映像翻訳|海外のテレビ番組や映画の映像翻訳を仕事にするための学校です。多くの修了生、受講生がドラマ、アニメーション、ドキュメンタリー番組など多方面で活躍しています。

Mr.DOBASHI no テキサス映画通信

”Houston, we have a problem!(70)

Dobashi Shuichiro 土橋 秀一郎


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先日、日経のスカパー新番組紹介コーナーで、「Dead Zone」を見つけた。これはシンジケート系のUSAネットワークで放映している、よく出来た心理スリラーだ。原作はスティーブン・キング。’83年にデヴィッド・クローネンバーグ監督、クリストファー・ウォーケン主演で映画化もされているので、知っている人も多いだろう。だが、TVバージョンは映画より遥かに面白い。ストーリーは、交通事故で昏睡状態に陥っていた中学教師のジョニー・スミス(アンソニー・マイケル・ホール)が、6年後に目覚めるところから始まる。婚約者だったサラ(ニコル・デボア)は保安官のウォルト(クリス・ブルーノ)と結婚していて、ジョニーには不思議な予知能力が備わっている。そしてジョニーはその特殊能力を使い、ウォルトと協力して犯罪捜査も行うという設定。予知能力(ジョニーは実際には過去の出来事も読み取れる)と言うといかにも使い古されたテーマだが、各エピソードは単なる超能力を使った勧善懲悪に止まらず、超能力を持つジョニーの悩み、更にジョニー、サラ、ウォルトの微妙な三角関係も説得力を持って描かれていて、優れた人間ドラマになっている。USAネットワークは大手ではないので特撮が多少ショボいのが欠点だが、とにかく脚本が良いので2〜3回見るとハマる面白さだ。こちらでは第4シーズンがスタートしたところで、DVDは第2シーズンまで出ている。自宅にスカパーを入れている人なら、これを見逃す手はないぞ。


以下はサマームービー8本のレヴュー。’85年の夏以来最低の観客動員数に泣くハリウッドだが、内容的には過去になく充実したラインアップだ(ルーカスとスピルバーグのマッチアップに加えて、バットマンまで参戦だぞ)。



1.  「Madagascar」  B+

(声の出演: ベン・スティラー、クリス・ロック、ジェイダ・ピンケット・スミス、デヴィッド・シュマイマー、サシャ・バロン・コーエン、セドリック・ザ・エンターテイナー)

DreamWorksが、昨年の「Shark Tale」の汚名を返上する爆笑CGアニメ。ライオンのアレックス(ベン・スティラー)、シマウマのマーティ(クリス・ロック)、キリンのメルマン(デヴィッド・シュマイマー)、カバのグロリア(ジェイダ・ピンケット・スミス)は、NYにあるセントラルパーク動物園の人気者だ。彼等4匹はある日、ペンギン軍団の脱走計画に巻き込まれてマンハッタンへ出てしまい、捕まった挙句にケニアに送り出されることになる。結局アレックスたちはマダガスカル島へ流れ着くのだが、そこでは彼らが経験したことのない、ワイルドライフが待ち受けている。主人公4匹がニューヨーカーという基本設定からして十分おかしいのだが、脇役陣がまたすごい。特にインドなまりの強烈な英語で歌って踊りながらマダガスカル島を支配する、キツネザルの王様(サシャ・バロン・コーエン)のキャラクターは、完全にベン・スティラーとクリス・ロックを喰ってしまっていて、笑いが止まらない。アレックスとマーティの友情物語もきちんと描かれているし、動物たちのシャープな動きと鮮やかな色彩もCGならでは。唯一エンディングがあっさりし過ぎているのが残念だが、誰が観てもハッピーになれるサマームービーらしい一作。

(オフィシャルサイト: http://www.madagascar-themovie.com


2.  「The Longest Yard」  B

(出演: アダム・サンドラー、クリス・ロック、バート・レイノルズ、ジェイムズ・クロムウェル、ネリー、トレイシー・モーガン)

本作にも友情出演しているバート・レイノルズが主演した、’74年度同名作品のリメイク(’01年にビニー・ジョーンズが主演した「Mean Machine」は、サッカー・バージョンでのリメイク)。八百長でNFLを追放された過去を持つ、元MVPクォーターバックのポール・クルー(アダム・サンドラー)は、アルコールが原因でテキサスの刑務所に入れられる。クルーは、看守による自慢のフットボールチームを持つ刑務所長(ジェイムズ・クロムウェル)に対して、囚人によるチームを作って試合をすることを提案し、看守へのうっぷんを晴らそうとする。内容的にはオリジナルと比べるまでもなく、一種のまがい物と言って良い。だが、サンドラーの”スポーツ物”は、「Happy Gilmore」(ゴルフ)、「The Waterboy」(フットボール)と、これが意外と面白いのだ。本作もサンドラーのキャラを生かして、前半を脳天気に、後半をスポ根的に描き分けていて割りといける。

