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Mr.DOBASHI no テキサス映画通信

”Houston, we have a problem!(77)

Dobashi Shuichiro 土橋 秀一郎


Backnumber

Astrosの開幕ゲームを観ながら、オリジナルの「The Bad News Bears」の中で、アル中コーチのウォルター・マッソーがこんなセリフを言っていたのを思い出した。

「野球ってやつはいいなあ、自信と誇りを与えてくれる」

字幕でしか覚えていないので英語の原文は分からないが、このセリフは真実を突いている。生まれて初めて自信と誇りらしきものを持てたのは、小学校5年生の時に地区の少年野球大会で3位に入った時だった(投手で3番打者だった)。何とあれから40年近くたったが、この間特に自信と誇りを持った記憶もなく、将来野球選手になる夢はとっくに消え失せていた。今ではその夢は、「今シーズンはAstrosがワールドシリーズで優勝しないかなあ…」という罪のないものに変わり、グローブ持参でMinutes Maid Parkに駆けつける日々だ。でもこんな野球とのつきあい方も悪くない。昨シーズンのようなことが起こることもあるのだから。


以下はサマー・ムービー直前の9作品のレヴュー。今回のイチ押しは「United 93」だ。


1.  「Failure to Launch」  B+
(出演: マシュー・マコノヒー、サラ・ジェシカ・パーカー、ジャスティン・バーサ、ブラッドレイ・クーパー、ズーイー・デシャネル、キャシー・ベイツ、テリー・ブラッドショー)

"The sexiest man alive"に選ばれたマシュー・マコノヒー(「Two for the Money」、「Sahara」)と、「Sex and the City」のサラ・ジェシカ・パーカー共演の、ちょっとオフビートなロマコメ。マコノヒー演じるトリップは、独身でモーターボートのセールスマン。女性はよりどりみどりだ。トリップの両親は今だに同居している息子を家から追い出すために、専門のコンサルタント、ポーラ(サラ・ジェシカ・パーカー)を雇い、ポーラはトリップにデートを仕掛けるが…。この映画、肝心のロマコメ部分は洗練さに欠けるしストーリー的にも弱い。41才のパーカーはクローズアップされると化粧のノリが悪かったのか、容姿の衰えが目立つ。だが目下キャリアのピークにいるマコノヒーは光り輝いているし、何より強靭な脇役陣が心強い。トリップの母親役のキャシー・ベイツ、父親役の(元スティーラーズQBの)テリー・ブラッドショー、トリップの友人役のジャスティン・バーサ(「National Treasures」)、それにポーラのエキゾティックなルームメイト役のズーイー・デシャネル(「Elf」の彼女はキュートだった)、いずれも適役で特にデシャネルは笑いの部分を一手に引き受けている。さほど親密でない相手と行くデートムービーには手頃な一作。
(オフィシャルサイト: http://www.failuretolaunchmovie.com


2.  「V for Vendetta」  A-
(出演: ナタリー・ポートマン、ヒューゴ・ウィーヴィング、スティーブン・レイ、ジョン・ハート)

DCコミックスのグラフィックノベルを「The Matrix」シリーズの製作・監督・脚本チームが映像化した、斬新でスタイリッシュなダーク・アクションドラマ。舞台は近未来、独裁政権下のイギリス。孤独な女性イヴィ(ナタリー・ポートマン)は、戒厳令の中を外出して秘密警察に捕らえられるが、"V"と名乗る仮面の男(これも「The Matrix」のヒューゴ・ウィーヴィング)に救われる。"V"は警察国家にクーデターを企てる孤独なテロリストだった。物語はイヴィと"V"のたどる数奇な運命と、"V"の仕掛ける鮮やかなゲリラ攻撃を交錯させながら、縦横無尽に展開する。冒頭から観客を引き込むフィルム・ノワールの雰囲気、「Crying Game」のスティーブン・レアを始めとする存在感ある脇役陣、そしてナタリー・ポートマンの熱演が作品のドラマ性を際立たせている。唯一の問題は、仮面越しに話される"V"のイギリス英語が良く理解できないことだ。
(オフィシャルサイト: http://vforvendetta.warnerbros.com/


3.  「Find Me Guilty」  B-
(出演: ヴィン・ディーゼル、ピーター・ディンクレイジ、ライナス・ローチ、ロン・シルバー、監督: シドニー・ルメット)

