2003年のHoliday Seasonも宴たけなわといったところだが、昔から映画は映画館で観る主義なので、上映中に鳴り出す携帯電話や赤ん坊の泣き声には閉口する。これが原因で観客同士のケンカもままある(これはこれで楽しめるのだが)。劇場側も開演前には注意を促しているが、最近AMC系で新しく始まったメッセージは秀逸だ。舞台は深く潜航した潜水艦内で、クルー全員が敵艦のセンサーに探知されないように息を殺している。と、突如としてどこからか携帯の呼び出し音が鳴り響き、艦内がパニックになる。クルーの1人が、"Sir, the ringing sound. It's coming from the audience!"と報告すると、クルー全員が観客の方を向く。その後に劇場からのメッセージがナレーション入りで入る、というもの。これが新作映画の予告編のすぐ後に控えているので、初めて見るとまず間違いなく、「お、「U-571」の」続編か」とか思って騙される。粋なアイディアだ。観客を楽しませるという点において、アメリカ映画と邦画の大きな隔たりはこのあたりにもある。
さて今回はクリスマスムービーの目玉、「The Last Samurai」、「The Lord of the
Rings: The Return of the King」を中心とした一挙14本のレヴューだ。
1. 「Gothika」 C
(出演: ハリー・ベリー、ロバート・ダウニー・Jr.、ペネロペ・クルス、チャールズ・ダットン)
"オスカー女優"ハリー・ベリーの熱演が空回りする陳腐なゴースト・ストーリー。ミ
ランダ(ハリー・ベリー)は精神異常者専用の刑務所に勤める精神科医で、ある雨の夜に自動車事故に遭う。ところが目覚めると夫殺しの容疑で自分がその刑務所に監禁されていて、自分が正気なのか狂気なのか分からない。ここまではともかく、この先の展開は何の新規さもなく、ただご都合主義の95分間を長く感じるだけ。エンディングも「それがどうした」という程度のもので、誰でも予測できるだろう。同僚の精神科医役のロバート・ダウニー・Jr.も全く存在感のない役柄のせいか手抜きの演技で、生彩がない。日本で高い入場料を払うには、あまりにもオッズの高い作品だ。
(オフィシャルサイト: http://www.gothikamovie.com)
2. 「The Missing」 B-
(出演: トミー・リー・ジョーンズ、ケイト・ブランシェット、エヴァン・レイ
チェル・ウッド、監督:ロン・ハワード)
「The Beautiful Mind」でオスカーを獲ったロン・ハワードの監督最新作は、あまり気分の高まらない不思議なウェスタンだ。舞台は1800年代のニュー・メキシコ。魔術を使うインディアン率いる人身売買クループに娘(エヴァン・レイチェル・ウッド)を誘拐された母親(ケイト・ブランシェット)が、自分を捨ててインディアンになった白人の父親(トミー・リー・ジョーンズ)と協力して娘を奪回するという話。一応ウェスタンとしての体裁は整ってはいるのだが、トミー・リー・ジョーンズはアクションが切れる方ではないし、悪役も含めて登場人物に魅力がなく、ちっともエキサイティングではない。ロン・ハワードには「Apollo 13」や「Ransom」などのドラマの佳作もあるが、なぜこの作品を選んだのか理解できない。アクション映画にもドラマにもなっていない。やはり彼には「Cocoon」、「Splash」、「Night Shift」のような罪のないホラ話をもっと撮ってもらいたいものだ。
(オフィシャルサイト: http://Showtimes.SonyPictures.com)
3. 「The Last Samurai」 A-
(出演: トム・クルーズ、渡辺謙、真田広之、小雪、ティモシー・スポール、ビリー・コノリー)
渡辺謙がすっかりトム・クルーズを食ってしまったハリウッド製正調時代劇。明治維新で西洋化が進む日本軍に、戦略アドバイザーとして雇われたアル中の元南北戦争の英雄ネイサン・アルグレンがトム・クルーズ。一方反乱軍を指揮する元武将の勝元を演じるのが渡辺謙。反乱軍に捕らえられたネイサンは、勝元のもとで負傷した体を癒しながら、次第に侍の素朴で厳しい生き方に魅かれていく。クルーズがブロンドに青い目のアメリカンでなかった事はラッキーで、おかげでさほど違和感なく画面に溶け込んでいる。だがスクリーンで映えていたのはクルーズではなくゴールデン・グローブ賞にもノミネートされてしまった渡辺謙で、その圧倒的な存在感と貫禄で最後の侍を見事に体現する。更に感心したのは彼の英語のセリフで、英語は駄目だが方言を真似るのは得意と言うだけあって、変なクセのない見事なものだ。勝元の右腕となる真田広之(彼は英語を話すが、今回は日本語のセリフのみ)を始めとして、反乱軍側のキャラもしっかりと描き分けられている。作品的には製作者側の目論見ほど深みはないが、「七人の侍」と「ザ・ヤクザ」と「明日に向かって撃て」を足して3で割ったような面白さもあり、贅沢な娯楽時代劇として楽しめる。クルーズはプロデューサーも兼ねており、"Well.
