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Mr.DOBASHI no テキサス映画通信

”Houston, we have a problem!(73)

Dobashi Shuichiro 土橋 秀一郎


Backnumber

今回はまず前回「Serenity」のレビューで触れた、映画の原型となったTVシリーズを紹介する。

*** 「Firefly - Complete season」(DVD)A ***

原案は「Buffy the Vampire Slayer」のジョス・ウェ−ドンで、アクション、ユーモア、フレンドシップが絶妙にブレンドされたエンターテンメント。前回「Serenity」を"ハン・ソロを主人公にしたSF版マカロニ・ウェスタンといった趣き"とコメントしたが、これは誤り。"ハン・ソロより粋でユーモアのセンスに富んだキャプテン・マルとその仲間による、SF版正統派ウェスタン"と訂正させて頂きます。
2002年9月にFOXでスタートした本シリーズは、わずか3ヶ月、11エピソードで放映が打ち切られたが、全米で熱狂的なファンを得て、放映継続を希望する投書と製作継続のための寄付が山ほど届いたという。遅ればせながら未放映分を含む全14エピソードを観たが、これが絶品。まずシリーズの生命線となるのが、中古のスペースシップ「Serenity」の乗員9名のキャラクター。銀河系征服を目論むThe Allianceとの負け戦を共に戦い抜き、固い絆で結ばれた艦長のマルコム(ネイサン・フィロン)と女戦士ゾーイ(ジーナ・トレス)。ゾーイの夫で天才パイロットのウォッシュ(アラン・テュディック)。金次第で平気で仲間を裏切るが何故か憎めない傭兵のジェイン(アダム・ボールドウィン)。シャイでデートより機械相手の方が好きな女性メカニックのケイリー(ジュエル・ステイト)。マルに想いを寄せる銀河系最高ランクの娼婦イナーラ(モレナ・バカリン)。ミステリアスで頼りになる牧師ブック(ロン・ブラス)。それにThe Allianceによる生体実験から逃れてきたエスパーのリバー(サマー・グラウ)と、その兄である外科医サイモン(ショーン・マー)。
合法・非合法を問わない宇宙の「運び屋稼業」で生き延びていく9人の人間ドラマと、アクション満載のストーリーとで各エピソードは構成されている。これに加えてリバー奪回を図るThe Allianceの忍び寄る恐怖や、キャプテン・マルとイラーナのはかない恋の行方がまたファンを魅了するのだ。
「Star Trek」シリーズのような確固たる世界観に裏付けられた重みはないが、センスの良さと生きの良い会話がかもし出す痛快さは他に類を見ない。日本でも本シリーズが紹介されることを祈る。
(尚、「Firefly」とはスペースシップの等級をあらわす単位で、ここでは「Serenity」が最小等級のFirefly級であることを示す。ちょっとタイトルが弱かったね。)


以下はThanksgiving映画9本のレビュー。

1. 「Chicken Little」B
(声の出演:ザック・ブラフ、ガリー・マーシャル、スティーブ・ゾーン、ジョアン・キューザック)
Pixarと再契約できなかったディズニーが初めて自社製作するCGアニメーション。志は高くて知恵もあるが、ドジで何をやっても裏目に出てしまうチキン・リトルは学校中の笑い者。取り分け木から落ちてきたドングリを空の破片と勘違いして大騒ぎを起こしてからは、父親からも信用されなくなってしまう。そんなリトルは、ある日宇宙人の襲来を知るのだが・・・。ちょっと生意気で何度失敗しても諦めないリトルのキャラクターは、好感は持てるのだが底が浅い。ストーリーも前半が「Simon Birch」、後半が「War of the World」のパクリでがっかりする。CGらしい色彩と動きの良さは楽しめるが、キャラクターの造形やストーリーで手抜きをしていては、競争が厳しくハードルが高いこのカテゴリーでは勝ち残れない。
(オフィシャルサイト:disney.com/chickenlittle

