映像翻訳|海外のテレビ番組や映画の映像翻訳を仕事にするための学校です。多くの修了生、受講生がドラマ、アニメーション、ドキュメンタリー番組など多方面で活躍しています。

Mr.DOBASHI no テキサス映画通信

”Houston, we have a problem!(79)

Dobashi Shuichiro 土橋 秀一郎


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6月に日本へ出張した際、日本映像翻訳アカデミーを訪ねた。新しい日本橋の本校は、筆者が在籍していた頃の代々木校舎より遥かにモダンで快適な環境となっていて、同校の最近の目覚ましい躍進ぶりを思い出した。久しぶりにお会いした新楽代表とメインスタッフの方6名に歓待していただき、同校の活動状況や業界事情、そして勿論アメリカ映画やTV番組の話で盛り上がった。
アメリカに7年も駐在している間に、最新の映画やTVドラマをいつでも観ることのできる贅沢な環境が、すっかり当たり前になってしまった。赴任前は、出張でHoustonに来るたびに映画とホテルのTVで”飢え”を満たし、英語が聞き取れない悔しさは逆にバネになっていた。だが今ではすべて聞き取れないことは当然と無意識に開き直り、聞き取れなかった事実そのものをその場で忘れて良しとしてしまう。進歩が無いのは当たり前なのだ。アカデミーからの帰りの電車の中で、そんなことをつらつらと考えた。
それにしてもスタッフの方々の若いことといったら。あなた方にとって、きっとアメリカン・ニューシネマは
”古典”なんでしょうね。
新楽さん、また伺います。”うなぎ”おいしかったです。

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6月から単身赴任生活が始まった。息子が2人とも日本の大学に行くことに決めたので、妻も彼らの面倒を見るために帰国してしまった。会社からは、「すまん、代わりがいない」のひと言(これは本社のポストがないことを、湾曲に伝えているに過ぎない)。元々やりたくないことは何もしていなかったので、単身になったからと言って自由な時間が増えるわけではなく、逆に減ってしまった。金曜の午後になると「今夜は洗濯をしないと下着が足りなくなるぞ」、「明日は庭の水撒きか、雨が降らないかな」、「スーパーの買い物リストを作らなきゃ」とか考え始める始末で、人間がみるみる小さくなって行く。夕食を外食で済ますのは妙に金の浪費に思えるのだが、かといって自分で作ると皿洗いが待っている(ウォッシャーを使うには量が少ない)。Astrosが負けた時に当たる相手がいないのも辛いものがある(今シーズンは良く負ける)。1人で怒鳴ってみても、家の中はただ静寂のみで虚しい。
何かについてじっくりと考えてみるには理想的な環境なのだが、それをやろうとするといつのまにかソファで寝てしまい、目が覚めると首が回らなくなっていたりする。仕方が無いのでまた映画とTVドラマと野球と読書に戻るのだが(人生でほとんどこの4つしかしていない)、同じ事をしても1人暮らしだとオタクの生活のようだ。せめてAstrosが後半巻き返してくれると、もう2-3ヶ月は持つのだが...あ、そういえばもっと仕事をするという手があったな。


今回は2006年サマームービー第2弾7本のレヴューだ。


1.  「Click」   B
(出演: アダム・サンドラー、ケイト・ベッキンセイル、クリストファー・ウォーケン、デヴィッド・ハッセルホフ)

アダム・サンドラー主演のナンセンス・人情コメディー。ワーカホリックの建築家マイケル(サンドラー)は、欲求不満の妻(「Underworld」のケイト・ベッキンセイル!)、やんちゃな息子と娘、それに底意地の悪い上司(「Baywatch」のデヴィッド・ハッセルホフ)から毎日のように突き上げられて、ストレスのたまる毎日。そんなマイケルは、ある日寝具店の地下室に住むマッド・サイエンティスト(立っているだけで充分おかしいクリストファー・ウォーケン)から、”ユニバーサル・リモート”なるものを渡される。それはその名の通り、世の中の全てをコントロールできる驚異のリモコンなのであった。
前半は、マイケルがリモコンでやりたい放題を行い大いに笑わせる(金儲けとか世界支配とかを考えずに、せこいことにしか使わない所が妙におかしい)。だが後半に入ると家族の絆とか人生の意味とかを深刻に考え始め、話が説教臭くなる。これはサンドラーの最近の傾向なのだが、本作のように中途半端に物語を人情ドラマにふってしまい、「Wedding Singer」以降は成功していない。「Happy Gilmore」とか「Waterboy」のような脳天気なスポーツ・コメディのサンドラーが懐かしい。決して若いとはいえないサンドラーだが、何も人情にふるのが成熟ではない。またアホで直情的でナンセンスな作風に戻ってくれないものか。
(オフィシャルサイト: http://ControlYouUniversal.com