前作「The Pacifier」でコメディアン・デビューを果たしたヴィン・ディーゼル主演の、これもコメディタッチの実話に基づく法廷ドラマ。ディーゼル扮する"ファット・ジャック"は起訴されているマフィアの幹部で、FBIは彼を何とか寝返らせてニュージャージーのマフィアを一掃しようと目論む。だが"ファット・ジャック"は仲間に忠誠を誓い、弁護士をクビにして自らを弁護し始める。ディーゼルが初老のメイクをして、すっとぼけた演技で法廷を爆笑させる"ファット・ジャック"のキャラは極立っている。だがシドニー・ルメット作品としては余りにも底が浅く、がっかりする。「12 Angry Men」、「The Pawnbroker」、「Serpico」、「Dog Day Afternoon」、「The Verdict」とか、名作を山ほど作った監督なんだけど…。
(オフィシャルサイト: http://www.findmeguilty.com/


4.  「Inside Man」  B
(出演: デンゼル・ワシントン、クライヴ・オーウェン、ジョディ・フォスター、クリストファー・プラマー、キウェテル・イジョフォー、ウィレム・デフォー、監督: スパイク・リー)

スパイク・リーが、マンハッタンを舞台に豪華キャストで贈るトリッキーなクライム・ドラマ。ダルトン(「The Derailed」のクライヴ・オーウェン)率いるサングラスに白マスクの武装強盗団が、白昼堂々と人質を取って銀行に立てこもる。交渉に当たるNYPDの刑事キース(デンゼル・ワシントン)は、やがて犯人たちの目的が金以外にあるのではと疑い始めるが…。有能で軽口を叩くキースと、全てを考え抜いて計画を立てているダルトンとの丁々発止のやり取りには思わず引き込まれる。これにカミソリのように頭の切れる銀行コンサルタントのマデリーン(ジョディ・フォスター)が絡むキャラクター設定は、本作最大の魅力だ。惜しむらくは細部には拘わってみたものの、穴のある脚本。銀行と人質を掌握するまでのプロセス、警察の裏をかく策略、さらに脱出のトリックは賢い。だが、ネタが前半で割れてしまうために緊迫感が持続できず、見終わった後に大きな?が付く箇所が幾つかある。ビル・マーレーが主演したクライム・コメディの佳作「Quick Change」('90)で似たようなトリックが使われたが、こちらの方が気が利いている。
(オフィシャルサイト: http://www.insideman.net/


5.  「Basic Instinct 2」  C-
(出演: シャロン・ストーン、デヴィッド・モリセイ、シャーロット・ランプリング、デヴィッド・シューリス)

前作から14年、忘れた頃に製作された傑作セクシー・スリラーの続編は、シャロン・ストーンの若さとマイケル・ダグラスを失って手酷い失敗作に終わった。今回の舞台はロンドン。ミステリー作家のキャサリン・トラメル(シャロン・ストーン)は、彼女の車に同乗していたサッカーのスター選手の死に関して、警察から疑いをかけられる。精神科医のグラス(デヴィッド・モリセイ)は、キャサリンの精神状態について法廷で証言するが、やがて彼女の魔性の魅力に取りつかれる。前作は当時スーパーセクシーだったシャロン・ストーンに加えて、ポール・ヴァーホーベンのエロティックでパワフルな演出、それにマイケル・ダグラス、ジーン・トリプルホーン、ジョージ・ズンザなどソリッドなキャストのおかげで、話題性に加えて映画としての面白さが十分あった。だが本作はこれらを全て失っていて興行的にも悲惨のひと言で、結局1千4百万ドルのギャラを取った48才のシャロン・ストーンが一人勝ちした。
(オフィシャルサイト: http://sonypictures.com/movies/basicinstinct2/


6.  「Lucky Number Slevin」  B
(出演: ジョッシュ・ハートネット、モーガン・フリーマン、サー・ベン・キングスレー、ブルース・ウィリス、ルーシー・リュー)

