最近のハリウッド作品はやたらとリメイクが多い。それも過去の作品、テレビシリーズ、邦画、とソースも様々なのだが、総じて出来栄えは今ひとつ。最近封切りされた作品だけでも「The Italian Job」、「The Hulk,」、「Charlie’s Angels」、「S.W.A.T.」、「Freaky Friday」、「I Spy」、「The Texas Chainsaw Massacre」、Dawn of the Dead」に、今回紹介する「Starsky & Hutch」、「The Ladykillers」、「Walking Tall」、更にこれからの公開が控えている「The Alamo」(デニス・クエイド、ビリー・ボブ・ソーントン主演、オリジナルは’60年のジョン・ウェイン主演「アラモ」)、「Thunderbirds」(ビル・パクストン主演による実写版)、「The Manchurian Candidate」(デンゼル・ワシントン主演、オリジナルは’62年のフランク・シナトラ主演のスリラー「影なき狙撃者」)、「The Stepford Wives」(ニコル・キッドマン主演、オリジナルは’75年)、ダメ押しに日本映画のリメイクが「ShallWe Dance」(ジェニファー・ロペス&リチャード・ギア主演)と「The Ring 2」(ナオミ・ワッツ主演)といった具合。このほとんど節操がない状況下で、邦画のリメイクについて「ハリウッドの価値観の多様化」とか「日本映画の再評価」などともっともらしいことを言う人がいるが、これは瞬間的にハリウッドの才能が枯渇したための反動で、ちょっと時期尚早でしょう。この結果日本の監督や役者がハリウッドへ進出すること自体は喜ばしいことなのだが、一方で「Batman」の悪役を演じる渡辺謙を見るのはちょっと恐い。「ディズニーランドは日本に作って欲しくなかったなあ」という気持ちにどこか通じるものがある。取りあえずハリウッドの奮起に期待したい。
以下は今回レビューした9本。
1. 「Twisted」 B−
(出演: アシュレイ・ジャド、サミュエル・L・ジャクソン、アンディ・ガルシア、デヴィッド・ストラサーン)
今が旬のアシュレイ・ジャド主演のセクシー・スリラー。ジェシカ(アシュレイ・ジャド)は美貌とガッツを併せ持つ、サンフランシスコ警察初の女性警部(ダーティー・ハリーと同じ階級だ)。だが、彼女は幼い頃非業の死を遂げた両親の思い出がトラウマになっていて、アルコールに溺れ、一晩限りの男を求める2重生活を送っている。ところがジェシカと関係を持った男が次々と死体で発見されるに及び、精神的にまいった彼女は自らをも疑い始める。一応本作はフーダニットになっていて、殺人犯の容疑者はジェシカの育ての親でもある警察署長(サミュエル・L・ジャクソン)、彼女のパートナーの刑事(アンディ・ガルシア)、警察付きの心理カウンセラー(デヴィッド・ストラサーン)、そしてジェシカ自身に絞られる。本作の問題点は緻密さが全く欠如していることで、そのためにツイストが全く効いていない。手掛かりもろくに与えられず、伏線も引かれていないので誰が犯人でも大差なく、アガサ・クリスティーの出来の悪い短編を読まされたような感じなのだ。セクシーなアシュレイ・ジャドをなめるように撮るフィリップ・カフマンのカメラワーク以外は、アピールするものは何もない。
(オフィシャルサイト: http://twistedmovie.com)
2.「Starsky & Hutch」 B+
(出演: ベン・スティラー、オーウェン・ウィルソン、ヴィンス・ボーン、ウィル・ファレル、スヌープ・ドッグ、ジュリエット・ルイス)
高校の時に見ていたスタハチこと「刑事スタスキー&ハッチ」(’75~’79)が、コメディー色を強めてスクリーンに甦った。ストーリーは、ベン・スティラー扮するスタスキーとオーウェン・ウィルソン演じるハッチが、無臭コカイン(無臭ゆえに麻薬犬に気づかれずに税関を通れる)を大々的に売買しようとする実業家(「Psycho」のヴィンス・ボーン)の陰謀を阻止するという他愛無いもので、何の工夫もない。だが、冒頭かかるバリー・マニロウの”Can’t Smile without You” ですっかり力を抜いて、70年代のカルチャーを思い出しながら観ると、ガッツが空回りする熱血漢のスタスキーと、オフビートなハッチの活躍が十分楽しめる。特に「I Spy」のオーウェン・ウィルソンは最近出る度に良くなり、本作でも笑いを取るのはスティラーよりもウィルソンの方だ。元祖スタハチのポール・マイケル・グレイザーと、デヴィッド・ソウルもカメオ出演していて、オリジナルのファンにはお薦めの一作。
(オフィシャルサイト: http://www.starskyandhutchmovie.com)
3. 「Secret Window」 B−
(出演: ジョニー・デップ、ジョン・タトゥーロ、マリア・ベロ、ティモシー・ハットン、チャールズ・S・ダットン)
