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Mr.DOBASHI no テキサス映画通信

”Houston, we have a problem!(86)

Dobashi Shuichiro 土橋 秀一郎


Backnumber

Houstonで迎えるサマームービー・シーズンもこれが9回目かと半分嘆いていたら、高校時代からの親友がゴールデンウィークを利用して訪ねてきた。昔話をしていると高校生に戻ったような錯覚に陥ったが、考えてみると、映画を見ているときも野球を見ているときも、精神的には子供の頃の状態に戻っている。多分それが心地よいから飽きもせずに繰り返すのだと思う。もっともこんなことを考えること自体が、歳を取った証拠なのだが・・・

***「On the Lot」***
これは5月22日からFOXで始まるTVシリーズで、いわば「American Idol」の映画監督版。スピルバーグが製作に係わっていて、全米から集まる映画監督の卵たちが短編で競い合い、インターネットの投票で優勝者が決まる。ちょうど「24」、「Heroes」、「Lost」の各シーズンフィナーレが終わるところで、タイミング的にも申し分ない。ちょっと楽しみなリアリティーショーなので、今後もこのコラムでフォローして行く予定。

***「The Shield」***
シーズン5をDVDで見終わった。本シーズンはオスカーウィナーとなったフォレスト・ウィテカーが、主人公の悪徳刑事ヴィク(マイケル・チクリス)逮捕に執念を燃やす内部調査班の刑事を演じるのだが、この2人の対決が凄い。過去最高の緊張感であった。

***「Star Trek Fan Collective: Borg」***
「Star Trek」史上最強の敵、”Borg”に係わるエピソードを集約したDVDが発売された。時代順に並べられた全13エピソードの内訳は、「Enterprise」から1本、「The Next Generation」と「Voyager」から各6本で、全体が1つの壮大な物語になっていて、このシリーズの偉大さを再認識させられる。中でもピッカード艦長がBorgに捕らえられて同化させられるエピソード、”The Best of Both Worlds”は、全シリーズ中でも白眉の出来栄えで、何回見ても感動する。

-ちょっと古くて渋めの映画探偵団 第9回-

「Emperor of the North」(1973) A
(出演:リー・マービン、アーネスト・ボーグナイン、キース・キャラダイン、監督:ロバート・アルドリッチ)

久しぶりの「ちょっと古くて・・・」である。20年以上観たいと思っていたこの幻の傑作が、何と”Borders”の店頭に平積みされているのを見て、思わず唸ってしまった。これが期待にたがわぬ出来栄えで、「Attack!」、「The Dirty Dozen」の硬派監督ロバート・アルドリッチ入魂の一作なのである。
舞台は大不況が続く30年代。仕事にあぶれた浮浪者たちは、山岳鉄道にタダ乗りしながら町から町を渡り歩くしかなかった。しかし無賃乗車を絶対に認めず、そのためには殺人さえ辞さない鬼のような車掌ジャック(アーネスト・ボーグナイン)が、彼らの前に立ちはだかる。そしてジャックに完全と挑戦するのが、伝説的なタダ乗りの名人ナンバーワン(リー・マービン)。
この作品、銃撃もマーシャルアーツもない。女性すら登場しない。ただ2人の男がプライドを賭けて、知恵と度胸と殴り合いだけで勝負する、凄まじいアクション映画だ(よくこんな話を映画化したものだ)。「Cat Ballou」、「Marty」でそれぞれアカデミー主演男優賞に輝くマービンとボーグナインの演じるキャラクター2人は忘れがたく、これこそまさに”ちょっと古くて渋めの映画”なのである。

以下はぶっ飛ぶ面白さの「Grindhouse」と、新記録を塗り替えた「Spider-Man 3」を含む、8本のレビュー。



1.「The Lookout」 B+
(出演:ジョセフ・ゴードン・レヴィット、ジェフ・ダニエルズ、マシュー・グード、アイラ・フィッシャー)

これは拾い物だった渋い犯罪スリラーの佳作。クリス・プラット(「3rd Rock from the Sun」のジョセフ・ゴードン・レヴィット)は高校時代アイスホッケーの花形プレーヤーだったが、無謀な運転で同乗していた3人の友人を殺してしまい、自らも障害者の身となった。今は地方銀行の清掃人をしながら、盲目の友人ルイス(ジェフ・ダニエルズ)と希望の無い共同生活を送っている。そんなクリスに、銀行強盗を企むチンピラ(マシュー・グード)が言葉巧みに近づいてくる。
心の中で世間に対する復讐の念が膨らんでくるクリスを熱演するレヴィットと、心優しいルイスを好演するダニエルズに加えて、これが監督デビューとなるスコット・フランク(「Out of Sight」の脚本を担当)の脚本と演出は、全編を通して緊迫感が持続する。万人向きではないが、ダークなクライムノベルが好きな人にはお薦めの一本。
(オフィシャルサイト:http://www.thelookout-movie.com)


