映像翻訳|海外のテレビ番組や映画の映像翻訳を仕事にするための学校です。多くの修了生、受講生がドラマ、アニメーション、ドキュメンタリー番組など多方面で活躍しています。

Mr.DOBASHI no テキサス映画通信

”Houston, we have a problem!(61)

Dobashi Shuichiro 土橋 秀一郎


Backnumber

7月下旬に東京へ出張したら、これが暑いのなんの。Houstonも35度くらいあって湿度が100%近いのだが、どこへ行っても歩くのは駐車場と建物の間だけ。しかも、オフィス、映画館、ショッピングモールと、どこも例外なく冷やし過ぎで長袖なしでは凍えそうなほどだ。おかげで東京では出張初日でいきなり夏バテし、通勤は難儀であった。

日本での楽しみは、和食以外では?本屋(Houstonには日本の本屋はない)、?モスバーガーでのランチ、?喫茶店のケーキで、打ち合わせや会議の合間に暇を見つけては?と?へ足繁く通った。

本屋で驚いたのは「24」の研究本やノベライズがずらりと並んでいたことで、この傑作スリラーをいち早く紹介した本コラムは、世間でもっと高く評価されても良いのではないか。どうやら第4シーズンの製作も決まったようだが、一体どんな状況設定を持って来るのか楽しみだ。個人的にはジャックと彼のガールフレンドが休暇中のクルーズ船がシージャックされるとか、「ジャックがCTUや大統領の助けなしで解決しなければならない絶望的な状況」が欲しいところ。「ジャガー・ノート」と「ダイ・ハード」を足して2で割ったような設定ならおいしいのだが。

それから本と言えば、映画ファンには映画秘宝社から出ている「底抜け超大作」、「ファビュラス・バーカー・ボーイズの映画欠席裁判」、それに「70年代映画懐かし地獄」の3冊が文句なく面白い。

さて今回は「ちょっと古くて渋めの映画探偵団」の第8回と、サマームービーのレヴュー第3弾だ。

-ちょっと古くて渋めの映画探偵団 第8回-

「The Big Easy」(1987)  B+

(出演: デニス・クエイド、エレン・バーキン、ネッド・ビーティ、ジョン・グッドマン、監督: ジム・マクブライド)

ニュー・オーリンズを舞台にケージャン・ミュージックに乗せて展開するセクシー・スリラーの佳作。マフィア絡みの殺人事件を調査中の刑事レミー(デニス・クエイド)の前に、美貌の地方検事補アニー(エレン・バーキン)が立ちはだかる。アニーは一連の殺人が警官によるものだと主張し、警察一家に生まれ育ったレニーと対立する。
2人は互いに魅かれ合い同時に憎み合いながら捜査を進め、事件はやがて悲惨な結末を迎える。ブレイクする前のデニス・クエイドがプレイボーイを気取るが実は純粋で気の良いレニーを好演、「Sea of Love」や「Bad Company」のエレン・バーキンは、たまらなくセクシーだ。そして本作最大の見所はアメリカで最もエキゾチックな街ニュー・オーリンズのスティーミーな雰囲気で、Big Easy(ニュー・オーリンズの通称)の魅力を十二分に堪能できる。

尚、本作も「ブロンド・ターゲット」などというたわけた邦題でビデオのみで発売されている。センスも酷いがタイトルと作品の内容とが違うのは犯罪的だ。


1.  「The Bourne Supremacy」  A-

(出演: マット・デイモン、フランカ・ポテンテ、ジョアン・アレン、ブライアン・コックス、ジュリア・スタイルズ)

一昨年の「The Bourne Identity」に続くロバート・ラドラム原作による”Jason Bourne”シリーズ第2弾は、前作を上回る上質のアクション・スリラーに仕上がった。
前作でCIA暗殺者としての自分の過去を知ったボーン(マット・デイモン)は、今では恋人のマリー(フランカ・ポテンテ)とインドでひっそりと暮らしている。だが何者かに命を狙われると同時にCIA工作員の殺人容疑をもかけられたボーンは、CIAからの追跡も受ける羽目になり、捨て身の逆襲に転じる。ストーリーは原作から変えられているものの、インドからヨーロッパ、そしてモスクワを股にかけてのボーン、謎の暗殺部隊、CIAによる三つ巴の追跡劇は魅せてくれる。物語は終始サスペンスとアクションが持続し、度肝を抜くカーチェイスによるクライマックスは圧巻だ。ジェイソン・ボーンを演じるマット・デイモンは前作よりぐっと渋みが増してシャープな印象な上に、キャラクターに深みを持たせている。これでシリーズ完結編「The Bourne Ultimatum」が楽しみな一作となった(原作では老け込んだボーンと宿敵カルロスがお互い老体にムチ打って戦うんだけどね)。

