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Mr.DOBASHI no テキサス映画通信


「Shall We Dance?」

  〜凛々しい中年になるためのレッスン

Dobashi Shuichiro 土橋 秀一郎


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大抵の中年男というものは、家族持ちで、ほどほどに収入があって、適当に人生の辛酸をなめていて、それなりに包容力を持っているものだ。だから(見かけが悪いとか、いつも疲れて見えるとか、上着がすりきれているとかは、とりあえず置いておいて、)ちょっとした人生のスパイスがあれば、誰もがステップアップすることが可能なはずだ。例えば「社交ダンス」とか……。


ジョン・クラーク(リチャード・ギア)は、シカゴに住む成功している中年の弁護士。家庭は円満で、魅力的な妻ビヴァリー(スーザン・サランドン)と、ティーンエイジャーの子供がいる。だが少しばかり決まりきった生活に飽きていて、最近フラストレーションがたまり気味だ。そんなジョンは、毎晩のように通勤電車の窓から見かける、ダンススクールの寂しげな女性ポリーナ(ジェニファー・ロペス)が気になって仕方がない。ジョンはある日、意を決して家族に内緒でそのダンススクールに申し込み、レッスンを受け始める。まるで目の前に新しい世界が開けたかのように、社交ダンスにのめりこむジョン。一方夫の不審な行動を気に病むビヴァリーは、私立探偵を雇って夫の秘密を探り始めるが……。


これは周防正行監督兼脚本のオリジナルをハリウッドがリメイクした、爽やかで楽しいライトコメディだ。社交ダンスの魅力が存分に語られ、それに取り憑かれた人々が時に滑稽に、時に格好良く描かれる。元々このストーリーの上手いところは、「社交ダンス」=「恥ずかしい」というイメージを逆手にとって、最大のチャームポイントにしてしまっている点だ。本作ではアメリカ人が主人公なのでそのトーンは弱められてはいるが、それでもジョンたちが初めてビギナーレッスンを受ける時の何とも言えない気恥ずかしさや、ちょっとばかり上手く踊れた時の誇らしさが、観客にひしひしと伝わって来る。ジョン、ポリーナ、ビヴァリーの微妙な三角関係の行方も気になるところ。そして何よりも、本作が人生に迷いかけた男の復活の物語であるところに魅かれる。キュートではあるのだが、この映画、結構したたかなのだ。


キャストも文句なし。まずビヴァリー役はスーザン・サランドン以外には考えられない。なぜならこのストーリーは、ビヴァリーに魅力が無ければ全く説得力を持たないからだ(エンディングにキッチンでギアと踊る彼女のセクシーなこと!)。ジェニファー・ロペスのダンスは元々定評があるし、ジョンの同僚で隠れダンサー役のスタンリー・トゥッチ(「ターミナル」(2004))を始め、脇役陣も適材適所だ。そして少し太目のリチャード・ギアが、無理に若作りをしないで自然体で演技をしているのがいい。かつて「アメリカン・ジゴロ」(1980)、「愛と青春の旅立ち」(1982)「プリティ・ウーマン」(1990)でセクシー・アクターとして頂点を極めたギアだが「運命の女」(2002)、ゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞した「シカゴ(2003)、そして本作によって、今や演技派としての評価を確立しつつある。映画の冒頭では少しばかり不機嫌そうだが、上気した顔でダンスレッスンに励み、やがてダンスを越えて人生そのものを謳歌して行く平凡な男を、ギアは見事に体現した。


誰もがクールな中年になれるわけではない。でも少しばかり人生にスパイスがあれば、今よりも凛々しい中年にはなれるはずだ。ジョン・クラークのように。

"Well, shall we dance, Mr. Clark?"