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*** 日米の巨匠、豪華版DVDで激突! ***
嬉しいことに、日米を代表する名監督の代表作が、相次いで豪華版DVDで発売された。ジョン・フォードの「The Searchers」(「捜索者」、1956年)と、黒澤明の「Seven Samurai」(「七人の侍」、1954年)だ。前者はワーナーブラザースから公開50周年記念として、ピクチャーカードと縮小版ポスターのブックレットが付いた2枚組、後者は「The Criterion Collection」より、やはり写真集と評論家のエッセイが付いた3枚組で、パッケージもカッコいい。
「The Searchers」は、コマンチに弟夫婦を惨殺され、さらにその娘を誘拐されたカウボーイ(ジョン・ウェイン)が、復讐と姪の奪回に費やす執念の5年間が描かれた傑作中の傑作。妥協を許さない厳しさの中に優しさを垣間見せるジョン・ウェインの演技と、圧倒的に美しいテキサスの自然描写が圧巻だ。
「七人の侍」は今更説明する必要もないだろうが、見るたびに感動が大きくなる稀有な名作。勘兵衛(志村喬)、菊千代(三船敏郎)など、七人のキャラクターを見事に描き分けた描写力、クライマックスの野武士との雨中の死闘など、名場面の数々が鮮やかに甦る。最近発見されたマスターテープから起こしたという画面は大変美しく、英語字幕もすべてやり直してある。
この2本は必見のみならず、コレクションとしてもお薦めだ。
以下はハリウッドムービー秋の陣の8本。今回はマーティン・スコセッシ久々の快作、「The Departed」が一押しだ。
1. 「Crank」 C+
(出演: ジェイソン・ステイサム、エイミー・スマート、ドワイト・ヨアカム)
「The Transporter」のジェイソン・ステイサム主演の、オフビートでワイルドなスーパーアクションコメディ。ヒットマンのチェブ(ステイサム)は、同業者からの恨みを買って"Beijing cocktail"なる猛毒を盛られる。この猛毒は体内のアドレナリン値が下がると致命的となるので、チェブは車を高速で走らせ、アルコールを飲み、ヤクをやり、公衆の面前で恋人とセックスをしながら、解毒剤と復讐を求めて犯人を追い続ける。何とも凄いストーリーである。ステイサムはアクションが切れるしコメディセンスもあり、本作にフィットしてはいるのだが、脚本の荒っぽさとMTVタイプのカメラワークにはちょっとついて行けない。もう少しディテールにこだわってくれないと、映画としては評価できない。とは言え、若い観客には馬鹿受けであったことは付け加えておこう。
(オフィシャルサイト: http://www.crankfilm.com)
2. 「Hollywoodland」 B+
(出演: エイドリアン・ブロディ、ダイアン・レイン、ベン・アフレック、ボブ・ホスキンス、ロビン・タネイ)
TVで初代スーパーマンを演じたジョージ・リーブスは、1959年に自宅で不可解な自殺を遂げた。本作は、そのリーブスの死の真相を追究するハードボイルドタッチの人間ドラマ。しがないP.I.(私立探偵)のルイス(「The Pianist」のエイドリアン・ブロディ)は、リーブスの母親を口説いて小遣い稼ぎに息子の死を調べ始める。だがやがてルイスは、欲に取り憑かれた人間たちの深い闇の奥に取りこまれて行く。甦る50年代の雰囲気に溶け込んで、ストリートスマートなP.I.を演じるブロディがクールだ。更にリーブス/クラーク・ケント/スーパーマンに意外にマッチしたベン・アフレック、MGMの幹部役のボブ・ホスキンス(「Unleashed」)、その妖艶な妻に扮するダイアン・レイン、と脇役も際立っている。ダークでスローな作品だが、スーパーマンの死という題材の面白さとキャストの演技力のおかげで、最後まで飽きさせない。
(オフィシャルサイト: http://www.hollywoodlandmovie.com)
3. 「The Black Dahlia」 C+
(出演: ジョッシュ・ハートネット、アーロン・エッカート、スカーレット・ジョハンソン、ミア・カーシュナー、ヒラリー・スワンク、監督:ブライアン・デ・パルマ)
