齢のせいか例年にも増してあっという間の1年であった。だが敢えて1年間を振り返るまでもなく、2004年はクリント・イーストウッドとジェイミー・フォックスに尽きる。イーストウッドは製作・監督・主演をし、ついでに作曲までこなした畢生の傑作「Million Dollar Baby」を引っ下げて年末に登場し、オスカー狙いの映画製作者達を震え上がらせた。フォックスは「Ray」と「Collateral」で主演・助演を自在に演じ分け、ウィル・スミスに肩を並べるマルチタレントぶりを見せつけて、ライバルを圧倒した。昨年この2人に匹敵する活躍をした監督・俳優も、この2本に匹敵する作品も存在しなかった。
という訳で、イーストウッドが2年連続2冠に輝いた、第6回Texas Movie Awardsで
した。
以下は各賞の発表です。
*最優秀作品賞&ベストテン
最優秀作品賞 「Million Dollar Baby」
第2位 「Ray」
第3位 「The Incredibles」
第4位 「Spider-Man 2」
第5位 「Sideways」
第6位 「Collateral」
第7位 「Hotel Rwanda」
第8位 「50 First Dates」
第9位 「Sky Captain and the World of Tomorrow」
第10位 「Mickey」
* 最優秀監督賞: クリント・イーストウッド(「Million Dollar Baby」)
(その他の候補)
ブラッド・バード(「The Incredibles」)、テイラー・ハックフォード(「Ray」)、マイケル・マン(「Collateral」)、サム・ライミ(「Spider-Man
2」)
* 最優秀主演男優賞: ジェイミー・フォックス(「Ray」)&ショーン・ペン(「The
Assassination of Richard Nixon」)
(その他の候補)
クリント・イーストウッド(「Million Dollar Baby」)、ケビン・ベーコン(「The Woodsman」)、ドン・チードル(「Hotel
Rwanda」)
* 最優秀主演女優賞:ヒラリー・スワンク(「Million Dollar Baby」)
(その他の候補)
ケイト・ウィンスレット(「Finding Neverland」)、ドリュー・バリモア(「50
First Dates」)、ユマ・サーマン(「Kill Bill: Vol.2」)、ブライス・ダラス・ハワード(「The
Village」)
* 最優秀助演男優賞: トーマス・ハーデン・チャーチ(「Sideways」)
(その他の候補)
モーガン・フリーマン(「Million Dollar Baby」)、ジェイミー・フォックス(「Collateral」)、アレック・ボールドウィン(「The
Aviator」)、エリック・バナ(「Troy」)
* 最優秀助演女優賞: シャロン・ウォーレン(「Ray」)
(その他の候補)
ローラ・リニー(「Kinsey」)、ヴァージニア・マドセン(「Sideways」)、ジェイダ・ピンケット・スミス(「Collateral」)、キーラ・セジウィック(「The Woodsman」)
* 最優秀脚本賞: 「The Incredibles」
(その他の候補)
「Sideways」、「Million Dollar Baby」、「Spider-Man 2」、「Saw」
* 最優秀主題歌賞: “Old Habits Die Hard” from 「Alfie」 by ミック・ジャガー&デヴィッド・A・ステュワート
* ワースト映画: 「Paparazzi」
* 最優秀TVドラマ: 「Lost」
(その他の候補)
「24」、「Without a Trace」、「House」、「CSI: Miami」
* 最優秀CMアクター&アクトレス:
スティーブ・マックィーン(Ford Motors) & サラ・ジェシカ・パーカー(GAP)
以下は2004年作品の残りと、新年度作品合わせて6本のレヴュー。
1. 「Hotel Rwanda」 A-
(出演: ドン・チードル、ソフィー・オコネドー、ニック・ノルティ、ホアキン・
フェニックス)