2.  「Superman Returns」  A-
(出演: ブランドン・ラウス、ケイト・ボスワース、ケビン・スペイシー、パーカー・ポージー、監督兼共同脚本: ブライアン・シンガー)

「X-Men 3」を敢えて降板したブライアン・シンガーが満を持して放つ、スーパーマン映画のこれが決定版。カル・エル(ブランドン・ラウス)は、母なる星クリプトンの最後の運命を確認した後、5年ぶりに第2の故郷地球に戻ってくる。カルはさっそくスペースシャトルの危機を救い、ロイス・レイン(はじけるばかりの美しさが眩しいケイト・ボスワース)と再会し、スーパーマンとして復活する。だがロイスは既に結婚していて息子がいる上に、世紀の悪党レックス・ルーサーは着々と世界終結計画を進めていた。
シンガーはさすがにファンの心理を捉えていて、嬉しいことにオリジナルシリーズでお馴染みのクリスタルブルーのクレジットタイトルと、ジョン・ウィリアムズによるメインテーマをそのまま使っている。ストーリーもケビン・スペイシーが怪演するルーサー対スーパーマンの対決を縦糸に、ロイスとクラーク・ケント/スーパーマンのはかない恋の行方を横糸に、手堅くまとまっている(ロマコメとしても成立している)。勿論最新CGを駆使したアクションシーンは見応えがあり、本作は前回紹介した「Cars」と並んでこの夏お薦めの一本だ。
(オフィシャルサイト: http://supermanreturns.com


3.  「Pirates of the Caribbean: Dead Man’s Chest」  B-

(出演: ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトリー、ジェフリー・ラッシュ、ビル・ナイ)

ディズニーが2億ドルを投じてこの夏一番のスマッシュヒットとなった、2003年ヒット作品の続編。今回ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)、ターナー(オーランド・ブルーム)、スワン(キーラ・ナイトリー)のレギュラー3人は、”死者の宝物”を巡って海底人デイビイ・ジョーンズ(ビル・ナイ)と対決するが、正直言ってストーリーは2日もたつと良く思い出せないようなどうでも良い内容だ。巨大な海底生物とかこれでもかと言うような大味な特撮も、キャラクターの造型を阻害するだけでまったくいただけない。唯一の楽しみはデップによるジャック・スパロウの悪乗り演技だけだ。
大ヒットしたオリジナルの続編を、大枚をはたいてスケールアップして失敗作にしてしまうのはハリウッドの悪い癖だ。だが本作に関しては、元々内容にかかわらず大ヒット間違いなしという超低リスクだったはずで、ディズニーの確信犯だったという気がする。ファミリー・ムービーは良いビジネスなのだ。
とは言えパート3はチョウ・ユン・ファが海賊として颯爽と登場するようで、ちょっと楽しみではあるのだが。
(オフィシャルサイト: http://pirates.movies.com


4.  「You, Me, & Dupree」  B+
(声の出演: オーウェン・ウィルソン、ケイト・ハドソン、マット・ディロン、マイケル・ダグラス)

「The Wedding Crasher」のオーウェン・ウィルソンが縦横無尽に活躍する、オフビートなロマコメ。ウィルソン演じるデュプリーは、人は良いが無神経、社会不適格で現在失業中の身。そのデュプリーが、親友カール(「Crush」のマット・ディロン)とモリー(ケイト・ハドソン)の新婚家庭に居候し始めたことから、3人の関係はおかしくなり、カールの人生は破滅に向かって突き進むことになる。ケイト・ハドソンはいつも通り、演技が良いだけでなくキュートでチャーミング。今やオスカー・ノミニーのマット・ディロンと、モリーの親バカな父親役のマイケル・ダグラスも存在感を見せる。しかし本作は良くも悪くもウィルソンの一人舞台。デュプリーのユニークなキャラクターとあまり品のよろしくないギャグを楽しめるかどうかは、あなたがウィルソンのファンか否かで決まる。
(オフィシャルサイト: http://www.youmeanddupree.com