クライムノベルの大御所ジェイムズ・エルロイの原作を、「The Untouchables」のブライアン・デ・パルマが描くフィルム・ノワール。舞台は40年代後半のロサンゼルス。ロス市警のバッキー(「Lucky Number Slevin」のジョッシュ・ハートネット)は、パートナーで親友のリー(「Thank You for Smoking」のアーロン・エッカート)とともに、新進女優の猟奇的殺人事件を捜査する。だがバッキーはリーの不審な行動を疑い、事件に絡む富豪の娘(「Million Dollar Baby」のヒラリー・スワンク)と知り合ううちに、やがて事件の裏に潜む狂気の世界に巻き込まれて行く。「Mission to Mars」、「Femme Fatale」と最近ロクな作品のないデ・パルマに、主演がハートネットでははなから期待はしていなかったが、やはりテンションが低く映画的な魅力に乏しい。エルロイの壮大な原作を強引に2時間にまとめた脚本はメリハリがなく、苦痛を伴いながら3時間くらいに感じられる。ミステリーファン以外は敬遠した方が良いだろう。
(オフィシャルサイト: http://www.theblackdahliamovie.com)
4. 「Half Nelson」 B
(出演: ライアン・ゴスリング、シャリーカ・エップス、アンソニー・マッキー)
今あまたの評論家たちが、ライアン・ゴスリング(「The Notebook」)の演技を絶賛しているインディ系作品。ゴスリングが演じるのは、理想を掲げる歴史教師で女子バスケットボールのコーチでもあるダン。ダンはある晩に、校内でヤクをやっているところを教え子のドレイ(シャリーカ・エップス)に見つかるのだが、それ以来2人は不思議な連帯感と友情で結ばれる。その内にドレイがヤクの商売に巻き込まれていくのだが…。
確かにゴスリングの演技はリアリティーがあり、先の展開の読めないストーリーとあいまって最後まで飽きさせない。ただ映画的には感動はさほど感じられないし、優れているとも思えず、なぜ作品までもがこうも高い評価を与えられているのか理解に苦しむ。玄人好みの作品で、これを誉めると映画に詳しいと思われること請け合いだ。
(オフィシャルサイト: http://www.halfnelsonthefilm.com)
5. 「All the King's Men」 C
(出演: ショーン・ペン、ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレット、ジェイムズ・ガンドルフィーニ、パトリシア・クラークソン、アンソニー・ホプキンス)
アカデミー賞3部門に輝く1949年の古典を、ショーン・ペンを始めとする綺麗どころのキャストで再現し損ない、公開が1年近く延びた失敗作。ルイジアナの行商人ウィリー・スタークは、率直な物言いとカリスマで貧民層からの圧倒的な支持を受けて州知事に当選するが、やがて政治の汚さにどっぷりと漬かって破滅への道を走り始める。ブロデリック・クロフォードがスタークを演じたオリジナルは、失敗から政治のメカニズムを学び、成功から汚職へと手を汚して行く男のはかなさがダイナミックに描かれていた。しかし今回のリメイクは、ショーン・ペンのカリスマ的なスピーチには圧倒されるものの、後半になるとストーリーががらりと変わってしまう。なぜかスタークの側近であるジャック(「The Closer」のジュード・ロウ)、その幼なじみのアン(ケイト・ウィンスレット)、ジャックの父親代わりの老裁判官アーウィン(アンソニー・ホプキンス)を巡る、陳腐な人間ドラマになって行くのだ。これでは名優ペンも振り上げた手が下ろせないではないか。公開を遅らせて再編集した効果もなく、アカデミー賞狙いという謳い文句も空しく響く。読者には、これを機会にオリジナルの方を観ることを薦める。
(オフィシャルサイト: http://www.AlltheKingsMen.com)
6. 「The Guardian」 B+
(出演: ケビン・コスナー、アシュトン・カッチャー、メリッサ・サージミラー、セーラ・ウォード)
