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Mr.DOBASHI no テキサス映画通信

”Houston, we have a problem!(76)

Dobashi Shuichiro 土橋 秀一郎


Backnumber

***疾風怒濤の面白さ!「Battlestar Galactica」(シーズン1&2.0)***

日本でも放映されていた「宇宙空母ギャラクティカ」('78〜'80)はショボかったので、一昨年からSci-fi Channelで放映が始まったこのリメイクは無視していた――迂闊でした。「X-Men」のブライアン・シンガーが製作から降りたにもかかわらず、まさかこれほどの出来栄えとは!
元々人類が開発したロボット/サイボーグのサイロンと人類の冷戦から40年。ついにサイロンが入念に計画された核による同時多発テロを起こした結果、人類が住んでいた12のコロニーは全滅する。幸運にも生き残ったのは、博物館になる予定だった旧式の宇宙空母ギャラクティカとそのクルー、そして一般市民5万人から成る非武装船団のみ。ギャラクティカの艦長アダマ(エドワード・J・オルモス)は、急遽大統領に就任した元教育庁長官のロスリン(メアリィ・マクドネル)と協力して、伝説の星"Earth"を目指すが……。
人類抹殺を謀り執拗にギャラクティカを追うサイロンと、追われるギャラクティカの死闘も凄い。だが本シリーズの生命線は、ギャラクティカ内部で展開される人間ドラマだ。筋金入りの軍人でそのカリスマで他を圧倒する艦長アダマ、ガンで余命数ヶ月と宣告された新米大統領のロスリン、ギャラクティカのエースパイロットのスターバック、父親と確執を持つアダマの息子で戦闘チームのキャプテンであるアポロ、アル中の副官サイ、これに艦内に潜り込んでいるサイロンのスパイが絡む。中でも、その昔タフなマイアミ警察署長役で「Miami Vice」を一気に面白くしたエドワード・J・オルモスと、毎回メリル・ストリープ級の演技を見せる「Dances with Wolves」のメアリィ・マクドネルの存在感は群を抜く。
現在全米ではシーズン2の後半が放映中だが、DVDで発売中のシーズン1とシーズン2の前半(2.0)の面白さはただ事ではない。いまこの瞬間は「Star Trek: The Next Generation」のドラマ性も、「24」のスリルさえも凌ぐのではないか。日本では冒頭3時間のミニシリーズだけがDVDで発売中だが、取り敢えずこれだけでも観ておくことを強くお薦めする。アメリカTVドラマ史上に残る傑作になるよ、これは。


1.  「Glory Road」  A-
(出演: ジョッシュ・ルーカス、デレック・ルーク、オースティン・ニコラス、ジョン・ボイト)

ちょうど1年前に、カリフォルニアの高校バスケットチームの実話をベースとした佳作「Coach Carter」が公開されたが、本作もテキサスにある貧乏な大学バスケットチームの実話。1965年。テキサス・ウェスタン大学は、女性バスケットチームの名コーチだったハスキンス(ジョッシュ・ルーカス)を招へいする。ハスキンスはチーム強化のために地元高校の有力選手を勧誘するが、無名で経済的余裕のない大学チームなど相手にされない。そこで彼は、全米を巡って素質のある黒人高校生7名をリクルートする。この作戦は功を奏し、やがてチームは破竹の連勝を続けるのだが、同時に差別主義者の嫌がらせもエスカレートし、チーム内部が崩壊し始める。前作「Stealth」の出来が散々だったジョッシュ・ルーカスだが、本作では信念の名コーチ、ドン・ハスキンスを熱演。また個性あるプレーヤーを演じる若手役者たちの運動能力も高く、アメリカのスポーツ史上でも名試合として残る、'65年NCAA優勝決定戦のケンタッキー対テキサス・ウェスタン戦が見事にスクリーンに甦る。久しぶりに胸の熱くなる感動の好編。
(オフィシャルサイト: http://disney.go.com/disneypictures/gloryroad


2.  「Annapolis」  B+
(出演: ジェームズ・フランコ、タイリース・ギブソン、ジョーダナ・ブリュースター)