(オフィシャルサイト: http://www.thebournesupremacy.com


2.  「Catwoman」  C

(出演: ハリー・ベリー、ベンジャミン・ブラッド、シャロン・ストーン、ランバート・ウィルソン)

ハリー・ベリー主演、「Batman」のCatwomanとは無関係の、設定が「Spider-Man」に酷似したスーパーヒーロー物の失敗作。化粧品会社のデザイナーであるペイシェンス(ハリー・ベリー)は、新製品が実は有毒であることを偶然知ってしまい、組織に殺される。だが飼い猫の怨念(?)でCatwomanとして甦り、オーナー夫婦(シャロン・ストーンとランバート・ウィルソン)への復讐を図る。そもそもこのストーリーからして陳腐でスケールが小さいが、SFXもアクションも小粒で冴えない。この作品を「Spider-Man2」にぶつけてどうするという感じだ。更に致命的なのがハリー・ベリーで、素顔のときはチャーミングなのだが、猫のマスクとレザーのコスチュームを付けてCatwomanに変身するや、途端に魅力がなくなる。セクシーになるはずだったのだが、悪趣味な化粧とマスクは彼女を安手のSMポルノ女優のように見せている。まあ、アメリカ人がこれを好きというなら文句は言いませんが…。いかにも続編を予感させるエンディングも虚しく、「Swordfish」同様ハリー・ベリー出演作としては闇に葬られるべき作品。ベリーにはむしろ「007」からのスピンオフ、とてもセクシーだった“Jinx”の映画化に期待したい。

(オフィシャルサイト: http://www.catwoman.com


3.  「The Manchurian Candidate」  B+

(出演: デンゼル・ワシントン、メリル・ストリープ、リーヴ・シュライバー、ジェフリー・ライト、監督: ジョナサン・デミ)

1962年のジョン・フランケンハイマー監督、フランク・シナトラ主演作「影なき狙撃者」のリメイク。今回は「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミが監督し、主演のマルコ少佐をデンゼル・ワシントンが演じる。ストーリーは現代風に巧みにアレンジされている。湾岸戦争の後遺症に悩むマルコは、かつての戦友(ジェフリー・ライト)から自分と同じ悪夢について打ち明けられる。マルコはもう一人の生き残り、レイモンド・ショー(リーヴ・シュライバー)が次期大統領選の副大統領候補に選出されるに及んで、得体の知れない陰謀のにおいを感じ取る。このストーリーはオリジナルを見ていない人にはより楽しめるはずだ。デンゼル・ワシントンは相変わらずの存在感を見せるし、ショーの母親でパワフルな上院議員役のメリル・ストリープも怪演する。
エンディングの盛り上がりが今ひとつなのが不満だが、最近あまり無かったタイプの贅沢なスリラーだ。

(オフィシャルサイト: http://ManchurianCandidateMovie.com


4.  「The Village」  B-

(出演: ホアキン・フェニックス、ブライス・ダラス・ハワード、ウィリアム・ハート、シガニー・ウィーバー、エイドリアン・ブロディ、製作・監督・脚本: M・ナイト・シャマラン)

M・ナイト・シャマランは世間が言うほど評価していない。「The Sixth Sense」は結末に至るプロセスが退屈だし、前作の「Signs」は逆に結末で肩透かしを食らった。割りと好きなのはブルース・ウィリスを現代のスーパーマンに仕立てた「Unbreakable」で、こちらは洗練されている上に全編サスペンスが効いていた。で本作だが、これは一種の文芸作品と呼んだ方が適当で、あくびが出た。舞台は19世紀のペンシルヴェニアの田舎。そこに「怪物」の住む森に囲まれた小さな村があり、住人たちは決して森に入らない。一種の紳士協定があって、住人が約束を守っている限り、怪物たちも村人に手出しをしないのだ。しかし盲目の娘アイビー(ブライス・ダラス・ハワード)は、瀕死の恋人ルーシャス(「Signs」のホアキン・フェニックス)のために、森を踏破して町に薬を調達しに行く決意をする。アイビーを演じるロン・ハワードの娘、ブライス・ダラス・ハワードはこれがメジャーデビューとは思えないほど好演しているし、ホアキン・フェニックスも最近出るたびに良くなる。出来は悪くない、でも映画会社が文芸作品をショッカーとして宣伝しているのだから、乗せられて劇場に足を運んだ観客は面白いはずがない。物語の途中でネタが割られ、そのまま終わり。観客は皆狐につままれたような顔をして劇場を後にする。それでも観たい人はどうぞ。

(オフィシャルサイト: http://thevillage.movies.com


5.  「Collateral」  B+

(出演: トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス、ジェイダ・ピンケット・スミス、監督: マイケル・マン)