(オフィシャルサイト: http://www.longrstyard.com


3.  「Cinderella Man」  A-

(出演: ラッセル・クロウ、レニー・ゼルウィガー、ポール・ジアマッティ、クレイグ・ビアーコ、監督: ロン・ハワード)

「A Beautiful Mind」のオスカーコンビ、ラッセル・クロウとロン・ハワードによる、実録ボクシングドラマの傑作。アメリカが大恐慌に苦しむ30年代。ボクサーのライセンスを失ったジミー・ブラロック(ラッセル・クロウ)は、肉体労働と物乞いで何とか家族を食べさせる毎日。だがジミーは、友情に厚いマネージャーのジョー(ポール・ジアマッティ)が持って来たカムバックのチャンスを物にすると、不屈の精神力でヘビー級チャンプへの道を目指す。気負わず等身大のジミー・ブラロックを熱演するクロウと、タフだが愛情深い妻役のレニー・ゼルウィガーは良くマッチしており、ラブストーリーとしても十分成立している。昨年の「Sideways」でブレイクし、役者としてのピークを迎えつつあるジアマッティの演技も心に残る。迫力のファイティング・シーンはロン・ハワード特有の甘さがなく、しかも存分に見せてくれる。「Cinderella Man」は、「Body & Soul」、「Fat City」、「Somebody Up There Likes Me」などの古典と肩を並べる、忘れ難いボクシング映画の1本であるだけでなく、古きよき時代のアメリカンドリームを謳い上げる、感動的なヒューマンドラマだ。

(オフィシャルサイト: http://www.cinderellamanmovie.com


4.  「Mr. & Mrs. Smith」  B+

(出演: ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー、ヴィンス・ボーン)

ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの魅力が炸裂する、ジョン・ブラッカイマー印のロマンティック・アクション・コメディ。ジョン(ブラッド・ピット)とジェイン(アンジェリーナ・ジョリー)は、互いに凄腕の暗殺者という正体を隠して結婚生活を送って来た、多少倦怠気味のカップル。ところが2人は新しい暗殺指令を受け取った結果、その技術の限りを尽くしてお互いの命を狙う羽目になる。ゴシップでマスコミを狂喜させているピットとジョリーはケミストリーがあり、冒頭のジョンとジェインが結婚カウンセリングを受けているシーンからして笑わせる。このカップルとこのストーリーを得て、作品的には製作する前から勝ったも同然だった。惜しむらくはアクションが派手すぎるために、2人の微妙な駆け引きやちょっとオフビートなロマンティック・コメディの部分など、粋な場面が犠牲になってしまった点だ。いかにもハリウッド的なロケットランチャーやマシンガンは不要だった。

(オフィシャルサイト: http://www.mrandmrssmithmovie.com


5.  「Batman Begins」  A

(出演: クリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン、リーアム・ニーソン、ケイティ・ホームズ、ゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマン、キリアン・マーフィー、トム・ウィルキンソン、ルトガー・ハウアー、渡辺謙、監督兼共同脚本: クリストファー・ノーラン)

「Memento」のクリストファー・ノーランが放つ、バットマン・ムービーの決定打。幼い頃に目の前で両親を殺された経験がトラウマとなっていたブルース・ウェインは、孤独な自己発見の旅に出る。ストーリーは、ブルースが独力で精神と肉体を鍛え抜き、やがてバットマンとしてゴッサム・シティに帰還するまでの葛藤と自己再生が凄絶に描かれる。「American Psycho」のクリスチャン・ベイル演じる骨太で深みのあるバットマン、重量感がありストーリーと一体感を持つアクション・シーン、各キャラクターを良く掘り下げてある脚本に加えて、特筆すべきはオールスター・キャストながら一人一人が存在感をアピールする脇役陣だ。特に執事アルフレッド役のマイケル・ケイン、珍しく善良な警部を演じるゲイリー・オールドマン、悪役”スケアクロウ”に扮するキリアン・マーフィー(「28Days Later」)は特出している(渡辺謙は完全に干されたチョイ役で、仲間外れ状態)。更にハンス・ジマーとジェームズ・ニュートン・ハワードによるスコアは、暗く病んだゴッサム・シティを見事に表現する。要するにあらゆるアングルから見ても、映画としての造りが真っ当なのだ(クリストファー・ノーラン恐るべし)。「Batman Begins」は単にコミック・ヒーロー物の最高作に留まらず、ダーク・アクション・ドラマの傑作として語り継がれるはずだ。早く続編が見たい。