Good job, Mr. Cruise."なのである。
(オフィシャルサイト: http://www.lastsamurai.com)
4. 「Timeline」 B-
(出演: ポール・ウォーカー、フランセス・オコナー、ジェラード・バトラー、ビリー・コノリー)
マイケル・クライトン原作のB級SFアクション。瞬間物質転送装置によって1350年代のフランスで行方不明になった考古学者を捜しに、息子(「The Fast and Furious」のポール・ウォーカー)とクルーが後を追うという話。見所は14世紀のイギリスとフランスの合戦シーンだが、2流のキャストに加えて「The Lord of the Rings」に慣れ親しんだ者にとってはこの戦闘シーンは臨場感に乏しく、陳腐な印象は拭えない。監督が「Lethal Weapon」シリーズのリチャード・ドナーなのでテンポが早くて飽きさせはしないのだが、逆にじっくり書き込まれたクライトンの原作の味わいは、瞬間物質転送装置でも使ったようにきれいに消えている。
(オフィシャルサイト: http://timelinemovie.com)
5. 「Stuck on You」 B
(出演: マット・デイモン、グレッグ・キニア、エバ・メンデス、シェール、ウェン・ヤン・シン、監督&脚本: ファレリー兄弟)
「Shallow Hal」に続く、ファレリー兄弟によるスラップスティック・コメディ。ボブ(マット・デイモン)とウォルト(グレッグ・キニア)は生まれつき腰で繋がった双生児で、東部の田舎でハンバーガー屋を経営している。俳優志望のウォルトのためにハリウッドへやって来た2人は、そこで偶然シェール(herself)に出会い、新しいTVシリーズのパートナーに抜擢される。ボブはシャイで頭脳明晰で運動神経抜群、ウォルトはプレイボーイで演技の才能がある、という性格付けは2人の好演(特にグレッグ・キニアがいい)もあって楽しめるし、シャム双生児をコメディの主役に置くというリスクも巧みにクリアしている。ただその分ナンセンス・コメディの設定なのにハートウォーミング・コメディに流されてしまったような中途半端な印象で、あまり笑えない。
(オフィシャルサイト: http://www.stuckonyoumovie.com)
6. 「The Lord of the Rings: The Return of the King」 A
(出演: イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、ヴィーゴ・モーテンセン、ショーン・アスティン、オーランド・ブルーム、ジョン・ライズ・ダビエス、バーナード・ヒル、リヴ・タイラー、ケイト・ブランシェット、監督&共同脚本: ピーター・ジャクソン)
映画史上最上の地位に値する一大叙事詩の完結編。前作で悪の魔法使いサルマン(クリストファー・リー)の脅威は去ったものの、業を煮やした闇の王サウロンは、その全兵力を人類最後の砦ゴンドールに向ける。一方フロド(イライジャ・ウッド)とサム(ショーン・アスティン)は、ゴラムをつれて指輪を破壊するためにサウロン帝国近くまで辿り着くが、フロドは既に指輪の邪悪なパワーに犯され、ゴラムは指輪の奪回を企んでいる。魔法使いガンダルフ(イアン・マッケラン)と王位継承者アラゴーン(ヴィーゴ・モーテンセン)を中心とした善の混成軍(人間、ホビット、エルフ、ドワーフ)と、サウロンのオーク軍とのミドルアースの平和を賭けた壮絶な合戦シーン、フロドの守護者として今回大活躍するサムを演じるショーン・アスティンの忘れ難い演技、この2つが最大のハイライトだ。実際この興奮と涙のワンツーパンチは極めて効果的で、3時間20分を全く飽きさせない。そしてエンディングは観客一人一人の心に染み渡り、満たされた気分にしてくれる。トールキンによる、運命の指輪に翻弄されたホビットを巡るこの波乱万丈のストーリーの最終章は、ピータージャクソンの執念、他に類を見ない優れたアンサンブルのキャスト、それにニューラインシネマの社運を賭けた投資(3作で3億ドル)によって見事に有終の美を飾った。このトリロジーはこれから世界中の映画・小説ファンにより、末永く語り継がれていくはずだ。(でもリヴ・タイラーだけはやっぱりミスキャストだと思うよ。)
