映像翻訳|海外のテレビ番組や映画の映像翻訳を仕事にするための学校です。多くの修了生、受講生がドラマ、アニメーション、ドキュメンタリー番組など多方面で活躍しています。

backnumber
 
PLAY HARD 蘇れ!日本男子バレー 〜北京への道〜
執筆名:山岡 恵

■第5回  「グラチャン2005」観戦記(その2)


今回は、グラチャンでの全日本チームの戦いぶりの総括と、大会最終日を飾った日本とイタリアとのメダルをかけた決戦を間近で観戦した感想をお届けします!

グラチャンでの日本の試合は全部で5試合。結果は以下の通りです。
11月22日(火)エジプト戦 日本 3−2 エジプト ○
11月23日(水)米国戦 日本 1−3 米国 ●
11月25日(金)ブラジル戦 日本 1−3 ブラジル ●
11月26日(土)中国戦 日本 3−2 中国 ○
11月27日(日)イタリア戦 日本 0−3 イタリア ●

優勝したブラジルは5勝、2位のアメリカは4勝1敗、3位のイタリアは3勝2敗、4位の日本は2勝3敗、5位のエジプトは1勝4敗、6位の中国は5敗。
つまり、日本は最終日のイタリア戦に勝っていたら、メダルに手が届いていたのです!
(ちなみに大会が始まる直前の日本の世界ランキングは16位)
バレーボールには4大大会(世界選手権、オリンピック、ワールドカップ、グラチャン)がありますが、なんと日本男子は1977年のワールドカップ以来いずれの大会でもメダルを手にしていません。今回は4位という結果ではありましたが、日本がグラチャンで2勝をあげることができたのは、3大会(12年)ぶりのことです!

●一戦一戦熱く燃えた、世界の強豪との試合を総括!
<第1戦>エジプト戦 日本 3−2 エジプト
世界ランキング21位という格下の相手ながら、"アフリカの雄"と呼ばれるエジプトに大苦戦。日本はフルセットの末に辛勝。この試合、ひとりで24得点という驚異的な数字を残したのは、ベテラン荻野正二選手。彼に救われた試合ともいえます。この大会を通して荻野選手は、各国の名だたるポイントゲッターたちとベスト・スコアラー争いを演じたのです。私はと言えば、エジプトの選手たちの顔の濃さと粘りのプレイに圧倒され通しでしたが、日本はめでたく初戦白星スタートを飾りました!

<第2戦>米国戦 日本 1−3 米国
世界ランキング5位の米国。大型エース、アテネ五輪ではサーブ部門2位だったスタンリー(若き日のグレゴリー・ペック似)のサーブ、ミラー(若き日のジェームズ・ウッズ似)のブロックが見事です。米国のプレイ・スタイルは淡々としながらも丁寧かつ重厚という印象を受けました。でも、日本ももちろん負けてはいなかった!センター山村宏太選手の要所でのブロック、柴田恭平選手(この名前って!)のレフトサイドからのスパイクや鋭いサーブなどが、なんとも気持ちよく決まりました。そして見所はなんといっても第4セット目。フルセットに持ち込めるか否かの瀬戸際、越川 優選手のサービスエースで火が付いた日本は、20−15から24−23まで追い上げました!あと一歩でフルセットに持ち込めたのに、惜しかったぞ!
でも、「ここまで強豪相手に競り合えるようになったとは!」と観ていて胸が熱くなりました。"負けた気がしない試合"とは、こういう試合のことをいうのだ、と実感。

<第3戦>ブラジル戦 日本 1−3 ブラジル
アテネの金メダリストにして世界ランキング1位のブラジル。今、バレーボールの世界をリードしている国です。そんな強豪ブラジルに対して日本は第1セットから先行。8−5でテクニカル・タイムアウトを取ります。さらに10−5となり、「ブラジル相手になんだかすごいぞ、ニッポン!」と声援にも力が入る!ブラジル・チームにはあせりが見られ、表情も段々険しくなってきました。しかし、さすがにブラジルも本気を出してきます。日本は追い上げられて13−13になり、競り合いが続きます。最後は21−25でこのセットを取られました。第2セット目、日本は前半リードしたものの逆転され20−25でブラジルにセットを連取されます。しかし、第3セットは競り合いの末、日本が25−23でセットをものにしました!
「セット・スポーツ」とも言われるバレーボール。だからこそ、強豪チーム、それも王者ブラジルから1セットを取ったことには重みがあります。第4セット目はブラジルのパワーの前に屈してしまいましたが、日本の勢いが、あのブラジルを幾度となくあわてさせたのは本当に痛快でした。「全日本男子チームの成長の著しさ」を私たちファンが見ることができた試合だったのです。選手たちにとっても、自信と同時に課題を見つける貴重な経験となったのではないでしょうか。

<第4戦>中国戦 日本 3−2 中国
現地にて観戦。詳細は前回のコラムをぜひご覧下さい。熱い試合でした!

