***「24」第4シーズン、現在絶好調!***
第3シーズンが雑なストーリー設定で、ジリ貧が予想された「24」の第4シーズン。だがそんな心配をよそに、いざふたを開けてみるとこれが凄い。本稿を書いている時点で既に21時間が経過、周到に計画され何重にも張り巡らされたテロリストの罠の前に、われらがジャック・バウアーとCTUはいまや敗北寸前なのである。本シーズンは国防長官とその娘の誘拐で幕を開けたが、ジャックの大活躍にも係わらず、テロリストグループはトカゲの尻尾を切るかのように巧みにCTUの包囲網から逃れ続け、確実に隠された真の標的に肉薄して行く。ジャックは徹底的に追い詰められた状況下で、かつてないほどの非情な選択を何回となく迫られ、今やダーティー・ヒーローとなってしまった。
今回の脚本は、「追う側」と「追われる側」とが”Cat & Mouse”スタイルで対等に
描かれているのが良く効いていて、すべてのエピソードで高いテンションが持続している(黒澤明の「隠し砦の三悪人」を彷彿させる)。この間に、アル中となっていたトニーがジャックの危機を救うためにカムバック、さらにミシェルがCTUに復帰、後半ではパーマー元大統領も登場するなど、泣かせてくれるぞ。日本の「24」ファンよ、大いに期待するが良い。
以下は2005年サマームービー直前の、9本のレヴューだ。
1. 「Sin City」 B+
(出演: ブルース・ウィリス、ミッキー・ローク、クライブ・オーウェン、ベニシオ・デル・トロ、ロザリオ・ドーソン、ジェシカ・アルバ、ブリトニー・マーフィー、イライジャ・ウッド、監督: ロバート・ロドリゲス&フランク・ミラー)
「Once Upon a Time in Mexico」のロバート・ロドリゲスが、フランク・ミラーの同名コミックを、豪華キャストで忠実にスクリーンに描き写した超野心作。3つのショートストーリーから成るオムニバス形式だが、各ストーリーは一応関連している。若く美しいストリッパーとかつて彼女を誘拐犯から救った警察官(ジェシカ・アルバとブルース・ウィリス)、売春婦の恋人を殺されて復讐に燃える野獣のような犯罪者(ミッキー・ローク)、タフな新聞記者と女性自警団の首領(クライブ・オーウェンとロザリオ・ドーソン)を中心に、それぞれのストーリーが展開する。中でもタフと孤独を見事に体現するミッキー・ロークが群を抜いて良く、最近のロークを知っている人には信じられないだろう。とにかく全編ウルトラバイオレンス、セクシー、スタイリッシュで、R指定映画のお手本とすべき作品。ロドリゲスのポン友クエンティン・タランティーノが1シーンを監督している。
(オフィシャルサイト: http://www.sincitythemovie.com)
2. 「Sahara」 B+
(出演: マシュー・マコノヒー、スティーブ・ゾーン、ペネロペ・クルス、ウィリアム・H・メイシー)
クライブ・カッスラーのダーク・ピット・シリーズ中の傑作「死のサハラを脱出せよ」が、スクリーンに登場だ。今回NUMA(国立海中海洋機関)のピット(マシュー・マコノヒー)と親友のアル・ジョルディーノ(スティーブ・ゾーン)は、南北戦争時に多量の金貨とともに消息を断った戦艦を捜すうちに、アフリカで謎の伝染病を調査するWHOの医師エヴァ(ペネロペ・クルス)の命を救う。その後は(いつもどおり)危機また危機のアドベンチャーの連続だ。ダーク・ピットの活躍を通して、この一見何の関係もなさそうな歴史的な出来事を、近代のテロや国際的陰謀に結び付けてしまうストーリーテリングは、カッスラーの真骨頂。マコノヒーとゾーンによるピットとジョルディーノ、それにウィリアム・H・メイシー演じるNUMAのジェームズ・サンデッカー提督は、余りにも脳天気で、原作に漂う才気や機知を全く感じさせてくれない。しかし骨太のストーリーと壮大なアクションは本作の大きな魅力で、唯一ジェームズ・ボンドに対抗しうるシリーズとして、今後のシリーズ化を期待したい(尚、ダーク・ピット・シリーズ映画化の裏話は、本コラムの第65回を参照)。
(オフィシャルサイト: http://www.saharamovie.com)
3. 「Fever Pitch」 A-
(出演: ドリュー・バリモア、ジミー・ファロン、監督: ファレリー兄弟)
