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Mr.DOBASHI no テキサス映画通信

”Houston, we have a problem!(85)

Dobashi Shuichiro 土橋 秀一郎


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Astrosのゲームのない日は朝一番で映画館へ行き、”Borders”か”Best Buy”でDVDを買って帰って来る、というのが週末の定番コースになっている。積み上がったDVDを見て随分たまったものだと思い、暇つぶしに数えてみたら、何と743枚!これは予想の2倍近い数字であった。
コレクターになるつもりはないが、レンタルが嫌いな性分なので高くつく。それでも日本で見られなかった旧作や、遥か昔に深夜テレビの不完全版で見た名作が手軽に手に入るので、幸せなことではある。最近の購入例を挙げると、「Petulia」(’68 「華やかな情事」)、「Captains Courageous」(’37 「我は海の子」)、「Lilies of the Field」(’63 「野のユリ」)、「Lost Horizon」(’37 「失われた地平線」)という具合で、宝の山なのである。もっとも「Orgazmo; Unrated」(「South Park」のトレイ・パーカー監督・脚本・主演)のようなお下劣な作品も入っているのだが。

以下は2007年度作品9本のレビュー。今回は佳作が多いぞ。「Gladiator」や「Sin City」が好きな人には「300」がお薦めだ。




1.「Hannibal Rising」 B+
(出演: ギャスパー・ウリエル、コン・リー、ドミニク・ウエスト、原作兼脚本: トーマス・ハリス)

恥ずかしげもなく”ハニバル・レクター”シリーズを書き続けるトーマス・ハリスだが、ハニバルの少年〜青年期を描く今回の映画化は悪くない。第2次世界大戦末期のリトアニア。戦争で両親を失い孤児となったハニバルは、幼い妹、略奪者達と共に、極寒と飢えの極限状況に取り残される。
ストーリーは、妹を奪った略奪者たちへの復讐と、美貌の叔母ムラサキ(「Miami Vice」コン・リーがセクシー!)との愛を通して、青年に成長したハニバル(フランス出身のギャスパー・ウリエル)の自己発見の旅が描かれる。猟奇趣味のショッカーに陥らせずに、いかにハニバル・レクターというモンスターが生み出されたのかそのプロセスがスリリングに展開され、脚本も手堅くまとまっている(ただ長身痩躯のギャスパー・ウリエルが、成長してアンソニー・ホプキンスになるというのは愛敬だが)。プロデューサーは低予算で柳の下の四匹目を狙ったのだろうが、現場の志は高かったようで、意外と地に足のついた作品に仕上がっている。
(オフィシャルサイト: http://www.hannibalrising.com


2.「Music and Lyrics」 B+
(出演: ヒュー・グラント、ドリュー・バリモア、ブラッド・ギャレット、ヘイリー・ベネット)

タイトルは平凡だが、主演2人にケミストリーが働いたロマコメの佳作。アレックス・フレッチャー(ヒュー・グラント)は、80年代に全盛を誇ったポップデュオ”Pop!”の片割れだが、今は落ちぶれている(要するに”Wham!”のジョージ・マイケルでない方がモデル)。アレックスは超人気ポップシンガーのコーラ(ヘイリー・ベネット、ブリトニー・スピアーズがモデル)が彼のファンだったことから、彼女の新曲を作るチャンスを得る。だが曲は作れるが作詞が下手なアレックスは、彼のアパートの世話をしているソフィー(ドリュー・バリモア)の才能に目をつける。
冒頭いきなりグラントとスコット・ポーターが歌って踊る”Pop!”のミュージックビデオが、いかにもという感じでおかしい。脚本自体にロマコメとしての新味はないのだが、結局このアレックスの元アイドルという状況設定とバリモアのキュートな魅力のおかげで、最後まで飽きさせない。以前このコラムでも書いたと思うが、バリモアはアダム・サンドラーと共演した「The Wedding Singer」を境に、キュートで魅力的なコメディエンヌに変身した(現在のロマコメを支えているのは、バリモア、リース・ウィザースプーン、ケイト・ハドソンの3人だ)。とりあえず、今年最初のお薦め。
(オフィシャルサイト: http://www.musicandlyrics.com


3.「Breach」 B
(出演: クリス・クーパー、ライアン・フィリップ、ローラ・リニー、デニス・ヘイスバート)

