***HOUSTON, WE HAVE A PENNANT!!***
昨年あと1勝までこぎつけながら、ワールドシリーズ出場を逃したわれらがヒューストン・アストロズ。今シーズンは球団創立44年目にして、遂に悲願の初出場を果たした。しかしシリーズの結果はすべて僅差の4連敗で、悔しくも“井口の”シカゴ・ホワイトソックスの脇役で終わった。
来年になれば、前年のワールドシリーズで負けたチームなど忘れられる。だがわれわれは忘れない。開幕から2ヶ月足らずで15の借金を抱え、ロードで2勝21敗のメジャーワーストタイ記録を作ったチームを。メジャー最多のシーズン15完封負けを喫した貧打のチームを。それでも結束してカムバックを果たし、レギュラーシーズン最終戦でワイルドカードを勝ち取ったことを。そして記録破りの延長18回裏のサヨナラホームランで、リーグ優勝決定戦進出を決めたことを。地元でのリーグ初優勝まであとワンストライクまで追い込みながら、まさかの逆転ホーマーを許し、ファンに心臓発作を起こさせたことを。リーグ初優勝記念のTシャツとキャップを買うために、昼夜を通して果てしなく長い行列に並んだことを。そしてワールドシリーズの大舞台で、まるで魔法が解けたかのように、突然5月の勝てない状態に戻ってしまったチームのことを、われわれは決して忘れない。
2005年のシーズンは、歓喜と失望が入り混じった、ヒューストン市民にとって生涯の思い出となった。そして来年こそは、われわれがワールドチャンピオンになるのだと淡い期待を持って、4月3日の開幕戦を静かに待っているのだ。
というわけで、この2ヶ月は野球優先で、映画はニの次となってしまいました。今回はこの間にたまった16本のレヴューを一気にどうぞ。
1. 「The 40 Year-Old Virgin」 B+
(出演: スティーブ・カレル、キャサリーン・キーナー、ポール・ラッド、ロマニー・マルコ、セス・ローゲン)
これはR指定ながらとても愉快で心温まるロマンティック・コメディ。大型電気店に勤めるアンディ(スティーブ・カレル)は、アクション・フィギュアのコレクターで、ビデオゲームとコミックブックが趣味という40歳の独身男。アンディは職場の同僚3人(ポール・ラッド、ロマニー・マルコ、セス・ローゲン)とワイ談をしているうちに、自分が童貞であることがばれてしまう。同僚がこぞってアンディに初体験をさせようと頑張るうちに、アンディは子持ちでバツイチのトリシュ(「Being John Malkovich」のキャサリーン・キーナー)と恋に落ちる。TVコメディ「The Office」のスティーブ・カレルはアンディのキャラクターに完璧にフィットしていて、人が良くて生真面目なオタクを快演し、爆笑を誘う。カレルは共同脚本も書いていて、本作はきわどいギャグが連発されるが嫌味がなく、からっと笑える作品に仕上がった。
(オフィシャルサイト: http://www.the40yearoldvirgin.com)
2. 「Red Eye」 B+
(出演: レイチェル・マクアダムズ、キリアン・マーフィー、ブライアン・コックス、監督: ウェス・クレイヴン)
「Scream」のウェス・クレイヴンによる、ハイテンションなアクション・スリラー。マイアミ空港行きの夜行便(red eye)に乗ったホテルマネージャーのリサ(「Wedding Crasher」のレイチェル・マクアダムズ)は、ターミナルで知り合ったナイスガイのジャクソン(「Batman Begins」のキリアン・マーフィー)と隣の席になる。ところが離陸するや否やジャクソンは豹変し、リサが勤めるマイアミの高級ホテルに滞在予定の政府高官一家の部屋を変更しないと、彼女の父親を殺すと脅迫する。
リサは何とか独力でこの絶望的な状態から逃れようとするが…。85分間とコンパクトにまとめられた脚本には緻密さが欠けていて、観終わった後にクエスチョンマークが幾つか残る。だがホラー的手法でサスペンスをぐいぐい盛り上げるクレイヴンの演出が効いていて、リサとジャクソンの機内での息詰まるやりとりは十分見応えがある。夏の終わりに登場した、清々しい快作。
(オフィシャルサイト: http://www.redeye-themovie.com)
3. 「The Transporter 2」 B-
(出演: ジェイソン・ステイサム、アレッサンドロ・ガスマン、アンバー・バレッタ、マシュー・モディーン、ケイティ・ノータ、製作兼共同脚本: リュック・ベッソン)