2.「Grindhouse」 A
(出演:カート・ラッセル、ローズ・マッゴーワン、フレディ・ロドリゲス、ゾーイ・ベル、ブルース・ウィリス、マイケル・ビーン、マーリー・シェルトン、監督&脚本:ロバート・ロドリゲス&クエンティン・タランティーノ)

ポン友タランティーノとロドリゲスが、70年代の”Grindhouse”(B級アクションムービー2本立て)を見事にスクリーンに甦らせた、スーパー・エンターテインメント。
ロドリゲスの「Planet Terror」は、田舎町を乗っ取ったゾンビ軍団と戦うゴーゴー・ダンサー(ローズ・マッゴーワン)とその恋人の凄腕ガンマン(フレディ・ロドリゲス)の物語。ブルース・ウィリス、マイケル・ビーンをゲストに迎え、破天荒でセクシーなバイオレンス・アクションが所狭しと展開する。
一方タランティーノの「Death Proof」では、カート・ラッセル演じる”スタントマン・マイク”が次々に口説いた女をいたぶるのだが、逆切れしたカーキチの女たちの復讐を受ける羽目に陥る。前半は多少かったるいが、実名で登場する女性スタントカー・ドライバーのゾーイ・ベルが魅せる。
本編もさることながら、お楽しみはその構成。楽しみをスポイルするので詳しくは書かないが、フェイクの予告編をはじめ凝りに凝った仕掛けが盛りだくさんでまったく飽きさせず、感動すら覚える。学生時代に通い詰めた洋画の2番館・3番館の小便臭い雰囲気に通じるものがあり、40歳以上の映画好きなおっさんは必見。DVDは勿論、悪趣味なポスターも是非揃えておきたい。
(オフィシャルサイト:http://www.grindhousemovie.net)


3.「Perfect Stranger」 C+
(出演:ハリー・ベリー、ブルース・ウィリス、ジョバンニ・リビシ、ニッキー・エイコックス)

ハリー・ベリーとブルース・ウィリス共演の、セクシーでもスリリングでもないセクシースリラー。ベリーが扮するのはNYのタブロイド新聞社に勤める辣腕調査員ロウェナ。ロウェナはある日幼なじみのグレース(ニッキー・エイコックス)と久しぶりに会い、彼女が実業界の大物ハリソン・ヒル(ウィリス)と付き合っていることを知る。そのグレースが殺されるに及び、ロウェナはヒルに接触する。
ストーリーは「Basic Instinct」の性別を入れ替えただけ。これにロウェナを助けるコンピューターおたくのマイルズ(「Friends」のジョバンニ・リビシ)が加わるのだが、サスペンスは効かずベリーは奇麗なだけで艶が無い。さらに問題は結末で、これは推理小説でも禁じ手のひとつで今時使っても馬鹿馬鹿しいだけ。ベリーはオスカー受賞後生彩がなく、しゃれたロマコメあたりで突破口を開かないとジリ貧になりそう。その点ウィリスには困ったときの必殺技「Die Hard」が健在で、シリーズ第4弾「Live Free or Die Hard」が7月に公開予定だ。
(オフィシャルサイト:http://www.sony.com/PerfectStranger)


4.「Fracture」 A-
(出演:アンソニー・ホプキンス、ライアン・ゴスリング、デヴィッド・ストラザーン、エンベス・デイヴィッツ、ビリー・バーク)

ライジング・スターのライアン・ゴスリングがアンソニー・ホプキンスと共演する、魅惑の法廷スリラー。高名な航空エンジニアのクロフォード(ホプキンス)は、浮気をした妻を自宅で射って昏睡状態に陥らせ、即座に逮捕される。クロフォードを起訴するのは有罪率トップを誇る若手検事補ビーチャム(ゴスリング)だったが、完全犯罪を目論むクロフォードは、周到に自らの弁護をしてビーチャムを翻弄する。
ひょうひょうと裁判を乗り切っていくホプキンスの怪演は小気味好く、ハニバル・レクターとはまた違った天才的犯罪者の魅力を見せてくれる。一方自信過剰の野心家を演じるゴスリングも一歩も引かず、数年前のエドワード・ノートンのような切れがある(ゴスリングについては、今年オスカーノミネーションを受けた「Half Nelson」より、「The Believer」と「Notebook」を薦める)。ストーリーも消えた凶器のトリックとエンディングのツイストは大変スマートで(法的に現実性があるかどうかは異議ありだが)、全編スリリングで贅沢感に溢れている。
(オフィシャルサイト:http://www.FRACTUREMOVIE.com)


5.「Hoax」 B
(出演:リチャード・ギア、アルフレッド・モリナ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ホープ・デイビス、スタンリー・トゥッチ)

