***今年のオスカーは期待通り「Million Dollar Baby」が席巻し、サプライズこそなかったものの、珍しく満足の行くものだった。また、主演男優賞のジェイミー・フォックスほど受賞が確実だったことも、過去に例がなかったのではないか。日本の映画評論家の何人かがジョニー・デップやディカプリオの受賞を予想していたが(ププー)、希望と予想を一緒にするなって。それからクリス・ロックの司会はアク抜きされていて、全くスリルが無かったぞ。
***最近はDVDでテレビシリーズばかり観ていて、劇場で観る映画の本数が激減している。「Cheers」、「TAXI」、「Happy Days」、「Quantum Leap」、「The Greatest American Hero」、「MacGyver」などの懐かしいクラシックに加えて、「The Shield」、「Dead Zone」、「The Wire」、「Without a Trace」などの新作は、毎日観ている時間がないので、DVDが出るとまとめて観ている。これらはどれも傑作揃いなので、誰にでも広く薦めたいシリーズだ。勿論「Seinfeld」、「Mad About You」、「Friends」など、90年代を代表するコメディシリーズも捨て難い。
一方リアルタイムで観ているのは、「24」、「House, M.D.」、「The Lost」、「CSI」、「CSI:Miami」、「Numbers」など。「CSI」はマンネリに陥り、「Law & Order」はジェリー・オーバックが亡くなったのが致命的。そんな中で、難病患者専門の特殊チームを率いる変人医師を描く「House, M.D.」(「X-Men」の監督ブライアン・シンガーがプロデュースしている)と、若き数学の天才がFBIのコンサルタントとして事件を解決する「Numbers」はお薦めだ。テレビシリーズについては一度まとめて紹介したいとは思っているのだが、時間がなくて……。
以下は最近公開された8本のレヴュー。
1. 「Hitch」 B
(出演: ウィル・スミス、エヴァ・メンデス、ケビン・ジェームズ、アンバー・バレッタ)
公開前からスーパーヒットが約束されていた、ウィル・スミス初のロマンティック・コメディ。スミス演じるヒッチはNYの「デート・ドクター」(実在のモデルがいる)で、恋愛に悩む世の中の冴えない男たちの救世主だ。アルバート(ケビン・ジェームズ)も、ヒッチのアドバイスで高嶺の花であった大手企業のCEOアレグラ(アンバー・バレッタ)を射とめたばかり。ところが、ヒッチがアルバートとアレグラのゴシップを追う雑誌記者サラ(エヴァ・メンデス)に一目惚れしたことから、話がややこしくなる。このストーリー設定はロマコメらしくて気が利いているし、「Fresh Prince of Bel-Air」のスミスを思い出せば、彼がこの手の役をを楽にこなせることは明らかだ。しかも「King of the Hill」のケビン・ジェームズが、スミス以上にチャーミングで可笑しい。だが大誤算はスミスとエヴァ・メンデスにケミストリーが働かなかったこと。メンデスは「2 Fast 2 Furious」とかのB級作品の脇役では魅力を発揮していたが、本作ではあまり生彩がない。ウィル・スミスの次のロマコメに期待したい。
(オフィシャルサイト: http://hitch.com)
2. 「Constantine」 D
(出演: キアヌ・リーヴス、レイチェル・ワイズ、ジャイモン・フンスー、ティルダ・スウィントン)
「The Matrix」と「Exorcist」を足して2で割ったような予告編を見て覚悟はしていたが、予想以上に酷い出来栄えのキアヌ・リーヴス最新作。天使と悪魔の勢力バランスを崩す「運命の剣」がメキシコで見つかったことから、跳梁跋扈するデーモンによって人間社会に異変が起き始める。一方LAの刑事アンジェラ(レイチェル・ワイズ)は、自殺した妹の死の真相を探るうちに、デーモン・ハンターのコンスタンティン(キアヌ・リーヴス)と出会う。ふんだんにあるアクションシーンは、ひたすらコンスタンティンがCGのデーモンたちを吹っ飛ばすだけで新規さは何も無く、しかも最後の盛り上がりが、「ない」。盛り上がりに「欠ける」のではなく、信じられないことに文字通り「ない」のだ。こうなると、ハリウッドの人気アクターの中でも群を抜いて演技