「The Professional」のリュック・ベッソンによる、’02年製ハイパーアクションの続編。今回特殊部隊出身のスーパー・ドライバー、フランク(ジェイソン・ステイサム)は、政府高官の息子を移送中にコロンビアのドラッグ・カルテルに奪われる。殺人ウィルスを注射された人質は身代金と引き換えに返されるが、フランクは解毒剤の入手と復讐を求めて、単身ドラッグ・カルテルへ殴り込む。フランクのスーパーヒーローぶりとドライビング・テクニックはもはやナンセンスの域に達していて、馬鹿馬鹿しいと切り捨てればそれまでだ。でもこのキャラクターは結構気に入っているし、ステイサムのスタイリッシュなマーシャルアーツは魅せる。Part 3が出来たらまた懲りずに見に行くだろうが、愛車をBMWからアウディにスイッチしたのはいただけない。
(オフィシャルサイト: http://www.transporter2movie.com)
4. 「The Constant Gardener」 B+
(出演: レイフ・フィアンズ、レイチェル・ワイズ、ビル・ナイ、監督: フェルナンド・メイレレス)
英国スパイ小説の大御所、ジョン・ル・カレ原作、「City of God」のブラジル人監督フェルナンド・メイレレスによるポリティカル・スリラー。冒頭ケニアに駐在するイギリス人外交官ジャスティン(レイフ・フィアンズ)は、政治活動に従事していた妻テッサ(レイチェル・ワイズ)が何者かによって殺害されたことを知らされる。ジャスティンは独自に犯人を捜し始めるが、やがてテッサが追求しようとしていたメジャーな製薬会社の違法行為を知る。主役2人の緊迫感のある演技に加えて、小ぶりなストーリーをメイレレスが丹念かつシャープに映像化したのが効いていて、上質なスリラーに仕上がった。
尚、ル・カレ原作の映画化といえば、ソ連との冷戦を背景に、リチャード・バートンの渋い演技に唸らされる「寒い国から帰ったスパイ」(「The Spy Who Came in fromthe Cold」、’65)を思い出す。興味のある人にはこちらも薦めておく。
(オフィシャルサイト: http://www.theconstantgardener.com)
5. 「The Man」 B-
(出演: サミュエル・L・ジャクソン、ユージン・レヴィ、ルーク・ゴス)
「Shaft」のサミュエル・L・ジャクソンと、「American Pie」の爆笑親父ことユージン・レヴィによる「48Hours」。デトロイトのATF捜査官ヴァーン(ジャクソン)は、大掛かりな銃器強奪事件で着せられた濡れ衣を晴らすために、単身でおとり捜査官として武器密輸組織に接触する。ところがひょんなことから人の良い歯科用機器セールスマンのアンディ(レヴィ)がヴァーンとすり替わってしまったために、アンディは無理矢理捜査に協力させられる羽目になる。本作は脚本的には全く新味がなく駄作もいいところだが、すっとぼけたレヴィが発するひと言ひと言が、タフで強面のジャクソンをいらだたせるシーンが全編に散りばめられていて爆笑を誘う。ユージン・レヴィが好きだという奇特な映画ファンには薦められる一本。
(オフィシャルサイト: http://www.themanmovie.com)
6. 「Just Like Heaven」 B
(出演: リース・ウィザースプーン、マーク・ラファーロ、ジョン・ヘダー)
今では定番となった、これも安心して観ていられるリース・ウィザースプーンによるロマコメの新作。ウィザースプーン演じるのは超多忙な外科医エリザベス。彼女は交通事故で昇天するのだが、何故か魂が現世に残っていて、エリザベスのアパートに引っ越してきたデヴィッド(マーク・ラファーロ)を脅かす。ストーリーも雰囲気もウォーレン・ベイティの佳作「天国から来たチャンピオン」(「Heaven Can Wait」’78)に良く似ているが、出来は遠く及ばない。基本的にはウィザースプーンの”smart and funny”な魅力と、ラファーロ得意の優しくてとぼけたキャラクターでもっている作品。それからチョイ役で出ている「Napoleon Dynamite」のジョン・ヘダーもしっかり笑いを取っている。
(オフィシャルサイト: http://www.justlikeheaven-themovie.com)
7. 「Flight Plan」 A-
(出演: ジョディ・フォスター、ピーター・サースガード、ショーン・ビーン、エリカ・クリステンセン)
ジョディ・フォスターの新作は、最新式大型旅客機内を舞台にしたノンストップ・アクション・スリラーだ。フォスター扮するカイルは、6才の娘と共に自らがデザインした新型旅客機でベルリンからNYへ帰るところ。ところが機内で娘の姿が忽然と消えてしまい、パニックに陥る。やがて娘の名前は乗客名簿に無いことが判明し、カイルはフライトマーシャル(ピーター・サースガード)の監視下に置かれる。旅客機の中という閉鎖された舞台で、ストーリ−はカイルが精神異常者なのか、それとも何か合理的な説明がつくのかという点に絞られるが、フォスターの迫真の演技とあいまって最後まで飽きさせない。真相は必ずしも納得のいくものではないが、こういう凝った話は結構好きだ。