実在の詐欺師で作家となった、クリフォード・アービングの自伝的同名小説の映画化。作品が売れずに生活に困り始めたクリフォード(リチャード・ギア)は、とっさの思いつきで出版社相手にハワード・ヒューズのオフィシャルな自伝を執筆中だとぶち上げる。60年代当時、ハワード・ヒューズと言えば謎に包まれた大金持ちで、メディアは騒然となる。
次第にその詐欺師としての才能が開花して行くクリフォードを演じるギアは上手い。しかしこのキャラクターは所詮ただの嫌なやつで感情移入しづらく、ストーリーが進むにつれて映画的な面白みが失せていく。評論家達の評価はすこぶる高いが楽しめず、むしろビリー・ボブ・ソーントンあたりに嫌なやつだが憎めない的なキャラで演じさせたら受けたと思う。
(オフィシャルサイト:http://www.thehoaxmovie.net)


6.「Next」 B
(出演:ニコラス・ケイジ、ジュリアン・ムーア、ジェシカ・ビール)

またまたフィリップ・K・ディック原作(”The Golden Man”)のSci-fiアクションの登場。ラスベガスの二流マジシャンであるクリス・ジョンソン(ニコラス・ケイジ)は、子供の頃から自分の未来を2分間だけ予知する事ができる。クリスのこの特殊能力に目を付けたFBIエージェント、フェリス(ジュリアン・ムーア)は、ロサンゼルスで核爆発を起こそうと企むテロリストの追跡に、クリスを利用しようとする。
「24」のSF版というか「Memento」の逆バージョンというか、とにかく軽いのだが一応最後まで飽きさせない。だが見終わるとストーリーは破綻しているし、豪華キャストの割には特撮がショボイ。むしろサイドストーリーを成す、クリスが出会いを夢見てきた理想の女性(今が旬のジェシカ・ビール)とのラブストーリーの方が、ほのぼのとして心地よい。B級Sci-fiと割り切ってレンタルで観れば、2時間楽しめる。
(オフィシャルサイト:http://www.NextMovie.com)


7.「Spider-Man 3」 B+
(出演:トビー・マグワイア、キルステン・ダンスト、ジェームズ・フランコ、トーマス・ヘイデン・チャーチ、トファー・グレース、ブライス・ダラス・ハワード、J・K・シモンズ、監督兼共同脚本:サム・ライミ)

公開3日間で1億5千万ドルを稼ぎ出し、自己の持つ歴代オープニング記録を塗り替えたシリーズ第3弾。今回ピーター・パーカー(トビー・マグワイア)は、父親(Green Goblin)の復讐に燃える親友ハリー(「Flyboys」のジェームズ・フランコ)の挑戦を受け、巨大な砂男(トーマス・ヘイデン・チャーチ)と死闘を繰り広げ、寄生エイリアンによってダークサイドに送り込まれ、更にMJ(キルステン・ダンスト)との恋まで危機に陥る。
ストーリーとキャラクターがテンコ盛り状態で3作中最もまとまりが悪いのだが、驚異の特撮と登場人物の魅力で結局2時間20分ローラーコースター・ライドが続く。このシリーズの強みはサム・ライミが全作品の監督を続けていることと、マグワイアを始め主要な役者に実力派を揃えていることで(今回は「Sideways」のトーマス・ヘイデン・チャーチの存在感が光る)、故に多少の欠点を補っても余りある内容に仕上がっている。
(オフィシャルサイト:http://www.sony.com/Spider-Man)


8.「Lucky You」 B-
(出演:エリック・バナ、ドリュー・バリモア、ロバート・デュバル、デブラ・メッシング、監督兼共同脚本:カーティス・ハンソン)

「L.A. Confidential」、「8 Mile」の気鋭監督カーティス・ハンソンによる、ラスベガスを舞台にした人間ドラマ。ハック(「Munich」のエリック・バナ)はラスベガスでも群を抜くプロのポーカー・プレーヤーだが、世界チャンピオンの父親(ロバート・デュバル)の影に脅えて大成できないでいる。ある日ハックは場末のシンガー、ビリー(ドリュー・バリモア)と出会い恋に落ち、彼の人生は次第に変わっていくが・・・
題材もいいしバリモア主演だし個人的には嫌いではないのだが、主役2人にはケミストリーが働かず、青春ドラマとしても底が浅い。さらにギャンブルシーンは「Casino Royale」と比べても数段落ちるし、要するにすべてのテーマが中途半端に語られている。ESPNの”World Series Poker”の人気が継続している故に、2年のお蔵入りから晴れて公開されたのだろうが、公開1週間後の日曜午後の回を見たにもかかわらず、客はわずか3人だった。
(オフィシャルサイト:http://www.luckyyoumovie.com)


次回は空前の続編ラッシュのサマームービー特集です。