来のウェスタンを引っ下げてカムバックを果たした。「Unforgiven」('92)でイーストウッド自らが演じた伝説的悪党ウィリアム・マニーは、殺しから足を洗って最愛の女性と結婚する。だがその妻に先立たれた後、マニーは子供を養うために再び銃を取らざるを得なかった。本作でコスナー扮するチャーリー・ウェイトは、まるで若き日のウィリアム・マニーを見ているようだ。無口なカウボーイのチャーリーは、流れ着いた町の独裁者バクスター(マイケル・ガンボンが好演)に仲間を殺された時、かつての非情なガンマンに戻って行く。「Open Range」は「Unforgiven」ほどの重厚さは無いものの、前半の静から後半の動への見事なストーリー展開と、リアルなガンファイトで観客の目を釘付けにする。そしてチャーリーの慕う老カウボーイ役のロバート・デュバルと、チャーリーと恋に落ちる医者の妹スー役のアネット・ベニングは文句なく魅せる。監督3作目のコスナーも自然体でいいセンスで、「American Flyer」('85)以来のコスナーファンとしては、大いに溜飲が下がったぞ。
(オフィシャルサイト: http://openrange.movies.com)
3. 「Le Divorce」 C-
(出演: ケイト・ハドソン、ナオミ・ワッツ、ティエリー・レルミット、グレン・クロース、監督: ジェームズ・アイボリー)
この作品は、ケイト・ハドソンとナオミ・ワッツにつられてホイホイ観に行ったのが誤りのもと。監督がジェームズ・アイボリーだと知っていたら絶対に行かなかったのに(この監督はつまらない、「Howard's End」、「Room With A View」それに「Remains of the Day」でっせ)。ケイト・ハドソン演じるカリフォルニア娘のイザベルが、妊娠している姉のロキシー(ナオミ・ワッツ)を訪ねてパリを訪れる。物語はロキシーの離婚騒動と、イザベルのフランス人叔父との愛人生活を中心にコミカルに描かれるが、全編退屈でどうにもならない。カルチャーギャップを中心としたギャグも何を今更という感じで、何となく昔からイメージとして持っている、「笑えないフランス製ライトコメディ」のパロディのようだ。唯一ケイト・ハドソンのキュートなアバンチュールだけが光っていた。
(オフィシャルサイト: http://www.foxsearchlight.com)
4. 「Freaky Friday」 A-
(出演: ジェミー・リー・カーティス、リンゼイ・ローハン、マーク・ハーモン)
'77年のバーバラ・ハリス、ジョディー・フォスターによる同名映画のリメイクは、文句なしに面白いハートウォーミング・コメディで、この夏のスーパースリーパーとなった。仲の悪い母と娘(ジェミー・リー・カーティスと、「The Parent Trap」のリンゼイ・ローハン)の魂が、おせっかいな中国人おばさんの魔法で入れ替わってしまう、というのが基本ストーリー。その結果、母親はティーンエイジャーの娘のふりをしながら娘の問題を解決し、ボーイフレンドを捌き、娘は母の仕事である精神科医を演じながら、母親の再婚相手(マーク・ハーモン)をかわす羽目になる。お手本にしたいような良く出来た脚本は、お互いの立場、視点に立つことで母娘がそれぞれを理解して行くプロセスを、面白おかしくかつ感動的に描いている。登場人物の出入りも実にスマートで、全く飽きさせないのだ。ストーリーを読んだり予告編を観た印象よりも実際は数倍面白い映画なので、ディズニーのファミリームービーだと思って見逃すと損をする。
(オフィシャルサイト: http://freaky-friday.com)
これにてサマームービーはお終い。
5. 「The Order」 D
(出演: ヒース・レジャー、シャニン・ソサモン、ベーノ・ファーマン、ピーター
・ウェラー)
救いようもなく退屈な、教会のアンダーワールドを舞台にしたホラーミステリー。恩師の自殺の謎を追う司祭アレックス(「Four
Feathers」のヒース・レジャー)は、やがて事件の背後に潜む"sin eater"という邪悪な存在を知るが、アレックス自身が次第に"sin
eater"の罠に引きずり込まれて行く。ホラーとしては怖くなく、ミステリーとしては驚きがなく、ドラマとしては古臭く、その上特撮は10年前の水準に思える。何ひとつとして見るべきものはなく、ほとんど拷問的な詰まらなさで開演15分で寝入ってしまった。入場料は3ドルだったが、これでも損した気分にさせてくれる、今年のラズベリー賞の有力候補だ。
(オフィシャルサイト: http://www.theordermovie.com)
6. 「Matchstick Men」 B+
(出演: ニコラス・ケイジ、アリソン・ローマン、サム・ロックウェル、ブルース・マクギル、監督: リドリー・スコット)
リドリー・スコット印の心温まるコンゲーム・コメディ。ニコラス・ケイジ演じるロイは神経症を患うバツイチ男で、パートナーのフランク(「Confession
of the Dangerous Mind」のサム・ロックウェル)と組んで、長年詐欺を働いている。ところがロイのアパートに、キュートで頭の良い彼の14才の娘アンジェラ(「White
Oleander」のアリソン・ローマン)が転がり込んで来たことから、ロイの生活が一変する。そしてロイ、フランク、アンジェラの3人は、ある実業家を相手に最後の大仕事に取りかかるが…。個人的には「スティング」や「テキサスの5人の仲間」のように、コンゲームとしての面白さに特化して欲しかったと思う。しかし、ニコラス・ケイジの神経症演技、コンゲームの面白さ、父と若い娘の確執、きれいにひっくり返すエンディング、と見所が多く大いに楽しめる。果たしてロイが最後に得たものは?
(オフィシャルサイト: http://www.matchstickmenmovie.com)
次回は、ハリウッド映画秋の陣最大の注目作、クリント・イーストウッドがデニス・レヘインの原作を
、ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコン主演で監督した「Mystic River」を中心のレヴューを送る予定。