新型フォード・マスタングのCMがクールだ。あたり一面のトウモロコシ畑に通っている1本道。そこにマックィーンが現れ、マスタングに乗り込み、走り去って行く(「Field of Dreams」を意識した構成だ)。新型のデザインは、マックィーンが「ブリット」でサンフランシスコ市街を疾走させた68年型を意識したもので、フォード久々の大ヒットになりそう。Houston Chronicleは、”The King of Cool”と銘打ってそのマックィーンとマスタングの小特集をした。そのせいか久しぶりにマックィーンに会いたくなり、DVDで「荒野の七人」、「ネバダ・スミス」、「ジュニア・ボナー」、「華麗なる賭け」、「ブリット」を続けて観た。”The King of Cool”は健在だ。
***「Seinfeld」DVD***
’90年代にアメリカのコメディシーンを席巻した「Seinfeld」が、ようやくDVDになった。ジェリー・サインフェルド、ジェイソン・アレキザンダー、ジュリア・ルイス・ドレイファス、マイケル・リチャーズの織り成すアンサンブルは、理屈抜きで圧倒的に可笑しい。日常生活のどうでも良い一片に徹底的にこだわり、複数のストーリーが最後に交錯してオチとなるラリー・デヴィッドのライティング・スタイルは、「Frasier」、「Friends」、「Everybody
Loves Raymond」など他の一級コメディシリーズとも一線を画する。今回リリースされた第1〜第3シーズンの全40エピソードには、”Chinese
Restaurant”、”The Pony Remark”、”The Deal”、”The Boyfriend”などの初期の傑作が満載で、爆笑の連続。もう10年近く観ているが、何回観ても飽きない。
***ダーク・ピット・シリーズ映画化***
クライブ・カッスラーのダーク・ピット・シリーズは、学生の頃からのお気に入りの1つ。邦訳第1作「氷山を狙え」から最新作「マンハッタンを死守せよ」まで、文字通り駄作は1つもない冒険小説の金字塔だ。カッスラーは、’80年に映画化された「タイタニックを引き揚げろ」(映画化名:「Raise
the Titanic」)があまりにひどい出来なのにすっかりヘソを曲げてしまい、この映画化権を買い戻し、以降自作の映画化権も長い間封印していた。そしてこの度ようやくカッスラーが重い腰を上げた結果映画化されたのが、傑作の1つ「死のサハラを脱出せよ」(映画化名:「Sahara」)だ。主人公のダーク・ピットを演じるのはマシュー・マコノヒー。予告編を観る限り出来は良さそうで、2005年上半期の注目作だ。
***「The Da Vinci Code」***
ダン・ブラウンの「The Da Vinci Code」をようやく読んだ。全米で91週間連続ベストセラー入りしているスーパーベストセラーだが、元々歴史も宗教も興味がないので敬遠していた。翻訳版を読んだのだが、確かに面白く一気に上下巻を5時間で読了した。キリスト教の歴史を根底から覆すという話題性と、場面転換が極端に少ない構成のため大変読み易い。ただ難を言えば、主人公のロバート・ラングドン教授を始めとして各キャラクターが紙のように薄っぺらいことだろう。本作はロン・ハワード監督、トム・ハンクス主演で今年早々クランクインが決定しており、映画の方が期待できそうだ。
以下はクリント・イーストウッド監督の「Million Dollar Baby」を含むクリスマス・ムービー8本のレヴュー。
1. 「Flight of the Phoenix」 B+
(出演: デニス・クエイド、ミランダ・オットー、ジョヴァンニ・リビシ)
ジミー・ステュワート、アーネスト・ボーグナインらが共演した’65年の同名作品のリメイクで、オリジナルの監督ロバート・アルドリッチの息子が製作を担当している。油田の掘削チームを乗せた飛行機が、砂嵐のためにゴビ砂漠に不時着。デニス・クエイド演じるパイロットのフランクとその一行は、残り少ない水と食料で何とか生き残りを図る。だがたまたま乗り合わせていた航空設計士のエリオット(「Friends」でフィービーの弟を演じたジョヴァンニ・リビシ)は、飛行機の修復を提案する。原作はエルストン・トレバーによる航空冒険小説の名作「飛べ、フェニックス」。壊れた双胴機から単胴機を作るというアイディアが秀逸で、しかも終盤にはもう1つショッキングなツイストが隠されている。作品の出来自体はオリジナルには及ばないが、この種の優れたアイディアを持つ作品には最近お目にかかっていないので、十分楽しめる。オリジナルを観ていない人は逆にもっとエキサイティングだろう。
(オフィシャルサイト: http://www.flightofthephoenix.com)
2. 「Spanglish」 B
