***"Movie Mate 25"***
これはエプソンの100インチ画面まで映せるDVDプロジェクターで、最近購入した優れもの。売りはとにかく使い易いことで、1電源を入れる、2DVDソフトを入れる、3リモコンのスイッチを押す、これで映画が大画面で見られる。1,100ドルと言う価格(日本より安い)の割りには映像もきれいだし、80インチの据え置き型スクリーンとサブウーファーも付いてくる。これをプレイルームにあるソファの前にセットしたら、我が家のちょっとした名画座が出来上がった。日本で入手不能だったり、昔TVの不完全版でしか見たことの無かった古典や名作を毎晩楽しんでいると、次第に"映画は映画館で見るべし主義"が薄れてきた。だって「はずれ」がないもの。「Aeon Flux」なんてアホくさい新作を劇場で観るよりも、「汚れた顔の天使」とかを家で観る方がずっと気がきいているでしょう。
***2006年サマームービー予告編***
「King Kong」を初日の1回目に観に行ったら、来年のサマームービーの予告編を次々にやってくれた。カート・ラッセルが主演する「Poseidon Adventure」のリメイク「Poseidon」、フィリップ・シーモア・ホフマンが悪役に挑む「Mission Impossible-3」、オリジナルキャストが最後の共演をする「X-Men3」、トム・ハンクス+ロン・ハワード監督によるスーパー・ベストセラーの映画化「Da Vinci Code」、マイケル・マンが自ら映画化しコリン・ファレルとジェイミー・フォックスが共演する懐かしきTVシリーズ「Miami Vice」、さらに「Superman Returns」、「Pirates of Caribbean: Dead Man's Chest」と来たもんだ。ひょっとしたら来年は映画の当たり年ではないか?
以下は2005年クリスマスムービー中心に9本のレヴュー。
1. 「King Kong」 A-
(出演: ナオミ・ワッツ、ジャック・ブラック、エイドリアン・ブロディ、カイル・チャンドラー、コリン・ハンクス、アンディ・セルキス、監督兼共同脚本: ピーター・ジャクソン)
ピーター・"LOtr"・ジャクソンが2億ドルをかけた'33年版オリジナルのリメイクは、モンスター・パニック・ムービーの枠を飛び越えた、きわめつけのエンターテインメントに仕上がった。1933年。仕事のない女優アン(ナオミ・ワッツ)は、偏執的な映画製作者カール(「School of Rock」のジャック・ブラック)に説得されて、撮影のために地図にない島スカル・アイランドへ辿りつく。だがアンは現地の野蛮な部族に捕らえられ、25フィートの巨大なゴリラの生贄として捧げられる。甦る30年代のNY、アンディ・"ゴーラム"・セルキスによる驚異的なコングの動きと表情、スカル・アイランドにおけるコングとT-レックスとの死闘、エンパイア・ステートビルのトップに立つコングを上空から俯瞰する息を飲む映像。これらは長年本プロジェクトを夢見て来たピーター・ジャクソンの脳裏ですっかり出来上がっていたのだろう、3時間の長丁場を全く飽きさせない。内容的にも一級品のラブ・ストーリーで、特にセントラル・パークでのアンとコングのデートシーンは、感動的ですらある。敢えて不満を挙げれば、恐竜と人間たちとの合成シーンがショボいのと、アンを慕う脚本家ジャック(「The Pianist」のエイドリアン・ブロディ)の存在がうざったいことか。アンとコングの純愛に、他人が入り込む余地はないのだ。
(オフィシャルサイト: http://www.kingkongmovie.com)
2. 「Aeon Flux」 C
(出演: シャーリズ・セロン、フランシス・マクドーマンド、マートン・ソーカス、ソフィー・オコネド)
オスカー女優2人(シャーリズ・セロンとフランシス・マクドーマンド)が共演する、MTV印のコミックブックの映画化。舞台は殺人ウィルスのために99%の人口を失った400年後の地球。極度な管理社会を統括する"会長"(マートン・ソーカス)を暗殺するために、反乱グループの切り札イーオン・フラックスが差し向けられる。タイトルロールを演じるシャーリズ・セロンは、黒のジャンプスーツ姿で派手なカンフー・アクションとガンファイトを見せてくれる。要するに未来社会のからくり屋敷に挑む"くの一"だ。オスカー女優になってもこういうB級Sci-fiムービーに出演する心意気は嬉しいが、「Catwoman」のハリー・ベリー同様ちっともセクシーでない。キャラクターが中性的なのだ。セロンとは「North County」でも共演し、本作ではイーオンのボスを演じるフランシス・マクドーマンドに到っては、見世物のようで見ていて気の毒なくらい。まあ一般の方は敬遠された方が無難でしょう。
(オフィシャルサイト: http://www.aeonflux.com.)
