映像翻訳|海外のテレビ番組や映画の映像翻訳を仕事にするための学校です。多くの修了生、受講生がドラマ、アニメーション、ドキュメンタリー番組など多方面で活躍しています。

Mr.DOBASHI no テキサス映画通信

”Houston, we have a problem!(60)

Dobashi Shuichiro 土橋 秀一郎


Backnumber

2004年のMLBオールスターゲームは、18年ぶりにここヒューストンで行われた。前日のホームランダービーでは、バッティングピッチャーがバリー・ボンズを敬遠するという粋な演出が良かったが、この日気が効いていたのは試合前に流された「ブルース・ブラザース」をパロったショート・フィルム。スター選手たちが昨年の開催地シカゴからヒューストンまでクラシックカーでやって来るというもので、お馴染みのテーマミュージックをバックにクレメンス、ボンズ、A・ロドリゲスに混じってイチローや松井の顔も見られる。

試合の方は、犬猿の仲のマイク・ピアッツアとバッテリーを組んだ先発のクレメンスが初回6失点で降板。セカンドのジェフ・ケントもエラーで貢献と、地元のアストロズ勢はペナントレースの不調そのままの散々な出来であった。結局試合はア・リーグが9-4でナ・リーグに打ち勝ち、ワールドシリーズ・フランチャイズを手にした。プレミアのついた内野席5000ドル(外野立見席でも300ドル)のチケットを一瞬買ってしまおうかと思ったが、早まらなくて良かった。とは言え2月のスーパーボウルに続いて駐在先の地元でオールスターゲームが行われるとはラッキーで、この1ヵ月はメディアの盛り上がりを楽しんだ(記念のTシャツとキャップも買ったぞ)。


サマー・ムービーの方は「Spider-Man 2」がダントツの出来栄えで、文句なく前半戦の第1位。以下は前半戦ベスト5と今回の8本のレヴューだ。

・2004年上半期(1〜6月)ベスト5

第1位  「Spider-Man 2」

第2位  「Mickey」

第3位  「50 First Dates」

第4位  「Harry Potter and the Prisoner of Azkaban」

第5位  「The Terminal」



1.  「The Stepford Wives」  B

(出演: ニコール・キッドマン、マシュー・ブロデリック、クリストファー・ウォーケン、グレン・クローズ、フェイス・ヒル、ベット・ミドラー)

「死の接吻」、「ローズマリーの赤ちゃん」などで知られるスリラー作家アイラ・レヴィンによる原作の再映画化。オリジナルの75年度版はキャサリン・ロス主演でスリラー色が濃かったが、今回のは完全なコメディー。過激な番組製作でテレビ局のCEOを首になったジョアンナ(ニコール・キッドマン)は、優しい夫(マシュー・ブロデリック)に連れられてコネティカット州郊外の町ステップフォードに引っ越してくる。だがそこは一組の怪しげな夫婦(クリストファー・ウォーケンとグレン・クローズ)に運営される、遊びに興じる夫たちと明るくて従順な妻たちだけの異様な町だった。このストーリーと魅力的なキャストで幾らでも面白くなり得たが、残念ながらベット・ミドラーは出番が少なく、クリストファー・ウォーケンはSNLほどは面白くない。結末こそひと工夫あるが、全体的なストーリー展開は容易に読めてしまう。地のまま演技しているようなマシュー・ブロデリック(実生活では「Sex and the City」のサラ・ジェシカ・パーカーの旦那)と、女優としてピークにいるニコール・キッドマンの魅力のおかげで何とか格好がついた作品。

(オフィシャルサイト: http://StepfordWives.com


2.   「The Chronicle of Riddick」  B-

(出演: ヴィン・ディーゼル、サンディ・ニュートン、カーム・フィオレ、カール・アーバン、アレクサ・ダバロス、ジュディ・デンチ)

2000年のSFホラーの佳作「Pitch Black」の続編。前作でスターダムにのし上がったヴィン・ディーゼルが再びタイトルロールの殺人者リディックを演じるが、ストーリーは前作とはほとんど無関係。今回はスター・トレックのボーグの如く、異人種との”同化“をしながら宇宙征服を図るネクロモンガー族との対決が描かれる。内容的には安直な「Starship Troopers」と「ランボー」だ。肥大した予算の大部分はリディックとネクロモンガーとの戦闘・殺戮シーンに当てられていて、Sci-fiなのに宇宙船同士の交戦シーンがないのは興醒めだ。しかもR指定を避けたためにそのアクションシーンでさえ血もろくに出ないMTVのようで、臨場感が全く感じられない。前作のような静かなサスペンスを期待すると確実に裏切られるよ。