(出演: アダム・サンドラー、ティア・レオーニ、パズ・ヴェガ、クロリス・リーチマン、監督権脚本: ジェームズ・L・ブルックス)
「愛と喝采の日々」、「恋愛小説家」のジェームズ・L・ブルックスによる恋愛コメディ・ドラマ。娘を連れてメキシコからカリフォルニアへ密入国した若い女性(パズ・ヴェガ)が、アダム・サンドラー演じる4つ星シェフのハウスキーパーとして過ごす大騒動が描かれる。パズ・ヴェガ、多少分裂気味の妻を演じるティア・レオーニ(「Family
Man」)、そのアル中の母親役のクロリス・リーチマンら主要登場人物はいずれも魅力的で、サンドラーもやり過ぎないように脚本が上手くコントロールしている。だがドラマとしては底が浅く、コメディとしてもカルチャーショックやランゲージバリアに対する突っ込みが足りない。ロマコメとしても成立しているとは言い難く、パズ・ヴェガの魅力をスポイルしている。楽しいシーンは幾つもあるのだが、エンディングに爽快感がないのは最大の不満で、観終わった後には消化不良が残る。
(オフィシャルサイト: http://spanglish.com)
3. 「Meet the Fockers」 B
(出演: ロバート・デニーロ、ベン・スティラー、テリー・ポロ、ダスティン・ホフマン、バーブラ・ストライザンド)
ロバート・デニーロとベン・スティラーのコンビで大ヒットした、「Meet the Parents」(’00)の続編。前作は、「元CIAでガールフレンドの父親(デニーロ)にイジメ抜かれるダメ男のグレッグ(スティラー)」という、基本的なキャラクターとストーリーだけで充分笑えた。本作では、これにグレッグのイカレた両親(お気楽な弁護士のダスティン・ホフマンとセックス・セラピストのバーブラ・ストライザンド)が加わって可笑しさ倍増という計算だったのだが、当てが外れた。ストーリー展開が下手なので、ホフマンとストライザンドの毒気が、スティラーXデニーロ効果に干渉してしまっている。また子供とペットで笑いを取ろうと言うあさましさも気になる。
結局笑えるのはやはりスティラーとデニーロの掛け合いシーンだけで、無駄と手抜きの目立つ凡作に終わった。もっとも興行的には特にこれと言って対抗馬の無かったクリスマス・ムービーの中ではブッちぎりの第1位だったが。
(オフィシャルサイト: http://www.meetthefockers.com)
4. 「The Phantom of the Opera」 B+
(出演: ジェラード・バトラー、エミー・ロサム、パトリック・ウィルソン、ミランダ・リチャードソン、ミニー・ドライバー)
クラシック・ミステリーのファンには懐かしいガストン・ルルーの「オペラ座の怪人」が原作で、大ヒットしたブロードウェイ・ミュージカルの映画化。大御所アンドリュー・ロイド・ウエバーが、自ら監督のジョエル・スマッチャーと共同脚本を書いている。モノトーンの導入部から、一転してパリのオペラハウスが甦る最初の15分は胸がわくわくする面白さだ。その後若く才能のある歌姫クリスティーン(エミー・ロサム)と、オペラハウスに潜むファントム(ジェラード・バトラー)との苦い恋物語が綴られる。一昨年の「Chicago」は、絢爛豪華に有名スターを散りばめたいかにもハリウッド・ミュージカルらしい傑作だったが、本作は対照的に渋いキャストとパワフルなナンバーでなかなか魅せてくれる。主役のエミー・ロサムはオペラ歌手だけあってその歌唱力は抜群なのだが、今ひとつ個性的な魅力に欠ける(「The
Bride」のジェニファー・ビールスに似ているせいか)。また2時間半近い上映時間は多少中だるみする。だが「Ocean’s
Twelve」や「Meet the Fockers」のような安易で工夫のない凡作の後に観ると、ちょっとリッチな気分に浸れるのである。
(オフィシャルサイト: http://www.phantomthemovie.com)
5. 「The Aviator」 B+
(出演: レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ブランシェット、ケイト・ベッキンセイル、ジョン・C・ライリー、アラン・アルダ、アレック・ボールドウィン、ジュード・ロウ、監督: マーティン・スコセッシ)
世紀の奇人ハワード・ヒューズを、「Gang of New York」のマーティン・スコセッシがパワフルに描く伝記映画。野心家で異常潔癖症のヒューズ(レオナルド・ディカプリオ)が、相続したヒューストンの油田から得る巨額の資金を使ってハリウッドへ進出し、有名女優と浮名を流し、やがてアメリカの航空業界を制覇する約20年間が活写される。ディカプリオは元々上手い俳優なので、航空機の開発に取り憑かれるヒューズ役も安心して見ていられる。スコセッシのクラフトワークも健在だ。ただ映画的に感動が乏しいのは、基本的にハワード・ヒューズが大金持ちの嫌な奴としか見えないからだろう。またキャサリン・ヘップバーンに扮するケイト・ブランシェットと、エヴァ・ガードナーを演じるケイト・ベッキンセイルが全然似ていないのも興覚めだ(エロル・フリン役のジュード・ロウはOK)。スコセッシとディカプリオのオスカー・ノミネーションは充分有り得るが、共に受賞は無理だろう。