3. 「Murderball」 A- (ドキュメンタリー)
Murderballとはカナダで生まれたquad rugbyの俗称で、限定的に手足を動かせる四肢麻痺者のための車椅子によるラグビー。世界一を競う米国とカナダの世界選手権、パラリンピックでの死闘が描かれるが、平行して最もタフな2人、チーム・USAのエース、マーク・ズーパンと、チーム・カナダの鬼コーチ、ジョー・ソアーズの人生が中心に紹介される。刺青と異様なあごひげで異彩を放つズーパンは、酔っ払って友人と乗ったトラックが転倒し、身障者となった。その後当時トラックを運転していた親友とのリユニオン、ガールフレンドとのセックスライフ、そしてチーム・USAのスポークスマンとしての広報活動などが活写される。一方ソアーズは小児麻痺で、かつてチーム・USAのエースだったが、年齢的な衰えからレギュラーを外されたことに腹を立てる。その後チーム・カナダのコーチに就任して打倒USAに執念を燃やす闘魂親父。ズーパン、ソアーズともに強烈なキャラクターだ。ヘルメットもプロテクターも着けず、マッドマックスを髣髴させるぼろぼろの鎧のような車椅子で激しくぶつかり合うMurderballのプレイヤーたち。このドキュメンタリーには大いなる感動があるが、それは彼らが不幸だからとか大きなハンデを乗り越えたからと言うのではなく、単に彼らの強靭さに圧倒されるからだ。
(オフィシャルサイト: http://www.murderballmovie.com)
4. 「Syriana」 B-
(出演: ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ジェフリー・ライト、クリス・クーパー、ウィリアム・ハート、クリストファー・プラマー、アレグサンダー・シディグ、製作兼脚本: スティーブン・ギャガン)
「Traffic」の脚本家スティーブン・ギャガンが監督兼脚本、ジョージ・クルーニーとスティーブン・ソダーバーグがプロデューサーに名を連ねるポリティカル・スリラー。中東の紛争、それに巻き込まれるアメリカ人コンサルタント、CIAの陰謀、アメリカ石油メジャーの合併工作、それを調査する司法省の弁護士などが、ジュネーブ、テヘラン、ベイルート、ワシントン等を舞台に目まぐるしく描かれる。「Traffic」同様ドキュメンタリー・タッチで全編を通して緊迫感はある。だが「今世界の各地ではこういうことが現実に起きているのです」と、事実の断片だけを見せられるだけでは閉口してしまう。映画ファンは毎週Timeを読んでいるわけではないのだ。インテリぶった映画評論家のための作品で、司法省の調査員を演じるジェフリー・ライトと、石油メジャーのCEOに扮するクリス・クーパーの渋い演技以外は楽しめる要素はない。
(オフィシャルサイト: http://syrianamovie.warnerbros.com)
5. 「Fun with Dick and Jane」 C
(出演: ジム・キャリー、ティア・レオーニ、アレック・ボールドウィン、リチャード・ジェンキンズ)
'77年にジョージ・シーガルとジェーン・フォンダが共演した同名コメディのチープなリメイク。ディック(ジム・キャリー)は、大手エネルギー商社グロボダインの広報部長に出世したばかりで、妻のジェイン(ティア・レオーニ)とのバラ色の人生が待っているはずだった。ところが突然グロボダインは倒産、CEO(アレック・ボールドウィン)は持ち株を売り払ってトンズラし、社員の年金はゼロになってしまう(もろにエンロンがモデル)。新しい就職先が見つからないディックとジェインは、強盗で生計を立て始めるのだが…。ストーリーは、2人が強盗を始めるまでのプロセスが長過ぎて、その間発せられるキャリーの単発ギャグだけでは持ちこたえられない。ティア・レオーニは元々TVコメディ「Naked Truth」でブレイクしたのだが、あの頃のはつらつとした若さもセンスも失っていて、これでは面白くなりようがない。唯一の救いは、最近コメディ、シリアスドラマと何を演じても光り輝くアレック・ボールドウィンだ。
(オフィシャルサイト: http://www.funwithdickandjane.com)
6. 「Munich」 A-
(出演: エリック・バナ、ダニエル・クレイグ、シアラン・ハインズ、マチュー・カソヴィッツ、ハンス・ジスラー、ジェフリー・ラッシュ、監督: スティーブン・スピルバーグ)
'72年にミュンヘン・オリンピックで起きた、パレスチナ・ゲリラによるイスラエル選手11人の殺害事件。これに対するモサドの血の復讐を、スピルバーグがドキュメンタリー・タッチで描くポリティカル・スリラー。エリック・バナ演じるアフナーは、全く名の知られていない若くて未経験なモサドメンバーだが、秘密厳守が最優先である作戦ゆえに、暗殺チームのリーダーに抜擢される。アフナーは家族と別れてヨーロッパへ飛び、そこでそれぞれ特殊技能を持つユダヤ人エージェント4人(1人は次期ジェイムズ・ボンド役が決まっている「Layer Cake」のダニエル・クレイグ)と共に、パレスチナ人首謀者11人を1人ずつ抹殺して行く。「Troy」で演技力と存在感を存分に発揮したエリック・バナは、本作でも祖国と家族のために任務を遂行しながらも、やがて狩る側から狩られる側へと追い詰められて行くエージェントの孤独と恐怖を体現する。素材の性格上感動やハッピーエンディングはないが、2時間50分緊迫感が持続し、スピルバーグの健在ぶりを見せつけてくれる。
