映像翻訳|海外のテレビ番組や映画の映像翻訳を仕事にするための学校です。多くの修了生、受講生がドラマ、アニメーション、ドキュメンタリー番組など多方面で活躍しています。

Mr.DOBASHI no テキサス映画通信

”Houston, we have a problem!(80)

Dobashi Shuichiro 土橋 秀一郎


Backnumber

*** 「24」 nailed the Emmy! ***

今年のEmmy Awardsは投票方式を"改悪"した結果、「Lost」、「Desperate Housewives」、「The Shield」、「Battlestar Galactica」などの優れた作品がノミネーションから漏れて、ファンやメディアから非難が殺到した。そんな中で、第5シーズンを過去最高の興奮と視聴率で乗り切った「24」は、合衆国大統領夫婦を熱演したグレゴリー・イッツェンとジーン・スマートこそ助演賞を逃したものの、キーファー・サザーランドが待望の主演男優賞を獲得し、合わせてドラマ部門の最優秀作品賞にも輝いた。
今回のハイライトは、「Dynasty」などで知られる名プロデューサー、故アーロン・スペリングを偲んで30年ぶりに揃った元祖「Charlie's Angeles」の3人、ファラ・フォーセット、ケイト・ジャクソン、ジャクリーン・スミス。大学時代の憧れだったジャクリーン・スミス(Houston生まれだ)も今や60歳。何とも複雑な心境であった。
9月になると各局の新シーズンと新シリーズが一斉に始まる。見ものはかつて「ER」、「Seinfeld」、「Friends」、「Frasier」、「Mad About You」などで栄華を誇ったものの、今では業界第4位まで凋落したNBCの動向だ。今シーズンは「Studio 60」(「Friends」のマシュー・ペリー)、「30 Rock」(「SNL」のティナ・フェイとアレック・ボールドウィン)、「Heroes」(「X-Men」タイプのアクション・アドベンチャー)、「Kidnapped」(ティモシー・ハットン)などの新番組で巻き返しを図る。司会のコナン・オブライエン(「Late Night Show」)が、授賞式の冒頭でミュージカル仕立てにして皮肉っていたが、競争は熾烈だ。


以下は2006年サマームービーの最後を飾る7本。今回は佳作揃いだが、とにかくエドワード・ノートンが魅せる「The Illusionist」が一押しだ。


1.「Talladega Nights: The Ballad of Ricky Bobby」 B+
(出演: ウィル・フェレル、ジョン・C・ライリー、ゲイリー・コール、サシャ・バロン・コーエン)

NASCARを舞台に、お馬鹿なウィル・フェレルが爆笑させてくれるスーパー・ナンセンス・コメディ。フェレル演じるリッキー・ボビーは、父親の影響で幼い頃から自動車レースを始めて、最近スターダムに乗ったばかりの自信過剰で嫌なやつ。そんなリッキーだが、F1出身のフランス人ドライバー(サシャ・バロン・コーエン)との決戦を前に、レース中の事故から来るトラウマのためにスピードが恐くてアクセルが踏めなくなってしまう。
フェレルは「SNL」や「Old School」の頃を思い出させるノリの良さで、全編を通して安心して笑える。リッキーのパートナーを演じるジョン・C・ライリー(「Chicago」)との相性も良い。ストーリーは同じNASCARの世界を扱った「Cars」に良く似ているが、本作は軽薄な大人向けにナンセンスに振っていて、その底の浅さがむしろ小気味よい。しかも意外にエンディングが泣かせるのだよ、これが。
(オフィシャルサイト: http://RickyBobby.com


2.「World Trade Center」  B
(出演: ニコラス・ケイジ、マイケル・ペーニャ、マリア・ベロ、マギー・ギレンホール、監督: オリバー・ストーン)