「There’s Something about Mary」のファレリー兄弟による、ボストンを舞台にした会心のロマンティック・コメディ。キャリアウーマンのリンジー(ドリュー・バリモア)は、課外授業を通して知り合った中学校教師のベン(ジミー・ファロン)と恋に落ちる。給料は安いが、ベンは優しくて愉快な男――だがリンジーはほどなく、ベンが実はダイ・ハードなレッドソックス・ファンで、彼の世界は野球を中心に回っていることを知る。「SNL」のジミー・ファロン(実はヤンキーズファン)とバリモアは、共に大変チャーミングでケミストリーが働いている。またリンジー/ベン/レッドソックスという異色の三角関係が生み出す可笑しさは絶妙で、レッドソックスの奇跡の逆転優勝も手伝って、鮮やかで爽快な一作となった(ソックスがワールドシリーズで優勝したために、エンディングは撮り直しになった)。尚、劇中始球式をするのは、筋金入りのソックスファンであるスティーブン・キング。ソックスのジェイソン・バリテックとジョニー・デイモンもカメオ出演している。野球ファンは当然楽しめるが、ここ数年で最高のデートムービーでもある。
(オフィシャルサイト: http://www.feverpitchmovie.com)
4. 「The Interpreter」 B+
(出演: ニコール・キッドマン、ショーン・ペン、キャサリーン・キーナー、監督: シドニー・ポラック)
珍しいことに(そして嬉しいことに)、ショーン・ペンがハリウッド大作で主演するポリティカル・スリラー。舞台はNYの国連本部。アフリカ生まれで国連会議の同時通訳をしているシルビア(ニコール・キッドマン)は、偶然母国大統領の暗殺計画を知る。暗殺阻止の責任者に任命されたシークレット・サービスのケラー(ショーン・ペン)は、犯人グループから命を狙われるシルビアを保護しながら、同時に彼女を囮に使って犯人に肉薄する。ケラーが事件の核心に迫って行くプロセスと、シルビアへの疑惑と愛情が深まって行くストーリー展開とが相乗効果を生んで、最後まで息をつかせない。トップクレジットのキッドマンは相変わらず他を寄せ付けない圧倒的な美しさ。また本作はショーン・ペンのおかげで、孤独なケラーのはかないラブストーリーとしても十分成立しているのだ。
(オフィシャルサイト: http://www.theinterpretermovie.com)
5. 「The Hitchhiker’s Guide to the Galaxy」 B+
(出演: マーティン・フリーマン、モス・デフ、ズーイー・デシャネル、サム・ロックウェル、アラン・リックマン、ジョン・マルコビッチ、ビル・ナイ)
ダグラス・アダムス原作によるオフビートな英国製Sci-Fiコメディ。いきなり冒頭で、地球は銀河系のハイウェイ建設のためにヴォゴン星人によって消滅させられてしまう。ところがアーサー(英国製TVコメディ「The Office」のマーティン・フリーマン)だけは、地球在住エイリアンのフォード(「The Woodsman」のモス・デフ)によって助けられ、ヴォゴン星人の宇宙船にヒッチハイクで乗り込む。そして2人は頭の足りない銀河系大統領(「Confession of a Dangerous Mindのサム・ロックウェル)とそのガールフレンド(ズーイー・デシャネル)と共に、「宇宙最大の謎」(”The Ultimate Question”)の答えを求めて、宇宙をさ迷う。予算が足りなかったのかSFXがチープなのが難点だが、観客を引き込んでいくオープニング、全く先の読めない展開、秀逸なユーモア(特に“うつ病ロボット“の声を担当するアラン・リックマンは爆笑もの)、豊富なイマジネーションは、2時間を全く飽きさせない。お観逃し無いように。
(オフィシャルサイト: http://hitchhikersmovie.com)
6. 「Crash」 A-
(出演: ドン・チードル、サンドラ・ブロック、マット・ディロン、ジェニファー・エスポシト、ブレンダン・フレイザー、サンディー・ニュートン、テレンス・ハワード、ライアン・フィリッペ、監督兼脚本: ポール・ハギス)
「Million Dollar Baby」の脚本家ポール・ハギスが監督兼脚本の、異色クライム・ドラマ。強盗にあった地方検事夫婦(ブレンダン・フレイザーとサンドラ・ブロック)、弟が行方不明の刑事(ドン・チードル)、白人警官に嫌がらせを受けた黒人夫婦、メキシコ人を憎むイラン人など、様々な人種と階級に絡む犯罪が活写される。マット・ディロン演じる重病の父親を看病する差別主義者の警官のように、各登場人物は単純に善悪では判断できないキャラクターを与えられていて、よく掘り下げられている。複数のクライムストーリーが最後に結びつく脚本は、リアリティーと娯楽性が上手くバランスしている上に、会話の面白さは比類がない(分からない部分も多かったが、中でも黒人アクターによる黒人差別ギャグは、黒人客に馬鹿受けしていた)。サマームービー・シーズン直前に公開された渋い好編。