5.  「My Super Ex-Girlfriend」  B+
(出演: ユマ・サーマン、ルーク・ウィルソン、アナ・ファリス、ワンダ・サイクス、レイン・ウィルソン、エディー・イザード、監督: アイバン・ライトマン)

これはこの夏の掘り出し物といえる、スーパー・ナンセンス・Sci-fi・ロマンティック・コメディ。人は良いのだが女性にはもてない建築家のマット(「Old School」のルーク・ウィルソン)が、ようやくナンパして射止めたのがエキセントリックなジェニー(ユマ・サーマン)。ところがジェニーは、実は短気で超焼きもちやき、おまけにベッドではウルトラホットな、”G-Girl”と呼ばれるNYのスーパーヒ−ローだった!
ウィルソンが大真面目に演じる”普通の男”の生活が、サーマン怪演の切れまくるスーパーウーマンによって壊滅していくプロセスが実におかしい。またマットの親友で口だけのナンパ男を演じるレイン・ウィルソン、セクハラ教育係役のワンダ・サイクスなど、脇役陣もみごとにはまっている。「Superman」のパロディーとハッピーエンディングなロマコメが両立した、楽しいデート・ムービーだ。
(オフィシャルサイト: http://www.mysuperex.com


6.  「Lady in the Water」  C

(出演: ポール・ジアマッティ、ブライス・ダラス・ハワード、ジェフリー・ライト、製作・監督・脚本: M. ナイト・シャマラン)

M.ナイト・シャマランに関しては、以前からこのレヴューでも”最も過大評価されている映像作家”と訴えてきたが、本作は彼の作品群の中でも最低の出来といっていい。
暗い過去を持つアパートの管理人クリーブランド(「Sideways」のポール・ジアマッティ)は、アパートのプールで水の妖精(シャマランの前作「The Village」のブライス・ダラス・ハワード)を見つける。クリーブランドは、妖精が元の世界へ戻らねばならない事情を知って彼女を助けるが…。
この陳腐な物語には魅かれるものは何もなく、まったく怖くなく、ジアマッティーの演技を持ってしても退屈さを克服することは出来なかった。しかもシャマラン本人がアパートの住人役でかなりのセリフを話して辟易させる。
繰り返すがシャマラン作品は、市民に混ざって生活するスーパーマンの悲哀を描いた「Unbreakable」はGood、結末のツイストだけでプロセスが退屈な「The Sixth Sense」はfair、期待だけさせて結局何も起こらない「Signs」と「The Village」はNot Goodと位置付けられたい。そして本作は勿論Badである。
(オフィシャルサイト: http://www.ladyinthewater.com

7.  「Miami Vice」  B+
(出演: ジャーミー・フォックス、コリン・ファレル、ゴング・リー、製作・監督・脚本:マイケル・マン)

あのソニー・クロケットとリカルド・タブスが帰ってきた!80年代に全米を熱狂させたポリス・アクションを、クリエーターのマイケル・マンが自ら映画化したのが本作(毎週東京12チャンネルで見ていた頃が懐かしい)。今回おとり捜査官のソニー(コリン・ファレル)とリコ(ジャーミー・フォックス)は、FBIの極秘作戦を壊滅させた麻薬トランスポーターを狙って取引を持ちかけるが、それは彼らが考えていたより数段大掛かりで狡猾な組織だった。
マイアミのまとわりつくような熱気の中で展開するホットなラブストーリー、リアルな銃撃戦、それにクールな車と音楽は極めてスタイリッシュで、マイケル・マン(「Collateral」)の面目躍如だ。惜しむらくはコリン・ファレルとジャーミー・フォックスに、オリジナルのドン・ジョンソンとフィリップ・マイケル・トーマスのようなケミストリーが働かなかった点で、特にフォックスには生彩がない(この2人は仲が悪いのではないか)。パーティーなんかで、本作のDVDを音声なしで流し続けるときっとクールだぞ。
(オフィシャルサイト: http://www.miamivice.com


次回は「Talladega Nights: The Ballad of Ricky Bobby」、「Snakes on a Plane」、「World Trade Center」など、2006年サマームービー最後の特集だ。