(オフィシャルサイト: http://www.lordoftherings.net)
7. 「Bad Santa」 B+
(出演: ビリー・ボブ・ソーントン、トニー・コックス、ローレン・グラハム、バーニー・マック、ジョン・リッター)
ビリー・ボブ・ソーントンがとんでもないサンタクロースを演じるR指定の爆笑ブラック・コメディ。ウィリー(ビリー・ボブ・ソーントン)は、クリスマスシーズンになるとサンタとして相棒の小人(トニー・コックス)と共にショッピングセンターで働くが、実はアル中の金庫破りで、ところ構わずセックスするし、子供は殴るし、倫理観のかけらもない男。ところが自分を慕う知恵遅れの小学生をだまして、その少年の住む豪邸に住むようになってから、少しずつ(本当に少しずつ)同情心が芽生え、その人間性が変わっていく。とにかく本作はソーントン以外には考えられないハマリ役で、その一挙手一投足がすべて可笑しい。脚本は巧みで、ブラックコ・メディからハートウォーミング・コメディに変わって行くトランジションとバランス感覚が見事。お涙頂戴にならない程度に、最後は気持ち良く映画館を出てくることができるのだ。映画評論家の評価は真っ二つに分かれているがこれは今年の大穴で、本レヴューを読んで敢えて見に行こうとする人なら間違いなく楽しめるだろう。尚、本作はお茶の間のコメディアン、ジョン・リッターの遺作となった。(オフィシャルサイト: なし)
8. 「Something's Gotta Give」 B
(出演: ジャック・ニコルソン、ダイアン・キートン、キアヌ・リーブス、アマンダ・ピート、フランシス・マクダーモンド)
ジャック・ニコルソンとキアヌ・リーブスがダイアン・キートンに恋をするロマンティック・コメディ。ニコルソン演じるハリーは、レコード会社を経営する身勝手で大金持ちの独身男。63歳のハリーの生きがいは若い女性漁りで、「30歳以上のヌードの女性は見たことがない」と豪語する。ところがハリーがデート相手(アマンダ・ピート)の目前で心臓発作で倒れたことが発端で、彼女の母親(ダイアン・キートン)、ハリーの主治医(キアヌ・リーブス)を巻き込んでの三角関係が勃発する。ここまでの前半は非行老人ニコルソンの本領発揮で文句なく面白く、しかも意外にいいのがキアヌ・リーブス(キアヌについては本コラムでとことんけなして来たが、本作では「The Matrix」のネオを忘れさせる見事な演技)。ところが後半になりニコルソンが良い子になってしまうと、ハリーの魅力と共に作品の魅力も消えうせて、凡庸なロマコメに成り下がってしまう。せっかくのフランシス・マクドーマンドが本筋に全く絡まない脚本にも不満が残るし、エンディングもお世辞にも鮮やかとは言い難い。「As Good as It Gets」を期待して観に行くと間違いなく失望する。
(オフィシャルサイト: http://Showtimes.SonyPictures.com)
9. 「Honey」 C
(出演: ジェシカ・アルバ、ミーカー・ファイファー、ジョイ・ブライアント)
TVシリーズ「Dark Angel」のジェシカ・アルバがタイトルロールを演じるダンスムービー。ハニー・ダニエルズはNYに住むダンサーの卵で、プロモーションビデオの監督に気に入られてショービジネスで小さな成功を収める。しかしその監督を袖にしたことからまたゼロからやり直すことになり、ダンスを愛する貧しい子供たちと共に、夢見ていた自分のダンススクールを立ち上げようとする。映画的には素人が撮ったつたない「Flashdance」といった趣で、ダンスシーンを含めて特に観るべきものはない。またマザー・テレサの如く優しい心を持つハニーのキャラクターも、安易なクリスマス・ストーリーのようにハニー・コーティングされた脚本も、非現実的で説得力がない。ただしジェシカ・アルバは期待通り大変HOTで、とりあえず「ジェシカ・アルバを見に行くのだ」という当初の目的だけは達したのである。