力に乏しいキアヌとしては、立つ瀬が無い。最後の救いをずぶ濡れシーンが何回もあるレイチェル・ワイズ(「Running Jury」)に期待したのだが、あまりセクシーでなかった。キアヌ・リーヴス・ファンクラブの会員でない人は、避けたほうが無難な作品。早くも今年のラズベリー賞有力候補の登場だ。
(オフィシャルサイト: http://www.constantinemovie.com)
3. 「Man of the House」 B
(出演: トミー・リー・ジョーンズ、アン・アーチャー、セドリック・ザ・エンターテイナー)
テキサンのトミー・リー・ジョーンズ主演の、テキサスを舞台にした罪のないコメディ。テキサス大学のチアリーダー5人が、ギャングによる殺人を目撃する。ジョーンズ扮するテキサス・レンジャーの保安官シャープは、渋々彼女たちと証人保護用の一軒家で共同生活を始める。一人娘とも上手く行かないシャープが、5人のチアリーダーたちを扱えるはずもない。完全なカルチャーギャップ・コメディなので、アクション・コメディを期待すると失望するが、5人のチアリーダーたちはそれなりに描き分けられて、結構飽きさせない。最近手抜きが目立つジョーンズの食えない作品だが、テキサス住民としておまけの「B」を進呈する。
(オフィシャルサイト: http://sony.com/manofthehouse)
4. 「Hostage」 B
(出演: ブルース・ウィリス、ケビン・ポラック、ベン・フォスター)
予告編を観てちょっぴり「Die Hard」を期待したら、見事に裏切られたブルース・ウィリス主演のスリラー。ウィリス演じるジェフ・タリーは、元ロス市警で腕利きの人質交渉人だったが、任務に失敗して現在は郊外の分署長をしている。ところがティーンエイジャーの3人組が裕福な会計士(ケビン・ポラック)の邸宅に押し入り、人質を取って立てこもったことからジェフに悲劇がふりかかる。その会計士がマフィアの二重帳簿を持っていたからだ。この基本ストーリーのおかげで映画の前半は緊迫感があり、文句無い。ウィリスも渋くて良い。ところが後半になると、話が暴走し始める。3人組の1人が不死身のように暴れまわり、ホラー映画の様相を呈してくるのだ。この脚本家が何を考えていたのか知らないが、おかげでブルース・ウィリスは振り上げた拳を降ろすことも出来ず、何とも後味の悪い一作となった。
(オフィシャルサイト: http://www.miramax.com)
5. 「The Ring Two」 C-
(出演: ナオミ・ワッツ、デヴィッド・ドーフマン、シシー・スペイセク、監督: 中田秀夫)
日本版「リング」の監督中田秀夫がメガホンを取った、「The Ring」の続編。といってもストーリーはオリジナルなので、つまらなさもオリジナルだ。小さな町で息子エイデン(デヴィッド・ドーフマン)との新しい生活を始めたレイチェル(ナオミ・ワッツ)は、あるティーンエイジャーの殺人事件に、例の「ビデオ」が係わっていることを知って愕然とする。そして一端は収まったはずの死者サマラの亡霊がエイデンを狙い始めるに及び、レイチェルは再び絶望的な戦いを始める。前作は少なくともビデオという小道具が効果的に使われ、しっとりとした日本製ホラーの趣があった。だが本作のストーリーは「四谷怪談」と何ら変わらず、勿論全然恐くなく、かと言ってハリウッド製ホラーのように笑える訳でもない。こうなると、この夏公開の「King
Kong」でフェイ・レイを演じるナオミ・ワッツのクローズアップを観る以外楽しみはないのだが、それでも初めの1時間で飽きてしまった。
(オフィシャルサイト: http://www.thering2-themovie.com)
6. 「Robots」 B+
(声の出演: ユアン・マクレガー、ハリー・ベリー、メル・ブルックス、グレッグ・キニア、ロビン・ウィリアムス)
