不惑のjaponesa(ハポネサ) ~40歳、崖っぷちスペイン留学~

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第11回:スペインと日本、女性の社会進出について考えてみた
2014年01月24日

【written by 浅野藤子(あさの・ふじこ)】山形県山形市出身。高校3年時にカナダへ、大学時にアメリカへ留学。帰国後は、山形国際ドキュメンタリー映画祭や東京国際映画祭で約13年にわたり事務局スタッフとして活動する。ドキュメンタリー映画や日本映画の作品選考・上映に多く携わる。大学留学時代に出会ったスペイン語を続けたいという思いとスペイン映画をより深く知りたいという思いから、2011年1月から7月までスペイン・マドリード市に滞在した。現在は、古巣である国際交流団体に所属し、被災地の子供たちや高校生・大学生の留学をサポートしている。
【最近の私】12月27日夜に山形へ帰省。翌日は大雪で、その翌日は自動車事故で新幹線は運休。1月3日は有楽町の火事でこれまた運休騒ぎ。幸い巻き込まれることはなく、ラッキーな一年になると、勝手に思った。
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■女性の管理職の進出

新聞を読んでいると、ある記事に目が留まった。

『2015年までに女性管理職を40%以上に』

スペイン国内で発行されている保守派の新聞の1ページに渡って、マドリード市の市長であるAna Botella女史の寄稿が掲載されていた。EU(欧州連合)が女性管理職の数を40%~60%にすることを2015年までには達成する目標を掲げているらしく、EUのメンバーであるスペインもそれに倣うらしい。

現状ではスペインの労働者うち45%が女性、そのうち60%が大卒者。また、女性の役員・管理職は10%にすぎない。果たして、あと数年で40%まで押し上げることはできるのだろうか、という内容だ。
もし労働者が1,000人いるとすれば、そのうち女性が450人で、大卒者が270人。もし役員・管理職が100人いるとすれば、10人。それを40人まで押し上げるということだ。
ちなみにEU内で女性管理職の割合が多い国はノルウェーで44%を占める(2010年統計)。日本がどのような状態かその時まだわからなかったが、単純に女性管理職が5人に2人の割合はすごいことだと思った。

■ちょっとスペイン史を

スペインの現代史を振り返ると、1936年、マニュエル・アサーニャ首相率いる共和国軍とフランシスコ・フランコを中心とした反乱軍の対立による内戦が勃発。反乱軍が勢力を拡大し、1939年に終結。以来、フランコが死去する1975年までの37年間、独裁的なフランコ体制が続いた。1975年にフアン・カルロス1世が即位し、ようやく民主化が推し進められるようになる。つまり、民主化以降の歴史は、2011年になってようやく独裁政権の期間と同じ37年目を迎えたのだ。

民主主義が始まると、すぐに着手されたのは新たな法の制定だった。労働法、宗教の自由、離婚、反テロリズム、中絶、16週間の出産休暇などである。反自由主義・反共産主義を唱えていた前政権下に耐えかねていた反動からか、堰を切ったように次々と民主的な法が制定・施行されていった。

男女雇用機会均等法は2007年になってようやく施行された。1982年に社会で働いていた女性はわずか30%だったが、施行後は45%に。そして現在はAna Botell女史が論じるような先進国の水準にまで登り詰めている。

■スペインと日本を比較してみよう

下の表をご覧あれ。スペイン統計局(Instituto Nacional de Estadistica)による「女性の年齢別雇用状況(2010年)」によると、25~29歳は65.2%、30~39歳は65.7%、40~49歳は63.9%とほぼ均等になっている。グラフを見ると全体の形が台形になっている。これは多くの欧米諸国で見られる形らしい。子供をもうけたとしても、働き続ける姿が浮き彫りになっている。

一方、日本は、スペインよりも労働者数に占める割合は高いものの、25~29歳の77.1%から30~34歳の67.8%と、なんと9.3%もダウンしている。そのため、グラフ全体がM字カーブを描いている。日本でもスペイン同様に1986年に男女雇用機会均等法が施行されて、女性が働きやすい環境作りを推し進めてきたはずだ。しかし、結婚や出産を機に仕事から離れる傾向がまだ強いように見受けられる。スペインと日本では「働く女性像」に違いがあるのだ。

※年齢別による雇用数の違い
年齢別による雇用数の違い.JPG
■働く時間あれこれ

スペインと日本では労働時間にも大きな違いがある。

知人のマドリード州政府公務員は、シフト制で朝9時~午後3時、午後3時~夜9時の勤務形態があると言っていた。また国家公務員はサマータイム期間中、朝8時から午後3時までの勤務で、その後は帰宅となる。ランチは帰り道や自宅でゆっくりと食べられる。

小売店の多くの営業時間は朝9時~午後2時、2時間の休みを挟んで、夕方4時から夜7時までになっている。これらの働き方を総合して見ると、太陽の日差しが一番強い時間帯(午後2~4時)を中心軸にした働き方と、それに合わせた就労時間制になっていることに気づく。

幼い子供を持つ母親は、朝出勤前に保育園に子供をあずけ、午後2時~3時に仕事を終えて子供を迎えに行き、そのまま自宅に帰ることができる。子供をもつスペイン女性の多くは、このような働き方をしており、一般的な光景だ。とはいえ、EUに加盟してからは昼休みを2時間取る企業が減ってきているため、この働き方が崩れてきているらしいが...。

■あきらめた感はある

日本では、特にフリーで働き続けることは、婚期が遅れたり、子供を持つタイミングが遅れたり、好機を逃してしまうリスクがあると思われている。私自身、結婚や出産のタイミングを一時は真剣に考え、妊婦姿で映画祭の現場を駆け回る働き方も考えた。しかし、当時の女性上司(3人の母)から強く反対され、現実にはそうならず。周辺の先輩でワークライフバランスを上手く実践できている人もいたが、不器用な私にはなかなかそうはいかなかった。

女性が日本で家族を持ちながらキャリアを積み重ねるには、女性が働きやすい環境作りを率先している企業に就職するか、一定期間は第一線から離れて、数年後に復帰するしか方法が無いように思われる。その他に方法はあるのかもしれないが、私が知らないだけか。子育てをしながら働く女性が次世代の労働力となる子供を育てているのに、冷遇されることが多いことに首をかしげてしまうこともある。

でも、来るべき高齢化社会では、30~40代の女性のパワーが必要となるのは確かだ。働く意思を持つ女性の誰もが働きやすくなる社会になることを願っている。スペイン女性の今とこれからの姿からも、何かいいヒントが見つかるかもしれない。