(オフィシャルサイト: http://www.thechronicleofriddick.com


3.  「The Terminal」  B+

(出演: トム・ハンクス、キャサリン・ゼータ・ジョーンズ、スタンリー・タッキ、監督: スティーブン・スピルバーグ)

一昨年の「Catch Me If You Can」に続いてトム・ハンクスがスピルバーグと組んだ、コメディタッチのヒューマンドラマ。ハンクス演じるヴィクター・ナボルスキーは東欧の小国からNYへやって来るが、入国審査の直前に祖国がクーデターで無くなってしまう。冷酷な入国管理官(スタンリー・タッキ)はヴィクターの入国を認めず、ヴィクターはNY国際空港の「住人」となる。英語を独学し、空港内の労働者と助け合い、美人スチュワーデス(ぐっとスリムになって戻ってきたキャサリン・ゼータ・ジョーンズ)と親しくなるヴィクターのほのぼのとしたキャラクターが本作のハートだ。ハンクスは上手過ぎるくらい上手いし、演出もスピルバーグ臭さが抜けていて肩が凝らない。エンディングで明かされる、ヴィクターがはるばるNYまでやって来た理由にはほろりとさせられるぞ。まずは誰にも広く薦められる好品。

(オフィシャルサイト: http://www.theterminal-themovie.com)


4.  「Dodgeball: A True Underdog Story」  B

(出演: ベン・スティラー、ヴィンス・ボーン、クリスティーン・タイラー、リップ・トーン)

「Stasky & Hutch」に続いてベン・スティラーとヴィンス・ボーン共演の、悪趣味で暴力的で下品だけどちょっと気になる超ナンセンス・コメディ。ピーター(ヴィンス・ボーン)の経営するフィットネス・クラブ「Average Joe」(美女と醜男がデートするNBCの同名リアリティーショーにひっかけている)は倒産寸前で、金持ちのホワイト(ベン・スティラー)率いるライバル企業に買収されかけている。ピーターは借金返済のためにオタクと負け犬の会員を集めてドッジボールチームを結成し、ラスベガスでの全米大会優勝の賞金5万ドルを目指すが、ホワイトもエリートチームでピーターに対抗する。とにかくストーリー、登場人物すべて潔いくらい馬鹿馬鹿しく、普通の人は予告編を一度観れば間違っても観る気がしないだろう。だがストーリーは結構しっかりしていて、ウィリアム・シャトナー、ランス・アームストロング、チャック・ノリス、デヴィッド・ハッセルホフ(「Baywatch」)のカメオ出演は楽しいし、チーム「Average Joe」の助っ人となる弁護士役のクリスティーン・タイラー(ベン・スティラー夫人)は大変チャーミングだ。エンディングの処理も意外に上手く決めているし、ハマる人にはハマるのではないか。まあ、あまり広くは薦めないですけど。

(オフィシャルサイト: http://www.dodgeballmovie.com


5. 「Spider-Man 2」  A

(出演: トビー・マグワイア、キルステン・ダンスト、アルフレッド・モリナ、ローズマリー・ハリス、監督: サム・ライミ)

2002年に空前の大ヒットとなったスーパーヒーロー物の続編は、アクション、ストーリー性ともに前作を上回る文句なしの仕上がりだ。前作でスーパーヒーローとして生きることを決意したピーター(トビー・マグワイア)だったが、日夜ヒーローを演じながらではアルバイトも首になるし、カレッジの出席もままならない。そして厳しい現実に直面するピーターの前に、核融合反応で怪物と化した天才科学者ドク・オック(アルフレッド・モリナ)が立ちはだかる。監督のサム・ライミは、ヒーローゆえのピーターの苦悩、ピーターとメリー・ジェイン(キルステン・ダンスト)との恋の行方を時にユーモアを交えて描きながら、ここぞという時に迫力のバトル・シークエンスを叩き込む。ドラマ性とアクションが見事に両立している上に、肥大した予算が無駄遣いされていないのがいい。また傷つき易くも芯の強いキャラクターを演じるトビー・マグワイアを観ると、改めてピーター役に適役だったなと思うが、本作の演技はまた群を抜く出来だ。2004年度上半期のベストムービーだ。

(オフィシャルサイト: http://Showtimes.SonyPictures.com


6.  「Anchorman」  B

(出演: ウィル・ファレル、クリスティーナ・アップルゲイト、ポール・ラッド、スティーブン・カレル、デヴィッド・コークナー)

