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PLAY HARD 蘇れ!日本男子バレー 〜北京への道〜
執筆名:山岡 恵

■ 第20回 ワールドカップ2007を、山岡的に振り返る


■大会は最後まで大混戦!
▲北京への切符はブラジル、ロシア、ブルガリアが獲得

今回のワールドカップはとにかく最後の最後まで大混戦が続いた。北京五輪出場権を手にする上位3カ国が確定したのは、大会が終了する前日と最終日。まずはブラジルが北京行きを決めたものの、あとの2枚の北京への切符の行方は大会最終日まで持ち越された。

結果は、優勝:ブラジル、2位:ロシア、3位:ブルガリア。この3カ国が北京五輪の出場権を手にした。日本は3勝8敗で、12カ国中9位という成績に終わった。しかし、その勝敗や順位以上に、日本は各大陸を勝ち抜いてきた国々を相手に見ごたえのある試合を展開した。私の記憶の中でも、最も忘れがたい国際大会となった。

■私が選ぶ日本のベストゲーム
▲強豪のブルガリア相手に攻め続け、ひろいまくった全日本!!

ベストゲームというと、日本チームが勝利した試合を挙げるのが普通かもしれない。実際、日本が素晴らしい全員バレーを見せて、宿敵韓国にストレートで勝利した試合や、競り合いの末に見事破ったアルゼンチン戦などは、ファンとしては何度見ても大満足のゲームだ。

しかし、今回のワールドカップでの日本のベストゲームに、私はあえて、惜敗したブルガリア戦を挙げたい。日本の11試合中、10戦目のゲームだ。

ここ数年私が持っていたブルガリアチームの印象は、「日本と比べてはるかに強く、まったく歯が立たない国」であった。その通り、昨年の世界バレーでは銅メダルを獲得している。さらに今回のワールドカップでは、日本戦の前日、それまで全勝を誇っていたロシアを、フルセットの末に見事に下していた。
そんな乗りに乗っている強豪中の強豪を相手に、どこまで日本が戦えるのか…。不安と期待が入りまじる中、私は観戦に臨んだ。

ところが、驚くなかれ。我らが全日本男子チームは、いまだかつて見せたことがなかったフルパワーを発揮したのだ!
第1セット、試合が始まったとたん、日本のスーパーエース山本隆弘選手がブルガリアのエースをブロックでおさえる。そこからはもう、日本の勢いが止まらなくなる。
粘り強いラリーが続いたかと思えば、いいサーブが決まり、石島雄介選手(ゴッツ)と越川優選手が鮮やかなスパイクやバックアタックで攻める。日本にとって理想的なかたちだ。攻めてよし、守ってよしの日本は、手ごわい相手に終始リードを続け、見事第1セットを勝ち取った。

第2セット以降も日本の気持ちはとぎれず、最後まで互角に戦い続けた。試合結果は1-3。しかし、その内容は、(あわよくば勝てた)と思わせるものだった。

世界レベルに達しつつある日本チームの頼もしい姿を目にして、(やっぱりここまでできる実力があるチームに育ったんだ!それを信じて応援してきたかいがあった)と、胸が熱くなった。

試合後にコートを去る選手たちに素直に拍手を送ったが、選手たちは一様に満足げな面持ちではなかった。どんなにいい試合であっても、「やはり勝たなくては」という強い思いを抱いていることが、ひしひしと伝わってきた。
とはいえ、私にとって試合後の満足感がこれほど大きかった試合は、過去4年間の国際試合で他にはない。そう断言できるほど、ハイレベルなチームがぶつかりあうゲームの面白さを堪能できた試合だった。

■私が選ぶ日本のベストプレイ
▲植田ジャパンが大爆発!王者ブラジルとの戦い

12月2日、ワールドカップ最終日。あの激闘のブルガリア戦の翌日、日本の最後の相手はブラジルだ。ブラジルは前回のワールドカップ、アテネ五輪、世界バレー、すべての大会で優勝している、まさに世界最強国である。

日本とブラジル戦が始まる前の練習風景|日本映像翻訳アカデミー
▲日本とブラジル戦が
始まる前の練習風景

日本戦、ブラジルは最初からベストメンバーで臨んできた。私が観戦した席は1階アリーナ席。ちょうど選手がサーブを打つ後ろ側、コートエンドの真ん中あたりだった。3メートルくらい先がコートなので、プレイ中の選手の表情まで実によく見えた。

この日の日本は第1セットからパワーが炸裂した。勢いに乗りに乗り、ブラジルから第1セットを奪う。第2,第3セットはブラジルに追いつけ追い越せとがんばったが、2セットともブラジルが取った。そして第4セット。日本は連続得点を上げ、7-2という奇跡的な得点差をブラジルにつけた。