平凡なホテル支配人であったポール・ルセサバジナが、1200人に及ぶツチー族の命を救い、「ルワンダのシンドラー」と呼ばれるようになったルワンダ虐殺を描く実録ドラマ。かつてルワンダがベルギーの占領下にあった時代に、ツチー族が優遇されフートゥー族が冷遇されていたことがそもそもの発端。そして’94年、大統領の乗った飛行機が撃墜されるとともに、フートゥー族によって構成された軍部がツチー族の大量処刑を始める。自分はフートゥー族だが妻がツチー族だったポールは、初めは家族を守ることしか考えられない。しかし助けを求めるツチー族が彼のホテルに続々と集まってくるに及び、ポールはあらん限りの知恵、コネ、贈賄を使って彼らを守り抜こうとする。史実の重さだけでなく、オスカー・ノミネーションの呼び声も高いドン・チードル(「Ocean’s Twelve」)、その妻役のソフィー・オコネドーの熱い演技は観客の胸を打つ。今時珍しい愛と勇気の物語だ。
(オフィシャルサイト: http://www.hotelrwanda.com)
2. 「The Woodsman」 B+
(出演: ケビン・ベーコン、キーラ・セジウィック、モス・デフ、ベンジャミン・ブラット、イヴ)
善玉も悪役もこなせるのがケビン・ベーコンの強みとは言え、彼が本作で演じるのは更生中の元少女暴行犯ウォルターだ。ウォルターは12年の服役生活を終えた後、定期的に精神科医の診療を受けながら木材工場で働いている。この物語が恐いのは、ウォルターが自分でも病気が直っているのかどうか分からないところだ。そしてこの映画の上手いのは、元少女暴行犯が一般市民に混じって暮らしているというと恐怖と(実際この問題は、アメリカでその是非をめぐり活発に議論されている)、服役を済ませて懸命に更生を図る男への同情とを、観客に交互に沸き起こさせる点だ。キャリアー最高の演技を見せるケビン・ベーコンに加えて、ウォルターに想いを寄せる同僚のヴィッキーを演じるキーラ・セジウィック(私生活ではミセス・ベーコン)、嫌味な刑事役のモス・デフ(こいつはラッパーだが、本当に演技は上手いぞ)と、渋い脇役陣も見逃せない。圧倒的な絶望感の中に、時おり淡い希望が見え隠れする哀しい好編。
(オフィシャルサイト: http://www.thewoodsmanfilm.com)
3. 「The Assassination of Richard Nixon」 B
(出演: ショーン・ペン、ドン・チードル、ジャック・トンプソン、ナオミ・ワッツ)
‘74年に、TWA機をハイジャックしてホワイトハウスへ突っ込もうと企てた男――サム・ビックの実話。ショーン・ペン扮するサムはオフィス家具のセールスマンで、妻(ナオミ・ワッツ)とは別居中の身。サムは正直だが優柔不断の性格のためいつまでたっても売上を増やすことが出来ず、しかもい今だに未練のある妻からも冷たくあしらわれる。フラストレーションは徐々にサムの性格をねじ曲げて行き、その怒りの矛先はやがてアメリカの社会構造そのものに向けられていく。ショーン・ペンの演技以外は期待していなかった作品だが、今のペンは手がつけられない。精神が歪んで行く哀れな男の姿を、ものの見事に体現する。名人芸だ。昨年本ウェブサイトに載った「21grams」の特別レヴューの中でも、「もはやショーン・ペンはトム・ハンクスやロバート・デニーロの域も超えてしまった」という意味のことを書いたが、信じられなかったら本作を観ることをお薦めする。作品が大したことのない分だけ、彼の凄さが際立っている。
尚、ペンはニコール・キッドマンと共演する政治スリラー、「The Interpreter」の公開が間近に控えている。これは本当に楽しみな一作だ。
(オフィシャルサイト: http://www.assassinationrichardnixon.com)
4. 「In Good Company」 A-
(出演: デニス・クエイド、トファー・グレース、スカーレット・ヨハンソン、マージ・ヘルゲンバーガー、セルマ・ブレア)
嬉しいことに2005年初頭を飾るのは、アメリカのビジネスシーンを背景にした大変よく出来たコメディ・ドラマだ。51才のダン(デニス・クエイド)は、NYにあるスポーツ雑誌「Sports
America」の広告営業部長。ところが「Sports America」が巨大メディア企業に買収された結果、ダンは降格されて代わりに若干26才のカーター(トファー・グレース)が送り込まれてくる。ダンとカーターの関係は、奇妙な上司と部下の関係に加えて、カーターがダンの娘アレックス(「Lost
in Translation」のスカーレット・ヨハンソン)と付き合い始めた結果、いよいよ気まずくなっていく。本作は典型的なアメリカ人の親父役のデニス・クエイドも良いのだが、ハイライトは頭脳明晰で傷つき易いカーターを演じるトファー・グレイスだ。彼はTVコメディ「That’s
