ヒーローにいちばん似合う色が赤だとしたら、いちばん似合わない色は何だろうか?初代仮面ライダーは企画当初、マスクが緑色だった。もちろんモチーフがバッタだからなのだが、「緑色のヒーローなど論外」と考える東映側の指示で黒に近い緑に変更される。その結果、全身黒っぽい(注釈1)ヒーローの誕生となった。
黒は悪の象徴としてよく使われる。その意味では、緑よりも黒のほうがヒーローにふさわしくない色ではないだろうか。"黒=悪役"というイメージを強烈に体現しているのが、ダースベイダーだ。全身真っ黒な姿を見ただけで、「ああ、こいつはワルモノだな」と誰もが思うだろう。
日本の特撮でも、黒は存在感のある悪役や敵によく使われてきた。ウルトラマンと互角に渡り合ったメフィラス星人や、ウルトラマンを倒したゼットンは、黒を基調としている。その他、キカイダーを破壊するためだけに作られたハカイダー、ジャイアントロボのライバル、GR2なども同様だ。つい最近では、『ウルトラマンギンガ』に黒いウルトラマンとウルトラセブン(注釈2)が登場した。
色彩心理学によれば、黒が持つイメージには"死"や"恐怖"、"強さ"などがあるそうだ。その観点からすれば、黒は敵役にこそふさわしいと言える。だけど思い出してみてほしい。鞍馬天狗や快傑ゾロの衣装が、何色だったかを。古すぎて分からないという人は、バットマンでもいい。みんな黒い衣装に身を包んでいたではないか。正義のヒーローが黒を着れば、"強さ"は肯定的な意味合いに転じる。さらに黒には、"神秘的"というイメージもあるから、正体を隠して戦うヒーローたちには、まさにうってつけの色だ。仮面ライダーも黒いからといって、悪役に見えてしまうということなどまったくないのだ。
そんなライダーも、番組後半のモデルチェンジによって、マスクがメタリックなライトグリーンに変わった。腕や体の横にはシルバーの2本線が入り、グラブとシューズもシルバーのものに変更された。スマートで洗練された印象になった分、力強さや迫力はなくなった気がする。その後、『人造人間キカイダー』や『秘密戦隊ゴレンジャー』が登場し、カラフルな特撮ヒーローばかりが活躍するようになっていった。
ところがそんなの流れの中で、画期的なことがあった。ゴレンジャーに始まるスーパー戦隊シリーズの6作目、『大戦隊ゴーグルファイブ』に、ゴーグルブラックが登場したのだ。当時、黒という色を前面に押し出したヒーローは斬新だったし、何より強そうに見えた。それは、色自体が持つイメージのおかげでもあるが、ゼットンやハカイダーなどの影響もあっただろう。彼らによって僕らの中には、"黒=強い"というイメージが植え付けられていたのだ。
ゴーグルブラック登場の裏には、グリーンの戦士に人気がなく、他の色を検討していたという事情があったらしい。冒頭で紹介した、仮面ライダーが始まる前の東映の判断は、正しかったということになる(注釈3)。いずれにせよ、黒の戦士は好評なようで、現在放映されている『獣電戦隊キョウリュウジャー』でも雄姿を見ることができる。
ただ、子供たちをメインターゲットにした番組で、バットマンのように単体のヒーローを黒ずくめにすることは難しいかもしれない。なんといっても明るくて目立つ色の方が、子供たちにはアピールする。黒という色の魅力が理解できるのは、大人になってからだろう。スーパー戦隊の黒い戦士たちも、派手な色の仲間に囲まれているからこそ、カッコよく見えるのかもしれない。黒いヒーローが単体で活躍できるような、大人向けの特撮作品の登場を期待しよう。