(オフィシャルサイト: http://www.theaviatormovie.com)
6. 「Kinsey」 B+
(出演: リーアム・ニーソン、ローラ・リニー、ピーター・サースガード、クリス・オドネル、ジョン・リスゴー、オリバー・プラット、監督: ビル・コンドン)
1948年に出版されて大反響を呼んだ、いわゆる「Kinsey Report」(”Sexual Behavior
in the Human Male”)の著者、アルフレッド・キンゼイ博士の生涯を描く伝記映画。厳格な牧師の家庭で育ったアルフレッドは生物学の教授となり、やがて教え子の一人クララ(ローラ・リニー)と結婚する。ところが初夜が上手く行ずに悩んだことをきっかけに、当時はほとんど存在しなかったセックスに関する統計をまとめることに取り憑かれる。「Gods
and Monsters」の監督ビル・コンドンの演出は、セックスへの興味を超えて一組の夫婦の愛情と特異な人生を描いて説得力がある。また純粋で自由闊達なキャラクターとして描かれるキンゼイ博士とクララに扮するリーアム・ニーソンとローラ・リニーもこれ以上ない組み合わせで、ケミストリーが働いている。エンターテインメントとしても充分成立している好編。
(オフィシャルサイト: http://www.foxsearchlight.com)
7. 「The Life Aquatic with Steve Zissou」 C+
(出演: ビル・マーレー、オーウェン・ウィルソン、ケイト・ブランシェット、アンジェリカ・ヒューストン、ウィレム・デフォー、ジェフ・ゴールドブラム、監督兼共同脚本: ウェス・アンダーソン)
‘98年の「Rushmore」は、ヒューストン生まれの監督ウェス・アンダーソンの名を知らしめたコメディの快作だったが、本作はそのアンダーソンが再びビル・マーレーと組んだものの見事な失敗作となった。今回マーレーが演じるのはオフビートな海洋学者ジソー。彼は人食い鮫に食われた友人のかたき討ちのために、まったく頼りにならないチームを率いて最後の冒険に出る。「Rushmore」では、アンダーソン独特のナンセンスと妙なリアリティが混然一体となりながら微妙なバランスを保っていた。だが本作は明らかにやり過ぎで、一般受けしないギャグが途切れ途切れに発せられるだけで退屈する。マーレーはいつも通り面白いが、有名俳優で固めた脇役陣がちょっとうざったい。まあ予告編で観られる以上のギャグはないと思った方が良いでしょう。
(オフィシャルサイト: http://lifeaquatic.com)
8. 「Million Dollar Baby」 A
(出演: クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン、監督兼作曲: クリント・イーストウッド)
監督としてのクリント・イーストウッドは、既に3本の傑作を世に送り出している。「The Outlaw Josey Wales」(’76)では、南北戦争を背景に、虐殺された家族の復讐のためにガンマンとなった農夫と、彼のもとに集まる孤独で希望を失った者たちの心の交流が描かれた。「Unforgiven」(’92)は、妻に先立たれた後、子供を養うために再び銃を取らざるを得なかった、元殺し屋の苦悩を描き切ったアンチ・ウエスタン。昨年の「Mystic River」は、悲劇と言う運命に翻弄される、娘を殺されたやくざな父親と、幼いころ受けた虐待の傷を克服できないでいる不幸な男の物語だった。
そして本作である。飛び抜けた技量を持ちながらも、選手を傷つける事を必要以上に恐れて大成できなかった老いたボクシング・トレーナー。子供の頃からプロボクサーになることだけを夢見てきた、タフだが孤独で極貧のウェイトレス。そんな2人の出会いによって、お互いの人生が変わる。父と娘のような愛情の芽生え。そして世界チャンプという2人の共通の夢に、手が届く瞬間が近づく…。イーストウッドはまたしてもやった。これは演技がどうの、ストーリーがどうのと言葉を並べる必要もない、パワフルで、いとおしく、やるせなく、そして忘れ難い、究極のラブストーリーだ。
(オフィシャルサイト: http://www.milliondollarbabymovie.net)
次回は1月9日からスタートした「24」第4シーズンのインプレ、そして「第6回:輝け!Texas Movie Awards!」の発表だ。