70’s Show」でアシュトン・カッチャーと組んでお馬鹿な演技を連発しているが、コメディもシリアス物も達者にこなす。多分今ハリウッドで最も才能ある若手アクターの1人だろう。それから忘れてはならないのが、切り口鋭い本作の脚本。買収とレイオフが繰り返されるアメリカの過酷なビジネス社会の現実を巧みに織り込みながらも、フェアリー・テールに終わらせることなく粋なコメディ・ドラマに仕上げられている。エンディングも極めて説得力があり、忙しくて映画を観る暇のない日本のサラリーマンにも広く薦めたい1本だ。
(オフィシャルサイト: http://www.ingoodcompanymovie.com)
5. 「Assault on Precinct 13」 B+
(出演: イーサン・ホーク、ローレンス・フィッシュバーン、ドゥレア・ド・マッテオ、ジョン・レグイザモ、ブライアン・デネヒー、ジャ・ルール、マリア・ベロ、ガブリエル・バーン)
ジョン・カーペンターが’76年に監督した同名映画のリメイク(まずこのタイトルからして、勇ましくて嬉しいではないか)。雪の深い大晦日のデトロイト。おとり捜査の失敗で13分署に左遷されていたジェイク(イーサン・ホーク)の元に、逮捕されたばかりのギャングの超大物ビショップ(ローレンス・フィッシュバーン)が移送されて来る。ほどなく13分署は、ビショップと組んでいた汚職警官のグループに襲撃される。ジェイクはビショップら収監者たちを解放し、武器を渡し、犯罪者と組んでこれを迎え撃つ。イーサン・ホークは’97年の「Gattaca」あたりから存在感を出してきて、オスカー・ノミネーションを受けた「Training
Day」で開花した。演技がきっちり出来てアクションも切れる、実に味わいのあるアクターだ。ローレンス・フィッシュバーンはカリスマのあるビショップを快演、更にジョン・レグイザモ、ドゥレア・ド・マッテオ(「The
Sopranos」、「Joey」)、ブライアン・デネヒーら、クセ者を集めた脇役陣も層が厚い。ストーリーの後半にあるツイストは読めてしまうが、緊張感は最後まで途切れることなく続く。オリジナルは観ていないが、これは渋いキャストによる硬派なアクション映画の一品だ。
(オフィシャルサイト: http://www.ap13movie.com)
6. 「Coach Carter」 A
(出演: サミュエル・L・ジャクソン、ロブ・ブラウン、アントワン・タナー、アシャンティ)
新春からあまり”A”を安売りしたくはないのだが、これがまた「スラム・ダンク」の実写版のような凄い作品。’97年にカリフォルニアのリッチモンド高校バスケットボール部で起きた実話を、MTVがプロデュース。タイトルロールの鬼コーチ、ケン・カーターにサミュエル・L・ジャクソンが扮する。リッチモンド高校は生徒の卒業率わずか50%、出身者の80%が刑務所に入っているという地元でも最低ランクの高校。一方同校出身でかつてカレッジ・バスケットのスター選手だったカーターは、いまはビジネスマンとして成功している。カーターは少しでも多くの生徒が奨学金でカレッジへ進み、高校を卒業して真っ当な人生を歩めるようコーチの職を引き受け、学業の妥協も許さない徹底的なスパルタ教育を始める。ジャクソンのカリスマ的演技は圧倒的な存在感。またゲームシーンの臨場感・高揚感も高く、その感動的なストーリーは観るものの心を捉えて離さない。この種の「負け犬チームの実話サクセス・ストーリー」には、「Hoosiers」、「Remember
the Titans」、昨年の「Friday Night Lights」など佳作が多いが、本作はこのジャンルの最高峰と言える。今年必見の一本。
(オフィシャルサイト: http://coachcartermovie.com)
「24」の第4シーズンが始まった。設定は前回から3年後。CTUを追われたジャック(キーファー・サザーランド)は、ボディガードをするヘラー国防長官(ウィリアム・ディヴァイン)とその娘(TVシリーズ「Third
Watch」のキム・レイヴァー)の誘拐事件を追う。今シーズンは小粒な事件を徐々に展開させて行くスタイルのようで、まずまずのスタートを切った。キーファー・サザーランドのシャープな会話とアクションも健在だ。尚、ジャックの娘キムはチェイスと結婚しているが、画面には登場していない。パーマー大統領は退いている。