「Ice Age」の製作チームが、今度はロボットだけの世界を描く愉快なCG。ロドニー(ユアン・マクレガー)は、貧乏だが優しい両親に愛される一人息子(父親は皿洗いロボットだ)。機械いじりが大好きなロドニーは、発明家になる夢を追って、ロボット・シティにある大企業の社長ビッグウェルド(メル・ブルックス)を訪ねる。だがビッグウェルドの会社は野心家のラチェット(グレッグ・キニア)に乗っ取られていたばかりか、ラチェットの金儲け政策のために、街中のロボットが交換部品の不足に苦しんでいた。レトロ調ロボットたちの精巧な動きとシャープな色彩はCGならではの楽しさで、ユアン・マクレガー似のロドニーや、メル・ブルックスがぴったりとはまったビッグウェルドのキャラクターも味わい深い。会話にウィットが乏しいのが不満と言えば不満だが、「夢をあきらめるな」という単純で健全なメッセージ性も心地よく、誰にでも薦められる1本。
(オフィシャルサイト: http://www.robotsmovie.com)
7. 「The Upside of Anger」 B+
(出演: ジョアン・アレン、ケビン・コスナー、ケリー・ラッセル、エリカ・クリステンセン)
今まで冷たい美人役しか観たことのないジョアン・アレン(「The Contender」、「The Bourne Supremacy」)と、ケビン・コスナー共演のロマンティック・コメディ。アレンが扮するのは、何の前触れもなく突然夫に去られ、4人の娘と共に残された妻テリー。怒りにかられた彼女はテレビの前に座って、ひたすらアルコールを飲む毎日。一方コスナー演じるのが、元デトロイト・タイガースのスターで、今は地元ラジオの不人気なパーソナリティーに落ちぶれたデニー(デニーは野球の話を全くしないので、人気が出るはずがない)。デニーはテリーの「飲み友達」と称して彼女の家に押しかけ、次第にテリーと4人の娘たちと擬似家族化して行く。コメディと言ってもこの6人の中途半端な人間関係が面白いので、良い意味での枯れた笑いが中心。本作の最大の魅力はコメディエンヌとしてのアレンの隠れた魅力で、これに引退した野球選手らしく、体重を増やして飄々と振舞うコスナーが上手くマッチした。「Felicity」のケリー・ラッセルら4人の娘たちもそれぞれ好演していて、これはちょっと渋い好編だ。
(オフィシャルサイト: http://www.upsideofanger.com)
8. 「Miss Congeniality 2: Armed and Fabulous」 C+
(出演: サンドラ・ブロック、レジーナ・キング、エンリケ・マルシアーノ、ウィリアム・シャトナー、ヘザー・バーンズ)
5年前のオリジナルは、スランプだったサンドラ・ブロック起死回生の一作となったが、本作は典型的な続編の失敗作だ。前作でミス・アメリカに出場してすっかりセレブになってしまったFBI捜査官のグレイシー(サンドラ・ブロック)。彼女はもはやおとり捜査官として使い物にならないために、現場からFBIの広報担当へ格下げされる。ところが今では親友となったミス・アメリカが誘拐されたことから、グレイシーは独自に犯人追跡を始める。舞台となるラスベガスの雰囲気はベネチアンを中心に楽しめるが、サンドラ・ブロックのかつての魅力はとっくに色褪せてしまっている上に、凡庸なストーリーのためにほとんど笑えない。前作でパートナーだったベンジャミン・ブラットや、悪役を演じていたマイケル・ケインがいないのも痛い。TVシリーズ「Without a Trace」のエンリケ・マルシアーノと、「Law & Order」のヘザー・バーンズがFBI捜査官役で出演しているのがかろうじて目を引くくらいで、基本的には見るべきものは何もない。
(オフィシャルサイト: http://www.armedandfabulous.com)
いよいよ野球シーズン到来。ボストンを舞台に、レッドソックス命のジミー・ファロンが、ドリュー・バリモアと恋に落ちるロマコメ「Fever
Pitch」は楽しみな1本。
次回にレヴューをお届けする。
それでは、また。“GO AStrOS!”