「United 93」に続いて9/11テロの悲劇が描かれる、オリバー・ストーン作品。サウスタワー崩壊後、志願して被害者の救出活動に従事していたNY港湾警察のマクローリン(「Weather Man」)のニコラス・ケイジ)とヒメノ(マイケル・ペーニャ)。2人は息つく暇もなく起こったノースタワーの倒壊によって、瓦礫の下に生き埋めにされる。
この作品、良くも悪くもまったくオリバー・ストーン臭さが感じられない。つまりアクがない一方で迫力も今一つで、懸命にサバイバルを図る2名の良心的な警官、その安否を気遣う家族、そして不眠不休で救出に当たる元海兵隊員とレスキュー部隊の活動が淡々と描かれる。動きが少ない作品なので多少中だるみするが、事実の重みにも助けられてエンディングは感動させる。内容的には2組の夫婦による究極のラブ・ストーリーと言っていいかもしれない。
(余談だが、何回か撮影用の集音マイクが画面の上部にはっきりと映っていた。これは非常に興覚めで、日本公開時にはトリミングされていることを祈るばかりだ。)
(オフィシャルサイト: http://WTCMovie.com


3.「Snakes on a Plane」 B+
(出演: サミュエル・L・ジャクソン、ジュリアナ・マーグリーズ、ネイサン・フィリップス、キーナン・トンプソン)

B級映画そのものの能天気なタイトルで、封切り前からティーンエイジャーの話題をさらったこの夏のスリーパー。サミュエル・L・ジャクソン扮するFBIエージェントが、ギャングによる殺人事件の目撃者(ネイサン・フィリップス)をハワイからロサンンゼルスに護送する。だが組織はそれを阻止するために、2人の乗る航空機にあらゆる種類の毒ヘビを密かに積み込む。
この無意味なストーリーは勿論忘れてよい。要は「エアポート'75」+「アナコンダ」なのだが、航空機内という閉鎖された空間を使ってのパニック映画というアイディアがよく利いている。ジャクソンとスチュワーデス役のジュリアナ・マーグリーズ(「ER」の頃に比べると随分老けた)が、大真面目にヘビ君たちと戦うほど笑えるのだが、この馬鹿馬鹿しさとCGを駆使したパニック映画としての面白さのバランスが絶妙で、監督(「Final Destination 2」、「Cellular」のデヴィッド・R・エリス)のセンスを感じさせる。堂々とR指定で製作した潔さも買え、観終わった後見事に何も残らない快作。
(オフィシャルサイト: http://www.SnakesOnAPlane.com


4.「The Descent」  B+
(出演: シャウナ・マクドナルド、ナタリー・メンドーサ、サスキア・マルダー、監督兼脚本:ニール・マーシャル)

これは真夏に観るには絶好の、英国製スーパー・アクション・ホラー。仲良しの英国人女性アスリート6人が、アパラチア山脈の洞窟で遭遇する、生き埋めの恐怖と奇怪な化け物との壮絶な戦いが活写される。
前半は閉所恐怖症にかかりそうなサスペンスが楽しめ、後半は血みどろのショッカーが展開するが、ポイントはハリウッド製ホラーと違って、ジェニファー・ラブ・ヒューイットのような頭が軽くて胸だけが妙に大きい美形が登場しないところ(ジェニファーは嫌いじゃないけどね)。まるで無名のシガニー・ウィーバーを6人見ているようで、これが画面に妙な現実感を与えている。果たして何人生き残るか、結末を予想するのも一興だ。  Enjoy the Ride!
(オフィシャルサイト: http://www.thedescentfilm.com


5.「The Illusionist」  A-
(出演: エドワード・ノートン、ポール・ジアマッティ、ジェシカ・ビール、ルーファス・シーウェル)

