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PLAY HARD 蘇れ!日本男子バレー 〜北京への道〜
執筆名:山岡 恵

■第10回  「2006ワールドリーグ」が終了

■勝ち星はただ1つという結果に。しかし手ごたえあり
7月半ばにスタートして以来、ほぼ毎週末、日本をはじめとする世界各国で熱戦が繰り広げられた男子バレーボールの国際大会「2006ワールドリーグ」は、8月27日にロシアで行なわれた決勝戦をもって、その幕を閉じた。優勝チームは世界ランキング1位のブラジル、2位はフランス(世界ランキング7位)、3位はロシア(同4位)という結果だった。
全日本男子の戦績は、1勝11敗――。
しかし、その数字とは裏腹に、私は彼らの今年の戦いぶりに確実な成長を感じた。昨年のワールドリーグでは、全日本チームは、ポルトガル(2005年5月当時、世界ランキング18位)に2勝するかたちで終わったが、今年が去年に劣っているとはどうしても思えない。
なぜなのか? 
今年の大会で日本は、強豪セルビア・モンテネグロ(世界ランキング3位)に初戦でストレート勝ちしたところから始まり、最後のポーランド(世界ランキング8位)戦ではフルセットの末、負けはしたが熾烈な戦いを繰り広げた。ワールドリーグ全体を通じて、全員が本当によく戦っていたと思う。
何よりも印象的だったのは、点差が開いて逆点は不可能と思われる状況でも、途中で試合を投げる姿勢がほとんど見られなかったこと。「勝つこと」への執着が、彼らの中に存在しているのがよくわかった。

今、戦いを終えた選手自身はどう感じているのだろう。私は、越川優選手の公式サイトをのぞいてみた。越川選手は、若干22歳にして全日本を背負う若きエースの1人。日頃から全日本チームや自分の様子を自身のホームページを通じてファンに発信してくれる貴重な存在だ。彼はワールドリーグ最後の試合、アウェイでのポーランド戦を終えた翌日、次のように書いていた。

「越川優選手の8月21日の日記より」
http://www.geocities.jp/kosikawa_website/
「(前略)練習でやってきたこと以上のものはゲームではでない!でも練習でやってきたことをゲームで出すことの難しさ…今回、僕を含め全員がわかったと思う!!
結果だけみれば、去年は2勝!今年は1勝!と減ってはいるかもしれないけど、それは相手も違えば内容も違う!!比べるわけにはいかない!
でも間違いなく去年よりいい戦いが出来てたし、得たものも多かった!
今回見えたものを次にどういかせるかが本当の意味で強いチームだと思う。
もう一度しっかりと見つめ直して、次の合宿から秋の「世界バレー」に向けてレベルアップしていこうと思います!!」

■新たなる宿敵 ポーランド
8月初旬に千葉県で行なわれた日本対ポーランドの2試合を、私は2日間に渡ってライブ観戦した。
2戦ともその試合内容はすさまじいものだった。1戦目はフルセットの末に惜敗。2戦目は前日の試合がそのまま継続しているかのような競り合いが1セット目から続き、25点では決着がつかず、ジュース・ジュースの果てになんと33−35!日本は惜しくもこのセットを落としたが、息もつかせぬシーンの連続だった。その後は流れをつかんだポーランドのペースとなり、結果0−3の敗戦。
日本にとって大会最後の2試合は、ホームとアウェイが入れ替わって舞台はポーランドに。この2試合も同じように競り合いが続いた。1戦目はセットカウント1−3、2戦目はフルセットまでもつれ込んだものの2−3で敗れ、かたちのうえではポーランドに4戦4敗という結果に終わった。
敵ながらポーランドのスピード、じりじりと追い上げる粘り強さは素晴らしいものだった。最終戦のテレビ中継で解説を務めていた佐々木太一氏(数々の国際試合で活躍した元・名センター)は、ポーランドを次のように評していた。
「ブラジルのバレーをロシア人がやっているみたいだ」
つまり、スピードがあり、なおかつ高さのあるバレーができているということ。現在の世界ランキングは8位とはいえ、ポーランドは今後確実にさらなる高みを目指せるチームに思われた。
日本はこの好敵手と秋の「世界バレー」でも同じ組で戦うことになる。今からとても楽しみだ。少し前までは同じアジアの中国や韓国をライバルと呼んでいた日本だが、これからは強豪がひしめくヨーロッパ勢とも互角に戦える予感がした。

■秋の「世界バレー」に向ける思い
今回の大会で得た「全日本チームの課題」を、一人のファンである私が総括することはできない。それは、監督や選手たち自身が一番わかっていることだろう。
「善戦の末…」という言葉はもう聞きたくない。私たちファンは、次こそ「勝者の勇姿」を見たいのだ。
みんながひとつにまとまったチームワークと個人技、ここぞという時の集中力から生まれるファインプレーをもっと見たい。そして、植田辰哉監督が「世界で一番複雑なコンビネーションをしないと、日本は勝てない」と分析しているように、スピードとコンビネーションのさらなるパワーアップを願う。もっと世界の強豪たちを惑わせ、揺さぶってほしい。
「世界バレー」は間もなく11月に開催される。その舞台で、ひと回りもふた回りも大きくなった全日本男子チームが戻ってくると、私は信じている。

バレーボールの豆知識(5)

ツーアタック
バレーボールでは、相手チームからのサーブを受けたチームの選手は3回以内の打数で相手コートにボールを返さなければならない。最も基本的なバレーのパターンは、レシーブ・トス・アタックの3つの連続アクションだ。
それをあえて2回で返す攻撃がツーアタック。相手チームから入ったボールのレシーブをつなぐ役割のセッターが、アタッカーにトスをあげると見せかけて、瞬時に攻撃に転じる。ジャンプトスと見せかけてアタックしたり、通常のトスと見せかけてフェイントぎみに相手コートの死角を狙う攻撃パターンなどがある。
3年前の「ワールドカップ」以来、私が応援しているセッター、阿部裕太選手が得意とする技が、この「ツーアタック」である。出場する試合では必ずこの技を繰り出すといってもいいほどだ。今回のポーランド戦でも「ツーアタック」を見事に決めるシーンがあった。
思い切りがよくないとできないとも言われているこの攻撃は、性格的に強気で上背があり、おまけにサウスポーの阿部選手にはぴったりだ。というのも、右利きだとツーアタックはフェイントのようになるが、左利きで前衛にいる場合、トスをあげると見せかけて強打でツーアタックを打てるからだ。
今回のワールドリーグでは、一度他の選手に譲った「正セッター」の座を取り返した阿部選手。彼が今回見せてくれたものは、かつての純朴な少年の如きまなざしではなく、常に気迫をこめて戦い続ける"勝負師の顔"だった。