リチャード・ギアが主演した「An Officer and a Gentleman」('82)のストーリーをほぼそのままに、舞台をWest Point(陸軍士官学校)からAnnapolis(海軍兵学校)へ置き換えた作品。メリーランドの造船所で働くジェイク(「City by the Sea」のジェームズ・フランコ)は、今は亡き母親との約束を守ってAnnapolisへ入学する。海軍の鉄の規律としごきに反感を持つジェイクは何回も挫折しかけるが、やがて仲間との友情と彼に好感を持つ2人の士官に支えられて、タフな候補生に成長していく。米国海軍の広告宣伝フィルムと言ってしまえばそれまでだし、リメイクとはいえないまでも「An Officer and a Gentleman」と酷似したストーリーの著作権がどうなっているのかも気になるところ。しかし人間ドラマとしては良く出来ているし、ジェームズ・フランコ、鬼教官のコールを演じるタイリース・ギブソン(「2 Fast 2 Furious」)共に演技力があって適役。特にこの2人が対決する校内ボクシング大会の決勝戦は圧巻だ。
(オフィシャルサイト: http://annapolis.movies.com.)


3.  「Underworld: Evolution」  B-
(出演: ケイト・ベッキンセイル、スコット・スピードマン、トニー・カラン、ビル・ナイ)

2003年に大ヒットしたアクション・ホラーの佳作「Underworld」の続編。スーパー・ヴァンパイアとなったマーカス(トニー・カラン)は、かつて洞窟に封印された血の繋がったライカン(狼男)の兄弟であるウィリアムを探し始める。一方ヴァンパイア・ヒロインのセレイン(ケイト・ベッキンセイル)とヴァンパイア-ライカンのハイブリッド、マイケルは愛し合うようになる。だが2人がウィリアムの眠る洞窟へ導く手懸りを持っていることから、マーカスの攻撃を受ける。世界観がしっかりしているのがこの物語の強みなのだが、今回は敵がパワーアップし過ぎて、もはや華奢なセレインでは太刀打ちできない状態となってしまった。物語全体のバランス感覚が狂っているのだ。ベッキンセイルも前作で男性ファンを狂喜させた、あのいたいけなセクシーさが影を潜めてしまい(前作の後、監督のレン・ワイズマンとできてしまったせいだ)、あまり見るべきものはない。
(オフィシャルサイト: http://www.entertheunderworld.com


4.  「Firewall」  B
(出演: ハリソン・フォード、ポール・ベタニー、ヴァージニア・マドセン、ロバート・パトリック、ロバート・フォスター)

ハリソン・フォードが「Air Force One」('97)以来、久しぶりに大真面目なアクション・スリラーに主演した。フォードが演じるのは大手銀行の保安部長ジャック。ジャックはコックス(ポール・ベタニー)率いる武装ハッカーグループに家族を人質に取られ、銀行から密かに2千万ドルを送金するよう脅される。本作の見所は、随所にアクションを散りばめながら、ジャックがコンピューターの知識を駆使して逆襲に転じる場面のはずだった。だが実際に魅せるのは、「A Beautiful Mind」、「Wimbledon」のポール・ベタニー演じるコックスの圧倒的な存在感のみ。63才のフォードによるファイティングシーンはスピードも迫力もなく作品をスポイルしている上に、元来器用な役者ではないフォードは、逆立ちしてもコンピューターの達人には見えない。前半の緊迫感は後半になって徐々に薄れていき、最後は凡作の印象しか残らなかった。
(オフィシャルサイト: http://firewallmovie.com


5.  「The Pink Panther」  C
(出演: スティーブ・マーティン、ケビン・クライン、ジャン・レノ、ビヨンセ・ノウルズ、エミリー・モーティマー)