久しぶりにエド・ノートンの極上演技が堪能できる、インディ系のロマンティック・ミステリー・スリラー。舞台は1900年のウィーン。天才マジシャンのエイゼンヘイムは、そこでかつて身分の違いゆえに仲を引き裂かれた恋人ソフィ(「Stealth」のジェシカ・ビール)と、偶然の再会を果たす。だがソフィは、悪辣な公爵レオポルド(ルーファス・シーウェル)との政略結婚を運命付けられている上に、レオポルドはエイゼンヘイムの人気を嫉妬して彼の失脚を図る。
結末はミエミエながら、影像はひたすら美しく、ストーリーはウルトラロマンティック。そして圧巻は、眼光鋭く華麗なマジックを次々に繰り広げるノートンの達者なマジシャンぶりで、改めて彼の才能に脱帽する。心がなごむ必見の小品で、ノートンのオスカー・ノミネーションもあるのではないか。
(オフィシャルサイト: http://www.TheIllusionist.com


6.「Little Miss Sunshine」  B+
(出演: グレッグ・キニア、トニー・コレット、スティーブ・カレル、アビゲイル・ブレスリン、ポール・ダノ、アラン・アーキン)

本作もまたインディ系の、誰にも教えないで黙っていたいような、ちょっとエキセントリックで心暖まるコメディの小品。リチャード(ゲレッグ・キニア)とシェリル(トニー・コレット)の家庭は崩壊寸前。リチャードが講師をする「人生で成功するための9つの法則」はまったく売れず、アナーキーな父親はヤク中だ。シェリルの弟(スティーブ・カレル)はゲイで、意中の男に振られて自殺未遂を起こしたばかり。さらに息子(ポール・ダノ)は誰とも口をきかずに筆談しかしない変人。ところが娘のオリーブ(アビゲイル・ブレスリン)がロサンゼルスで開催されるビューティー・コンテストに出場することになり、オリーブ以外は全員渋々ながら、ニューメキシコからカリフォルニアまでのおんぼろバスの旅を始める。
バディームービーの変型なのだが、この映画がひとつ抜きん出ているのは、欠点だらけのキャラクター一人一人がきちんと描き分けられていること(特に「The Office」)のスティーブ・カレルが良い)。そして「家族の絆」を描きながらもまったくお涙頂戴に走らず、むしろキャラクターを突き放している点だ。しかもエンディングはちっともハッピーでないのに爽快な気分にさせられ、涙さえ誘われる。これはちょっと凄いことだ。
(オフィシャルサイト: http://foxsearchlight.com


7.「Invincible」  B+
(出演: マーク・ウォルバーグ、グレッグ・キニア、エリザベス・バンクス、カーク・アセヴェド)

本コラムでも折に触れて紹介して来たが、実話ベースのアメフト映画は、「Rudy」、「Brian's Song」、「Remember the Titans」、「Friday Night Lights」、「Coach Carter」など佳作が多く、今では1つのジャンルとして確立している。本作もそのリストに加えるべき1本で、30歳でバーテンダーからフィラデルフィア・イーグルスのワイド・レシ−バーとなったヴィンス・パペールの物語だ。
パペール(「Four Brothers」のマーク・ウォルバーグ)は、不況に苦しむフィラデルフィアの補助教師だったが、職を失いやがて妻にも逃げられる。そんなおり、イーグルスの新監督ヴァーミール(グレッグ・キニア)は、弱小チームに刺激を与えるために一般市民による入団テストを仕掛ける。友人の経営するバーでバーテンダーをしていたパペールは、ダメ元でテストを受けるが・・・。
ストーリーは使い古されており脚本も凡庸だが、登場人物の一人一人は血が通っていて魅力的だし、パペールが働くバーも何となく「Cheers」の雰囲気があって嬉しい。ウォルバーグはパペールのキャラクターに上手くハマっているが、それは彼が"ブルーカラー俳優"だからで、フィラデルフィアの暗いジメジメした路地を歩くシーンとか、友人との素人フットボールの場面とかで映える。万年ルーザーのサクセスストーリーを素直に喜べる一本。 
(オフィシャルサイト: http://invincible.movies.com


「The Illusionist」に続いて、今度は人気マジシャン同士の宿命の対決を描く、クリストファー・ノーラン(「Memento」、「Batman Returns」)の新作「The Prestige」が、この秋の公開を控えている。主演はヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールで、大いに期待したい。