「The Insider」、「Ali」の侠気監督マイケル・マンが、トム・クルーズを悪役に起用して放つ鮮烈なアクション・スリラー。リムジン会社の経営者を夢見る気のいいタクシードライバーのマックス(ジェイミー・フォックス)は、乗客の一人ヴィンセント(トム・クルーズ)から一晩の貸し切り契約を持ちかけられる。ところがヴィンセントはプロのヒットマンで、マックスをドライバーとして拘束しながら一晩で5人の暗殺を実行して行く。全編を通じてロサンゼルスの夜景が美しく、グレイヘアーでスタイリッシュなヒットマンをけれんみなく演じるトム・クルーズは、ひたすら格好いい。前作「Ali」でブレイクしたジェイミー・フォックスが大いに存在感をアピールしている(フォックスの次作は「Ray」で、タイトルロールのレイ・チャールズを演じるぞ!)。ヴィンセントがタクシーを使う必然性が無いとか、一晩で5人の暗殺には無理があるとか、ストーリー面ではちょっと引っかかることが少なくない。だがシャープな映像と贅沢なキャストでカバーして充分お釣りが来るし、まあこれがスターの底力でしょうか。

(オフィシャルサイト: http://www.collateral-themovie.com


6.  「Alien vs. Predator」  B+

(出演: サナ・レイサン、ラオル・ボヴァ、ランス・ヘンリクセン、監督兼脚本:ポール・W・S・アンダーソン)

壮大なゲテモノ映画と思っていたら、意外にきちんと作ってあったSci-fiアクションの佳作。南極の地下に複雑な構造を持つ謎のピラミッドを発見した資産家のウェイランド(「Aliens」、「Alien3」でお馴染みのランス・ヘンリクセン)は、探査チームを結成して現地へ赴く。ところがそこではエイリアンとプレデターが人類に知られること無く、歴史的な戦闘を繰り広げていた、というのがメインストーリー。見所は勿論このSF映画界の両雄対決。まず戦闘種族プレデター、破壊生物エイリアン、というオリジナルのキャラクター設定が良く活かされている。そしてからくり屋敷のようなピラミッド内部で展開するアクションシークエンスは、閉塞感があって迫力がある。もう一つの見所はプレデターに加勢して生き残りを図る探査チームのロッククライマー(サナ・レイサン)の存在で、このアイディアはなかなか気が利いている。R指定を逃れるために飛び散る血や内臓の量を控えめにしてあるのが不満だが、ポール・アンダーソン(「Resident Evil」)の脚本はエンディングまでテンポ良く楽しめる。拾い物の一作でした。

(オフィシャルサイト: http://www.avp-movie.com


7.  「Open Water」  A

(出演: ブランチャード・ライアン、ダニエル・トラヴィス、監督兼脚本: クリス・ケンティス)

限定公開から準拡大公開された、実話に基づくインディペンデンス系作品。恐いよ、これは。カリブ海沖でスキューバダイビングを楽しんでいたダニエル(ダニエル・トラヴィス)とスーザン(ブランチャード・ライアン)は、ツアーガイドのミスで海上に取り残される。空と海に二分された世界で茫然と漂いながら、楽観主義が悲観主義に取って代わり、やがて肉体的にも精神的にも疲労の極限に近づいて行く2人。しか
もそこにはいつ鮫に襲われるかもしれない恐怖が常に共存している。特殊効果は一切なく、波間をさ迷う2人を見ているうちにこっちまで船酔いのような気分になって来る。はじめに「Jaws」有りきとは言え、「Jaws」より何倍も恐い。しかもハッピーにも悲劇にもなりうる結末は予測不可能だ。そう、シンプル故にこの映画は圧倒的に恐いのだ。この夏のスリーパーで、必見の一本。

(オフィシャルサイト: http://www.openwatermovie.com


という訳で、2004年のサマームービー特集はこれにてお終い(「Thunderbirds」は結局パス)。秋の期待作を挙げておくと、編集遅れで公開が延びたジュード・ロウ、グイネス・パルトロウ共演のレトロ調Sci-fi「Sky Captain and the World of Tomorrow」、ポール・ベタニーとキルステン・ダンスト共演のテニス映画「Wimbledon」、ジュリアン・ムーア主演のサイコスリラー「The Forgotten」、バーニー・マック主演の野球コメディー「Mr.3000」、ジェイミー・フォックスがレイ・チャールスに扮する「Ray」、ジョン・トラボルタとホアキン・フェニックスが消防士を演じる「Ladder49」、「South Park」のトレイ・パ?カーが放つR指定コメディー「Team America:World Police」、ウィル・スミス、ロバート・デニーロ他豪華声優陣によるCG「Shark Tale」など。毎度のことだけどキリがないね。