スティーブ・マーティンがフランスの名警部クルーゾーに扮する、60〜70年代爆笑シリーズの"子供向け"リメイク。今回クルーゾーは、上司のドレイファス(ケビン・クライン)に任命されて"ピンク・パンサー・ダイヤモンド"の盗難殺人事件に挑む。だがストーリー以前に、オリジナルのピーター・セラーズ/ハーバート・ロムによるコンビから毒気を抜かれた、スティーブ・マーティン/ケビン・クラインのコンビには全く魅力がない。むしろケビン・クラインが「A Fish Called Wanda」のノリでクルーゾーを演じるか、いっそビル・マーレーに演らせたかったところだ。お約束通りクレジットタイトルはヘンリー・マンシーニのテーマソングにのってピンクパンサーのカートゥーンで始まるのだが、これも手抜きで垢抜けない。しかもエンド・クレジットの「遊び」を期待していたら、何も用意されていなかった(!)。要するに、作り手に遊び心もサービス精神もないからつまらないのだ(公開が昨年夏から半年延期されたのも納得が行く)。これを機会に、若い映画ファンには本作は無視してオリジナル・シリーズの内、「The Pink Panther」('63)、「A Shot in the Dark」('64)、「The Pink Panther Strikes Again」('76)、「Revenge of the Pink Panther」('78)の4本を観ることを薦める。
(オフィシャルサイト: http://www.pinkpantherthemovie.com


6.  「Running Scared」  B-
(出演: ポール・ウォーカー、キャメロン・ブライト、ヴェラ・ファーミガ、チャズ・パルミンテリ)

「The Fast and the Furious」のポール・ウォーカー主演による、見事に切れまくったB級アクション。マフィアの使い走りをしているジョーイ(ポール・ウォーカー)は、身の安全のためにボスが殺人に使った銃を処分せずに地下室に保管していた。ところが隣に住む子供オレグ(「Birth」で気味悪い子供を演じたキャメロン・ブライト)が、その銃で殺傷事件を起こしたことから、ジョーイはとんでもないトラブルに陥る。一見もっともらしく響くストーリーだが、オレグが暴力大好きのポン引きと娼婦、謎の変態夫婦、ジョン・ウェインに心酔するロシアン・マフィアなどに係わるにつれて次第に収拾がつかなくなる。この映画、酷い出来なのだが実はこのストーリーが崩壊するプロセスがかなり面白く、ちょっとカルト的ではある。
(オフィシャルサイト: http://www.runningscaredthemovie.com


7.  「16 Blocks」  A-
(出演: ブルース・ウィリス、モス・デフ、デヴィッド・モース、監督: リチャード・ドナー)

今回のイチ押しは、「Lethal Weapon」シリーズの監督リチャード・ドナーが放つ、この"感動"のアクション映画だ。ブルース・ウィリス扮するジャックは、NY市警に勤めるアル中の窓際刑事。夜勤明けのジャックは、チンピラのエディ(モス・デフ)を、わずか16ブロック離れた裁判所に移送する役目を不承不承引き受ける。エディは2時間後に腐敗警官に対する証言をすることになっているのだ。だが2人は襲撃され、そこから先はマンハッタンを舞台に追う者と追われる者の頭脳を駆使した戦いが繰り広げられる。終始ハイテンションなこのやり取りだけでも十分楽しめるのだが、これはまだ前菜。本作の脚本は実に気が利いていて、「ヒーローのジャックが悪徳警官をやっつけて、最後はエディを無事裁判所に送り届けました」などというありふれた結末は持って来ない。しかもウィリスとモス・デフの演技は突出していて、なんとジャックとエディを巡る男の友情と再生の物語にもなっているのだ。エンディングも感動的だし、申し分のないエンターテインメントとしてこの上半期必見の一本。
(オフィシャルサイト: http://16blocks.com



今年のオスカー授賞式は、冒頭司会を務めるジョン・ステュアート(「The Daily Show」)の紹介クリップで笑わせ(でも彼の2度目の司会はないでしょう)、最後の最後で「Crash」が「Brokeback Mountain」をひっくり返す大どんでん返しで驚かせてくれた。われらがリース・ウィザースプーンは、予定通りオスカーを持って帰ってめでたしめでたし。"Congrats! Reese!"