(オフィシャルサイト: http://flightplan.movies.com)
8. 「A History of Violence」 B+
(出演: ヴィーゴ・モーテンセン、マリア・ベロ、エド・ハリス、ウィリアム・ハート、監督: デヴィッド・クローネンバーグ)
「The Lord of the Rings」のアラゴーンことヴィーゴ・モーテンセンが、ダーティー・ヒーローを演ずるバイオレンス・ドラマ。愛する家族と幸せな人生を送っていたトム(モーテンセン)は、自分が経営するダイナーでやむなく強盗2人を射殺したことから、一晩で町の英雄となる。その結果、トムは彼の過去を知っているというやくざな男(エド・ハリス)につきまとわれるようになり、やがてトムの築いた嘘で固めた人生が、少しずつ崩壊し始める。暴力の恐怖と人生が崩壊していく恐怖を淡々と描く、デヴィッド・クローネンバーグの演出が圧巻の極めつけR指定作品。
(オフィシャルサイト: http://www.historyofviolence.com)
9. 「Serenity」 A-
(出演: ネイサン・フィロン、アダム・ボールドウィン、サマー・グロー、ジーナ・トレス、キウェテル・イジョフォー)
2002年にFOXで放映され3ヶ月で打ち切りになったものの、一部に熱狂的ファンを持ったTVシリーズ「Firefly」の映画化。設定は銀河系の南北戦争後で、密輸船「Serenity」のキャプテン・マル(ネイサン・フィロン)とそのクルーの活躍が活写される。今回は予知能力と特殊な戦闘能力を持つ少女リバー(サマー・グロー)を巡って、キャプテン・マルと連邦政府のヒットマン(キウェテル・イジョフォー)が死闘を繰り広げる。ハン・ソロを主人公にしたSF版マカロニ・ウェスタンといった趣きの粋な冒険活劇なので、SF・アクション映画ファンは必見だ。
(オフィシャルサイト: http://www.serenitymovie.com)
10. 「The Greatest Game Ever Played」 B
(出演: シア・ラブーフ、スティーブン・ディレイン、ジョッシュ・フリッター、監督: ビル・パクストン)
1913年のUSオープンで旋風を巻き起こしたキャディ・ゴルファー、フランシス・ウィメットの実話を描く、ディズニー製スポ根ドラマ。ブルーカラーの長男として生まれたフランシス(シア・ラブーフ)が、階級差別に苦しみながらもキャディからアマチュア・ゴルファーとなり、やがて名プロゴルファー、ハリー・ヴァードン(スティーブン・ディレイン)とUSオープンで対決するまでが描かれる。役者は悪くないが、観客を泣かせようとする演出と、特撮を使い過ぎる不自然なゴルフシーンのために、インパクトの薄い凡作に終わった(1913年の試合なのだから、ごく普通にカメラを回して欲しかった)。ビル・パクストンでなく、もっとスポーツドラマのセンスがある監督が撮れば良かったのに。
(オフィシャルサイト: http://www.greatestgameever.com)
11. 「Wallace & Gromit: The Curse of the Were-Rabbit」 A-
(声の出演: ピーター・サリス、ラルフ・フィアンズ、ヘレナ・ボナム・カーター)
大味なハリウッド大作の合間に観るには格好の、罪がなくて心温まる英国製ダイナメーションの好編。発明家のウォレスとそのパートナーの天才犬グルミットは、年に1回町で開かれる「巨大野菜コンテスト」に備えて、野ウサギ退治を請け負う忙しい毎日。
ところが突如巨大な変身ウサギが現れて出品予定の野菜が荒らされるに及び、町が大混乱になってしまう。アカデミー短編賞2度受賞の愛すべき迷コンビが、長編映画としてデビューしたのが嬉しい。2000年の「Chicken Run」が好きな人は必見。
(オフィシャルサイト: http://www.wandg.com)
12. 「Two for the Money」 B+
(出演: マシュー・マコノヒー、アル・パチーノ、ルネ・ルッソ、ジェレミー・ピヴェン)
アル・パチーノ十八番のオーバーアクティングが堪能できる、スポーツ賭博ムービー。元学生フットボールのスタープレイヤーだったブランドン(マシュー・マコノヒー)は、怪我で選手生命が終わってからフットボール賭博のアドバイザーをしている。ケーブルネットワークのオーナーで、司会も務めるウォルター(アル・パチーノ)は、ブランドンの素質に目をつけて、彼を自分の番組のエースアドバイザーに据える。驚異の的中率を誇るこの番組は大成功するが…。成功から破滅へと導かれるストーリーは観る前から容易に想像できるが、シャープでスタイリッシュなマコノヒーと、豪快で迫力のアル・パチーノの組み合わせは見ていて楽しい。評論家には揃って酷評されているが、エンターテインメントとしては申し分ない。
