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PLAY HARD 蘇れ!日本男子バレー 〜北京への道〜
執筆名:山岡 恵

■ 第17回 2007 ワールドリーグ(その2)


■全日本男子は世界レベルに達したか !?
真の実力を問われた大試合の結果は…
▲今大会初勝利を、強豪イタリアから奪い取る !
2007年の男子バレーワールドリーグ。日本チームのスタートはアウェイの地、アメリカだった。日本は、初戦2試合をともにセットカウント1-3でアメリカに連敗する。
ホームに戻ってからのイタリアとの初戦。日本はまたもセットカウント1-3で惜敗した。セットカウントが示す以上の熱戦だった。勝てる試合を落とした---。それは選手たちとファンが抱いた共通の思い、口惜しさといってもいい。それほど日本は世界ランキング2位のイタリアと互角に渡り合っていた。

6月10日。この日、愛知県小牧市で行なわれたイタリアとの第2戦目、全日本男子はようやくその実力をフルに発揮する。

第1セットから競り合いが続くが、日本は26-24でまずセットを先取。
第2セットは“ゴッツ”石島雄介選手のライトからの攻撃と強力なサーブ、富松崇彰選手のブロックで点差をつけ、25-22で、またも日本がセットを取った。
第3セット、イタリアは強いサーブで日本を揺さぶる。結果イタリアが22-25でセットを取った。
第4セットは、このセットを取れば日本の勝利。あとがなくなったイタリアは総力を結集してきた。24-24のデュースから、31-31まで接戦は続き、結局31-33でイタリアがこのセットを取り、2-2とフルセットとなる。
最終セットは15点先取制だ。予想どおりはじめから両チームの競り合いが続く。その均衡状態を打破するきっかけは越川優選手の2本連続のサービスエースだった。日本は流れに乗り、15-13でセットを取り、セットカウント3-2で日本が勝利した。

終始引き締まった試合展開は見ていて実に面白かった。「イタリアに勝つなんて、全日本男子、すごいよ…」そうつぶやきながら、私はテレビの前で涙ぐんだ。

2001年以来6年ぶりに日本はイタリアを撃破した。それは日本にとって記念すべき今大会初勝利でもあった。世界ランキング10位の日本が2位のイタリアに勝つとは ! 大会前にいったい誰が想像できただろうか ?

▲アメリカ、フランスには苦戦
しかしながら、イタリアからの感動的な勝利以降、日本はフランス、アメリカとの対戦で苦戦し、連敗が続く。アメリカ ( 世界ランキング8位 ) 戦では相手のジャンピング・サーブの強さに対して日本が本来持つ粘り強いレセプションの力を発揮できずに終わってしまった感がある。
一方、フランス ( 世界ランキング7位 ) は負かせる、と感じた。もちろん、フランスも粘り強いチームであり、昨秋の世界バレーでは王者ブラジルに予選で勝利して、周囲をあっと言わせた力の持ち主だ。前回のワールドリーグではブラジルに次ぎ2位となったまぎれもない強豪である。
フランスとの初戦・アウェイでの2試合のうち、1試合では、日本はフルセットの末に惜敗した。しかし、感覚として今の日本ならフランスに絶対に勝てると思った。

▲ついにフランスから勝利をもぎとった !
ワールドリーグの日本戦は全試合がTV地上波、もしくは衛星放送で中継された。もちろん私は全試合をテレビ観戦したが、やはり、試合中の熱気が肌で感じられるライブ観戦に勝るものはない。

私は6月の終わりと7月の初め、東京体育館で開催された対フランス2試合に足を運んだ。
今大会では東京でのこの2試合が、日本にとって最後のホームゲームでもあった。選手もファンも気合の入り方は、今までとは違っていたと思う。会場の観客の入りとその雰囲気は、昨秋の世界バレーのそれに匹敵する賑わいがあった。
6月30日。ホームでのフランスとの初戦。第1、第2セットと日本はセットを取り、その勢いのよさに「これはストレート勝ちかも ! 」と内心ほくほくしながら応援していた。しかし、第3セットで日本はフランスのブロックにつかまる。第4セット、最後はデュースとなるも26-24でフランスに取られ、フルセットに突入。結果、日本の逆転負けとなった。

翌日のフランスとの二戦目も、前日と同様に東京体育館は超満員だった。観客席の中でどこよりも目だったのは、“ゴッツ”石島選手の応援団だ。石島選手の育った地元、埼玉県から200人近くの、まさに老若男女が入り乱れ、派手なゴールドのハッピをまとって2階席の一角を陣取っている。その様は壮観だった。
昨日の口惜しいフルセット負けの記憶も新しく、この日はまさに最後のホームゲーム。「ぜったいに負けられない ! 勝ってほしい !」と、私は心に強く念じながら席についた。

結果は、セットカウント3-1。日本はフランスに快心の勝利を収めた !
誰もが華々しい活躍をしていた。越川選手、富松選手、ゴッツの強力なサーブ。清水邦広選手の豪快なスパイク。松本慶彦選手の絶妙のタイミングでのクイック。リベロの津曲勝利選手のしっかりとしたレセプション。全員が輝き、素晴らしいチームワークが生まれていた。