嬉し涙が出てきた。(これは行けるぞ)という思いが一気にこみ上げてくる。会場内はもちろん日本チームへの熱狂的な声援が続く。しかし、そこで突然試合が中断される…。

審判団がコート際で協議をしている。コート内にいる選手(富松崇彰選手)と、日本がスタメンとして申告していた選手(松本慶彦選手)が違っていた、というのだ。その事実が場内にアナウンスされると、ルールに従い日本の得点はすべて帳消しにされた。代わりに、ブラジルチームに1点が加算された。

試合のリズムはバレーボールの命…。ちょっとしたことで一気に流れが変わる。私は、このハプニングで天国から地獄に突き落とされたような気持ちになった。「興醒めする」とは、まさにこのことだ。

やはり流れは変わった。日本のサーブレシーブが乱れてくる。サーブで狙われた越川選手がボールではじかれると、ゴッツが駆け寄り、肩をたたいた。

一方ブラジルは持ち前の高速バレーを展開し、1-7とあっという間にリードを広げる。必死に食らい付いていく日本だが、気がつくと12-20という大差に。

しかし、日本を後押しするファンの声援はやむことはなく、私ももちろん、諦める気持ちなどなかった。そして、この試合最大の見せ場が訪れる。今大会の日本のベストプレイは、この第4セット後半に凝縮されている。

13-22。サーブは越川選手だった。
私の目の前に、サーブを打つ越川選手の背中が見えた。深呼吸するその背中にみなぎる集中力。自然と祈るような気持ちになった。

豪快なサーブ!ブラジルはなんとかレシーブするものの、その後ホールディングを取られ失点!2本目のサーブもブラジルを乱し、トミーこと富松選手がブロックで止めた!3本目のサーブでは、ブラジルのアタックをゴッツがブロックでシャットアウト!そして4本目は、ブラジル選手を吹っ飛ばすサーブポイント!

1点を決めるたびに、コート内で日本の選手たちが輪になってしっかりと抱き合っていた。

5連続ポイントで追い上げた日本だったが、結果は18-25。セットカウント1-3で、ブラジルに敗れた。

しかし、皆さんにも、ぜひ覚えていてほしい。今回のワールドカップで、アメリカ戦以外は全勝ストレート勝ちのブラジルから、日本は1つセットを奪ったことを。日本はブラジルを揺さぶり続ける試合を展開していたことを。そして第4セット、7点を失うというハプニングを経ても、決して下を向かずに、決して臆することなく、常に攻めの姿勢でプレイを繰り広げていたことを!

そんな全日本男子チームの姿に、涙が出た。これほど泣きながら応援した試合というのも、今回が初めてだった。

■新人賞はゴッツが受賞!!

大会最終戦となったブラジル戦終了後、コート内では表彰式と個人賞の授与式が行なわれた。最優秀新人賞に選ばれたのは、もちろんゴッツ!

ゴッツは真っ白のジャージ姿で、颯爽と会場に現れた。元気に壇上に上る。会場の大型スクリーンには、トロフィーを受け取り、得意満面の笑顔が映った。大歓声を浴びるゴッツの姿は、チャンピオンのようだった。

新人賞を受賞するゴッツ|日本映像翻訳アカデミー
▲新人賞を受賞するゴッツ

表彰式の後の日本の選手たちは、思いのほかすっきりと明るい表情をしていた。試合終了直後から先ほどまで号泣していたトミー、こと富松選手にも笑顔が戻っている。よかった!越川選手の表情は爽やかで、「やれることはすべてやった!」という達成感が垣間見えた。
ゴッツ、トミー、越川くんという23歳トリオにとって、初めてのワールドカップ。彼らが大活躍した頼もしい姿を、私は決して忘れない。

■世界最終予選で北京への切符をつかめ!
日本にとって、今後北京五輪への道を阻む可能性がある国があるとしたら、それは同じアジア圏のオーストラリアだ。ここ数年相性が悪いのが気になる。
しかし、今回のワールドカップでの最後の2試合(対ブルガリア、ブラジル戦)で発揮した力をもってすれば、必ず勝てる相手だ! そう私は強く確信している。

ワールドカップが終わったばかりだが、来年5月の世界最終予選がもう待ち遠しい。


 
●バレーボールの豆知識 ( 14 )

北京五輪への出場権を獲得するまでの道のりは?

北京五輪には全部で12チームが参加できる。
その12チームに選ばれるためには以下のいずれかに該当する必要がある。

  • 開催国である中国-1チーム
  • ワールドカップでの上位-3チーム
  • オリンピック5大陸予選の各大陸での第1位-5チーム
  • 日本・ドイツ・ポルトガルの3カ国で開催される世界最終予選での各地での
    第1位-3チーム

今回のワールドカップで上位3チームに入ることができなかった日本だが、来年の北京五輪への出場権を手にするには、来年の5月に日本で開催される世界最終予選のアジア圏で第1位になる必要がある。
世界最終予選はアジア予選も兼ねており、開催国の日本のほかにアジア圏から4チーム、アジア圏以外からの大陸から3チームが参加し、合計8チームが総当り戦を行う。
その中で、第1位のチームと、アジア圏から参加したチームのうち第1位のチームが、アジア代表として北京五輪に出場する資格を獲得する。