スティーヴン・キングの実体験をベースにしたジョニー・デップとジョン・タトゥーロ共演のサイコ・スリラー。役者は揃ったが出来はいまいち。推理作家のモート(ジョニー・デップ)は、妻(「The Cooler」のマリア・ベロ)と離婚係争中で、田舎で一人暮らし。ある日モートは謎の男シューター(ジョン・タトゥーロ)の訪問を受け、モートの作品「Secret Window」は自分の作品の盗作だと告げられる。モートがシューターを無視すると嫌がらせが始まり、やがてそれは殺人事件にまでエスカレートしていく。最近絶好調のデップと、芸達者のタトゥーロはそれなりに魅せるが、特に盛り上がりのないストーリー展開に加えて、結末が余りにも凡庸だ。タイトルを挙げるとネタばらしになるので書かないが、ここ3~4年この手の似通った構成と結末のスリラーが多すぎる。
(オフィシャルサイト: http://showtimes.sonypictures.com)
4. 「Eternal Sunshine of the Spotless Mind」 B
(出演: ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット、キルステン・ダンスト、マーク・ラファーロ、イライジャ・ウッド、トム・ウィルキンソン)
ジム・キャリーと「Titanic」のケイト・ウィンスレット共演のロマンティック・コメディ。キャリー扮する自閉症気味のジョーは、ウィンスレット演じるエキセントリックな娘クレメンタインと恋に落ちるが、2人の関係は長く続かない。絶望したジョーは、自分の中にあるクレメンタインの記憶を消去する手術を受けるのだが、やがてジョーの一部がクレメンタインを失うことを拒否し始め、現実と空想が交錯していく。本作のジム・キャリーは一貫してシャイな男を見事に演じ続け、得意のおバカなギャグは一つもなく、むしろ作品的には「The Lord of the Rings」のイライジャ・ウッド、「In the Cut」のマーク・ラファーロなど達者な脇役陣によるシチュエーション・コメディの色彩が強い。評論家諸子の評価は高いが、脚本が「Adaptation」のチャーリー・カフマンなのでクセがあって万人向けとは言えず、また「Memento」のような凝ったフラッシュバックの多用はラブ・ストーリーとしての面白さをスポイルしている。シリアス・アクターとしてのジム・キャリーはもっと評価されるべきだが、本作は誉めると「あの人はインテリで結構映画にうるさい」と思われるようなタイプの作品で、タイトルからしてちょっと気取っていて嫌らしいのだ。
(オフィシャルサイト: http://www.eternalsunshine.com)
5. 「Taking Lives」 B+
(出演: アンジェリーナ・ジョリー、イーサン・ホーク、キーファー・サザーランド、オリバー・マルチネス、ジーナ・ローランズ)
アンジェリーナ・ジョリーがFBI捜査官スコットを演じる、傑作になり損なったサイコ・スリラー。ストーリーはカナダのモントリオールを舞台に、殺人を繰り返してはその被害者になりすますシリアルキラーと、犯人を割り出すFBIプロファイラーとの息詰まる駆け引きを中心に展開する。今回のアンジェリーナ・ジョリーは才色兼備のスコット役が大変魅力的で(本コラムでジョリーを誉めるのは初めての快挙だ!)、殺人の目撃者となるイーサン・ホークも、「Training Day」でのオスカーノミネーションがフロックではないことを証明する見事な演技。時折フランス語が混ざるモントリオールという舞台も新鮮で、全編サスペンスが持続し最後まで目が離せない。だがせっかく起用したキーファー・サザーランド(「24」)とオリバー・マルチネス(「Unfaithful」)の使い方を失敗した上に、結末は説得力が弱く爽快感にも欠ける。
惜しかった。
(オフィシャルサイト: http://www.takinglives.com)
6. 「The Passion of the Christ」 C
(出演: ジム・カヴィーゼル、マヤ・モルゲンステルン、モニカ・ベルッチ、監督兼共同制作兼共同脚本: メル・ギブソン)
キリスト様の最後の12時間を、私財を投げ打って映像化したメル・ギブソン執念の1本。登場人物の会話はすべてヘブライ語とラテン語で(英語字幕が入る)、後半の1時間はナザレのイエスが受けるスプラッタ・ムービー並みの残酷拷問シーンが延々と続き、エンディングはゴルゴタの丘での磔シーンという念の入れよう。映像はパワフル、イエス役を熱演するジム・カヴィーゼル(「Highwaymen」、「The Count of Monte Cristo」)も適役だが、良くも悪くもギブソンのエゴ丸出しの作品。全米では教会関係者の試写で人気に火がつき、興行収入3億ドルを超える「The Lord of the Rings」並みのスマッシュヒットとなった。この社会現象を現地で目にするのは貴重な体験だが、まあ宗教に興味がない日本人には面白いはずもない。多くの人が感じるのは、「汝の敵を愛せよ」というより、むしろ「目には目を」ではなかろうか。
