映像翻訳|海外のテレビ番組や映画の映像翻訳を仕事にするための学校です。多くの修了生、受講生がドラマ、アニメーション、ドキュメンタリー番組など多方面で活躍しています。

修了生の翻訳チーム チーム・リアリティTV活躍中!


       


Vol.7 2006年6月のニュース! バックナンバーへ

今回は、修了生のワールドカップ現地観戦記をお届けします。

現在、ドイツで熱い闘いが繰り広げられている2006 FIFA ワールドカップ!
リアリティTVの番組を中心に活躍されている安保恵理さん(修了生)の現地レポートです。



ワールドカップ現地観戦記

ワールドカップ体験記 〜サッカー文化の根づいた国で〜


   1993年、忘れもしない「ドーハの悲劇」。その翌日、私はロンドンに降り立った。サッカー日本代表ワールドカップ初出場をロスタイムで逃したという事実を重く受け止めながら。奇しくも1994年のアメリカ大会にはイングランドも出場ならず。失意に沈むロンドンで、ワールドカップイヤーを過ごすことになった。

   ワールドカップの試合を現地のスタジアムで観戦するのは私の夢だった。1998年のフランス大会には行けずじまい。2002年、日本での開催で夢はかなうと思われたが、チケットが全く取れず観戦はパブリックビューイングのみ。そんな私に昨年末、ドイツのカイザースラウテルン近郊に住む友人から1通のメールが届いた。「日本戦のチケットが取れた。ドイツに来ない?」

   彼はロンドン滞在中に知り合ったドイツ人。ウェンブリースタジアムで行なわれたイングランド対デンマークの親善試合を一緒に観に行った。その後、ドイツに帰国した彼を訪問。カイザースラウテルンが生んだ名プレーヤーの名前を冠したスタジアム、フリッツ・ヴァルター・シュタディオンに連れて行ってもらった。木々に囲まれた小高い丘にあるスタジアムを12年後に再び訪れることになるとは…。

   2006年6月8日。開幕戦を翌日に控えて、この小さな町、カイザースラウテルンはワールドカップ一色だ。通りに面した窓や車には、ドイツの国旗がはためいている。ためらうことなく誇らしげに国旗を飾っているのは、戦後初めてだろうと友人は言っていた。「ようこそ」「歓迎」という日本語の看板も見かけた。そして9日、ワールドカップ開幕。友人の家でバーベキューを楽しみながら、ドイツ対コスタリカの試合をテレビで観戦。母国の勝利に、友人たちは納得の表情だった。ちなみに某ラジオ局では、監督のクリンスマンをパロったショートコントを放送していて、友人はそれを毎日楽しみに聴いているようだ。

   6月10日、日本代表合宿地のボンへ。オーストラリア戦を前に最後の練習。開始直前には川淵キャプテンが自ら選手たちに檄を飛ばしていた。数多くのサポーターを前に、ディフェンスやセットプレーの練習。シュートが決まると、拍手が沸き起こる。選手の間にはなんとなく緊張感が漂っている。練習後、加地亮選手のサインをもらうことができた。できるだけ多くの人たちにサインを書こうとしていた加地選手の姿勢に感激。

   6月12日、いよいよ日本代表の初戦。この日も朝から太陽が照りつけている。暑くなりそうだ。午前中からカイザースラウテルンのダウンタウンは、圧倒的に多いオーストラリア人サポーターに埋め尽くされている。サムライブルーのユニフォームを着たサポーターを見つけるのが困難なほどだ。それでも時折「オーレーオレオレオレー、オージー、オージー」「ニッポン(チャチャチャ)!」とサポーター同士が争うように気勢を上げる。スタジアムに向かうサポーターを出迎えてくれるのは、11人のプレーヤーの像。記念写真を撮っていた時、日本代表を乗せたバスが通り過ぎた!

   入場する時に厳しいチェックが行なわれると聞いていたが、あっさりとしたボディチェックでスタジアムに入る。観客席はかなり急勾配だ。席に着くと、ピッチを見下ろすほどの高さ。緑の芝がまぶしい。日差しが強く、ピッチ上はかなり高い気温だろう。スターティングメンバーが発表され、観客席では早くも両サポーターが応援合戦。まもなく試合開始。私の予想では2対0で日本の勝利!のはずだったが…

   むなしく響く試合終了のホイッスル。先制点を守れずに、日本は1対3の逆転負けを喫した。残り数分のところで緊張の糸がプツンと切れてしまったようだった。静まり返る日本人サポーター。悔しいというよりも、切ない試合内容。日本代表選手たち数人がサポーターのところまであいさつに来たが、疲れ切ったような足取りが印象的だった。ドイツにまで来て負け試合か〜(涙)。観客席ではオーストラリア人サポーターたちが、歓喜の声を上げていた。選手同様に足取り重く、スタジアムからダウンタウンまでの坂道を下る。駐車場へのシャトルバスで一緒になった日本人男性2人組は「負けるなんて想定していませんでしたから、ガックリっすよ〜」


   今回、日本代表は残念ながら、決勝トーナメントに進出できなかった。しかし、私にとってこの旅の経験はかけがえのないものとなった。試合開催地の中でカイザースラウテルンは最も小さい田舎町。それでもワールドカップを楽しむ雰囲気は最高だった。ヨーロッパの人々はサッカーをプレーするだけではなく、その楽しみ方を心得ている。通りで出会った見知らぬ人々と、ビールを飲みながら代表チームについて熱く語ったり、どこかの国から来た女の子と一緒にニッポンコールを叫んだり…。サッカーはスポーツである。しかし「サッカー文化」は存在する。4年前、日本でのワールドカップでは、その文化がまだ成熟していなかったように思える。日本代表はワールドカップ予選を勝ち抜く力をつけてきたが、まだトップレベルには達していない。それと同様に、サッカー文化はまだ日本に根づいていないのだ。将来、日本で再びワールドカップを開催する時には、決勝トーナメントを勝ち抜ける代表チームと、世界中のサポーターを受け入れて盛り上がることができる文化が育っていることを心から願う。

ドイツを離れるフランクフルトの空港にて。ベンチの横にはサッカーゲームの台が置かれ、大の男たちが子供のような笑顔でゲームに夢中になっていた…。

筆者 安保 恵理(あんぼ えり)


安保さん(中央)。
友人のお嬢さん(右)、そのいとこの男の子(左)


2005年9月、日本映像翻訳アカデミー実践コースを修了。以来、リアリティTVの番組を中心に翻訳活動を行なっている。

●手がけたリアリティTVの番組
「最新女性医療事情」「お医者さんになろう!」「恋愛ヘルパー」「激撮!警察追跡24時」「誘って!誘われて!」「美しき盗っ人ども」「暴かれた真実〜ハリウッド・セレブの素顔」他
●リアリティTVの番組の字幕作り
1. 基本的なことですが、調べ物を徹底してやること。医療モノでは、お医者さんをやっている先輩を質問攻めにしてしまいました(感謝しています)。
2. ミクロとマクロの視点で字幕を作っていく。原文の意味、ニュアンスを大切にしながら、字幕の前後関係を考えて、大きな流れを作る必要があると思います。
3. 番組製作者の狙いを理解し、何をどう伝えたいのかを考えて全体のトーンを決めていく。映像翻訳者はディレクターセンスも問われると思います。ラジオの仕事をしていた経験が役立っているかもしれません。