(オフィシャルサイト: http://www.munichmovie.com)
7. 「The Producers」 B+
(出演: ネイサン・レイン、マシュー・ブロデリック、ユマ・サーマン、ウィル・フェレル、ゲイリー・ビーチ、ロジャー・バート)
'68年にメル・ブルックスが監督兼脚本家としてデヴューし、ゼロ・モステルとジーン・ワイルダーが共演したのがオリジナル。本作は'01年にネイサン・レインとマシュー・ブロデリックが、それぞれ山師プロデューサーのマックスと軟弱会計士のレオを演じて史上最高のヒットとなったブロードウェイ版の映画化。ストーリーは、2人が一計を案じて"史上最悪のミュージカル"を製作し、浮いた資金を騙し取ろうと計画するのだが、作品がスーパーヒットとなってしまう。レインとブロデリックに加えて、ナチ狂いの脚本家フランツがウィル・フェレル、スウェーデンから来た英語が出来ない歌姫ララにユマ・サーマン(超セクシーだ)と、カラフルなキャスト。最大の見所は、劇中劇として描かれるスケールアップした史上最悪のミュージカル"Springtime for Hitler"で、ブロードウェイ版同様ゲイリー・ビーチがゲイのヒトラーを快演、この部分は'68年版よりずっと笑える。2時間14分はコメディー・ミュージカルとしては長過ぎて後半少し眠くなるが、本作を観てメルおじさんの才能をぜひ再評価して欲しい(劇中のナンバーもすべてブルックスによる)。「Blazing Saddles」、「Young Frankenstein」、「Silent Movie」の3作も必見。
(オフィシャルサイト: http://www.theproducersmovie.com)
8. 「Memoirs of a Geisha」 B
(出演: チャン・ツィイー、渡辺謙、ミシェル・ヨー、コン・リー、役所広司、桃井かおり、工藤夕貴、監督: ロブ・マーシャル)
「Chicago」のロブ・マーシャルが芸者の世界を描く、主役が中国人で脇役が日本人による大真面目なアメリカ製ラブ・ストーリー。極貧の漁師の家に生まれた千代(「Crouching Tiger, Hidden Dragon」のチャン・ツィイー)は、幼い頃に身を売られ、京都で芸者になるために厳しく育てられる。置屋で繰り広げられる女の闘い、女性の美しさ、醜さ、許されない愛が活写されるが、全員が英語を話すという(日本人にとっての)不自然さに慣れてしまえば、このキャスティングは悪くない。特に異彩を放っているのが、千代を徹底的にいたぶるセクシーな悪女初桃に扮する、"中国のメリル・ストリープ"ことコン・リーと、鬼のような女将を演じる桃井かおり(「傷だらけの天使」が懐かしい)だ。チャン・ツィイーはちょっと怒り肩で着物向きの体型ではないが、どうして立派な演技。お世辞にも感動するラブ・ストーリーとは言えないが、素材は興味深いし、映像は美しく、エンターテインメントとしては成立している。
(オフィシャルサイト: http://www.memoirsofageisha.com)
9. 「Brokeback Mountain」 A-
(出演: ヒース・レジャー、ジェイク・ギレンホール、ミシェル・ウィリアムズ、アン・ハサウェイ、ランディ・クエイド、監督: アン・リー)
評論家諸氏が絶賛し、ゴールデングローブ賞最多の7部門ノミネート、今話題のゲイ・カウボーイによる純愛ドラマ。'60年代前半、ワイオミング州ブロークバック・マウンテンで羊飼いの仕事を通じて知り合ったジャックとイニス。2人はある晩に関係を持った後に仕事が終わるとともに別れるが、各々結婚して4年後に再会する。「Crouching Tiger, Hidden Dragon」、「Hulk」のアン・リーが、ワイオミングの美しい自然を背景に、ジャックとイニスの20年に渡る関係を描く本作は、ブロークバック・マウンテンにいた短い期間しか幸せになれなかった悲しい男たちの物語だ。陽のジャックを演じるジェイク・ギレンホール(「Jarhead」)、陰のイニスに扮するヒース・レジャー(「Casanova」が控えている)ともにブレイクスルーの演技だが、特に武骨でほとんど口を開かないヒース・レジャーの演技は忘れ難く、オスカー・ノミネーションは確実。"I'm not a queer."と寂しげに呟くその姿には胸をうたれる。R指定のラブシーンにはちょっと引いてしまうが、最近晴れてパートナーと結婚したゲイの広告塔エルトン・ジョンとは対極にいる、ジャックとイニスのはかない人生を考えると、やるせないものがある。2人は30年ほど生まれて来るのが早過ぎたのだ。
(オフィシャルサイト: http://www.brokebackmountain.com)