(オフィシャルサイト: http://www.thepassionofthechrist.com)
7. 「Jersey Girl」 B+
(出演: ベン・アフレック、リヴ・タイラー、ラクエル・カストロ、ジョージ・カーリン、ジェニファー・ロペス、ジェイソン・ビッグス、監督兼脚本: ケビン・スミス)
ベン・アフレックのポン友で、「Clerks」、「Jay and Silent Bob」などでカルト的人気を持つケビン・スミスが監督兼脚本のハートウォーミング・コメディ。結果的には「Gigli」で地に落ちたアフレックを救う起死回生の一本となった。アフレック扮するオリーはNYで成功したショービズ関連の宣伝マン。ところが愛する妻(ジェニファー・ロペス)が娘の出生時にショック死したために、オリーは父親とともにニュー・ジャージーに移り、ブルーカラーの生活に戻って子育てに励む。こう書くといかにもじめじめした暗い話に聞こえるが、そこはケビン・スミスの脚本で滅法笑える。特に、娘に内緒でポルノビデオをレンタルしようとしたオリーが、エキセントリックなビデオショップの店員(リヴ・タイラー)に質問攻めにあったことからロマンスが始まるなんていうのは、ケビン・スミスの真骨頂だ。アフレック、リヴ・タイラーの演技はこれまでのベストワークだし、その上娘役のラクエル・カストロはとびきりキュートで、オリーの父親を演じるコメディアンのジョージ・カーリンと、オリーの心優しい部下役のジェイソン・ビッグス(「American Pie」)が実に良い味で脇を固めている。
終盤では某ビッグスターの楽しいカメオ出演も楽しめるし、粋なラブ・ストーリーに仕上がっている。
(オフィシャルサイト: http://www.jerseygirl-movie.com)
8. 「The Ladykillers」 B
(出演: トム・ハンクス、イルマ・P・ホール、マーロン・ウェイアンズ、J・K・シモンズ、監督兼脚本: コーエン兄弟)
アレック・ギネスが主演した同名のブラックコメディ(1955)を、「Blood Simple」、「Fargo」のコーエン兄弟が味付けしたリメイク。トム・ハンクス演じるドール教授は、実は窃盗団の首領で、ミシシッピの黒人未亡人(イルマ・P・ホール)の家を間借りし、そこの地下室からトンネルを掘ってカジノの大金庫を襲撃する。だが未亡人に感づかれてしまったために、チームの誰かが彼女を殺さなければならなくなる。全編を通じて大ボケをかますのが、間抜けなカジノの下働き(マーロン・ウェイアンズ)、間抜けな爆発物専門家(「Law & Order: SVU」のJ・K・シモンズ)、間抜けなベトナムの元将軍、それに穴掘り専門の間抜けな筋肉男、のドール教授の部下たち。トム・ハンクスを観るのは常に大いなる楽しみで笑える場面も幾つかあるのだが、全体的にテンポがスローな上に南部なまりの英語が聞き取りにくい。こちらでは評価が高い作品だが、日本人にはちょっとかったるくてギャグもピンと来ないのではないか。
(オフィシャルサイト: http://ladykillers.movies.com)
9. 「Walking Tall」 B
(出演: ザ・ロック、ジョニー・ノクスビル、ニール・マクドノー、アシュレイ・スコット)
'73年にジョー・ドン・ベイカーが主演したオリジナルは、テネシーの実話を元にしたサディスティックなまでの鮮烈な暴力ドラマだった。今回のリメイクは、「The Scorpion King」、「Rundown」ですっかりお茶の間のアクションスターとしての地位を確立したザ・ロックが主演。8年ぶりに軍隊を辞めて故郷に戻ったクリス(ザ・ロック)を待っていたのは、腐敗した警察、子供にまで蔓延するドラッグ、カジノと暴力で町を支配するかつての友人(テレビシリーズ「Boomtown」のニール・マクドノー)であった。死に絶える故郷を救うために、クリスは暴力に更なる暴力を持って立ち向かう。ストーリー展開はかなりオリジナルに忠実で、前半は痛快で悪くない。しかし86分の上映時間は短すぎて、中盤からエンディングまでがあっけなさすぎる。多少コミカルで、軽くてカラッとした派手なアクション映画を目指した意図は分かるが、元ネタは暴力と残酷シーン満載の堂々たるR指定作品だ。ちょっとPG13(R指定より一段階緩いレーティング)で仕上げるには無理があった。
(オフィシャルサイト: http://www.mgm.com)
次回はここテキサスを舞台にした歴史大作(のリメイク)「The Alamo」を中心に紹介する。監督のロン・ハワードと主演のサム・ヒューストン役を演じるはずだったラッセル・クロウが下りて、「The Rookie」のジョン・リー・ハンコックがメガホンを取り、デニス・クエイドが出演(オリジナルでジョン・ウェインが演じたデイビー・クロケット役はビリー・ボブ・ソーントンのまま)。ちょっと小ぶりになったが、果たして出来栄えはいかに。