2001年に旧ソヴィエトのスパイとして逮捕されたFBI分析官のロバート・ハンセン。――本作はこの米国史上最大の汚点となったエスピオナージュのルーズなドラマ化。既にハンセン(「Adaptation」のクリス・クーパー)の正体を掴んでいたFBIは、確固たる証拠を集めるために若手工作員オニール(「Flags of Our Fathers」のライアン・フィリップ)を彼のアシスタントとして着任させる。オニールはやがて心神深く高度に自己抑制されたハンセンの裏に隠された素顔に迫って行くが…
クリス・クーパーは断然存在感があり、禁欲的なFBI分析官を怪演するが、ライアン・フィリップはハンセンを出し抜く役柄としてはさほど頭が良く見えない。全編緊迫感は維持するが、地味なストーリーと事前に分かっている結末は本作には不利に働いていて、残念ながら一般受けする作品にはなり得なかった。
(オフィシャルサイト: http://www.breachmovie.net/


4.「The Astronaut Farmer」 B+
(出演: ビリー・ボブ・ソーントン、バージニア・マドセン、ブルース・ダーン、ブルース・ウィリス、J・K・シモンズ)

これは究極のアメリカン・ドリームを描く、痛快なファンタジー。かつて志半ばで宇宙飛行士になる夢を諦めたチャールズ(ビリー・ボブ・ソーントン)は、テキサスで農家をやりながら自力でロケットを開発し、宇宙への旅を目指している。ところがNASAはチャールズの飛行計画を(当然のことながら)却下した上に、チャールズとその家族も多額の借金を抱えて身動きが取れなくなる。
この人を喰ったような脚本は、人を喰ったような演技を得意とするビリー・ボブ・ソーントンに見事にはまっていて、独特の味わいのある作品に仕上がった。また、チャールズの妻を演じるバージニア・マドセン(「Sideways」)は文句なく魅力的、チョイ役のブルース・ダーンとブルース・ウィリスも良い味を出している(ウィリスは「Armageddon」で宇宙は経験済み)。エンドクレジットにかぶさるのは、もちろんエルトン・ジョンの「Rocketman」で、フィールグッド・ムービーのお手本のような作品だ。
(オフィシャルサイト: http://www.theastronautfarmermovie.com


5.「Zodiac」  B+
(出演: ジェイク・ギレンホール、ロバート・ダウニー・Jr、マーク・ラファーロ、アンソニー・エドワーズ、ブライアン・コックス、監督: デヴィッド・フィンチャー)

「Seven」、「Fight Club」、「Panic Room」のデヴィッド・フィンチャーが、’69年から’90年代前半まで殺人を続けた実在のシリアルキラー”Zodiac”の実像に迫る、スリリングなミステリードラマ。”Zodiac”から犯行声明文を受け取ったサンフランシスコ・クロニクル紙のアル中敏腕記者エイヴリー(ロバート・ダウニー・Jr.)とイラストレーターのグレイスミス(「Brokeback Mountain」のジェイク・ギレンホール)は、サンフランシスコ警察の刑事トッシ(マーク・ラファーロ)らと平行して独自に調査を始める。
本作は実際の捜査資料をベースに次第に事件に取り憑かれて行く3人を中心に展開し、捜査の進展と行き詰まりがこと細かに積み上げられて行くドキュメンタリー・タッチで描かれる。フィンチャーが4時間以上になったオリジナルを2時間36分まで切り詰めた力作で、サスペンスは最後まで持続して飽きさせない。ただし迷宮入り事件なので結末はすっきりするはずもなく、「Seven」を期待すると裏切られるので要注意だ。
(オフィシャルサイト: http://www.zodiacmovie.com/


6.「300」  A-
(出演: ジェラルド・バトラー、レナ・ヘディ、ドミニク・ウエスト、ロドリゴ・サントロ、原作:フランク・ミラー)