2. 「Jarhead」B+
(出演:ジェイク・ギレンホール、ピーター・サースガード、ジェイミー・フォックス、クリス・クーパー、監督:サム・メンデス)
「American Beauty」、「Road to Perdition」の監督サム・メンデスによる斬新な戦争映画。20才で偵察狙撃隊員として湾岸戦争に赴いた元海兵隊員(=jerhead)アンソニー・スオフォードの原作を元に、現在ブレークしつつあるジェイク・ギレンホール(「The Day After Tomorrow」)がスオフォードを演じる。断っておくがこの映画、戦闘シーンも殺戮シーンもない。スオフォードがキャンプで鍛えられ、出兵し、故郷へ帰還するまでの実話だ。だがメンデスのシャープな演出、隙のない脚本、それに主演3人(ギレンホール、「Flight Plan」のピーター・サースガード、ジェイミー・フォックス)の突出した演技のおかげで、時折乾いた笑いを交えながらも、終始緊迫感が持続する。「これまでに観たどんな作品とも違う戦争映画」という謳い文句に偽りは無かった。
(オフィシャルサイト:www.jarheadmovie.com

3. 「Shopgirl」B+
(出演:クレア・デインズ、スティーブ・マーティン、ジェイソン・シュワルツマン)
スティーブ・マーティン原作・脚本・主演の、大真面目なラブストーリー。LAのサックスに勤める一人暮しのミラベル(「Romeo and Juliet」のクレア・デインズ)は、コインランドリーで知り合った野暮で貧乏なジェレミー(「Rushmore」のジェイソン・シュワルツマン)とデートするようになる。ところがミラベルを見初めた謎の実業化レイ(スティーブ・マーティン)が現れてから、ミラベルの生活が変わっていく。特に盛り上がりもなく、都会に住む孤独な女性の心理が綿々と綴られるストーリーは、映画としては地味過ぎる。だが立場は違うがいずれも人生を正直に精一杯生きようとする3人を観ていると、結構励まされるものがある。これまであまり好きではなかったクレア・デインズだが、これはブレークスルーとなる演技。改めてスティーブ・マーティンの多才ぶりに脱帽する一作。
(オフィシャルサイト:shopgirlmovie.com

4. 「Derailed」B
(出演:クライヴ・オーウェン、ジェニファー・アニストン、ヴィンセント・カセル)
現在キャリアのピークにいるクライヴ・オーウェン(「Closer」)と、公私に忙しいジェニファー・アニストンによるスリラー。広告会社のエクゼクティブで家族持ちのチャールス(オーウェン)は、通勤電車で知り合ったルシンダ(アニストン)と浮気をするためにホテルへ行く。ところが2人はそこで暴漢(ヴィンセント・カセルが怪演)に襲われ、チャールスは負傷し、ルシンダはレイプされる。やがて同じ男からの恐喝が始まったとき、チャールスは反撃に転じるが・・・。オーウェン、アニストンともに抑制を効かせた演技で高いテンションが持続する。また基本的に単純なストーリーをトリッキーに見せるアイディアも買う。だが脚本の細部をきちんと詰めていないので伏線に乏しく、キャラクターの行動が間抜けに見える。最後のツイストに到っては説明や手掛かりが何も提示されないので、観客は驚くのではなくアンフェアな真相に目が点になってしまう。
(オフィシャルサイト:derailedthemovie.com

5. 「Kiss Kiss,Bang Bang」B+
(出演:ロバート・ダウニー・Jr、バル・キルマー、ミッシェル・モナハン、監督兼脚本:シェーン・ブラック)
「Lethal Weapon」シリーズの脚本家シェーン・ブラックによる、大人向けアクション・ディテクティブ・ブラック・コメディ。NYの小悪党ハリー(ロバート・ダウニー・Jr)は、警察の手から逃れるために映画のオーディション会場に飛び込むが、迫真の演技で探偵役を射止めてしまう。ハリーはスクリーンテストのためにハリウッドへ行き、そこで知り合ったゲイの私立探偵(バル・キルマー)から演技のために探偵術を学ぼうとするが、殺人事件に巻き込まれる。アニメーションと洒落たテーマソングで始まるクレジット、レイモンド・チャンドラーへのオマージュとなっている各章のタイトル、セクシーな美女、乱れ飛ぶ弾丸と死体、ブラックはやりたい事をすべてやったなという感じだ。さらにロバート・ダウニー・Jrはヤク中で刑務所に入っていないときは達者な演技で才能を見せつけるし、少し太目のキルマーのゲイ演技も捨て難い。最近余り見ない遊び心に溢れた作品で、ソフト&ハードボイルドのファンには格好の一作。
(オフィシャルサイト:www.kisskiss-bangbang.com