(オフィシャルサイト: http://www.twoforthemoney.net)
13. 「Stay」 B-
(出演: ユアン・マグレガー、ナオミ・ワッツ、ライアン・ゴスリング、ボブ・ホスキンス)
人気者2人(ユアン・マグレガーとナオミ・ワッツ)による、ちょっとショボいサイコ・スリラー。マグレガー演じるのはNYの精神科医サムで、彼はワッツ扮する自殺未遂の過去を持つ恋人ライラと暮らしている。ところがサムは、新しい患者ヘンリー(ライアン・ゴスリング)の自殺願望を探っていくうちに、何度となくまったく同じ人生経験を繰り返すようになり、やがて自分の精神状態を疑い始める。主人公が正気なのか否かという「Flight Plan」と同じ興味を持ってストーリーは進行し、前半はそれなりの緊迫感もある。だが同じような出来事の繰り返しでいい加減飽きて来たところを見計らって暴かれる真相には、拍子抜けする。最後に意味が分かるタイトルは上手いのだが。
(オフィシャルサイト: http://www.staythemovie.com)
14. 「North Country」 A-
(出演: シャーリズ・セロン、ウッディ・ハレルソン、フランセス・マクドーマンド、リチャード・ジェンキンズ、ショーン・ビーン、シシー・スペイセク)
80年代後半に起きた、アメリカで初めてのセクハラ集団訴訟をパワフルに描く実話の映画化。夫の暴力から逃れて、子供たちと共に北ミネソタの故郷に戻ってきたジョージィ(シャーリズ・セロン)は、生活費を得るために鉱山で働き始める。ところが典型的な男の職場で、昔あばずれだったジョージィの毅然とした態度に触発された労働者たちは、彼女に執拗な嫌がらせを行い、やがてそれは止めどなくエスカレートして行く。「Monster」でオスカーに輝いたセロンの2度目の汚れ役だが、今回は醜いメーキャップなしの見事な変身ぶりで魅せる。さらに、厳しいミネソタの冬と、鉱山の過酷な労働環境が観る者にひしひしと伝わるリアリティ、ウッディ・ハレルソン、フランセス・マクドーマンドら脇役の存在感と、妥協のない演出は観る者を圧倒する。オスカーの台風の目となるか。
(オフィシャルサイト: http://www.northcountrymovie.com)
15. 「Good Night, and Good Luck」 B+
(出演: デヴィッド・ストラザーン、ロバート・ダウニー・Jr.、パトリシア・クラークソン、ジョージ・クルーニー、ジェフ・ダニエルズ、フランク・ランジェラ、監督兼共同脚本: ジョージ・クルーニー)
1950年代に吹き荒れたマッカーシズムを背景に、TVジャーナリズムの勇気と信念を謳い上げた実話。マッカーシー上院議員による行き過ぎた赤狩りに対して、CBSのテレビキャスター、エドワード・R・マロー(デヴィッド・ストラザーン)とそのチームは、上層部の圧力に屈さず、報道の自由を信じてマッカーシーと対峙する。監督のジョージ・クルーニーは本作が「Confessions of a Dangerous Mind」に次ぐ第2作目だが、シャープな会話と映像、白黒画面にジャズと紫煙で50年代の雰囲気を再現した手腕は見事なもの。限りなくドキュメンタリーに近いが、政治スリラーとしても充分通用する硬派向けの一本。
(オフィシャルサイト: http://www.goodnightandgoodluck.com)
16. 「The Weather Man」 C
(出演: ニコラス・ケイジ、マイケル・ケイン、ホープ・デイビス)
都会の満たされない人々の悲哀を、面白おかしく描こうとして失敗した作品。デヴィッド(ニコラス・ケイジ)は、シカゴに住む地元TV局のウェザーマン(天気予報係)。高給取りだが街の人には馬鹿にされ、妻(ホープ・デイビス)とは別居中、子供たちはそれぞれ問題を抱えている。その上有名作家の父親(マイケル・ケイン)は、悪性腫瘍で余命数ヶ月と宣言される。ストーリーはひたすらデヴィッドが仕事と家族と父親の間を右往左往して悩み続けるだけで、一向に進展しない。キャラクターの掘り下げがある訳でもなく、かといって病めるアメリカを描くわけでもなく、わずかにデヴィッドのとぼけたギャグが受けるだけで、デヴィッド本人も観客もフラストレーションがたまるばかり。要するに観客が彼を好きになれないのが本作の問題なのだ。当面はニコラス・ケイジ作品は敬遠しておいた方が無難でしょう。
(オフィシャルサイト: http://www.weathermanmovie.com)
次回はThanksgiving作品を中心に紹介します。