(オフィシャルサイト: http://www.crashfilm.com)
7. 「Kingdom of Heaven」 B
(出演: オーランド・ブルーム、リーアム・ニーソン、エヴァ・グリーン、ジェレミー・アイアンズ、監督: リドリー・スコット)
リドリー・スコットが「Gladiator」に続いて放つ、1300万ドルをかけた歴史巨編。家族を失った失意のフランス人バリアン(オーランド・ブルーム)は、高潔な十字軍の騎士である父親(リーアム・ニーソン)と共にエルサレムを目指す。だが当時のエルサレムはキリスト教徒とイスラム教徒が一触即発の状態で、もはや偉大なエルサレム王(エドワード・ノートンがマスクを被ってノン・クレジットで出演)をもってしても平和を保つことは出来ず、やがてバリアンも戦争の嵐に巻き込まれていく。まあよく出来てはいるのだが、この手の話は「Troy」、「King Arthur」、「Alexander」と最近食傷気味な上に、主役がオーランド・ブルームでは線が細すぎた。またSFXとCGの発達で戦闘シーンが安上がりに出来るのも一長一短で、ヒューマンドラマと特撮による戦争映画を別々に観ているようだ(おまけに戦闘シーンはみんな「The Lord of the Rings」のイミテーションに見える)。制作費がかさむ歴史ものもこの辺でブームが終わるだろうから、そういう意味では観ておいても損はないかもしれない。
(オフィシャルサイト: http://www.kingdomofheavenmovie.com)
8. 「Unleashed」 B
(出演: ジェット・リー、モーガン・フリーマン、ボブ・ホスキンス、ケリー・コンドン、脚本: リュック・ベッソン)
何とジェット・リーがモーガン・フリーマンと共演、しかも脚本が「The Professional」のリュック・ベッソンという怪作。両親の記憶もないダニー(ジェット・リー)は、幼い頃からスコットランドのギャング、バート(ボブ・ホスキンスが怪演)に檻の中で育てられ、無敵の戦闘マシンとして鍛えられる。ところがダニーはギャング同士の闘争で負傷し、盲目のピアノ調律師サム(モーガン・フリーマン)に助けられる。そしてサムとその娘ビクトリア(ケリー・コンドン)との擬似家族的な生活を通して、ダニーの心に人間性が芽生え始め、やがてバートとの対決は避けられないものとなる。ジェット・リーとモーガン・フリーマンのミスマッチもさることながら、ダニーが言葉を取り戻す場面での、リーの「I Am Sam」的演技は失笑もの。カンフー映画としても今一つで、冒頭のスピード感あふれるダニーの殺戮シーンは「これは!」と思わせるものがあるのだが、以降はワイヤーと早回しを多用するだけでさほど新味はない。という訳で、本作はモーガン・フリーマンがいなければキワモノ映画になりかねなかったが、それでも観ている間は結構面白いのだ、これが。
(オフィシャルサイト: http://unleashedmovie.com)
9. 「Kicking & Screaming」 B+
(出演: ウィル・フェレル、ロバート・デュバル、マイク・ディトカ、ケイト・ウォルシュ)
昨年末のスマッシュヒット「Elf」で一気にスターダムに乗った、ウィル・フェレル独演のファミリー・コメディ。フェレル演じるフィルは、スポーツ好きだが全く才能のない子供のような大人で、タフで成功しているビジネスマンの父親バック(ロバート・デュバル)に頭が上がらない。フィルは一人息子のサムが属する弱小少年サッカーチーム「タイガース」のコーチをする羽目になるのだが、父親がコーチをする最強チーム「グラディエイターズ」には勝てそうにない(「グラディエイターズ」のエースストライカーは、バックが若い奥さんとの間にもうけた自分の息子だ)。そこでフィルは、隣人の元シカゴ・ベアーズのコーチ、マイク(NFLのマイク・ディトカが実名で出演)にアシスタントを頼み、さらにイタリア移民の天才サッカー少年2人をチームに入れて対抗する。「がんばれ!ベアーズ」のサッカーバージョンでオリジナリティには欠けるが、実際に素晴らしいサッカーの個人技を披露する2人のイタリア人少年は魅せる。これにウィル・フェレルの独演会が加わるので、ファミリー・ムービーとしてはお買い得だ。
(オフィシャルサイト: http://www.kickingandscreamingmovie.com)
次回はいよいよ5月19日にリリースされる「Episode III: Revenge of the Sith」の速報をお届けする予定。