6. 「Harry Potter and the Goblet of Fire」B
(出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ロビー・コルトレーン、レイフ・フィアンズ、マイケル・ガンボン、アラン・リックマン、マギー・スミス)
シリーズ最長の原作を2時間40分の映像にまとめた第4弾。今回は3大魔法学校対抗試合がホグワーツで開催されるのだが、参加資格のないハリーが何者かの意図によって代表選手に選ばれてしまう。そして常に見え隠れするヴォルデモートの影・・・。ダーク・ファンタジーの色彩が濃いストーリーと、回を重ねる毎に良くなる特撮の魅力のおかげで、大人の鑑賞にも堪えうるレベルに仕上がってはいる。だが2時間40分と言えばもはや"超大作映画"であり、プラスアルファの感動が欲しいところだ。原作を読むのを3作で止めてしまったとは言え、ストーリーは分かりにくいし、冒頭でクイディッチのワールドカップシーンが紹介だけで済まされてしまっているのも物足りない。また、前作から故リチャード・ハリスに代わってダンブルドア校長に扮する、マイケル・ガンボンの暖かみに欠ける演技もマイナスだ。
(オフィシャルサイト:www.harrypotter.com

7. 「Walk the Line」A-
(出演:ホアキン・フェニックス、リース・ウィザースプーン、ジニファー・グッドウィン、ロバート・パトリック)
ロックンロール、カントリー&ウェスタン、R&Bの3カテゴリーで殿堂入りをしているミュージシャン、ジョニー・キャッシュの半生を描く感動の伝記映画。幼いころに最愛の兄を事故で失ったジョニー(「Ladder 49」のホアキン・フェニックス)は、その後両親とも折り合いがつかず独力で歌手への道を目指す。順調にスターの座を勝ち取ったジョニーだったが、やがてアルコールと覚醒剤に溺れるようになり、人生を転落して行く。判で押したようなミュージシャンの物語で、しかも昨年の「Ray」と比較されるハンデもある。だが本作の強みは、ジョニーと彼の生涯のマドンナである歌手ジューン・カーターとのラブストーリーとしても成立している点だ。すべて自演でジョニーを演じたホアキンも買うが、トレードマークのブロンドをブルネットに染めて、愛情豊かで小股の切れあがったいい女、ジューンを演じるわれらがリース・ウィザースプーンに唸らされる。今年のオスカーは彼女に行くでしょう!
(オフィシャルサイト:www.walkthelinethemovie.com

8. 「Rent」B+
(出演:ロザリオ・ドーソン、ジェシー・L・マーティン、タイ・リッグス、ウィルソン・ヘレディア、アンソニー・ラップ、イディナ・メンゼル)
大ヒットしたブロードウェイ・ミュージカルの映画化。エイズを患うゲイとそのパートナー、映画監督の卵、ヤク中のストリッパー、レズビアンのカップル、売れないロックシンガーなど、マンハッタンの底辺で懸命に生きる8人の若い男女の恋と人生が、乗りのいいロックンロールのナンバーに乗せて描かれる。オリジナルメンバー中心のキャストには若い才能が随所に見られるし、絶望の中にも希望の光がチラリと垣間見えるストーリーには感動もある。だが爆発するような躍動感がないのとメリハリに乏しい間延びした脚本が、ブロードウェイ版よりかなり劣ると評価される理由ではないか。(と言うことは、オリジナルを観ていない分楽しめたということか。)
(オフィシャルサイト:sony.com/rent

9. 「The Ice Harvest」B-
(出演:ジョン・キューザック、ビリー・ボブ・ソーントン、コニー・ニールセン、ランディ・クエイド、オリバー・プラット、監督:ハロルド・ライミス)
雪のカンザスを舞台にした、コメディタッチのダークなクライムドラマ。マフィアのお抱え弁護士チャーリー(ジョン・キューザック)と悪友のヴィック(ビリー・ボブ・ソーントン)は、クリスマス・イブに組織の資金2百万ドルを横取りして逃走を図る。だが既にヒットマンが手配されていて、2人は次第に追い詰められて行く。エルモア・レナードのような雰囲気と癖のある脇役陣には期待させられるものがあったが、せっかくのビリー・ボブには客受けする台詞があまり用意されていないし、ストーリー展開は凡庸で創意工夫に乏しい。これでは面白くなりようが無かった。
(オフィシャルサイト:www.theiceharvest.com


次回は、ピーター・ジャクソン版「King Kong」や年末のオスカー狙い作品を含めたクリスマス映画特集をお届けする。