(オフィシャルサイト: http://www.honeymovie.net)
10. 「Mona Lisa Smile」 B-
(出演: ジュリア・ロバーツ、ジュリア・スタイルズ、キルステン・ダンスト、マルシア・ゲイ・ハーデン)
50年代の超保守的な東部の名門女子大を舞台にした学園ドラマ。ジュリア・ロバーツ演じるキャサリンはカリフォルニアから来たアートの新米教師で、彼女の(当時としては)ちょっと急進的な性格が、生徒や学園を変えていくという話。ロビン・ウィリアムスの「Dead Poet Society」を観た人なら誰でもストーリーの焼き直しと思わずにはいられない。ジュリア・スタイルズ(「Save the Last Dance」)、キルステン・ダンスト(「Spider-Man」)と生徒役に芸達者を揃えてシリアスドラマの体裁をとっている一方で、ジュリア・ロバーツを真ん中に据えたラヴ・ストーリーの要素も結構強く、結果としてどちらも底が浅くて成立しているとは言い難い。予告編から期待されるような沸き上がる感動といったものはゼロに近いので、ジュリア・ロバーツのファンもそのつもりで観ること。
(オフィシャルサイト: http://Showtimes.SonyPictures.com)
11. 「Paycheck」 B+
(出演: ベン・アフレック、ユマ・サーマン、アーロン・エッカート、ポール・ジアマティ、監督: ジョン・ウー)
フィリップ・K・ディック原作+ジョン・ウー監督という一見ミスマッチな組合せのSFアクション・スリラー。天才的なコンピューター・エンジニアのマイケル(ベン・アフレック)は、親友が経営する巨大企業の極秘ソフト開発に取り組む。完成後秘密保持のためにその間の記憶を消されたマイケルは、何者かに命を狙われるようになるのだが、彼はなぜか2週間前に謎解きの手懸りとなる20のアイテムを自分宛てに送っていた。ディックの原作なので「Total Recall」や「Minority Report」と似たような話ではあるが、手懸りとなるアイテムを巧みに使いながら、危機を逃れて真相に迫って行くプロセスは、スリリングで楽しめる。またマイケルを助けるガールフレンドのレイチェルを演じるユマ・サーマンは、「Kill Bill」に続いてどこかふっ切れた演技で魅力的だ。ジョン・ウー作品の割にはアクションシーンに切れがなく、ベン・アフレックのだらしなく長い顔は最後まで天才エンジニアに見えないという不満も残るが(コリン・ファレルかブラッド・ピットなら合うと思うのだが)、原作の面白さに負うところが大きいにせよ、全体としては一級のエンターテインメントに仕上がっている。
(オフィシャルサイト: http://paycheckmovie.com)
12. 「In America」 B+
(出演: サマンサ・モートン、パディ・コンシダイン、ディモン・ホーンソウ、サラ・ボルガー、エマ・ボルガー、監督: ジム・シェリダン)
アイリッシュ系監督ジム・シェリダンの自伝映画。80年代初頭、ジョニー、妻のサラ、娘のクリスティーンとエリエルは、アイルランドからマンハッタンの貧民街に移ってきて、そこで一家のサバイバルが始まる。ジャンキー達に囲まれ、酷暑の夏にエアコンが壊れ、俳優志望のジョニーには役がつかない。そして何にも増して一家に重くのしかかっているのは、数ヶ月前に起こった幼い長男フランキーの死だ。そんなやるせない思いを持つ家族に、やがてエイズを患う黒人マテオ(「Gladiator」のディモン・ホーンソウ)という友人ができる。一家をそれぞれ演じるパディ・コンシダイン、サマンサ・モートン(「Minority Report」)、ボルガー姉妹はいずれも適役で、特に長女クリスティーンを演じるサラ・ボルガーは泣かせる。物語は1年弱に渡る家族の苦労が描かれるだけなのでサクセスストーリーとは言えないが、そこに存在する魂の救済と再生の予感に観客はほっとする。ジム・シェリダンがその後「MyLeft Foot」でアカデミー監督賞のノミネートを受けたのは、1989年だ。