公開3日間で7千万ドルを稼ぎ出し、3月公開作品の歴代新記録を樹立したウルトラバイオレンス・歴史フィクションドラマ。−紀元前480年。戦闘マシンとして育てられたスパルタ人のキング・レオニダス(「Phantom of the Opera」のジェラルド・バトラー)は、300名のエリート戦士を率いて1万人規模の兵を擁するペルシア帝国のクヤルクヤス(ロドリゴ・サントロ)に敢然と戦いを挑む。当初は圧倒的な強さで死体の山を築く”300”。だが味方の裏切りにあい、さらに消耗戦を強いられ、次第に不利な戦況に追い詰められて行く。
原作は「Sin City」のフランク・ミラー。史実とフィクションが巧みに融合された、「Sin City」同様にCG加工された劇画タッチのバイオレンスドラマだ。魅力的なキャラクター群、スタイリッシュな殺陣、エロティックな映像、それに「Gladiator」のハートと、エンターテインメントの要素をすべて併せ持った入魂の1作で、日本でも(少なくとも男性陣には)圧倒的な支持を受けるはずだ。
(オフィシャルサイト: http://www.300themovie.com


7.「Premonition」  B
(出演: サンドラ・ブロック、ジュリアン・マクマホン、ケイト・ネリガン)

依然として興行成績が伸びないサンドラ・ブロック主演最新作。優しい夫ジム(「Nip Tuck」のジュリアン・マクマホン)、2人のかわいい娘、快適な家。幸せな生活を送っていたはずのリンダ(サンドラ・ブロック)に、ある日ジムが事故死したとの連絡が入る。絶望するリンダだったが、翌日目を覚ますとジムは生きている。だが次の日ジムはやはり死んでいる。この状況が続くに及んで、リンダは懸命に謎を解こうと絶望的な努力を続けるが・・・
サイコ・スリラー的な売りをしているが、基本的に本作は美しいラブストーリーであり、結末には拍子抜けする人が多いのではないか。ブロックは良い女優になったが、逆に若い頃のキュートな魅力をすっかり失ってしまった。元々美人ではないので、この先主演を張り続けるのはしんどいだろう。
(オフィシャルサイト: http://www.sony.com/Premonition


8.「Shooter」  B+
(出演: マーク・ウォルバーグ、マイケル・ペーニャ、ダニー・グローヴァー、ケイト・マーラ、ネッド・ビーティ)

スティーブン・ハンターの”ボブ・リー・スワガー/アール・スワガー”シリーズは、個人的にも大好きな冒険小説の傑作だが、本作はその中でも最高作の誉れ高い”Point of Impact”(邦題「極大射程」)の映画化。海兵隊史上最高のスナイパーであったボブ・リー・スワガー(「The Departed」のマーク・ウォルバーグ)は、戦友の死をきっかけに引退し、今は山奥に引きこもっている。ある日ボブ・リーは、軍から大統領暗殺阻止のために協力を求められるが、何者かに嵌められてエチオピア大司教暗殺の犯人に仕立て上げられてしまう。
原作の持ち味である緻密な武器描写や迫力の戦闘シーンはスクリーンに写しきれていないが、ボブ・リーが父親アールから徹底的に教わったサバイバル技術で生き延びるシークエンスなどは悪くないし、テンポも軽快だ。マーク・ウォルバーグはボブ・リーのイメージからは若すぎるが、アクションは切れるし何より旬の役者としての魅力がある。アクション映画としては十分合格点をつけられ、ぜひシリーズ化を期待したい。
(オフィシャルサイト: http://www.ShooterMovie.com


9.「Reign Over Me」  B
(出演: アダム・サンドラー、ドン・チードル、リヴ・タイラー、ジェイダ・ピンケット・スミス)

アダム・サンドラーが、9/11で家族を失った孤独な男を演じる悲しいドラマ。マンハッタンの歯科医であるアラン(「Hotel Rwanda」のドン・チードル)は、久しぶりに大学時代のルームメートだったチャーリー(サンドラー)に出会う。何年間も自分の家族の記憶を閉め出して惨めに生きているチャーリーの姿を見て、アランは何とか手を差し伸べようとするのだが・・・
この映画、良いシーンは幾つもあるし、ドン・チードルの存在感も忘れ難い。だが脚本上はコメディーであっても題材がセンシティブなだけにサンドラーが演じるチャーリーを笑おうにも笑えず、かと言って泣けるほど感動的でもない。結局魅力的ではあるが難しい題材を、きちんと仕上げられなかったということか。惜しい。
(オフィシャルサイト: http://www.sony.com/ReignOverMe


次回は4月6日公開、タランティーノ+ロドリゲスが放つウルトラB級映画2本立て、「Grindhouse」を含むレビューをお届けする予定。
来週には待ちに待ったMLBも始まる。松坂でも井川でもなく、野球は今年もAstrosだ。