(オフィシャルサイト: http://www.batmanbegins.com


6.  「Layer Cake」  B+

(出演: ダニエル・クレイグ、コーム・ミーニー、マイケル・ガンボン、ジョージ・ハリス)

次期ジェームズ・ボンドとの呼び声も高い、ダニエル・クレイグ主演の英国製フィルム・ノワールの佳作。クレイグが扮するのはロンドンのドラッグ・ディーラー(名前は明かされない)。彼は信頼できる少人数でブツを捌き、銃も暴力も使わない堅実な商売で信用を築いて来た。だが顔役から、行方不明のヤク中の娘を捜し出す特命を受け、さらに百万ドル単位の覚醒剤取引に巻き込まれたことから、次第に暴力と裏切りの深みにはまって抜け出せなくなる。先の読めない展開、癖のある登場人物に加えて、全編を通してロンドンのアンダーグラウンドの緊迫感が持続する。クレイグは終始クールで、ジェームズ・ボンド役にはクライブ・オーウェンやピアース・ブロスナンより是非彼を押したい。大味なサマームービーの中できらりと光る、渋い好編。

(オフィシャルサイト: http://www.sonyclassics.com/layercake


7.  「Bewitched」  B+

(出演: ニコール・キッドマン、ウィル・フェレル、マイケル・ケイン、シャーリー・マクレーン、監督兼共同脚本: ノーラ・エフロン)

「Sleepless in Seattle」のノーラ・エフロンによる、「奥様は魔女」の映画化。と言っても60年代TVショーのリメイクではなく、ストーリーもキャラクターもオリジナル。ジャック(ウィル・フェレル)は、「奥様は魔女」のリメイクでカムバックを狙っている落ち目の映画スター。彼は街で見つけたイザベル(ニコール・キッドマン)に惚れ込んで、魔女のサマンサ役を引き受けるよう彼女を説得するのだが、実はイザベルはノーマルな生活を夢見る本物の魔女だった。オリジナル・シリーズのロマコメ部分を映画的に膨らませた脚本は凡庸で、キッドマンとフェレルに所詮ケミストリーが働くはずもない。だがTVショーの撮影シーンは面白いし、”ぶりっ子”演技を貫くキッドマンが、(38歳ながら)とてもキュートで目が離せない。デートムービーとしても合格だ。

蛇足だが、”人間社会に住む善意の魔女”という「奥様は魔女」のアイディアの上を行くのが、ポール・ギャリコのファンタジー小説「ほんものの魔法使い」(”The Man Who Was Magic”)。マジシャンだけが住む架空の街に、本物の魔法使いがやって来るという設定で、理屈抜きで感動する傑作だ。翻訳が新潮文庫から出ているので、興味ある人は一読してください。

(オフィシャルサイト: http://sony.com/Bewitched


8.  「War of The Worlds」  A

(出演: トム・クルーズ、ダコタ・ファニング、ティム・ロビンス、ジャスティン・チャトウィン、ミランダ・オットー、監督: スティーブン・スピルバーグ)

敵対型エイリアンによる凄まじい殺戮を、スピルバーグが怒涛の迫力で描く’53年製作、「宇宙戦争」のリメイク。磁気嵐の後に、世界各地に突如として巨大なタコ足型ロボットが出現し、エイリアンによる地球侵略が始まる。NYに住むブルーカラーのレイ(トム・クルーズ:ヤンキーズのキャップが全く似合わない)と娘のレイチェル(ダコタ・ファニング:この娘は演技上手すぎ)は、攻撃の第一波をからくも生き残る。だがエイリアンの無慈悲な侵攻は、やがて破壊行為から人間狩りへと進んで行く。警告も説明もないエイリアンの容赦ない攻撃が黙々と進む映像は、「IndependenceDay」をスピルバーグ自身の「激突」スタイルで撮り直したような迫力で、圧巻のひと言。H・G・ウェルズの原作がどうとか、昔オーソン・ウェルズのラジオ放送がどうしたとか、これは「E.T.」へのアンチテーゼだとかを考えるより、まずこのスピルバーグの「Jaws」以来の最高傑作を劇場で体験すべし。ふっ切れてるよ、スピルバーグ。

(オフィシャルサイト: http://waroftheworlds.com


次回はサマームービー第3弾。まだまだ「The Island」、「Fantastic 4」、「Stealth」、「Bad News Bears」など、お楽しみが控えておるぞ。