<第5戦>イタリア戦 日本 0−3 イタリア
中国戦に引き続き現地にて観戦。
白熱の模様については、以下のレポートをどうぞ!

●世界レベルのイタリアと、堂々渡り合った!
大会最終日、メダル(銅)をかけた戦いとなった日本。イタリアは世界ランキング2位。ブラジルに次いで強い国です。イタリアチームは、"モデルのような優男の集団"でした。友だちと私は、ウォーミングアップしている試合前の選手たちの様子を見ていました。同時に、コートの両端上方に据え付けられた大型スクリーンに映るイタリア人選手たちを眺め、顔を見合わせました。
「彼らの顔ってさぁ…ちょっと出来すぎじゃない?」
そう言いながらも、しばし目の保養タイム(笑)。背の高いやせた男子を数え切れないほどバレーボールの試合中で見てきましたが、これほどまでに、身体にフィットしたユニフォーム姿が美しくおしゃれに見えるチームは見たことがない(決して誇張してませんよ!)。
イタリアのエース・チゾーラ選手は青い瞳の目元が涼しい、あまりにも端正な顔立ち。セッターのベルミリオ選手は若き日の真田広之を思わせる小粒なアイドル系(こういう例えで、私の年齢がわかりますね!)。ひときわ筋肉質の上半身が目立つすらりとした美しい足のマストランジェロ選手は苦みばしった笑みが似合う大人の男。新人サバーニ選手はジョン・キューザックがアカ抜けて初々しく爽やかになった感じ…。
などど、わけのわからぬミーハーなイメージが浮かんでは消えていきました。

しかし、ホイッスルが鳴ればそんなことはまったく関係なし! 相手チームのイイ男っぷりなんぞ、もうどうでもよくなった私です。心にあるのは、とにかくイタリアに勝ちたい!という気持ち。あの無骨で素朴だけど愛すべき全日本選手たち一人ひとりの姿を心に焼き付けようと、一心不乱に応援しました。

結果、日本はイタリアにストレート負けを期しました。しかし、数字からは読み取れない見ごたえのあるシーンが要所にありました。イタリアに絶対的リードを許さずぴったりと追いついていく日本チーム。身長205cm(まだ伸びてるそうです)のセンター、山村宏太選手のクイックやブロック、甲斐祐之選手のパワフルなサーブ、バックアタック、そしてスパイク。岸本一馬選手もこの試合でようやく抜擢され、彼らしいパワフルでダイナミックな攻撃が炸裂。それぞれのプレイが光っていました。
ポジションに「スーパーエース(この選手にボールを集めればOkというチームの柱)」を置かない全員バレーが信条の日本チームですが、それが正解だと感じました。粘り強く守り、つなぎ、攻め、一人ひとりの選手の個性が花開きつつあるのです。「死にそうなほどだった」といわれる夏期合宿での成果が出たとも言えますが、何よりも選手のまっすぐな気持ちが全員バレーを支えているのだと実感しました。彼らの思いは、試合会場ではもちろん、テレビの画面を通しても日本中に伝わったと思います。
この半年間ほどでチームの建て直しを図った植田辰哉監督には感謝の気持ちとともに、「いいチームをありがとう!これからもこの調子で全日本男子をひっぱって、さらなる高みを目指してがんばってください!」という言葉を贈りたいです。

●バレーへの自分の思いを再確認する
最後に。私は今回の大会で自分がいかにバレーボールを愛しているのかがよくわかりました。実は、今大会には私が特に注目し、応援してきた選手たち(北島武選手や今井啓介選手などなど)が選抜されていなかったのです。しかし、大会が始まり試合を見始めると、そんなことは忘れていました。バレーボールはこんなに面白くて元気がもらえる最高のスポーツだったんだ!とあらためて実感し、大会中は毎日が楽しくて仕方なかったのです。
その余韻はその後1週間近くも心に残りました。世界レベルの強豪国を相手におじけづくことなく堂々と立ち向かった日本チーム。厳しい練習を経て生まれ変わった全日本男子の面々。ひいきの選手に活躍してほしいという気持ちとは別に、私にはユニフォームに日の丸を付けた選手たち一人ひとりが、いとおしい存在でした。

気迫にあふれ一心に頑張る人の姿はどんなときも美しく、胸を打つもの。
私がバレー観戦を愛してやまないのはきっと、選手たちから発せられる気合と、彼らが創り出す一瞬一瞬のプレイの中に、何ものにも代え難い感動を覚えるからかもしれません。

次回は、近年変更されたバレーボールのルールや、各ポジションについてのお話をまじえながら、12月中に観戦するVリーグの試合の様子をお伝えし、皆様を聖地(体育館)へといざないたいと思います。
乞うご期待!