エルモア・レナード・タッチのクライムテール。平凡な若者のスレヴィン(「40 Days and 40 Nights」のジョッシュ・ハートネット)は、NYに住む友人のアパートで、間違えられてマフィアの2人組に連れ去られる。マフィアの「ザ・ボス」(モーガン・フリーマン)はスレヴィンに、借金と相殺にライバルであるユダヤ系ギャングのボス「ザ・ラビ」(サー・ベン・キングスレー)の息子を殺すように命じられるが…。全編を通して緊迫感に欠け、かと言ってクライム・コメディとしても弱く、どっちつかずの印象は残る。だがアクの強いキャラクター達が織りなすストーリーは結構凝っていて、後半のツイストも楽しめる。本作のボーナスは今まで大嫌いだったルーシー・リュー(「Charlie's Angeles」)で、スレヴィンのガールフレンドをこの上なくチャーミングに演じている。万人向きではないが、小粋な一作。
(オフィシャルサイト: http://www.slevin-movie.com/


7.  「Ice Age: The Meltdown」  B+
(声の出演: レイ・ロマノ、クイーン・ラティファ、ジョン・レグイザモ、デニス・リアリー)

'02年の心温まるファミリーCGアニメの続編。今回マンモスのマニー(「Everyone Loves Raymond」のレイ・ロマノ)、ナマケモノのシス(ジョン・レグイザモ)、サーベルタイガーのディエゴ(デニス・リアリー)の3匹は、地球温暖化で溶けだした氷河から逃れるために、他の動物たちと共に避難を始める。マニーは途中でエリー(クイーン・ラティファ)と出会うが、彼女はフクロネズミの兄弟と一緒に育てられたマンモスだった…。各キャラの動きと色彩感覚はCGならではの楽しさ。加えて3匹の友情、マニーとエリーとのロマンスも手堅くまとめられていて、前作同様に子供から大人まで安心して観ていられる。
(オフィシャルサイト: http://www.iceagemovie.com/


8. 「The Sentinel」  B+
(出演: マイケル・ダグラス、キーファー・サザーランド、エヴァ・ロンゴリア、キム・ベイシンガー)

マイケル・ダグラスが、「24」のキーファー・サザーランド、「Desperate Housewives」のエヴァ・ロンゴリアと共演するアクション・スリラー。ダグラス演じるのはベテランのシークレット・サービス、ガリソンで、彼はシークレット・サービスの誰かが手引きをする大統領暗殺計画の存在を知る。すぐにブレッキングリッジ(キーファー・サザーランド)と彼の新人アシスタント(エヴァ・ロンゴリア)による捜査が始まるが、次第にガリソンにその容疑がかかり始める。全編を通して快調なテンポで緊迫感が持続し、マイケル・ダグラス健在を印象付ける。惜しむらくはダグラスを立てた脚本のおかげでキーファーの影が薄くて(ジャック・バウワーからはほど遠く)、ファンをがっかりさせる点。"The sexiest woman alive"のエヴァ・ロンゴリアはさほどセクシーではないが、演技は意外にシャープ。またファーストレディ役のキム・ベイシンガーは老いても依然として美しい。エンターテインメントとしては申し分ない一作。
(オフィシャルサイト: http://www.sentinelthemovie.com


9. 「United 93」 A
(出演: クリスチャン・クレメンソン、デヴィッド・アラン・バッシュ、JJ・ジョンソン、トリッシュ・ゲイツ)

'01年9月11日にNYとワシントンで起きた、アルカイダによる同時多発テロ。ハイジャックされた4機の民間航空機のうち、唯一ターゲットを外してペンシルバニア郊外に墜落したのが、ニューアーク発サンフランシスコ行きユナイテッド93機だ。ワールド・トレード・センターとペンタゴンへの自爆テロ、FAA(連邦航空局)の対応、さらに軍の防空管制センターの苦悩がカットバックで挿入されながら、ユナイテッド93機内で一致団結し、死を決してテロリストと戦った、民間人の勇気が圧倒的な臨場感を持って再現される。監督と脚本は「The Bourne Supremacy」のポール・グリーングラス。無名の俳優と実名の登場人物たちがスクリーンで訴える事実の重みに、われわれは叩きのめされる。

因みに、オリバー・ストーン監督、ニコラス・ケイジ主演の「World Trade Center」の公開は8月9日だ。
(オフィシャルサイト: http://www.united93movie.com


次回は「Mission: Impossible: III」を皮切りに、06年のサマームービーのレヴューです。