今回このフランスとの試合に勝利した瞬間、イタリアに勝った時とは違い、私の目にはまったく涙はなかった。なぜなら、うれしくてうれしくて、泣くどころではなかったのだ。溢れたのは涙ではなく、笑顔、笑顔だった。

日本がフランスに勝ったのは、4年ぶりだ。昨秋の世界バレーでベスト8入りしたところから、さらにパワーアップした全日本男子の力を肌で感じることができた試合だった。

▲すごいルーキーが出現 ! 愛称は“ゴリ”
東京で行なわれたフランス戦で鮮烈な全日本デビューを飾った選手がいる。「この選手、かなりすごい…」と誰もが目を奪われたサウスポーのアタッカーだ。その選手とは、清水邦広選手。東海大学の3年生で、まだ20歳だ。
全日本のセンター富松選手は昨年まで清水選手と同じ東海大学で共に戦った2つ年上の先輩だ。全日本で2人は再びチームメートとなった。清水選手のポジションはライトで、いわゆるスーパーエースだ。清水選手については、大学バレーで活躍する選手として雑誌でその名前を見た程度で、今回のワールドリーグのエントリーメンバーとなった時も特に注目していなかった。

ライブ観戦に行った初日のフランス戦が始まる前、コートエンドの前方の席に座りながら私の目に入ったのは、リザーブエリアにいる選手たちだった。その時、見慣れぬ選手がいるなあ、と思ったのが、実は清水選手だったのだ。試合会場で遠目から見てもわかるしっかりした上半身で、「肩が強そうだ」というのが私の第一印象だ。

清水選手はフランス戦の第1セットから途中出場し、あたかも今までレギュラーとしてチームにいたかのようにすんなりと溶け込み、爆発的パワーのスパイクを次々に決めた。翌日の試合にはスタメンで出場。アメフト選手のような体格で、若さと勢いにあふれていた。物怖じすることなのなく堂々とプレイし、全日本のデビュー戦で誰の目にも鮮烈な印象を残した。

初日の試合後、帰宅してテレビ中継の録画映像を見て驚いた。清水選手は、この試合前夜に全日本に緊急招集されたというのだ。つまり、全日本の合宿にはまったく参加していなかったわけである。しかし、植田辰哉監督の談話によれば、3週間くらい前には「準備をしておくように」と清水選手に声をかけていたという。
フランスに勝った試合の後、私は体育館近くのオープンカフェで友人とともに勝利の余韻に浸りながらしばらく歓談した。その後、近くで全日本男子メンバーが乗り込むバスを発見。選手全員がバスに乗り込むまで待ち、見送った。バスが我々ファンの前を通り過ぎていく際、この日の試合はもちろんのこと今大会でも大活躍のフレッシュコンビ、越川選手と富松選手がバスの窓を開け、爽やかな笑みを浮かべて手を振ってくれた。途端に、バスを見送っていたたくさんのファンの間から大きな歓声が上がる。この2人は今や「男子バレー界のアイドル」と言ってもいいかもしれない。二人とも和風の顔立ちだ。ちなみに、富松選手の愛称は「トミー」。今大会で、試合中のファンからの「トミー・コール」はおなじみとなった。

大満足で最寄り駅に向かう途中、前方にひとだかりを見つけた。そこには白いシャツに黒のズボンという学生服のようないでたちの青年がいて、まわりを女の子たちにぐるりと取り囲まれていた。

▲清水邦広選手に接近遭遇した !
"ゴリ"清水くん「え ? あれはもしや…」。そう、彼こそ清水選手だった。
思わず近くに寄ってその姿をじっくりと観察する。192cm、94kgというだけにしっかりとした体格だが、太っては見えない。小麦色に焼けたほほがふっくらとしている。まっ白い歯を見せて無邪気に笑う顔がかわいい。若い。「健康優良青年」という言葉がふと頭に浮かんだ。
サインや写真撮影を求める人の列はなかなか途切れず、むしろどんどん増えていくばかりだ。清水選手のそばで、大学の仲間と思われる男子たち数人が待っていた。口々に、「清水、帰れないじゃん ! 」と、半ば羨ましそうに彼をからかっている。それでも清水選手本人はいっこうに悪びれることなく、一人一人に丁寧にサインをし、写真撮影に応じていた。やがて、清水選手の友人グループは待ちきれなくなったのか清水選手のスーツケースを抱えてどこかに行ってしまった。

私も、観察するのをやめて列に並んだ。サインをもらいたくなったのだ。しばらくして私の順番が来た。
愛称は高校時代から“ゴリ”だというが、目の前の清水選手の顔はぜんぜんゴリラに似ていなかった。全身から太陽のような明るさを発していた。これを「スターのオーラ」というのだろう。

私は試合会場で配布されていた団扇にサインをもらいながら、「オリンピックに行ってくださいね ! 」と声をかけた。清水選手は少し面食らった感じだったが、軽くうなずいてくれた。試合での活躍ぶりについてなど、もっといろいろ言いたかったのだが、私の口から出てきたのはなぜかその一言だけだった。

この日、“北京五輪でぜひとも見たい選手”が私の中でまた1人、増えた---。

次回は、日本チームにとって大会最後の2試合となる、アウェイでのイタリア戦と今大会の総括をお届けしたい。