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第6回:タイのナチュラル建築
2013年08月30日

【written by 馬場容子(ばば・ようこ)】東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。
【最近の私】飼犬のダムと近所の犬2匹と散歩している時間がプチメディテーション時間になっています。
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ここ数年、チェンマイは建築ラッシュのようです。古都であるチェンマイでは、街の景観維持のために背の高いコンドミニアムなどの建築には規制がありますが、それでもモダンなコンドミニアムやショッピングセンターが街じゅうのあちらこちらに建ちはじめ、新たな風景を創り出そうとしています。それはまるで古き時代が新しい時代へとがらりと変わる瞬間を見ているようです。

続々と登場する建築物の中でも、私が見ていてほっとするのが、ナチュラルな素材やデザインを重視した建築物たちです。

Photo1.  Natural architect, school.JPG
チェンマイの自然に溶け込んだpanyaden学校(写真1)

■コンクリート派VSナチュラル派!?

隣の家を建てている大工さんたちは、自分たちが一時的に寝泊りするための竹製の家をいとも簡単に作ってしまいます。そこに数ヶ月間住み込んで働き、家が出来上がると竹の家を解体して、また次の仕事場に移っていきます。

そんな竹の家に見られるような、シンプルでベーシックなナチュラル建築に新たなデザインが加わった建築様式が今、チェンマイに住む人々を魅了しています。どことなく素朴でゆったりした雰囲気を醸し出す建物。

数年前に誕生したpanyaden学校(写真1)は、竹と土でできた建築物として大きな話題になりました。特に、自然界のエコシステムを暮らしの中心に置くことを提唱するパーマカルチャーに基づいた生き方を目指してこの地を訪れた外国人の眼には、こうしたナチュラル建築は魅力的なタイ文化の一つに映るようです。そうした背景から、近年はナチュラル建築のワークショップがあちこちで行われています。

一方、多くのタイ人にとってはあいかわらずコンクリート製のモダンな家こそがお金持ちの象徴であり、あこがれの住まいでもあります。

西洋風の堅ろうな建築に魅了されるタイ人。やさしいナチュラル建築に魅了される外国人。一見正反対の二つの建築の流れが、今のチェンマイの街には混在しているように見えます。

■子どもに人気、竹製の遊具たち

Photo2. Bamboo pirate at Nic's restaurant.JPG
ニックス・カフェの竹製パイレーツ遊具
www.nics.asia でさらに詳しく!(写真2)

ナチュラル建築を取り入れたカフェが近所にできて、今、とても賑わっています。オーナーは自然志向の西洋人、シルビアさんです。家族連れの客を見ていると、親たちはレストランで食事を楽しみ、子どもたちは竹製の遊具で思いっきり遊んでいます。遊具のコンセプトは子どもたちが大好きな海賊船。(写真2) まさにこのレストランの目玉となっています。遊び終わったあとは、子ども用のシャワーやトイレまで用意されているので、汗だくで泥んこになってもへっちゃら。

シルビアさんはナチュラル建築の魅力をこう語ってくれました。
「竹製のプレイグランドを作ったのは、沢山のこどもに自然素材に触れてほしいと思ってるから。ショッピングセンターに行けばプラスティック製の遊具がところ狭しと並んでいるけれど、土や竹にも触れてほしい。自分自身のベースであるはずの自然と繋がっていて欲しいし、いつも忘れないでほしいと願っています。これからはもっと自然と関わるワークショップを企画するつもりなの」

壁や屋根はもちろん、時には家の基礎部分までを竹や土といった自然素材で簡単に作り上げ、数年したら部分的なリフォームを施すなどして家を維持できてしまう気軽さは、南国の住まいならではの魅力です。近年は人気の影響からか、価格が上がっているのが少し気がかりですが、この風土と気候を生かしたナチュラル建築が今よりもっと増えていくことを願っています。

そしていつまでもチェンマイらしい風景を失わないでほしいなと思う今日この頃です。

Photo3. Chiangmai 田園風景.JPG
チェンマイの美しい田園風景