「Old School」、「Elf」に続くSaturday Night Live (SNL)出身の芸達者、ウィル・ファレル出演のナンセンス・コメディ。舞台は70年代のサンディエゴ。視聴率ナンバーワンを誇る地元のTV放送局のアンカーマン、ロン・バーガンディ(ウィル・ファレル)とそのレポーターチーム(ポール・ラッド、スティーブン・カレル、デヴィッド・コークナー)の前に、野心に燃える女性レポーター、ヴェロニカ(クリスティーナ・アップルゲイト)が出現する。ストーリーはレポーターチームのヴェロニカへの執拗なセクハラ(70年代なのだ)と、ウィル・ファレルの一人芝居を中心に進むが、基本的なストーリーは工夫に乏しく、繰り出されるギャグはシングルヒットばかりで、ファレルはSNLほど面白くない。むしろ笑えるのはジャック・ブラック、ヴィンス・ボーン、ベン・スティラー、ティム・ロビンス、ルーク・ウィルソンのカメオ出演だ。

(オフィシャルサイト: http://www.anchorman-themovie.com


7.  「King Arthur」  B+

(出演: クライヴ・オーウェン、キーラ・ナイトリー、ヨアン・グリフィズ、監督:アントワーン・フークア)

「アーサー王と円卓の騎士」伝説をジェリー・ブラッカイマーが製作、「Training Days」のアントワーン・フークアが監督したアクション・ドラマの佳作。ローマ帝国に仕えるアーサー(クライヴ・オーウェン)と円卓の騎士6人は、自由な身分と引き換えに軍事力で圧倒するサクソン人に包囲された司教の一族救出に向かう。この基本ストーリーに絡むのがアーサーに助けられる地元ゲリラの娘グィネビア(「Pirates of the Caribbean」のキーラ・ナイトリー)。物語はアーサー、サクソン軍、地元ゲリラが三つ巴となってサスペンスフルに展開しながら、後半の大合戦シーンへ突き進む。戦闘シーンは戦略的にもよく考えられているし、円卓の騎士6人もランスロット(ヨアン・グリフィズ)を始めとして個性的に描き分けられている(ジャック・ヒギンスの傑作「鷲は舞い降りた」のシュタイナー大佐とその仲間を髣髴させるぞ)。また紅一点のグィネビアを演じるキーラ・ナイトリーもスクリーンによく溶け込んでいて、そのアクションはシャープだ。地味で冴えない予告編のために見過ごされがちだが、ブラッカイマー印なのでエンターテインメントとしては一級品で、サマームービーの隠れた収穫となった一本。

(オフィシャルサイト: http://KingArthurMovie.com


8.  「I, Robot」  B+

(出演: ウィル・スミス、ブリジッド・モイナハン、ブルース・グリーンウッド、ジェームズ・クロムウェル)

SF界の大御所アイザック・アシモフの同名短編集(邦題:「われはロボット」)にinspireされた、ウィル・スミス主演によるこの夏のアクションSF大作。舞台は2035年のシカゴ。ウィル・スミス演じる刑事スプーナーは、USロボット社の家庭用ロボットを発明した博士(ジェームズ・クロムウェル)の死を調査するうちに、殺人容疑者となるロボット、サニーを発見する。だがロボットは「ロボット工学三原則」によって人間に決して危害を加えないよう設計されているために、サニーが逮捕されることはない。ロボットを嫌悪するスプーナーは、USロボット社のロボット心理学者スーザン(「The Recruit」のブリジッド・モイナハン)の助けを得ながら真相に迫って行く。ストーリーはアシモフの原作とは全く別物で、有名な「ロボット工学三原則」(この言葉を聞くのは大学以来か、懐かしいぞ)だけが効果的に使われている。スプーナーのキャラクターは底が浅く(ロボットに絡む過去のトラウマを持たせているが機能していない)、また必然的にCGとなってしまうアクションシーンは臨場感に欠ける。だがウィル・スミスは本作のような馬鹿げたアクション大作では常に映えるので、観客は2時間飽きることはない(彼は本当にハリウッドを代表するスターだ)。

まあ、これほどサマームービーらしいサマームービーは他にないでしょう。

-おまけに「ロボット工学三原則」全文を挙げておくので、馴染みのない人は映画館へ行く前にしっかり頭に入れておくように(結局映画を救ったのは、ウィル・スミス
とこの三原則だ)。

・ロボット工学三原則(翻訳は小学館「タイトル情報辞典」より抜粋)

第1条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看
過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

第2条 ロボットは人間から与えられた命令に服従しなければならない。
ただし、与えられた命令が第1条に反する場合はこの限りではない。

第3条 ロボットは第1条及び第2条に反する恐れのないかぎり、自己を守
らなければならない。

(オフィシャルサイト: http://www.irobotmovie.com)


次回は2004年サマームービーの残り、「The Bourne Supremacy」、「Catwoman」、「The Manchurian Candidate」、「The Village」、「Collateral」、「Thunderbirds」、「Alienvs. Predator」などなど。まだまだ楽しみが残っているね。