(オフィシャルサイト: http://www.foxsearchlight.com)
13. 「Big Fish」 B+
(出演: ユアン・マクレガー、アルバート・フィニー、ビリー・クルダップ、ジェシカ・ラング、アリソン・ローマン、ヘレナ・ボナム・カーター、ダニー・デヴィート、監督: ティム・バートン)
アラバマを舞台にしたティム・バートン版「Forrest Gump」。若い頃から大ボラ話ばかりを繰り返して来た父親エドワード(アルバート・フィニー)。今や病床にある父を訪ねた息子ウィル(ビリー・クルダップ)は、最後に父親の真の姿を知ろうと心を開く。物語はウィルが散々聞かされた巨人や片目の魔法使いとの出会い、サーカスでの大恋愛、銀行強盗などの途方もない話をフラッシュバックで語りながら、死に行く父と息子の心の交流がほのぼのと描かれる。ユアン・マクレガーが優しく純粋な若き日のエドワードを好演しており(「Moulin Rouge」のクリスチャンにどこか通じるものがある)、ティム・バートン作品の中では最もクセのない、愛すべき作品となった。本当に罪のない話です、はい。
(オフィシャルサイト: http://Showtimes.SonyPictures.com)
14. 「21 Grams」 B+
(出演: ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ベニシオ・デル・トロ、メリッサ・レオ、シャーロット・ゲインスバーグ)
これは滅法暗くて重い映画で、シャッフルした各カットをランダムに見せたようにストーリーが展開する。よって、ここでは心臓疾患で死にかけている男(ショーン・ペン)、イエスによって改心した前科者(ベニシオ・デル・トロ)、中流家庭の平凡な妻(ナオミ・ワッツ)の3人の人生が、ある交通事故によって運命的に交錯して行く様が極めてリアルに描かれる、とだけ言っておく。全編を覆う「喪失」、「救済」、「妄執」と言ったテーマが運ぶ重苦しさと緊迫感は最後まで途切れず、作品としては完成されてしまった感がある。だが問題はこの超リアリティーだ。映画ファンは、「Mystic River」や「The Deer Hunter」のような重いテーマを持つ作品にも、それが優れていれば常に楽しみを見出す。それはジャンルに関係なく本来の「映画を観る楽しみ」があるからだ。だが本作のように映画の枠を飛び出してしまったリアリティーはもはやドキュメンタリーと何ら差が無く、これでは何のために映画を観ているのか分からなくなってしまって、取り扱いに困ってしまう。だからこの作品には決してAランクは付けられないのだ。まあ固いことは抜きにして、この主役3人の演技はどれも群を抜いた出来で、中でもショーン・ペンは更に一歩突き抜けている。凄い。マドンナと結婚したためにここまで来るのにだいぶ回り道をしてしまったが、今のショーン・ペンの円熟した演技には、ハリウッドでも並ぶ者がいないのではないか。
(オフィシャルサイト: http://www.21-grams.com)
2004年前半公開作の予告編が始まったが、中でもUSAアイスホッケーチームが冬季五輪でソ連を破った実話を描くカート・ラッセル主演「Miracle」、A.J.クィネルの「クリーシー・シリーズ」の映画化でデンゼル・ワシントン主演のアクション大作「Man on Fire」、ローランド・エメリッヒがNYの氷河期を映像化する「The Day After Tomorrow」、トム・ハンクスがコーエン兄弟と組む「The Ladykillers」、そして「Spider-Man 2」、「Kill Bill: Vol. 2」あたりは見逃せないところ。とりあえず次回は「Cold Mountain」を含む2003年度作品の残りと、「第5回輝け!Texas Movie Awards」の発表だ。