春先に公開された「Annapolis」同様、「An Officer and a Gentleman」('82年)と基本プロットが酷似したアクションドラマ。沿岸警備隊海難救助チームの伝説的ヒーロー、ランドール(「Upside of Anger」のケビン・コスナー)は、救援活動中にパートナーを失い自らも重傷を負う。ランドールはリハビリを兼ねて沿岸警備隊のインストラクターとなるが、そこで新人で天才スイマーのフィッシュ(アシュトン・カッチャー)と対立する。「That's 70th Show」、「Punk'd」のカッチャーは、コメディアン兼俳優兼プロデューサーとしてかなりのやり手だが、日本ではデミー・ムーアの年下の夫としか知られていないのではないか。それはともかく、本作は娯楽性に振っているので、人間ドラマとしての感動は脚本家の意図ほどではない。しかし沿岸警備隊海難救援チームはこれまであまり扱われたことがないので、ヒーローとして意外に新鮮で(昨年巨大なハリケーン・カタリナがルイジアナを襲った際には、その存在を世間に知らしめた)、コスナーとカッチャーの相性も良い(コスナーは最近渋みが出てきつつある)。デートムービーとしては合格点だ。
(オフィシャルサイト: http://guardianmovie.com)
7. 「Flyboys」 B+
(出演: ジェームズ・フランコ、マーティン・ヘンダーソン、ジャン・レノ、ジェニファー・デッカー)
第1次世界大戦の実話に基づく、ノスタルジックな戦争青春映画。テキサスのカウボーイ、ローリングス(「Annapolis」のジェームズ・フランコ)は、フランスで編成された飛行部隊に様々な事情から参加したアメリカ人の1人。ローリングスはそこで自分にパイロットとしての資質を見出し、仲間との厚い友情で結ばれ、恋に落ち、戦争を通してタフに成長して行く。プライドとヒロイズムに溢れる当時のパイロットたちの姿をクールに体現するフランコは適役だ。この作品、クラシックなプロペラ機同士の空中戦が見所の1つなのだが、同じCGでも「Stealth」のように動きが速すぎてついて行けない心配もなく、おおらかなドッグファイトが楽しめる。ジョン・ウェインの西部劇が好きな人と、フランコのファンには自信を持ってお薦めできるのだが、あまりいないよね。
(オフィシャルサイト: http://www.flyboysthemovie.com)
8. 「The Departed」 A-
(出演: レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソン、マーク・ウォルバーグ、マーティン・シーン、監督:マーティン・スコセッシ)
これは久しぶりにマーティン・スコセッシ・ワールドが堪能できる、犯罪ドラマの快作だ。サリバン(マット・デイモン)は幼い頃に警官だった父親を亡くしたあと、実はボストン・マフィアのカポであるフランク・コステロ(ジャック・ニコルソン)が父親代わりだった。一方ビリー(レオナルド・ディカプリオ)は、父親がマフィアの下っ端だった天涯孤独の若者。2人はともに州警察の刑事となるが、サリバンはフランクのスパイとなり、ビリーは囮捜査官としてフランクの腹心となる。ストーリーの下敷きとなった香港映画「Infernal Affairs」は観ていないが、脚本は複雑な人の出入りが上手く整理されているし、デイモンとディカプリオは見事にこの秀逸な状況設定にハマった。しかもこれに期待通りニコルソンの快演が加わり、アレック・ボールドウィンもチョイ役ながらいい味を出していて、作品にぐっと厚みが増した。スコセッシは「Gangs of New York」、「The Aviator」と空回り気味の大作が続いたが、本作はぐっとくだけた感じで本来の持ち味である血みどろの暴力とユーモアが縦横に展開され、緊迫感と笑いが最後まで途絶えない2時間30分だ。今回こそ待望のオスカーを手にするのではないか。必見の一作。
(オフィシャルサイト: http://www.thedeparted.com)
次回は一斉に始まった秋の新番組、新シーズンを一気に紹介する予定(あくまで予定だけどね)。
ではまた。 |